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12,〈影鰐シャドウアリゲーター〉。
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そして夜が明けた!
というわけでカブ畑に水をやってから、ダンジョン塔【覇王魔窟】に向かった。
今日【覇王魔窟】の外は静かで、ジェシカさんだけがいて釣りをしている。とはいえ【覇王魔窟】周辺には湖も池もない。昨晩雨降りで、大きな水たまりができていて、そこに釣り糸をたらしているジェシカさん。
「釣れますか?」
「やぁ、おはよーさん。釣れるわけがないよね? これ、ただの水たまりだよ」
「水たまりにはピラルクがいるそうですよ。ところでジェシカさん。昨日、〈緊急脱出トンカチ〉が使えなかったんですよ。壊れたのでなければ、一度に使える回数などに制限があるようですが?」
ここで昨日の出来事、女剣士にして伯爵家の令嬢ミリアさんを先に〈緊急脱出トンカチ〉で送り、それに続こうとしたが反応しなかった話をした。
ジェシカさんはうなずいた。
「うん。〈緊急脱出トンカチ〉を使えるのは、一度のチャレンジで一人までさ。たとえばキミが5人パーティで【覇王魔窟】に挑んだ場合、〈緊急脱出トンカチ〉で緊急脱出できるのは一人だけというわけ。ただしパーティ全員が【覇王魔窟】を出たら、〈緊急脱出トンカチ〉も初期化され、また一人だけ使えるようになる。説明しておかなかったのは悪かったけどさ。ソロプレイしている分には、問題ないと思って」
「昨日は例外ですよ。しかし、覚えておきますね。では、さっそく行ってきます」
「うん、頑張って」
1階、2階はサクサク進んだが、3階は少し苦戦。昨日のように《爆打》を使って、〈牙高身魔〉の頭頂部まで飛んで行こうとした。けどこれ、成功率がかなり低い。昨日一発で決まったのは、かなり奇跡的だったらしい。
それでも今日は、たとえ高所から落下しても、解放パネル『使用者の防御力UP』の効果があるので、とくに怪我はしなかった。
ただし〈牙高身魔〉の蹴り攻撃だけは注意。この一撃の破壊力は、『使用者の防御力UP』で防げる範囲を超えているだろうから。
とにかく7回目の挑戦で、やっと〈牙高身魔〉の頭頂部まで上がれた。あとは《爆打》連打の連打で、脳味噌を破壊して殺させていただいた。
4階の〈蠍群魔〉30体を撃破し、さて5階だ。
〈寄生操魔〉さんの登場に期待したけど。まったく違った。熊のような巨躯で、頭部だけ岩でできている、パワー系の丸わかりな魔物だった。
〈魔物図鑑:視覚版〉によると、その名は〈岩頭人〉。
屈んで岩石頭部を突き出すようにして突進してくる。そこで試しに《爆打》を叩き込んだところ、一撃で死んじゃった。
〈スーパーコンボ〉の武装Lv.が8に上がる。
わぁい。
にしても〈岩頭人〉さん、雑魚かったなぁ。ただこれも相性の問題だろうか。《爆打》並みの破壊力抜群な攻撃を持っていないと、苦労するのかも。
ところで、スキルポイントはまだ溜めておこう。私は昔から、小銭を貯めるのとか大好きだった。それに戦闘中に必要になった領域のパネルを解放する、というのも有りな戦略かもだし。
さて、6階。こんどこそ〈寄生操魔〉かなと思ったら──ふむ。誰もいない。無人の6階。ただし7階への階段には結界が張ってある。魔物がいるはずなのだけど、さてどこでしょうか。
ずるずるという音がする。ずるずる? どこからだろう。下のほうから。
足元か。
私が跳躍したのと、私の影の中から鰐型魔物が飛び出してきたのは同時。空中でバランスをとって、《爆打》をぶちあて、〈影鰐〉を一撃抹殺。
続いて7階にいたのは、全身が刃の〈回転刃人〉。無数の飛んでくる回転刃攻撃が、回避するのがけっこう大変だった。
ただし本体の回転刃だけ、他の回転刃と色が違う、この親切設計。まだ下層だしね。というわけで本体の回転刃を〈スーパーコンボ〉で弾いて殺す。
さーて、8階です。8階にいたのは、また〈影鰐〉。ただし今回は、5体もいる。
「うーん、おかしい。〈寄生操魔〉が一向に来ない」
おかしいのはいいけど、ここが苦戦階だった。〈影鰐〉は一体だけだと楽勝だけど、5体も同時に来られると厄介。なんたって影から飛び出して来たときしか攻撃できない。その上、この階層には意図的に作られた影スポットが多い。私自身の影も含めて、どこの影から襲ってくるか読めない。
そして──ついに私は右足を噛まれた。『使用者の防御力UP』の光粒子が発動する──が、〈影鰐〉の噛む力は、こちらの防御力を凌駕。肉が裂け、骨に歯が食い込んでくる。
「あぅぅぅぅぅ!!!」
噛みついてきた〈影鰐〉は、〈スーパーコンボ〉をぶち当て殺すも、残り4体もいる。
ここまでだ。
〈緊急脱出トンカチ〉で緊急脱出。
【覇王魔窟】の外に転がり出ると、釣りをしていたジェシカさんが慌てて駆け寄ってくる。私の右足の状態を見て、「うげっ」と呟いた。
「これは酷い。重傷じゃないか。病院に連れていくから、まずは応急手当だ。止血しよう」
「お願いします。ちょっと余裕ぶってしまいました。8階でやられましたよ」
「とにかく、食いちぎられなくて良かったよ。何度も言うけど、もう〖女神の泉〗は使えないんだからさ」
その後、ジェシカさんに町の病院へ運んでもらった。全治一か月。当分、【覇王魔窟】はお預けかぁ。残念です。
というわけでカブ畑に水をやってから、ダンジョン塔【覇王魔窟】に向かった。
今日【覇王魔窟】の外は静かで、ジェシカさんだけがいて釣りをしている。とはいえ【覇王魔窟】周辺には湖も池もない。昨晩雨降りで、大きな水たまりができていて、そこに釣り糸をたらしているジェシカさん。
「釣れますか?」
「やぁ、おはよーさん。釣れるわけがないよね? これ、ただの水たまりだよ」
「水たまりにはピラルクがいるそうですよ。ところでジェシカさん。昨日、〈緊急脱出トンカチ〉が使えなかったんですよ。壊れたのでなければ、一度に使える回数などに制限があるようですが?」
ここで昨日の出来事、女剣士にして伯爵家の令嬢ミリアさんを先に〈緊急脱出トンカチ〉で送り、それに続こうとしたが反応しなかった話をした。
ジェシカさんはうなずいた。
「うん。〈緊急脱出トンカチ〉を使えるのは、一度のチャレンジで一人までさ。たとえばキミが5人パーティで【覇王魔窟】に挑んだ場合、〈緊急脱出トンカチ〉で緊急脱出できるのは一人だけというわけ。ただしパーティ全員が【覇王魔窟】を出たら、〈緊急脱出トンカチ〉も初期化され、また一人だけ使えるようになる。説明しておかなかったのは悪かったけどさ。ソロプレイしている分には、問題ないと思って」
「昨日は例外ですよ。しかし、覚えておきますね。では、さっそく行ってきます」
「うん、頑張って」
1階、2階はサクサク進んだが、3階は少し苦戦。昨日のように《爆打》を使って、〈牙高身魔〉の頭頂部まで飛んで行こうとした。けどこれ、成功率がかなり低い。昨日一発で決まったのは、かなり奇跡的だったらしい。
それでも今日は、たとえ高所から落下しても、解放パネル『使用者の防御力UP』の効果があるので、とくに怪我はしなかった。
ただし〈牙高身魔〉の蹴り攻撃だけは注意。この一撃の破壊力は、『使用者の防御力UP』で防げる範囲を超えているだろうから。
とにかく7回目の挑戦で、やっと〈牙高身魔〉の頭頂部まで上がれた。あとは《爆打》連打の連打で、脳味噌を破壊して殺させていただいた。
4階の〈蠍群魔〉30体を撃破し、さて5階だ。
〈寄生操魔〉さんの登場に期待したけど。まったく違った。熊のような巨躯で、頭部だけ岩でできている、パワー系の丸わかりな魔物だった。
〈魔物図鑑:視覚版〉によると、その名は〈岩頭人〉。
屈んで岩石頭部を突き出すようにして突進してくる。そこで試しに《爆打》を叩き込んだところ、一撃で死んじゃった。
〈スーパーコンボ〉の武装Lv.が8に上がる。
わぁい。
にしても〈岩頭人〉さん、雑魚かったなぁ。ただこれも相性の問題だろうか。《爆打》並みの破壊力抜群な攻撃を持っていないと、苦労するのかも。
ところで、スキルポイントはまだ溜めておこう。私は昔から、小銭を貯めるのとか大好きだった。それに戦闘中に必要になった領域のパネルを解放する、というのも有りな戦略かもだし。
さて、6階。こんどこそ〈寄生操魔〉かなと思ったら──ふむ。誰もいない。無人の6階。ただし7階への階段には結界が張ってある。魔物がいるはずなのだけど、さてどこでしょうか。
ずるずるという音がする。ずるずる? どこからだろう。下のほうから。
足元か。
私が跳躍したのと、私の影の中から鰐型魔物が飛び出してきたのは同時。空中でバランスをとって、《爆打》をぶちあて、〈影鰐〉を一撃抹殺。
続いて7階にいたのは、全身が刃の〈回転刃人〉。無数の飛んでくる回転刃攻撃が、回避するのがけっこう大変だった。
ただし本体の回転刃だけ、他の回転刃と色が違う、この親切設計。まだ下層だしね。というわけで本体の回転刃を〈スーパーコンボ〉で弾いて殺す。
さーて、8階です。8階にいたのは、また〈影鰐〉。ただし今回は、5体もいる。
「うーん、おかしい。〈寄生操魔〉が一向に来ない」
おかしいのはいいけど、ここが苦戦階だった。〈影鰐〉は一体だけだと楽勝だけど、5体も同時に来られると厄介。なんたって影から飛び出して来たときしか攻撃できない。その上、この階層には意図的に作られた影スポットが多い。私自身の影も含めて、どこの影から襲ってくるか読めない。
そして──ついに私は右足を噛まれた。『使用者の防御力UP』の光粒子が発動する──が、〈影鰐〉の噛む力は、こちらの防御力を凌駕。肉が裂け、骨に歯が食い込んでくる。
「あぅぅぅぅぅ!!!」
噛みついてきた〈影鰐〉は、〈スーパーコンボ〉をぶち当て殺すも、残り4体もいる。
ここまでだ。
〈緊急脱出トンカチ〉で緊急脱出。
【覇王魔窟】の外に転がり出ると、釣りをしていたジェシカさんが慌てて駆け寄ってくる。私の右足の状態を見て、「うげっ」と呟いた。
「これは酷い。重傷じゃないか。病院に連れていくから、まずは応急手当だ。止血しよう」
「お願いします。ちょっと余裕ぶってしまいました。8階でやられましたよ」
「とにかく、食いちぎられなくて良かったよ。何度も言うけど、もう〖女神の泉〗は使えないんだからさ」
その後、ジェシカさんに町の病院へ運んでもらった。全治一か月。当分、【覇王魔窟】はお預けかぁ。残念です。
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