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24,ベロニカ論。
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ベロニカさんの説得によって、私も冒険者ギルドのパーティの皆さんと行動を共にすることになった。
これは嬉しいことなのでしょうか問題。
正直、ソロプレイを望む身としては、別に嬉しくはない。逆に迷惑。しかしながら、これもカブ畑が霜で凍ってダメになってしまったと知った冬の朝と同じ。
こういうことも、あるのです。
「ベロニカさん。バルク盗賊団にはお知り合いでも? 先ほどの『あいつ』という言い方に、何やら含みがありましたが」
「そ。ちょっとした知り合いがねぇ~」
と、話しながら、ベロニカさんが抱き着き歩きをしている。すなわち、私に抱きつきながら歩くという、器用な芸当を。
私としては、ベロニカさんのいい匂いに包まれつつも、さすがに邪魔だな、とも思ってしまうのだった。
ちなみにベロニカさんの隣では、大鎌が自立歩行していた。
「ベロニカさんも、武器強化型なんですか?」
必ずしも武器が自立歩行しているからといって、武器強化タイプとは限らない。つまり自身がスキルツリー覚醒し、そのスキルのひとつに『自分の武器を自由に操る』というものがあるのかもしれないし。
ただベロニカさんは、肯定した。
「そう、アリアちゃんと同じかなぁ~」
それから私の耳元で甘く囁く。別に甘さとは関係のない内容を。
「うちのリーダーは、ジョンソン君というんだけどね。見たとおりの堅物。だけど実力はそこそこあるよ。けどね、彼は残念ながら、〈開華のタネ〉でスキルツリーに目覚めたくちでね」
どうやら耳元で囁いているのは、この話をジョンソンさんに聞かせたくないかららしい。ということで、私も小声で尋ねた。
「はぁ。ですけど、それって残念なことなんですか?」
「ふふん。気づいてた? 〈開華のタネ〉でスキルツリーに覚醒した者は、強化武器、つまり『魔素を取り込みそれ自体がスキルツリーを覚醒させた』武器を、装備することはできない。反発が起きるんだね」
「だけど、当人がスキルツリーを覚醒させたほうが、なんというか、凄いのでは?」
「素人の感覚だと、そうかもねぇ。だけど実際は違うんだなぁ。
スキルツリーには、それぞれの素質や遺伝子などなどが関係してくる。それは当然だよね。そして全般的にいって、人間自体が開拓できるスキルツリーには限度がある。
たとえば強化武器には、武装Lv.があるよねぇ。上限は999とも言われている。そしてレベルが上がるごとに、スキルポイントを得られる。
人間自体の場合、Lv.と言う概念はないんだよね。修練を極めたり、戦闘の経験を得て、ちびちびとスキルポイントが貯まるわけ。
けどね、ある研究によると、仮に人間にLv.の概念をあてはめたとしたら、上限は99だと言われている。分かるかな? 武器強化の上限の111分の11で、人間は成長が終わるわけ。よって解放できるスキルツリーパネルも、111分の11どまり。
スキルツリーは開拓すればするほど、どんどん凄い代物が出てくるのはアリアちゃんも承知の通り。ね? この世界では、真の猛者たちは、みなが強化武器を装備できる『自力ではスキルツリーを覚醒できなかった者たち』なんだよ。面白いよね」
ベロニカさんのオトナの匂いにくらくらしていたので、話はあんまり入ってこなかった。そんなこんなで、先へと進み。
先頭を行くパーティリーダーのジョンソンさんが、手の合図でみなを止めた。それから、やはり手振りで指示を出す。
どうやらバルク盗賊団のアジトである貴族の屋敷に到着したようだ。パーティメンバーには、屋敷を取り囲むため散開させようとしているわけか。つまり、敵の逃げ場をなくそうと。
うーん。素人ながら、それはどうかと思う。バルク盗賊団に『ヤバい敵』がいるのなら、ここはパーティを離ればなれにさせるべきではない。パーティ強度を下げずに挑むべきだ。
まぁ、ソロプレイ好きの私としては、あんまり関係のない話だけど。
「じゃあね、アリアちゃん。アリアちゃんは、ここから動かないよーに」
ベロニカさんが私の耳元でそう囁いて、ジョンソンさんの指示どおりに行ってしまった。えー、結局、私はここで『留守番』かぁ。
まぁこのパーティのメンバーではないのだから、ヘタに混ざると足手まといになっちゃうかもだし。とりあえず、ここで待機しています。
ジョンソンさんがちらっと私を見て、私がヘタに動くつもりがないことを確認。ひとつうなずくと、ジョンソンさん自身も、バルク盗賊団のアジトへ向かった。
あ、蚊に刺された。かゆい。
しばらくして、バルク盗賊団のアジトから戦闘の音が響き渡ってきた。カブ畑虐殺の罪をつぐなってもらいに来たけど、どうやら冒険者ギルドが、かわりに仕事をしてくれるようだ。
などと考えていたら、一人の男がアジトの屋敷から駆けて逃げだしてくる。その男は、影の中をジャンプして移動していた。〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じようなスキルのようだ。
ところで、影というのは、伝導率が良いらしい。そこで私は、〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じ攻略手段を取った。
影に向かって、《雷打》を叩き込んだのだ。
激しい雷撃が影を走り、その男を弾き飛ばした。私はそこへ駆けていく。その男はまだ意識があるようで、立ちあがり、私へと殺意を向けてくる。
「貴様。このオレ様が誰か分かっているのか? バルク盗賊団が団長、バルク様だぞ!」
「………………カブ畑」
「あぁ? なんだと??」
「カブ畑の恨みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「な、なんだ、コイツはぁぁぁぁぁ!!?!」
これは嬉しいことなのでしょうか問題。
正直、ソロプレイを望む身としては、別に嬉しくはない。逆に迷惑。しかしながら、これもカブ畑が霜で凍ってダメになってしまったと知った冬の朝と同じ。
こういうことも、あるのです。
「ベロニカさん。バルク盗賊団にはお知り合いでも? 先ほどの『あいつ』という言い方に、何やら含みがありましたが」
「そ。ちょっとした知り合いがねぇ~」
と、話しながら、ベロニカさんが抱き着き歩きをしている。すなわち、私に抱きつきながら歩くという、器用な芸当を。
私としては、ベロニカさんのいい匂いに包まれつつも、さすがに邪魔だな、とも思ってしまうのだった。
ちなみにベロニカさんの隣では、大鎌が自立歩行していた。
「ベロニカさんも、武器強化型なんですか?」
必ずしも武器が自立歩行しているからといって、武器強化タイプとは限らない。つまり自身がスキルツリー覚醒し、そのスキルのひとつに『自分の武器を自由に操る』というものがあるのかもしれないし。
ただベロニカさんは、肯定した。
「そう、アリアちゃんと同じかなぁ~」
それから私の耳元で甘く囁く。別に甘さとは関係のない内容を。
「うちのリーダーは、ジョンソン君というんだけどね。見たとおりの堅物。だけど実力はそこそこあるよ。けどね、彼は残念ながら、〈開華のタネ〉でスキルツリーに目覚めたくちでね」
どうやら耳元で囁いているのは、この話をジョンソンさんに聞かせたくないかららしい。ということで、私も小声で尋ねた。
「はぁ。ですけど、それって残念なことなんですか?」
「ふふん。気づいてた? 〈開華のタネ〉でスキルツリーに覚醒した者は、強化武器、つまり『魔素を取り込みそれ自体がスキルツリーを覚醒させた』武器を、装備することはできない。反発が起きるんだね」
「だけど、当人がスキルツリーを覚醒させたほうが、なんというか、凄いのでは?」
「素人の感覚だと、そうかもねぇ。だけど実際は違うんだなぁ。
スキルツリーには、それぞれの素質や遺伝子などなどが関係してくる。それは当然だよね。そして全般的にいって、人間自体が開拓できるスキルツリーには限度がある。
たとえば強化武器には、武装Lv.があるよねぇ。上限は999とも言われている。そしてレベルが上がるごとに、スキルポイントを得られる。
人間自体の場合、Lv.と言う概念はないんだよね。修練を極めたり、戦闘の経験を得て、ちびちびとスキルポイントが貯まるわけ。
けどね、ある研究によると、仮に人間にLv.の概念をあてはめたとしたら、上限は99だと言われている。分かるかな? 武器強化の上限の111分の11で、人間は成長が終わるわけ。よって解放できるスキルツリーパネルも、111分の11どまり。
スキルツリーは開拓すればするほど、どんどん凄い代物が出てくるのはアリアちゃんも承知の通り。ね? この世界では、真の猛者たちは、みなが強化武器を装備できる『自力ではスキルツリーを覚醒できなかった者たち』なんだよ。面白いよね」
ベロニカさんのオトナの匂いにくらくらしていたので、話はあんまり入ってこなかった。そんなこんなで、先へと進み。
先頭を行くパーティリーダーのジョンソンさんが、手の合図でみなを止めた。それから、やはり手振りで指示を出す。
どうやらバルク盗賊団のアジトである貴族の屋敷に到着したようだ。パーティメンバーには、屋敷を取り囲むため散開させようとしているわけか。つまり、敵の逃げ場をなくそうと。
うーん。素人ながら、それはどうかと思う。バルク盗賊団に『ヤバい敵』がいるのなら、ここはパーティを離ればなれにさせるべきではない。パーティ強度を下げずに挑むべきだ。
まぁ、ソロプレイ好きの私としては、あんまり関係のない話だけど。
「じゃあね、アリアちゃん。アリアちゃんは、ここから動かないよーに」
ベロニカさんが私の耳元でそう囁いて、ジョンソンさんの指示どおりに行ってしまった。えー、結局、私はここで『留守番』かぁ。
まぁこのパーティのメンバーではないのだから、ヘタに混ざると足手まといになっちゃうかもだし。とりあえず、ここで待機しています。
ジョンソンさんがちらっと私を見て、私がヘタに動くつもりがないことを確認。ひとつうなずくと、ジョンソンさん自身も、バルク盗賊団のアジトへ向かった。
あ、蚊に刺された。かゆい。
しばらくして、バルク盗賊団のアジトから戦闘の音が響き渡ってきた。カブ畑虐殺の罪をつぐなってもらいに来たけど、どうやら冒険者ギルドが、かわりに仕事をしてくれるようだ。
などと考えていたら、一人の男がアジトの屋敷から駆けて逃げだしてくる。その男は、影の中をジャンプして移動していた。〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じようなスキルのようだ。
ところで、影というのは、伝導率が良いらしい。そこで私は、〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じ攻略手段を取った。
影に向かって、《雷打》を叩き込んだのだ。
激しい雷撃が影を走り、その男を弾き飛ばした。私はそこへ駆けていく。その男はまだ意識があるようで、立ちあがり、私へと殺意を向けてくる。
「貴様。このオレ様が誰か分かっているのか? バルク盗賊団が団長、バルク様だぞ!」
「………………カブ畑」
「あぁ? なんだと??」
「カブ畑の恨みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「な、なんだ、コイツはぁぁぁぁぁ!!?!」
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