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80,王殺しパーティ。
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──10日後。
私は【覇王魔窟】の前にいて、整列している4人に対面していた。
そのメンバーとは、ロクウさん、ベロニカさん、ライオネルさん、サンディさん。
「はい皆さん、カブギルドのブートキャンプにようこそ」
ベロニカさんが挙手。
「アリア。あたし、一応はまだ冒険者ギルドなのだけど?」
「はい、細かいことは気にしないのです」
こんどはライオネルさんが挙手。
「嬢ちゃん。ちゃんと報酬はでるんだろうな? といより、これは一体なにごとだ?」
「これから説明するので、いまは静粛に」
サンディさんが挙手。ちなみにサンディさんとは、15歳の乙女であり、修道服を着ているのは、修道女だからだ。コスプレでは、ない。
「あ、あ、あの……あの?」
「サンディさんも、いまお話ししますからね。
こほん。えー、いいですか皆さん。私はソロプレイが好きなのです。独りで攻略し、独りでコツコツと己と武器を強化していくのが。そんな私が、こうしてパーティを結成しようとしている。それがどれだけ凄まじいことなのか、そこを理解していただきたいのです。
そうすると、事の重大さが分かるでしょう。つまり、私の【覇王魔窟】攻略ライフの危機──ではなく、アーテル国の危機です! 我が祖国の危急存亡のときなのです!」
10日前。
995階の〈攻略不可能体〉である〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉に精神的敗北(すなわち勇気ある撤退)をした。
その翌日。国王がバルコニーから民に挨拶するというので、私も広場に行ってみた。
そしてアーテル国王を眺めながら、〈魔物図鑑:視覚版〉を発動。しばしの妨害を受けたあと、国王に重なるようにして〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉と出た。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は、私に明かしたプランを有言実行したわけだ。
すなわち、王に成り代わってしまった。
そうして、王の記憶と人格も入手した上で、すっかり王として振る舞い、王妃に肩までまわしている。
この事実は、確かに公表するべきではない。
そこでは私は、静観することにした。
考えてみると、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の政策が、王よりも酷いものになるとは限らない。魔物だからダメというのは、魔物差別である。案外、良い国になるかも?
ところが──一昨日のことだ。
ロクウさんが得た極秘情報によると、王(つまり〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉)は、秘密裡に侵略計画を練り、各地の軍を集めようとしているそうだ。
すなわち、ラザ帝国領土への侵攻である。
そんなことをすれば、当然ながらラザ帝国と大戦勃発。戦争状態となっては、私の【覇王魔窟】攻略ライフに大いなる悪影響を与えることになる。
ダメです。それは、いかんのです。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉にはガッカリした、というのが正直なところ。王よりまともな政策を期待したが、やはり魔物か。どうせ『ヒマつぶし』とかで、戦争状態でも起こそうというのだろうが、民草にはいい迷惑だ。
止めねばならない。
しかし王の臣下に、『今の王は王ではなく、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉なのだ』と警告しても、火に油。
まず〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が成り代わっていると証明することが難題。私も〈魔物図鑑:視覚版〉がなければ見分けがつかないし、〈魔物図鑑:視覚版〉は貸せるものでもないし(たとえ貸せても、その情報を信じてくれるかは疑問)。
いや、おそらく私の言葉を信じる者も出てくるだろう。だがそうなると『王は王と信じる』勢力と、『王は〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉と信じる』勢力による争い、すなわち内戦となる。
内戦状態も、やはり私の【覇王魔窟】攻略ライフに悪影響である。もちろんアーテル国の罪なき民にも!(忘れていませんよー!)。
では、どうするのか?
殺すのである。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉を殺す。殺せば《擬態遊戯》スキルは解除され、正体を現すだろう。
その上で、新たな信用のできる王を戴冠させる。現在、王位継承権68位である、我らがミリカさんを!
ちなみにミリカさんには、この計画は内緒です。
さて、プランは決まった。あとは実行するため戦力を上げることだ。
敵は〈攻略不可能体〉である。私は、自身の武装Lv.を5000までは上げる必要を感じている。最低でも、だ。
そして、これは私一人では成し得ない。仲間が必要だ。
王殺しのパーティが、必要なのだ。
メンバーは、まず強化武器タイプのみ。〈開華のタネ〉スキルツリー覚醒者とは違い、武装Lv.上限が9999の者たち。
その上で、まずベロニカさんと、ロクウさんは決定。また、以前はルドル卿に雇われていた〈挑戦者ディファイアンス〉のライオネルさんも(〈攻略不可能体〉のことを最初に教えてくれた人でもある)。
私も含めて、この4人で、王殺しパーティだ。
ベロニカさんたちも、武装Lv.は最低1000以上まで。すなわち4桁の領域には突入してもらいたい。
そして全員で武装Lv.を爆上げするためにも、地下迷宮〈死の楽園〉へとこれから乗り込むのである。これが、カブギルドのブートキャンプですっっっ!
あ、それとサンディさん。
私たちが【覇王魔窟】を目指して出発するとき、王都の教会から出てきたのを見つけた。装備している聖杖が強化武器だったので、拉致───ではなく、スカウト。いまは『戦力は多いにこしたことなし』で、パーティメンバーになってもらった。
「皆さん。レベル上げを頑張って、一致団結し、王を殺しましょうっっ!! えいえいおー!!!」
「「「「えいえいおー!!」」」」
あれ、サンディさん、泣いてる?
私は【覇王魔窟】の前にいて、整列している4人に対面していた。
そのメンバーとは、ロクウさん、ベロニカさん、ライオネルさん、サンディさん。
「はい皆さん、カブギルドのブートキャンプにようこそ」
ベロニカさんが挙手。
「アリア。あたし、一応はまだ冒険者ギルドなのだけど?」
「はい、細かいことは気にしないのです」
こんどはライオネルさんが挙手。
「嬢ちゃん。ちゃんと報酬はでるんだろうな? といより、これは一体なにごとだ?」
「これから説明するので、いまは静粛に」
サンディさんが挙手。ちなみにサンディさんとは、15歳の乙女であり、修道服を着ているのは、修道女だからだ。コスプレでは、ない。
「あ、あ、あの……あの?」
「サンディさんも、いまお話ししますからね。
こほん。えー、いいですか皆さん。私はソロプレイが好きなのです。独りで攻略し、独りでコツコツと己と武器を強化していくのが。そんな私が、こうしてパーティを結成しようとしている。それがどれだけ凄まじいことなのか、そこを理解していただきたいのです。
そうすると、事の重大さが分かるでしょう。つまり、私の【覇王魔窟】攻略ライフの危機──ではなく、アーテル国の危機です! 我が祖国の危急存亡のときなのです!」
10日前。
995階の〈攻略不可能体〉である〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉に精神的敗北(すなわち勇気ある撤退)をした。
その翌日。国王がバルコニーから民に挨拶するというので、私も広場に行ってみた。
そしてアーテル国王を眺めながら、〈魔物図鑑:視覚版〉を発動。しばしの妨害を受けたあと、国王に重なるようにして〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉と出た。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は、私に明かしたプランを有言実行したわけだ。
すなわち、王に成り代わってしまった。
そうして、王の記憶と人格も入手した上で、すっかり王として振る舞い、王妃に肩までまわしている。
この事実は、確かに公表するべきではない。
そこでは私は、静観することにした。
考えてみると、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の政策が、王よりも酷いものになるとは限らない。魔物だからダメというのは、魔物差別である。案外、良い国になるかも?
ところが──一昨日のことだ。
ロクウさんが得た極秘情報によると、王(つまり〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉)は、秘密裡に侵略計画を練り、各地の軍を集めようとしているそうだ。
すなわち、ラザ帝国領土への侵攻である。
そんなことをすれば、当然ながらラザ帝国と大戦勃発。戦争状態となっては、私の【覇王魔窟】攻略ライフに大いなる悪影響を与えることになる。
ダメです。それは、いかんのです。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉にはガッカリした、というのが正直なところ。王よりまともな政策を期待したが、やはり魔物か。どうせ『ヒマつぶし』とかで、戦争状態でも起こそうというのだろうが、民草にはいい迷惑だ。
止めねばならない。
しかし王の臣下に、『今の王は王ではなく、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉なのだ』と警告しても、火に油。
まず〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が成り代わっていると証明することが難題。私も〈魔物図鑑:視覚版〉がなければ見分けがつかないし、〈魔物図鑑:視覚版〉は貸せるものでもないし(たとえ貸せても、その情報を信じてくれるかは疑問)。
いや、おそらく私の言葉を信じる者も出てくるだろう。だがそうなると『王は王と信じる』勢力と、『王は〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉と信じる』勢力による争い、すなわち内戦となる。
内戦状態も、やはり私の【覇王魔窟】攻略ライフに悪影響である。もちろんアーテル国の罪なき民にも!(忘れていませんよー!)。
では、どうするのか?
殺すのである。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉を殺す。殺せば《擬態遊戯》スキルは解除され、正体を現すだろう。
その上で、新たな信用のできる王を戴冠させる。現在、王位継承権68位である、我らがミリカさんを!
ちなみにミリカさんには、この計画は内緒です。
さて、プランは決まった。あとは実行するため戦力を上げることだ。
敵は〈攻略不可能体〉である。私は、自身の武装Lv.を5000までは上げる必要を感じている。最低でも、だ。
そして、これは私一人では成し得ない。仲間が必要だ。
王殺しのパーティが、必要なのだ。
メンバーは、まず強化武器タイプのみ。〈開華のタネ〉スキルツリー覚醒者とは違い、武装Lv.上限が9999の者たち。
その上で、まずベロニカさんと、ロクウさんは決定。また、以前はルドル卿に雇われていた〈挑戦者ディファイアンス〉のライオネルさんも(〈攻略不可能体〉のことを最初に教えてくれた人でもある)。
私も含めて、この4人で、王殺しパーティだ。
ベロニカさんたちも、武装Lv.は最低1000以上まで。すなわち4桁の領域には突入してもらいたい。
そして全員で武装Lv.を爆上げするためにも、地下迷宮〈死の楽園〉へとこれから乗り込むのである。これが、カブギルドのブートキャンプですっっっ!
あ、それとサンディさん。
私たちが【覇王魔窟】を目指して出発するとき、王都の教会から出てきたのを見つけた。装備している聖杖が強化武器だったので、拉致───ではなく、スカウト。いまは『戦力は多いにこしたことなし』で、パーティメンバーになってもらった。
「皆さん。レベル上げを頑張って、一致団結し、王を殺しましょうっっ!! えいえいおー!!!」
「「「「えいえいおー!!」」」」
あれ、サンディさん、泣いてる?
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