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第231話 心の準備

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「やっぱり住吉は上にいるべきプレイヤーだな」
練習を終え、ロッカールームで時枝が笑顔で口にした。
「時枝にそう言ってもらえると嬉しいよ」
”でも”と愛翔は続ける
「まだまだだよ。今日だって1点はいれたけど、ディフェンダーを抜けたのは最初の1度だけ。パスカットこそできたけど、ドリブル中のボールを奪えたのは2度だけ。ディフェンスにしても1人では止めきれなかったしね」
はあ、っと時枝は溜め息をつき頭を抑えながら続けた。
「あのなあ、今日相手してくれたのはJの中でもトップ中のトップのメンバーなんだぞ。オフェンスでは1度シュート決めただけでも十分だし、ディフェンダーを抜けなかったってのだって2人以上がマークについたからだし、ドリブル中のボールだって奪えないって言ってもタッチに押し出したり、フォローが入るまできっちり抑えてたじゃないか。ディフェンスだってそうだ。Jナンバー1フォワードをフォローが入るまで抑えて中に入れなかったじゃないか。U18からトップチームの練習合流初日であんだけできりゃ十分以上だっての。だいたい今日のミニゲームこっち側では住吉だけが常時マークされてたんだからな。しかもボールに近寄るとマークが必ず2枚になってたのは気づいてないのか?」
”言われてみれば”と何かしようとするたびにマークを振り切る必要があったことを愛翔も思い出した。
「あー、その程度の事に気づかなかったってのは、俺も少しばかり浮かれてたみたいだな。でも、トップチームでプレイするなら、その状態でってことだろう」
「いや、その状態で常時プレーする必要があるのはチームのエースだけだと思うけどな。逆に言えば今日のミニゲーム、住吉はこっちのエースとして扱われたってことだ」
「時枝が言っていることは分かるけど、俺がそこまでチェックされる理由が分からんな。実績があるとは言ってもU18でのものだJ1とはレベルが違う」
そういう愛翔を時枝はジトリとした目で見ながら、それでも
「まったく、相変わらずの無自覚か。U18とはいえ現在のランキング1位のチームの絶対エース、オフェンスからディフェンス、司令塔までこなすプレイヤーをチェックしないわけないだろう。それに2年前のハーフゲームを覚えているメンバーも多いからな」
ステラスターFCU18への加入時のハーフゲーム。その時を思い出し愛翔はふっと表情を緩める。
そこにアグラ・悠が割り込んできた。
「そうそう、順調にいけば住吉のトップチーム入りはほぼ確定だからな」
「え」
さすがに突然の言葉に愛翔も目を見張る。
「俺、聞いてないんですけど」
「なんだ、嫌なのか?」
揶揄うようなアグラの言葉に”うっ”と言葉を詰まらせ、それでも
「い、嫌なわけないじゃないですか。心の準備が出来てなかっただけです」
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