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60,地獄の収穫モード。

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 建物の外に出て、本拠地内を歩いていく。逃げ惑う私のギルド員たち。その向こうでは、壊滅ギルドの下っ端たちが仮設住宅などに火をつけている。

 一方、壊滅ギルドの幹部格たちと戦っていたロクウさんが吹き飛ばされ、私の足元まで転がってきた。

「ロクウさん、ご苦労様です」

「せ、先生! お恥ずかしいところをお見せしました──しかしながら、壊滅ギルドという連中、どうやら実力は本物のようで」

「そのようですね。ロクウさんを手こずらせるなんて」

 私は前に進み、壊滅ギルドの幹部さんたちと対峙。
 なるほど。彼らが〈挑戦者(ディファイアンス)〉のパーティであることは、明確だ。5人という数からしても、それぞれに役割分担されていることが、戦わずとも明らかなことからも。
 確かに、この5人相手では、ロクウさんも苦戦せざるをえない。

 壊滅ギルド幹部の中央にいる者、つまりギルドマスターの男が言った。

「お前が、この女戦士ギルドのギルマスか。『女戦士』といいつつ、なぜか戦っていたのは、刀をもった男だったがな。いずれにせよ、お前たちに未来はない。大人しく、俺たちに狩られろ。安心しろ。見目のよい女とガキは、殺さずに奴隷商に売ってやるからな。はっはっはっはっ」

「あのですね、聞いてください。私はカブ畑を栽培しているだけで幸せだったんです。いえ、違いますね。一部不満があったのです。この国では、同性婚ができない、なんてバグがあるのか、と。セシリアちゃんと新婚ライフが送れないなんてと。
 そこで私は、【覇王魔窟】完全攻略に挑んだわけです。そして、それからさまざまな出会いがありました。今でも私は、ソロプレイこそが至高というスタンスでいます。しかしながら、必ずしもそれだけが人生ではないということも理解しました。
 私はいま、このギルドの長を務めているわけです。ギルドメンバーに責任があるのです。ですから、ここは黙って引き下がってくれませんか?」

 壊滅ギルドの幹部さんたち、そろって大爆笑。私は、よくよく人を笑わせるのが得意らしい。
 壊滅のギルマスさんが言う。

「バァァカか、お前は? 命乞いしたら、お前は生かしておいてやろう。顔の半分がグロいが、まぁスタイルは悪くないし、貴族の中には物好きがいるからな。立派な性奴隷として働けよ」

「私は、入りたくないのです。かつて、いまは亡きパパが命名した、に。『地獄の収穫モード』には。だから、お願いします、部下を連れて帰ってください」

 あれは8歳のとき。
 いまは亡きパパと、パパのお友達のロソンさんという人のジャガイモ畑へ、収穫の手伝いに行った。ところがそのジャガイモ畑、広大も広大。うちのカブ畑とは比較にならない規模。
 これはのんびりと収穫していたら、終わらないぞ。
 その切迫さが、私に異常な集中力を与えた。

 無心になる。無心になる。無心になって収穫するのだ。
 気づけば、収穫は終わり、山となったジャガイモのそばに私は立っていた。そしてパパとロソンさんが、呆然としている。
 パパが言うには、私がすべてのジャガイモを、有り得ぬ速度と正確さで収穫していったのだという。パパは、そのとき言ったものだ。

 ──「アリアの収穫への異常な集中力は、人外の域だ。まるで『地獄の収穫モード』だなぁ」

 そしていま、入りそう。
 ああ、ダメだ。もう入ってしまう。『地獄の収穫モード』に。
 
《怠惰心地》を発動。
 世界の時の流れが緩慢になる。その中を全力疾走すれば、他者から見たら神速移動と同じこと。
 壊滅のギルマスさんは、驚愕の表情を浮かべるくらいはできた。だが防御する時間はないのだ。その顔を、首のところから《爆雷舞》をぶち当て、爆砕。
 引きちぎれた生首を、私はキャッチ。

 生首一個目、収穫。

 ひとまず《怠惰心地》を解除し、他の壊滅ギルドの幹部さんたちを見る。彼らはまず、私を見て、私が手にしているギルマスさんの生首を見た。

「……な、な、なんでだぁぁぁぁボガぁぁぁぁツ!!」
「ボガーツがぁぁ、どうしてぇぇぇこんなことにいぃぃ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「てめぇぇ、このクソ女ぁぁぁ、俺たちのギルマスになんてことしてくれてんだぁぁぁぁあ!!」

 ボガーツ? ああ、この生首のギルマスさんのことか。
 まぁいいや。もっと収穫しなければ、収穫を。再度、『地獄の収穫モード』に入る。幹部さんたちの生首を《爆雷舞》で粉砕していき、収穫、収穫、収穫。

 しかし最後の幹部さん、唯一の女性さんの前で、いったん《怠惰心地》を解除。

「はい?」

「ま、まままままって。あの、わたし、ボガーツの子供が、お腹にいるの。だから命だけは助けて!!」

「本当ですか?」

 真偽を確かめるため、その人の腹を裂いて、子宮の中を確認。空っぽだ。嘘つきさんだなぁ、もう。
 生首粉砕。収穫。

 それから、私は周囲を見回す。壊滅ギルドの一般ギルドメンバーは、ざっと180人はいる。彼らは全員が武装し、私のギルドメンバーを襲っている。
 なかにはレイプしている人たちも。

 私は、彼らを収穫しないといけない。
 改めて『地獄の収穫モード』へ。同時に《怠惰心地》発動。一般の壊滅ギルド員は《爆雷舞》を使うまでもなさそう。通常攻撃で、その生首を収穫できそうだ。
 頑張るぞい。

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫」

「ひぃぃぃぃぃぃなんだいきなりぃぃぃた、た助けてぇぇぇぇ!!」「やだぁぁやだぁぁぁぁ死にたくなぃよぉぉぉ!!」「ママぁぁぁぁぁ!!」「ま、まままてください、もうやりませんから命だけはぁあ!!」「ああぁぁなんでぇぇ、なんでぇぇみんなの首が飛んでいくのぉぉぉぉ!!!」

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫」

「もうじまぜんから許してぇぇぇ!!」「好きで入ったギルドじゃないんでずぅぅうだからあぁ!!」「殺さないで殺さないで殺さないで殺さないでぇぇぇぇ!!」「なんでぇぇえレイプしただけじゃんんんんん誰も殺してないじゃんんんんんん!!!」「やだぁぁぁぁぁぁ死ぬのはやだぁぁぁあ!!」「死にたくないです死にたくないで死にたくないですぅぅぅぅ!!」「ごめんなざぁぁぁぃぃぃぃぃぃぃぃぃああぁぁぁぁやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫…………………」

 気づくと、収穫を終えていた。私のそばには、壊滅ギルドの皆さんの生首が、うずたかく積もっていた。生首の山。

 私は額の汗をぬぐった。さわやかだ。

「これが労働の歓びですっっ!!」
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