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74,人体素材。
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〈呪殺返しのキュウリ〉の効果は、
『食すことで、《呪殺返し》スキルを会得できる。これは自らにかけられた呪いスキルを、そのまま発動者に跳ね返すスキル。このとき自らにかかっていた呪いは、無効化される』。
さっそく〈呪殺返しのキュウリ〉を食し、《呪殺返し》スキルを獲得。だけど、まだ使わない。
「ベロニカさん、視界のカウントダウンをお願いします」
「えーと、まってね、いまは98、97」
そこから、私は脳内で続けつつ、単身《操縦》で飛翔。空の高みから、周囲を見下ろす。
いない、どこにも発動者らしき者がいない。
つまらない。それは、つまらない。つまらないっっっ!
ふと影が見えた。私が先ほどまでいた場所──〈のっぺらぼう〉に飛翔能力はないようで、まだそこにいる──から、5ブロックほどの距離。建物を遮蔽物にするようにして、誰かがいる。
私は急降下し、滑り込むようにして着地。遮蔽物の陰にいた男が、ビクッとした。なんだ、補佐官のベルトさんか。
「ベルトさん。あなたが呪いスキルの発動者だったのですね。しかし、なにが目的ですか? なにかあるでしょう、なにか」
私に正体を見破られ、つかのまベルトさんは驚き、焦っていた。だがすぐに勝ち誇ってみせる。
「僕の正体が分かったところで、もう遅い。君はあと、数十秒で死ぬのだからなぁ!」
私はベルトさんを指さし、にこっと笑いかけてから、《呪殺返し》を発動。
さすがに己の呪いスキルが丸ごと返ってきたので、ベルトさんも分かったようだ。いきなり叫び出す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なぜ僕に、《顔のない呪い》がぁぁぁぁぁ!!??」
〈のっぺらぼう〉を用いた呪いスキルの正式名称が、《顔のない呪い》というのかぁ。ふーん。あと50秒もないね。
「解除だ、解除だぁぁあ! うわぁぁぁぁなんで解除できないんだぁぁぁぁあ!?!」
と、頭をかきむしりながら叫びに叫ぶベルトさん。それはそうだろう。いま《顔のない呪い》の主導権は、私が握っているのだから。《呪殺返し》によって、ある意味では《顔のない呪い》を乗っ取ったと同じことなのだ。
そのことを伝えると、ベルトさんが土下座してきた。額を地面にガンガン叩きつけるようにして、頭を下げまくってくる。
「お゛お゛お゛お゛願いじまぁぁぁぁす助けてぇぇぇぇ助けてくだざぁぁぁぁぁぁ!!!」
ふむ。ベルトさんには、いろいろと聞きたいことがある。イズラ卿を不死者に仕立てあげたのは、なにも酔狂というわけではあるまい。
何か目的があってのことだ。
私は、それは陽動ではないかと思っている。王に対して、さらに宮廷に対しての陽動ではないかと。その点を聞き出すまでは、ベルトさんには死んでもらっては困る。
「分かりました。いま解除しますからね」
涙と鼻水を流しつつも、安堵した様子のベルトさん。
「ああぁぁぁぁぁありがとうございまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!」
「さてと解除……解除、解除、ふむ、まってくださいね、解除……………あの、解除って、どうやるんですか?」
ベルトさん、絶望の叫び。
「なんじゃそりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 解除は解除だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 解除しろよボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
あー、これ解除できないんだ。
おそらくカウントダウンが始まったら、もう後戻りはできないスキル。それこそ呪いという名にふさわしい。
ベルトさんは、これまで解除しようとしたことがないのだろう。だから己のスキルでありながら、もう解除不可ということを知らない。
そんなベルトさんは、「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫び、取り乱し、嘆き悲しんでいた。
うーむ。このまま死なすのは気の毒だ。死ぬのならば、心穏やかに死んでほしい。私にできることは、なんだろう?
よし、歌おう。
「らんらんららららんらんらんらーーーん♪♪♪」
ベルトさん、凍り付く。
「…………なに、して、いるんだ?」
「はい、和むかと思いまして。私、歌には自信があるんですが?」
「ふっっっっっっっっっっっっっっっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアァアァァァア!!!!」
ばたんと、ベルトさんが倒れる。
ご臨終です。
死体を眺めていたら、ふいに体が動いていた。
まずベルトさんの死体を裸にする。それから魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を繊細に動かし、ベルトさんの皮を剥ぐ。
いや、皮じゃない。もっと内部だ。胴体をY字切開して、内臓を取り出していきましょう。そして、心臓を引き抜いたとき、それが赤い粒子となり、〈スーパーコンボ〉に降り注ぐ。
瞬間、〈スーパーコンボ〉のスキルツリーに、新たな領域【呪術領域】が生まれた。
「おお、〈スーパーコンボ〉の新たな力。ありがとうございます、ベルトさんっっ!!」
ベルトさんの衣服を、探る。隠しポケットから、メッセージカードが出てきた。
『贖い日 時刻鐘が23回鳴ったとき ストル庭園にて S』
贖いの日は、古い暦であり、たしか21日後。
時刻鐘が23回は、夜の11時。ただしストル庭園というのが、どこかは分からない。
とにかくそのストル庭園で、『S』という人が待っているようだ。
ベルトさんは、イズラ卿を陽動にして、何か企んでいた。この『S』という人を問いただせば、何か分かるのかもしれない。
だけど、私は無視してもいいんだよね。
別に、贖いの日にストル庭園へと行き、『S』という人を見つける必要はない。人生がゲームならば、これはサブイベントみたいなものだもの。無視してもいいし、続けてみてもいい。
さて、どうしたものかな。まぁ、まだ先の話だし、ゆっくりと決めよう。
唸り声がしたので見てみると、3匹の野良犬が、ベルトさんの死体に食らいついていた。
ほほえましく思って、私は言った。
「ワンちゃん、ゆっくり食べないと、喉につまらせますよー」
『食すことで、《呪殺返し》スキルを会得できる。これは自らにかけられた呪いスキルを、そのまま発動者に跳ね返すスキル。このとき自らにかかっていた呪いは、無効化される』。
さっそく〈呪殺返しのキュウリ〉を食し、《呪殺返し》スキルを獲得。だけど、まだ使わない。
「ベロニカさん、視界のカウントダウンをお願いします」
「えーと、まってね、いまは98、97」
そこから、私は脳内で続けつつ、単身《操縦》で飛翔。空の高みから、周囲を見下ろす。
いない、どこにも発動者らしき者がいない。
つまらない。それは、つまらない。つまらないっっっ!
ふと影が見えた。私が先ほどまでいた場所──〈のっぺらぼう〉に飛翔能力はないようで、まだそこにいる──から、5ブロックほどの距離。建物を遮蔽物にするようにして、誰かがいる。
私は急降下し、滑り込むようにして着地。遮蔽物の陰にいた男が、ビクッとした。なんだ、補佐官のベルトさんか。
「ベルトさん。あなたが呪いスキルの発動者だったのですね。しかし、なにが目的ですか? なにかあるでしょう、なにか」
私に正体を見破られ、つかのまベルトさんは驚き、焦っていた。だがすぐに勝ち誇ってみせる。
「僕の正体が分かったところで、もう遅い。君はあと、数十秒で死ぬのだからなぁ!」
私はベルトさんを指さし、にこっと笑いかけてから、《呪殺返し》を発動。
さすがに己の呪いスキルが丸ごと返ってきたので、ベルトさんも分かったようだ。いきなり叫び出す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なぜ僕に、《顔のない呪い》がぁぁぁぁぁ!!??」
〈のっぺらぼう〉を用いた呪いスキルの正式名称が、《顔のない呪い》というのかぁ。ふーん。あと50秒もないね。
「解除だ、解除だぁぁあ! うわぁぁぁぁなんで解除できないんだぁぁぁぁあ!?!」
と、頭をかきむしりながら叫びに叫ぶベルトさん。それはそうだろう。いま《顔のない呪い》の主導権は、私が握っているのだから。《呪殺返し》によって、ある意味では《顔のない呪い》を乗っ取ったと同じことなのだ。
そのことを伝えると、ベルトさんが土下座してきた。額を地面にガンガン叩きつけるようにして、頭を下げまくってくる。
「お゛お゛お゛お゛願いじまぁぁぁぁす助けてぇぇぇぇ助けてくだざぁぁぁぁぁぁ!!!」
ふむ。ベルトさんには、いろいろと聞きたいことがある。イズラ卿を不死者に仕立てあげたのは、なにも酔狂というわけではあるまい。
何か目的があってのことだ。
私は、それは陽動ではないかと思っている。王に対して、さらに宮廷に対しての陽動ではないかと。その点を聞き出すまでは、ベルトさんには死んでもらっては困る。
「分かりました。いま解除しますからね」
涙と鼻水を流しつつも、安堵した様子のベルトさん。
「ああぁぁぁぁぁありがとうございまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!」
「さてと解除……解除、解除、ふむ、まってくださいね、解除……………あの、解除って、どうやるんですか?」
ベルトさん、絶望の叫び。
「なんじゃそりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 解除は解除だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 解除しろよボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
あー、これ解除できないんだ。
おそらくカウントダウンが始まったら、もう後戻りはできないスキル。それこそ呪いという名にふさわしい。
ベルトさんは、これまで解除しようとしたことがないのだろう。だから己のスキルでありながら、もう解除不可ということを知らない。
そんなベルトさんは、「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫び、取り乱し、嘆き悲しんでいた。
うーむ。このまま死なすのは気の毒だ。死ぬのならば、心穏やかに死んでほしい。私にできることは、なんだろう?
よし、歌おう。
「らんらんららららんらんらんらーーーん♪♪♪」
ベルトさん、凍り付く。
「…………なに、して、いるんだ?」
「はい、和むかと思いまして。私、歌には自信があるんですが?」
「ふっっっっっっっっっっっっっっっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアァアァァァア!!!!」
ばたんと、ベルトさんが倒れる。
ご臨終です。
死体を眺めていたら、ふいに体が動いていた。
まずベルトさんの死体を裸にする。それから魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を繊細に動かし、ベルトさんの皮を剥ぐ。
いや、皮じゃない。もっと内部だ。胴体をY字切開して、内臓を取り出していきましょう。そして、心臓を引き抜いたとき、それが赤い粒子となり、〈スーパーコンボ〉に降り注ぐ。
瞬間、〈スーパーコンボ〉のスキルツリーに、新たな領域【呪術領域】が生まれた。
「おお、〈スーパーコンボ〉の新たな力。ありがとうございます、ベルトさんっっ!!」
ベルトさんの衣服を、探る。隠しポケットから、メッセージカードが出てきた。
『贖い日 時刻鐘が23回鳴ったとき ストル庭園にて S』
贖いの日は、古い暦であり、たしか21日後。
時刻鐘が23回は、夜の11時。ただしストル庭園というのが、どこかは分からない。
とにかくそのストル庭園で、『S』という人が待っているようだ。
ベルトさんは、イズラ卿を陽動にして、何か企んでいた。この『S』という人を問いただせば、何か分かるのかもしれない。
だけど、私は無視してもいいんだよね。
別に、贖いの日にストル庭園へと行き、『S』という人を見つける必要はない。人生がゲームならば、これはサブイベントみたいなものだもの。無視してもいいし、続けてみてもいい。
さて、どうしたものかな。まぁ、まだ先の話だし、ゆっくりと決めよう。
唸り声がしたので見てみると、3匹の野良犬が、ベルトさんの死体に食らいついていた。
ほほえましく思って、私は言った。
「ワンちゃん、ゆっくり食べないと、喉につまらせますよー」
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