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第175話 僚友

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「プレイ時間に制限のある人間にやらせるポジションじゃないだろう」
試合後ロッカールームへ続く廊下で疲労困憊の愛翔がおもわず愚痴をもらす。その愛翔の背中をバンっと叩き声を掛けてきた人物がいた。
「ま、今日はテストパターンだ。当分は無いから安心しろ」
「織部監督」
「時枝が今回までだったからな。悪いとは思ったが一度はやっておきたかったんだ。ま、これからは新しい司令塔として石岡信(いしおか まこと)に頑張ってもらうが、住吉と時枝のペアのように息が合うには時間も掛かるだろうから基本は今まで通り、時々テストをしていって、あとは住吉の回復状態次第だな」
それだけ言うと織部はロッカールームへ向かって歩いていく。
「すべて計画通りかよ」
愛翔もため息をつきつつ織部の後に続いた。

ロッカールームではチームメンバーが揃ってリザーブ枠とは言えトップチームに合流する時枝に本当に祝福なのかそれともやっかみなのか分からないような荒っぽい祝福を向けていた。
「よ、時枝。おめでとう。羨ましいぜ」
愛翔も時枝の後ろから頭を脇に抱え込みながら祝福の言葉を口にする。そんな愛翔を見る時枝はわずかに微妙な表情を向ける。しかし、すぐにその表情は消え悪ふざけの笑顔に戻る。
「おう、U18公式戦最後に住吉と思いっきりやれたし心置きなく上がれるわ」
「さっさとベンチ入り登録までいけよ」
「ここからが大変なんだが、頑張るわ」
”住吉も病気の事がなければ今シーズンくらいで昇格の話があっただろうに。それでも住吉とは上でも一緒にやりたいが……”時枝は口惜しさを胸にしまい込んだ。
「しかし、今日のゲームは疲れた」
愛翔は、ここに来て再度愚痴を漏らす。
「ははは、いつもより活動エリアが広がったからな。そのうえ司令塔役も……。でも司令塔は多分無意識だろうけど普段からやってたな」
時枝としては愛翔の可能性が広がったこと自体は嬉しい。出来れば一緒に上に上がりたかったな。そんな気持ちさえあるけれど……。
「それに、十分すぎる結果を出したじゃないか」
後半45分で3得点。ディフェンスにおいても相手の攻撃システムをズタズタにし、失点ゼロ。いきなりふられた役割としては十分以上の結果を出した。時枝としては、あとは身体が戻りさえすればと口に出さず思う。
「はやく来いよ」
時枝がボソリと呟いた言葉は誰の耳にも届かなかった。
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