上 下
182 / 314

第182話 気付かないフリが精いっぱい

しおりを挟む
「あら吉澤君じゃない。2年ぶりね。その様子だとうちの学校に入学したのね。おめでとう」
楓のサラリとした対応、そして愛翔に抱きついている状況に吉澤が口ごもる。
「楓の知り合いか?新入生代表で挨拶していたから、その吉澤君だっけ?は今年の首席だな。って楓もさっき入学式見てただろ。気付かなかったのか」
愛翔が明るい笑顔で会話に入る。そこに桜は微妙な顔で愛翔の腕をチョイチョイとつついた。
「ん?」
愛翔が桜に視線を向け、桜の微妙な表情になるほどと納得の表情に変わる。
”さて、どうしたものかな”ここで大げさにするわけにもいかず愛翔も考え込んだ。愛翔としても楓を簡単に手放すつもりはない。かと言って愛翔が何か言うのも現状では違う気がする。
そして結局出した結論は
「俺はこれからクラブに顔を出すけど桜と楓はどうする?」
普段と変わらない事だった。
「あたしは今日は部活休みだから応援に行くわよ」
「私も軽音部休みだから行くね。あ、お昼ご飯は?」
「ん、まあ適当にどっかで弁当でも買っていくつもり」
「え、買い弁なんてしなくても私が作ってあげるわよ」
「あ、楓ずるい。あたしも一緒に作るわよ」
キャイキャイと楽しそうに話す桜と楓の姿に今回はあきらめたというように吉澤は黙って背を向け去っていった。

「で、さっきの後輩君、吉澤君と言ったっけ。どういう人?」
愛翔がこっそりと桜に聞いている。
「中学時代に楓が美術部に所属していたのは覚えている?」
「ああ、入学直後の見学に俺と桜も一緒に行ったよな」
「その美術部の後輩なんだけどね」
「ああ、あれか、面倒見てるうちに勘違いされたってやつ?」
「ううん、勘違いされてはいないよ。あたしが見てた限りでは吉澤君が一方的に熱を上げてた感じね」
「で、楓は気付いてるよな」
「もちろん。でも告白されたわけでもないのに振るっていうわけにもいかないでしょ。だから気付いていないフリをするのが精いっぱいだったのよ。成績もふつうだったようだし楓もまさか高校まで追いかけてくるとは思ってなかったんじゃないかしら」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...