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第187話 してくれないんだもの

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「新入生勧誘ライブのメインに私達を?」
新入生が入学したばかりのこの時期、光野高校でもそれぞれの部活で勧誘活動を行う。楓の所属する軽音部でもやはり同様で、この時期部室や屋外、バスケットボール部やバレーボール部が活動している体育館でも空いているステージを使って勧誘のためのミニライブを行うのが慣例となっている。その中でも放課後に校門から校舎に向かう通路で行う路上ライブは軽音部の勧誘ライブのメインとなっており、楓を含むグループ”春”にそこでの演奏を任せようということらしい。
「そう、楓は部長を受けなかったんだから、せめてそのくらいはして欲しいな。最近は部への出席も減り気味だし」
そう楓に依頼しているのは立岡はつえ(たちおか はつえ)軽音部の部長だ。楓が、そんな立岡の露骨な客寄せ依頼に眉をしかめながらも”春”のメンバーを見渡すと皆苦笑しながらも頷いていた。
「はあ、まあそのくらいなら良いわよ。でも演奏するだけよ。客引きじゃなくって、勧誘自体はしないわよ。誤解されるの嫌だから」
「わかってるわ。楓は住吉君一筋だものね。今更私達を含めて2、3年生が誤解することは無いわ。1年生からは多少あるかもだけどすぐに落ち着くでしょ」
立岡は諦観したような顔で、それでも最後は薄く笑いながら言い切った。
「?」
楓は首を捻るものの
「まあ、いいわ。誤解されないならそれに越したことは無いから」
「なーにを疑問に思ってるのかな?」
”春”のドラムス長嶺が笑いながら楓に後ろから抱きつき、楓の胸に手を出そうとしたところで楓に思いっきり腕をつねり上げられる。
「い、痛い、痛い、痛い。もうしないから離して……」
長嶺の悲鳴に楓は冷たく言い放った。
「私は全て愛翔のものよ。たとえ奈菜、あなたでも許さない」
「わ、わかったから。お願い。痛いから。もうしません。お願いゆるして」
「ふふ、相変わらず……? 更に斜め上に進んでるわね。で愛翔君とはどこまでいったの?」
立岡の何気ない言葉に楓はビクリと止まってしまう。
「お、お泊りして、一緒のベッドで寝たわ」
辛うじて口にした楓の言葉に”春”のメンバーはキャーキャーと騒ぎだしたけれど、
「で、寝ただけかしら?」
立岡の追撃に楓はしょんぼりしてしまった。
「あ、あれ?楓?」
楓のあまりの落ち込みに立岡も慌てている。
「う、うるさい。そうよ一緒のベッドで抱きついて寝てるのにしてくれないんだもの……。好きだって、愛してるって言ってくれる。でも……」
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