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第225話 チーム

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「目的は住吉君かしら」
椛山の無遠慮な言葉に楓の、いや楓だけでなく愛翔も、そしてその愛翔の後ろに守られていた桜の目も剣呑な光を帯びる。そして
「やはり芸能界というのは度し難い人間の集まりということだな」
愛翔の口から洩れたのは正に椛山を凍り付かせるかのような冷ややかな言葉だった。
「たとえ、私の目的が愛翔だったとしてそれがどうかしましたか」
楓の口調も冷たい。完全に椛山を敵として見ている。
「あなたがどんな思いをもってスカウト活動をしているかは知りませんが、他人の想いを踏みにじるような人と大切な幼馴染を関わらせたくは無いですね」
引っ込み思案の桜さえも拒絶の言葉を口にした。
「え、あ、そんな」
僅かに口ごもる椛山だが、そこは百戦錬磨、魑魅魍魎の住まう芸能界を住みかとするスカウト、すぐに表情を戻す。"これは手強いわね。お互いを想い合っている。だからこそターゲットは……”
「国際弁護士になったうえで住吉君が目的。橘さんが国際弁護士になるころには住吉君は国際的なサッカー選手になっていて、その専属エージェントにでもなるってことかしらね」
椛山の言葉に更に表情を硬くする3人。
「素敵よね、幼い頃から共に育ったスター選手とそれを支えるエージェント」
”だけど”と椛山は続ける。
「でも、それだと主人公は住吉君だけよね。橘さんだってヒロインになれるのに」
いたずらっぽい顔で椛山が愛翔に視線を向ける。
椛山の視線に愛翔が顔を顰め
「俺のために楓の可能性をつぶして……」
そこまで言うと愛翔は表情を戻す。そして
「なんて言うとでも思いましたか」
それに対し樺山は意外だとばかりに声を荒げる。
「実際にそうでしょう。あなた一人のために橘さんの才能を使いつぶすことになるんですよ」
そんな椛山に対して愛翔はある意味可哀そうなものを見る目を向ける。
「俺たちは、そんなところはもうとっくに通り過ぎてんだよ。俺たちはチームだ。例えば、サッカーで俺は基本的にアタッカーだだから点を取るのが仕事だ。ある意味目立つのは自覚がある。だけどな、試合に勝った時、その勝利は俺だけのものじゃない。チームの勝利だ。野球だってそうだろう、ピッチャーや4番バッターのものか?勝利も敗北もチームのものだろう。それだけじゃない、個人競技に見える陸上競技でもどうだ世界のトップはトレーニングにしろ試合にしろチームを組んであたるだろう。成果はチームの成果だ。実際には芸能界でだっとそうだろう。プロダクションのバックアップ無しでスターダムを上り詰めた人間がいるか?チームを否定するなら、あんたのこところはろくなバックアップをしないということだろう。なおさら大切な幼馴染を渡せるもんじゃないな」
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