129 / 314
第129話 鍵
しおりを挟む
「今週末から中間テストでさあ。俺なんかこっちばっかりだから……」
「うちは今真っ最中だ。こっちメインにしてるから一般コースなんだよな。ああ赤点怖い」
「あ、そう言えば住吉は光野の優等生じゃなかったか?」
練習後のステラスターU18チームのロッカールーム。やはり皆高校生ということで中間テストの話題が多い。
「住吉、テスト期間だけでいいから勉強見てくれないか」
「え?見るって言っても俺1年生ですよ。皆さん3年生ですよね」
「うわあああ、ここでも格差がぁぁ」
「くそお、やっぱり自前で頑張るしかないのか」
「と、とりあえず頑張ってくださいとしか。あ、でもせめて英語はちゃんとやっておいたほうが良いですよ。将来海外に行く可能性ありますよね」
着替えを終えロッカールームを出ていきながら告げた愛翔の言葉に
「くそお、さらりと海外って言葉が出てくる住吉が羨ましい。でもそうだよな、俺たち、うまくいったら海外ってのはきちんと考えておかないといけないんだよな。くそう、サッカーでもやっぱり勉強かよぉ」
怨嗟なのか希望なのかわからない叫びを背に、愛翔は今日の予定を頭に浮かべる。
”帰ったら、飯の準備して、ストレッチ、それから試験勉強と。あ、もう冷蔵庫の中身ほとんど使い切ってたな。帰りながらスーパーで買い出ししていくか”
愛翔が自宅マンションの前につくと
「あーいと。お帰り」
「お疲れ様。愛翔」
桜と楓が待ち構えていた。
「おいおい、この辺りは比較的安全だけど、ふたりみたいな魅力的な女の子だけでこんな時間に出歩くのは感心しないぞ。もしもの事があったらどうするんだよ」
愛翔がため息交じりに注意するけれど、ふたりはあっけらかんとしたもので
「大丈夫よ。まだ人通りもあるし」
愛翔は、あきらめたように二人を招き入れることにした。
「まあ、来ちゃったものを追い返しはしないけど、本当に気を付けてくれよ」
部屋に入ると桜と楓は持ってきた荷物を開け始めた。
「愛翔、お皿借りるわね」
桜はそう言うと保温容器から湯気の立つ野菜炒めを盛りつけ始めた。その横で楓は中華風卵スープをお椀に注いでいる。白米を茶碗によそい、小皿にラフランスとオレンジを盛りつけて完成のようだ。
「お、おい。これは?」
「愛翔が夕飯この時間からって言ってたから桜と一緒に作ってきたのよ。時間が時間だから簡単なものにしたけどね。一緒に食べましょ」
愛翔も楓に促されてテーブルにつく。
「それにしても、急にどうしたんだ?」
「さっきも言ったでしょ。愛翔の晩御飯がこの時間だって聞いたからって」
ご機嫌な表情で楓が答えるけれど、愛翔も納得しにくいようで
「だからって急に……」
「だって、愛翔ってクラブに選抜チームの合宿にって忙しいじゃない。このくらいのお手伝いしたいって思っちゃダメ?」
桜がここぞと上目使いに愛翔に迫っていく。
「ダメじゃないけど。大変だろう。それにこんな時間に2人が出歩くのはちょっと心配なんだよ」
「でも、あたしはこうしたいの。ううん、楓だって」
愛翔が楓に視線をむけると、楓も真剣な表情で見返している
「はぁわかった。でも今日みたいにマンションの前で待ってるのは心配だから……」
そういうと愛翔は立ち上がり部屋の片隅のチェストの引き出しを開け鍵を取り出した。そしてその鍵を桜の手のひらに載せる。
「勝手に入って良いから、外で待つのはやめてくれ」
「うちは今真っ最中だ。こっちメインにしてるから一般コースなんだよな。ああ赤点怖い」
「あ、そう言えば住吉は光野の優等生じゃなかったか?」
練習後のステラスターU18チームのロッカールーム。やはり皆高校生ということで中間テストの話題が多い。
「住吉、テスト期間だけでいいから勉強見てくれないか」
「え?見るって言っても俺1年生ですよ。皆さん3年生ですよね」
「うわあああ、ここでも格差がぁぁ」
「くそお、やっぱり自前で頑張るしかないのか」
「と、とりあえず頑張ってくださいとしか。あ、でもせめて英語はちゃんとやっておいたほうが良いですよ。将来海外に行く可能性ありますよね」
着替えを終えロッカールームを出ていきながら告げた愛翔の言葉に
「くそお、さらりと海外って言葉が出てくる住吉が羨ましい。でもそうだよな、俺たち、うまくいったら海外ってのはきちんと考えておかないといけないんだよな。くそう、サッカーでもやっぱり勉強かよぉ」
怨嗟なのか希望なのかわからない叫びを背に、愛翔は今日の予定を頭に浮かべる。
”帰ったら、飯の準備して、ストレッチ、それから試験勉強と。あ、もう冷蔵庫の中身ほとんど使い切ってたな。帰りながらスーパーで買い出ししていくか”
愛翔が自宅マンションの前につくと
「あーいと。お帰り」
「お疲れ様。愛翔」
桜と楓が待ち構えていた。
「おいおい、この辺りは比較的安全だけど、ふたりみたいな魅力的な女の子だけでこんな時間に出歩くのは感心しないぞ。もしもの事があったらどうするんだよ」
愛翔がため息交じりに注意するけれど、ふたりはあっけらかんとしたもので
「大丈夫よ。まだ人通りもあるし」
愛翔は、あきらめたように二人を招き入れることにした。
「まあ、来ちゃったものを追い返しはしないけど、本当に気を付けてくれよ」
部屋に入ると桜と楓は持ってきた荷物を開け始めた。
「愛翔、お皿借りるわね」
桜はそう言うと保温容器から湯気の立つ野菜炒めを盛りつけ始めた。その横で楓は中華風卵スープをお椀に注いでいる。白米を茶碗によそい、小皿にラフランスとオレンジを盛りつけて完成のようだ。
「お、おい。これは?」
「愛翔が夕飯この時間からって言ってたから桜と一緒に作ってきたのよ。時間が時間だから簡単なものにしたけどね。一緒に食べましょ」
愛翔も楓に促されてテーブルにつく。
「それにしても、急にどうしたんだ?」
「さっきも言ったでしょ。愛翔の晩御飯がこの時間だって聞いたからって」
ご機嫌な表情で楓が答えるけれど、愛翔も納得しにくいようで
「だからって急に……」
「だって、愛翔ってクラブに選抜チームの合宿にって忙しいじゃない。このくらいのお手伝いしたいって思っちゃダメ?」
桜がここぞと上目使いに愛翔に迫っていく。
「ダメじゃないけど。大変だろう。それにこんな時間に2人が出歩くのはちょっと心配なんだよ」
「でも、あたしはこうしたいの。ううん、楓だって」
愛翔が楓に視線をむけると、楓も真剣な表情で見返している
「はぁわかった。でも今日みたいにマンションの前で待ってるのは心配だから……」
そういうと愛翔は立ち上がり部屋の片隅のチェストの引き出しを開け鍵を取り出した。そしてその鍵を桜の手のひらに載せる。
「勝手に入って良いから、外で待つのはやめてくれ」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。
【完結】本音を言えば婚約破棄したい
野村にれ
恋愛
ペリラール王国。貴族の中で、結婚までは自由恋愛が許される風潮が蔓延っている。
奔放な令嬢もいるが、特に令息は自由恋愛をするものが多い。
互いを想い合う夫婦もいるが、表面上だけ装う仮面夫婦、
お互いに誓約書を作って、割り切った契約結婚も多い。
恋愛結婚をした者もいるが、婚約同士でない場合が多いので、婚約を解消することになり、
後継者から外され、厳しい暮らし、貧しい暮らしをしている。
だからこそ、婚約者と結婚する者が多い。だがうまくいくことは稀である。
婚約破棄はおろか、婚約解消も出来ない、結婚しても希望はないのが、この国である。
そこに生まれてしまったカナン・リッツソード侯爵令嬢も、
自由恋愛を楽しむ婚約者を持っている。ああ、婚約破棄したい。
※気分転換で書き始めたので、ゆるいお話です。
【完結済み】だって私は妻ではなく、母親なのだから
鈴蘭
恋愛
結婚式の翌日、愛する夫からナターシャに告げられたのは、愛人がいて彼女は既に懐妊していると言う事実だった。
子はナターシャが産んだ事にする為、夫の許可が下りるまで、離れから出るなと言われ閉じ込められてしまう。
その離れに、夫は見向きもしないが、愛人は毎日嫌味を言いに来た。
幸せな結婚生活を夢見て嫁いで来た新妻には、あまりにも酷い仕打ちだった。
完結しました。
王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……
水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。
相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。
思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。
しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。
それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。
彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。
それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。
私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。
でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。
しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。
一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。
すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。
しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。
彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
婚約者に捨てられましたが
水川サキ
恋愛
婚約して半年、嫁ぎ先の伯爵家で懸命に働いていたマリアは、ある日将来の夫から告げられる。
「愛する人ができたから別れてほしい。君のことは最初から愛していない」
浮気相手の女を妻にして、マリアは侍女としてこのまま働き続けるよう言われる。
ぶち切れたマリアはそれを拒絶する。
「あなた、後悔しますわよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる