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第314話 最終話 あの時と変わらない笑顔

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「はー!!!サクラとカエデがOF大に留学?!」
愛翔がクラブで説明し今後2人もイギリスに住むことを話すとチーム中から驚きの声が上がった。
「2人とも頭がいいとは思っていたけど、そこまでだったのか。いや、それを言い出すとアイトも妙に賢いよな」
「あたし達の中では愛翔が一番成績よかったわよ。日本でもT大に合格して今は休学って形になっているだけだし」
ゴールキーパーのデヴィッド・リー・ウィリアムズがそう言えばと口にし桜が愛翔を持ち上げる。事実ではあるけれど桜や楓の中ではそれ以上のものになっているのは間違いない。
「それで、今のコンドミニアムだと2人の通学に支障があるんで来週早々にも引っ越すことにしたから、クラブにはその報告もだな……」

3年後、桜と楓はさすがにトップとはいかなかったものの十分に優秀と言える成績でOF大を卒業し、それぞれがエージェント、マネージャーとして愛翔の横に寄り添いマスコミにも姿をみせるようになっていた。
「愛翔、そろそろ記者会見の時間よ」
「ああ、すぐにいく」
楓の呼びかけに、愛翔もグレー地にピンストライプのブリティッシュスーツを身に纏い会場に向かった。
会場となったホテルの1室にはイギリス国内ばかりではなく各国から特に日本からのマスコミが詰めかけている。
「それでは、始めさせていただきます」
司会の合図に愛翔が立ち上がる。
「本日は、お集まりいただきありがとうございます。私、住吉愛翔の第2子が無事生まれたことをここにご報告いたします」
愛翔の言葉に会場が途端にざわつく。第1子は楓がOF大在学中の出産だったため記者会見等しなかった。このため噂として流れていただけで周知はされていなかった。そこに第2子だったために騒ぎとなったようだ。
そしてさっそく質疑が始まり、スッと手が上がる。
「ジ・アラカルトのトム・リー・マーシャルです。お子さんは男の子ですか女の子ですか。そしてお名前はもう決められているのでしょうか?」
「女の子で、名前は愛李(あいり)と名付けました」
「ありがとうございます」
「クラブ・ニュースターのパトリシア・ル・ベイツです。ミスタースミヨシはご結婚されていなかったと記憶しておりますが、母親とはどのようなご関係でしょうか?」
「ふむ、そのあたり既に周知と思っていたのですが。私には2人の妻がおります。皆さんの良識とは相いれないかとは思いますが、これは事実です。桜と楓。2人とも私の愛する妻です。どちらもいわゆる事実婚であり、婚姻届けは出しておりません。愛李は桜との間の子供です」
「JSPのケリー・ド・ロウです。先ほど第2子とのお話でした。また、2人の奥様がおられるとのことです。第1子について噂こそありましたが、公式に認められたことは無かったと思います。第1子のお子様についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「第1子は男の子で、現在1歳となります。楓との間の子供で、名前を優斗といいます。この子は当時母親がまだ学生だったこともあり、紹介を控えさせていただきました」
「ビッグマクロイドのローナ・ブルー・ダウニングです。先ほど奥様2人のお名前をサクラさん、カエデさんと言われましたが、それはミスタースミヨシのマネージャーと代理人のお名前と同じですが、……」






この会見で愛翔たちはその関係を完全にオープンにし公式の場でも夫婦として振舞うようになった。
そして更に5年後
「さあ、サッカーワールドカップ、ついにあの住吉愛翔が日本代表のユニフォームを着ております。あ、隣にはプレミアリーグで住吉愛翔を支えてきた奥様達が……」
愛翔が、ワールドカップ日本代表としてレセプションに参加している。その横には桜と楓が寄り添い高校時代から変わらない笑顔を見せ、あの時のスキャンダルがまるでうそのようであった。





fin
これで「幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に」を終わらせていただきます。
愛翔に楓を選ばせるはずだったはずが、いつの間にか選ばせることができなくなったり。25万文字あたりで完結予定だったもの(いや、執筆開始当初は15万文字予定だったのを途中で変更したんだったかな)がいつの間にか44万文字を超えていたりと予定を覆された本作でしたが、読者の皆さんの応援をいただき最後まで書ききることができました。
本編はこれで一旦完結とさせていただきます。
本当にありがとうございました。
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