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第284話 通いながらでも

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3週間のサッカー留学(?)を終えた翌朝早く、愛翔たち3人はホテルの部屋でくつろいでいた。
「結局のところ、ローマ・ソチエタとはどう?あたしにはかなり良い線いってたようにみえたんだけど」
桜も楓もやはり気になっているのは確かだった。
「まだ何も言われてないんだよな。一応連絡先は伝えてあるし、最悪レガスさん経由でも連絡は出来るけどな。ま、それはそれとして今日はローマ観光の予定だろ。早めに朝飯食べて、いや、朝飯は出先のバールで食べる方がいいか。はやめに行こうぜ。早朝の方がすいてるらしいからさ」
愛翔は切り替えが早い。とりあえず今は契約できるかどうかわからないということを考えてもしかたないとローマでの1日を楽しむと切り替えた。
「ねえ、愛翔。今日1日って言ってたから簡単にスケジュール考えておいたわよ」
そんな中楓がニッコリと愛翔に抱きついた。
「3人でデートしましょ」
そして楓が先導して移動する。
「いつものバールもローマらしくていいけど、今日の朝はここにしましょ」
楓が案内したのは駅近くのパンとケーキの店。随分と人気があるようで大勢の客でにぎわっている。
桜が目を輝かせてあっという間に注文をしている。愛翔と楓はそれを見て苦笑しながら自分達も好みの物を選んだ。
フォッカッチャ、ロゼッタ、そしてクロワッサン等をいくつか買いこみイタリア風に甘くしたエスプレッソをもってカウンターに並ぶ。
「うん、このフォッカッチャ独特の味付けでうまいな」
愛翔は甘み控えめの食事にしている。横では桜と楓が甘いクロワッサンを幸せそうな顔で口に運んでいた。
「イタリアの食事って女の子好みよね」
桜がホーっと息を吐きながらつぶやいた。
「ふふ、そうね。ただ注意しないと体重計が怖いわ」
「甘くない食べ物もピザとかカロリー高そうだもんなあ」
「愛翔は良いじゃない。サッカーであれだけ動けばカロリー消費するでしょ。あたしや楓は日本に帰ったら運動しないと。それとイタリアに住むなら美味しいだけに自炊して管理しないと大変なことになりそう」
桜がちょっと不安そうに自分のお腹を撫でる。そんな桜に楓が”大丈夫”と声を掛けた。
「ふふ、でも今日は大丈夫よ。しっかり運動するから」
「ふえ?運動?」
楓の言葉に桜が”今日は観光じゃなかったっけ?”という目を向けた。
「ローマの街はね、地下鉄は2本だけ、駅構内も暗くてバス停も時刻表がないうえにさんざん待った後で来たバスは超満員、車内放送もなく、どこで降りるかわかりづらいことが多いそうなの。なので乗り物を最小限に抑えて歩くわよ。これ考えた時むしろ歩いてローマの街並みを堪能するまでありじゃないかって思ったもの、まずはローマに来たら外せないサンピエトロ大聖堂に行くわよ。朝7時から開いてるそうだし、朝一は空いてるらしいから……」
そして、3人は楓の立てた計画に従ってローマ観光を楽しむ。
「おお、本当にまるーい」
サンタンジェロ城で記念写真を撮り
「うわー、綺麗ねぇ」
スペイン広場から街並みを眺め
「よっし。入った」
背中越しにトレビの泉にコインを投げ入れ
「これオルクスとか大げさにいってるけど、単なる穴だよなぁ」
パンテオンの天窓に愛翔ががっかり感を滲ませる。
「愛翔、たくさんの神様を祀る神殿にそんなこと言っちゃだめよ」
楓が愛翔の脇腹をこづき、その隣で桜がケラケラと笑っている。
「あ、絵描きさんが似顔絵描いてくれるみたいよ。3人一緒の絵をかいてもらおうよ」
ナヴォーラ広場で大道芸を見ながら3人の絵を描いてもらい。
「さあ、愛翔あたしに聞きたいことはなにかしら?」
真実の口に手を入れた桜が愛翔に笑いかける。
「んん、そうだなあ」
少し考えた愛翔がちょっといたずらっ子の顔になる。
「桜は子供はいつ頃欲しい?」
「な、いきなり、それは反則」
桜が真っ赤になって照れる。かえでも吹き出していたけれど、そこでふっと気づいたように口を開いた。
「ね、ねえ愛翔。そういう事言えるってことはひょっとして?」
「ああ、一般的な人よりはまだ少ないけど、自然にできる可能性があるところまで来たって日本を発つ直前の検査で言われたよ」
”わっ”っと桜と楓が愛翔に抱きつく。
”ふふふ、さっきの答えだけど”と意味深な笑顔を見せ
「あたしなら大学通いながらでも良いわよ」
真実の口に手を入れたままの桜の答えに今度は愛翔が顔を赤くし、楓がうろたえた。
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