上 下
257 / 314

第257話 戦略

しおりを挟む
翌日、光野高校は2学期の終業式。午前中で帰宅した愛翔たちは女子バスケットボール部、軽音部の協力を得て近隣の防犯カメラ設置施設に頭を下げて回っていた。
「ええ、どうやらこの日の夜に盗撮犯が出たようなんです。それで身を守るためになんとかお願します」
「まあ、住吉君たちをあんないかがわしい雑誌に売りつけるてのは許しがたいんだが、私も立場上簡単に許可は出来なくてね」
「そこを何とかお願いできませんか」
そこの担当者は”んー”と悩み
「ああ、そう言えば住吉君はPC得意だったね」
突然の話題に愛翔が何事かと目を見張るが
「実はね、今防犯カメラのデータを管理するPCのメンテナンスを予定しているんだけど、私はどうにも苦手でね。バイトでやってくれると助かるんだが。どうかな?」
「は、はい、喜んでやらせていただきます。ありがとうございます」
”つまりバイトで触っているときに見ていいってことだよな。ありがたい”愛翔たちは普段から近隣の住民とコミュニケーションをとっており、ちょっとした”お手伝い”をよくしていた。だからこそ、自分の立場ギリギリの協力をしてくれる人が何人もいた。

その結果。
「こいつが実行犯で間違いないな」
「そうね、そしてこの人がデータを受け取っているようね」
「ここからは、興信所に頼むしかないか。で、証拠が揃った段階で……」
愛翔が、両手を握りしめ歯を食いしばった。
愛翔たちの周りには女子バスケットボール部、軽音部のメンバー達がいる。だからこそ愛翔は言い淀んだ。そんな愛翔に対して誰も急かさない。そして彼女たちは知っている。愛翔が、その愛するものに手を出した敵に一切の慈悲を持たない事を。
そして落ち着いた愛翔が口を開く。
「まず、この実行犯。おそらく年代的に高校生。自分のやった事の重大さやリスクに気付いていない。県の迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、そしてカメラの設置においてバカなことに他人の財産に穴をあけた器物損壊、そして俺たち自身を無断で撮影したことに対して損害賠償請求をする。前科がつき金も払わざるを得ない状況にもっていく」
”そして”と続ける
「出版社に対しては損害賠償請求が主軸だな。楓に過去の事例を探してもらった。500から600万の賠償がみとめられている事例があったそうだ」
楓が愛翔の横で頷く。
「だけどな、それだけじゃ納得できるものじゃないからな。せめて俺たちを載せた号は赤字になってもらう」
そこから愛翔はその写真週刊誌の発行部数からおおよその売り上げ、粗利を想定してみせる。その金額売り上げ1億、粗利2000万。
「でも、それじゃ赤字になんて出来ないんじゃないの?」
末成が疑問の声を上げる。
「まあ、普通にやるだけならね」
「それじゃ?」
「出版社って裁判対応は弁護士に依頼するのはわかるよな」
愛翔の言葉に揃って頷くメンバー達。
「で、裁判における弁護士費用ってのは手付金と成果報酬なんだが、この成果報酬ってのが成果の30%ってのが相場らしいんだよ」
”それで?”とメンバー達が先を促す。
「だから裁判でこちらが5000万を請求して、500万に落ち着いたら?」
”あ!!”メンバー達が愛翔の言葉に驚きを隠さない。”それに”とさらに愛翔が続ける。
「今回被害者側が全員未成年なんで、500万では済まない可能性も結構あるって弁護士の先生は息巻いてた。楓の見つけた事例はあくまでも成人した芸能人への賠償だったそうだからね。5000万てのもそれを見込んだ金額。あまりに常軌を逸した金額だと裁判では棄却される可能性もあるそうだけど、今回の事例ならこの程度なら戦えるだろうって話だ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約相手と一緒についてきた幼馴染が、我が物顔で人の屋敷で暮らし、勝手に婚約破棄を告げてきた件について

キョウキョウ
恋愛
 カナリニッジ侯爵家の一人娘であるシャロットは、爵位を受け継いで女当主になる予定だった。  他貴族から一目置かれるための権威を得るために、彼女は若いうちから領主の仕事に励んでいた。  跡継ぎを産むため、ライトナム侯爵家の三男であるデーヴィスという男を婿に迎えることに。まだ婚約中だけど、一緒の屋敷で暮らすことになった。  そしてなぜか、彼の幼馴染であるローレインという女が一緒についてきて、屋敷で暮らし始める。  少し気になったシャロットだが、特に何も言わずに受け入れた。デーヴィスの相手をしてくれて、子作りを邪魔しないのであれば別に構わないと思ったから。  それからしばらく時が過ぎた、ある日のこと。  ローレインが急に、シャロットが仕事している部屋に突撃してきた。  ただの幼馴染でしかないはずのローレインが、なぜかシャロットに婚約破棄を告げるのであった。 ※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開や設定は、ほぼ変わりません。加筆修正して、完成版として連載します。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん
恋愛
侯爵家の跡継ぎにも関わらず幼いころから虐げられてきたローレンス。 父の望む相手と結婚したものの妻は義弟の恋人で、妻に子供ができればローレンスは用済みになると知り、家出をする。 旅先で出会ったメロディーナ。嫁ぎ先に向かっているという彼女と一晩を過ごした。 陰からメロディーナを見守ろうと、彼女の嫁ぎ先の近くに住むことにする。 やがて夫を亡くした彼女が嫁ぎ先から追い出された。近くに住んでいたことを気持ち悪く思われることを恐れて記憶喪失と偽って彼女と結婚する。 平民として幸せに暮らしていたが貴族の知り合いに見つかり、妻だった義弟の恋人が子供を産んでいたと知る。 その子供は誰の子か。ローレンスの子でなければ乗っ取りなのではないかと言われたが、ローレンスは乗っ取りを承知で家出したため戻る気はない。 しかし、乗っ取りが暴かれて侯爵家に戻るように言われるお話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

理不尽な婚約破棄をされた私を助けてくれた兄様は、隣国の王太子でした

柚木ゆず
恋愛
 王太子が婚約破棄をしたいがために、無実の罪をきせられた伯爵令嬢のリーズ。牢屋でひとり泣いていた彼女はやがて兄のユーズに助け出され、兄と自分に隠された真実を知る事になるのでした。 ※6月5日、本編が完結いたしました。明日より、少しだけ番外編を投稿させていただきます。

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

処理中です...