107 / 119
107,カジノ。
しおりを挟む
神殿をあとにして、まずサンディさんと合流することにした。
しかしサンディさんを回収するにも時間がかかった。てっきり酒場にいるのかと思ったら、もっと悪いことにカジノにいた。泣きながらひざまずいて、床を叩いている。
「アリアちゃぁぁぁぁん! 身ぐるみはがされたよぉぉぉぉ!」
修道女というのは、堕落した生き物なのかもしれない。というか、サンディさん、やはりコスプレ疑惑。
「……行きますよ、サンディさん。知り合いの巫女が監獄にいるようなので救出して、いろいろと聞き出さないと。すべては【覇王魔窟】攻略のためです」
「このままじゃ、このままじゃ、私の気がすまないよ! アリアちゃぁぁぁん!」
「私にどうして欲しいんですか?」
サンディさんが、私の腕をがしっとつかむ。
「私が負けた分を、取り戻してきて!!」
「……」
人は、ひとつのものにしか中毒にはなれない。仮に私が【覇王魔窟】中毒だというのならば、ここでギャンブルをしてもハマることはないだろう。すると逆説的に、時間の無駄ということになる。まぁ、少しならやってみようか。
手持ちの全額を、カジノコインに変えてもらい、サンディさんにもたせる。
「ふーむ。しかし、肝心のゲームのルールが分かりません」
「いちばん単純なのは、ルーレットかな。ディーラーが回転する円盤に球を投げ入れるから、プレイヤーのアリアちゃんは落ちる場所ポケットを当てるだけ。ベット(賭け)はわたしがするから、アリアちゃんは──当ててっっ!!!」
それは、〈未来予知〉スキルが必要なのでは?
ふいに神のイカズチを食らったような気分になった。
まさしく、それだ。〈攻略不可能体〉のチートスキルへの唯一の対抗策は、〈未来予知〉することに違いない。
少なくとも、どのような初見殺しスキルかを、漠然とでも予知できたならば、こちらの勝率は一気に持ち直すというものだ。
問題は、どうやって〈未来予知〉の領域をスキルツリー開拓するのか。クラウディアさんから素材を取るわけにはいかないし。
しかし、クラウディアさんの後釜となった巫女さんも、劣化版とはいえ〈未来予知〉スキルを使えるではないか。
欲しい。その人体素材が、凄く、凄く欲しい。もちろん、その人体素材を得たからといって【予知領域】が出現するかは分からないけれど。それでも、ああ私は欲しいのだ。
「アリアちゃん! どこにベットするの! ここは配当36倍の1目賭けでいくよ!!」
ふむ。ベットのタイミングは、ディーラーさんが球を投げ入れた直後でもいいのか。では投げ入れた角度と速度から、だいたい最後に落ちるポケットは読みこめる。
「5ですサンディさん」
「よっしゃ!」
球が5のポケットに落ちた。サンディさんが「ふんぎゃぁぁぁあああぁぁ!!」という、変てこな声で歓びを表現する。それから3連続で1目賭けを当てたところで、コインを換金してもらうことにした。
そのさい、カジノ側の強面なスタッフ(用心棒?)がやって来たが、私の持つ魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を見るなり、顔を青くして立ち去った。
サンディさんがくすくすと笑う。
「いまの人、カジノオーナーの指示で来たんだね。アリアちゃんがイカサマをしたものと思い込んで、痛い目にあわせようとした。だけどアリアちゃんの〈魔統武器〉を見るなり、これは命がいくらあっても足りないと退散したみたい。逆にいえば、アリアちゃんの強さを見ただけで理解できたのだから、かなりの使い手ということだよね。こんなカジノで用心棒しているなんて、もったいないなぁ」
そんなカジノで身ぐるみはがされた人が、よく言うものだなぁ。
さて、次はクラウディアさんを救出するのだが、まずは黒騎士の隊長さんから聞き出した監獄。エルン監獄の場所を特定するところから始めなければならない。
ところがサンディさんが、ここで初めて役に立つ(もちろんサンディさんは、いるだけで和むので、さっきから足を引っ張ってしかいなくても良いのだが)。
「エルン監獄なら、わたしが知っているよ。聖都の観光スポットのひとつ。毎週日曜には、公開処刑が行われているとか。実は公開処刑って、ラザ帝国内ではこの聖都でしか許可されていないんだってね。だから観光客が大喜びだってさ」
「さっそくエルン監獄に案内してください」
エルン監獄には、二つの顔があった。観光スポットとして機能しながらも、しっかりと厳重警備を敷き、重罪犯を閉じ込めている。
《視界不良》発動で看守から発見されにくくなった状態で、サンディさんと侵入。まず重犯罪者ゾーンを探ってみると、拍子抜けするほど簡単に見つけた。
牢獄内で、さらに足枷をつけられたクラウディアさんが、死んだ目で天井を見ている。サンディさんに看守が来ないか見張ってもらってから、私は鉄格子の外より声をかけた。
「クラウディアさん、アリアですよ。元気ですか?」
クラウディアさんは、私を見てもとくに驚いた様子ではなかった。ただ肩をすくめて、
「元気かと問われると、難しいところじゃな。わらわは、こうして囚われの身じゃし」
「まぁ、足枷をはめられた状態で、バカンスとは言えませんよね…………………………脱獄しますか? お手伝いしますよ」
「うむ。頼む」
しかしサンディさんを回収するにも時間がかかった。てっきり酒場にいるのかと思ったら、もっと悪いことにカジノにいた。泣きながらひざまずいて、床を叩いている。
「アリアちゃぁぁぁぁん! 身ぐるみはがされたよぉぉぉぉ!」
修道女というのは、堕落した生き物なのかもしれない。というか、サンディさん、やはりコスプレ疑惑。
「……行きますよ、サンディさん。知り合いの巫女が監獄にいるようなので救出して、いろいろと聞き出さないと。すべては【覇王魔窟】攻略のためです」
「このままじゃ、このままじゃ、私の気がすまないよ! アリアちゃぁぁぁん!」
「私にどうして欲しいんですか?」
サンディさんが、私の腕をがしっとつかむ。
「私が負けた分を、取り戻してきて!!」
「……」
人は、ひとつのものにしか中毒にはなれない。仮に私が【覇王魔窟】中毒だというのならば、ここでギャンブルをしてもハマることはないだろう。すると逆説的に、時間の無駄ということになる。まぁ、少しならやってみようか。
手持ちの全額を、カジノコインに変えてもらい、サンディさんにもたせる。
「ふーむ。しかし、肝心のゲームのルールが分かりません」
「いちばん単純なのは、ルーレットかな。ディーラーが回転する円盤に球を投げ入れるから、プレイヤーのアリアちゃんは落ちる場所ポケットを当てるだけ。ベット(賭け)はわたしがするから、アリアちゃんは──当ててっっ!!!」
それは、〈未来予知〉スキルが必要なのでは?
ふいに神のイカズチを食らったような気分になった。
まさしく、それだ。〈攻略不可能体〉のチートスキルへの唯一の対抗策は、〈未来予知〉することに違いない。
少なくとも、どのような初見殺しスキルかを、漠然とでも予知できたならば、こちらの勝率は一気に持ち直すというものだ。
問題は、どうやって〈未来予知〉の領域をスキルツリー開拓するのか。クラウディアさんから素材を取るわけにはいかないし。
しかし、クラウディアさんの後釜となった巫女さんも、劣化版とはいえ〈未来予知〉スキルを使えるではないか。
欲しい。その人体素材が、凄く、凄く欲しい。もちろん、その人体素材を得たからといって【予知領域】が出現するかは分からないけれど。それでも、ああ私は欲しいのだ。
「アリアちゃん! どこにベットするの! ここは配当36倍の1目賭けでいくよ!!」
ふむ。ベットのタイミングは、ディーラーさんが球を投げ入れた直後でもいいのか。では投げ入れた角度と速度から、だいたい最後に落ちるポケットは読みこめる。
「5ですサンディさん」
「よっしゃ!」
球が5のポケットに落ちた。サンディさんが「ふんぎゃぁぁぁあああぁぁ!!」という、変てこな声で歓びを表現する。それから3連続で1目賭けを当てたところで、コインを換金してもらうことにした。
そのさい、カジノ側の強面なスタッフ(用心棒?)がやって来たが、私の持つ魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を見るなり、顔を青くして立ち去った。
サンディさんがくすくすと笑う。
「いまの人、カジノオーナーの指示で来たんだね。アリアちゃんがイカサマをしたものと思い込んで、痛い目にあわせようとした。だけどアリアちゃんの〈魔統武器〉を見るなり、これは命がいくらあっても足りないと退散したみたい。逆にいえば、アリアちゃんの強さを見ただけで理解できたのだから、かなりの使い手ということだよね。こんなカジノで用心棒しているなんて、もったいないなぁ」
そんなカジノで身ぐるみはがされた人が、よく言うものだなぁ。
さて、次はクラウディアさんを救出するのだが、まずは黒騎士の隊長さんから聞き出した監獄。エルン監獄の場所を特定するところから始めなければならない。
ところがサンディさんが、ここで初めて役に立つ(もちろんサンディさんは、いるだけで和むので、さっきから足を引っ張ってしかいなくても良いのだが)。
「エルン監獄なら、わたしが知っているよ。聖都の観光スポットのひとつ。毎週日曜には、公開処刑が行われているとか。実は公開処刑って、ラザ帝国内ではこの聖都でしか許可されていないんだってね。だから観光客が大喜びだってさ」
「さっそくエルン監獄に案内してください」
エルン監獄には、二つの顔があった。観光スポットとして機能しながらも、しっかりと厳重警備を敷き、重罪犯を閉じ込めている。
《視界不良》発動で看守から発見されにくくなった状態で、サンディさんと侵入。まず重犯罪者ゾーンを探ってみると、拍子抜けするほど簡単に見つけた。
牢獄内で、さらに足枷をつけられたクラウディアさんが、死んだ目で天井を見ている。サンディさんに看守が来ないか見張ってもらってから、私は鉄格子の外より声をかけた。
「クラウディアさん、アリアですよ。元気ですか?」
クラウディアさんは、私を見てもとくに驚いた様子ではなかった。ただ肩をすくめて、
「元気かと問われると、難しいところじゃな。わらわは、こうして囚われの身じゃし」
「まぁ、足枷をはめられた状態で、バカンスとは言えませんよね…………………………脱獄しますか? お手伝いしますよ」
「うむ。頼む」
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる