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第98話 楓の気持ちとあーん
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”春”の演奏を聞き、愛翔はさすがに押し黙ってしまう。桜も何も言わない。
次のステージが終わり、そろそろ午前の部が終わろうとする頃
「あれって楓の気持ちだよな。きっと」
愛翔が呟き、桜は
「そうね、そうするとずっと楓もあたしと同じ想いを持っていて、それでもあたしの背中を押してくれたのね」
2人が微妙な雰囲気になりながら座っていると
後ろから愛翔に抱きついてきた女の子。愛翔の頬にキスを落としながら
「愛翔~、ちゃんと聞いてくれた?」
楓だった。
「桜も来てくれてありがとう」
桜にも抱きつく楓。普段よりテンションが高めのようだ。
「楓。その……」
愛翔が言いよどむけれど
「うん、愛翔は聞いてくれただけで良いの。桜もその、ごめんね」
楓の謝罪に桜は首を横に振った。
「ううん、謝るのはあたしのほう。ずっと一緒にいたのに自分の事ばかりで楓の本当の気持ちに気づいてなくて、それなのに楓はあたしの背中を押してくれて。でも、これからは違うのよね。愛翔にあの歌を聞かせたって事は」
桜の言葉に楓も少しばかり申し訳なさそうに答える。
「1度は桜の背中を押しておきながら、やっぱり気持ちが溢れちゃったの。だからね、これからは幼馴染兼恋のライバルよ。競争相手は多いみたいだけど、私も負けるつもりはないから。どんどん愛翔にアピールしていくからね」
「あははは、お手柔らかに頼むよ」
愛翔もホッとしたのか苦笑しつつも、いつの間にか愛翔の左腕に抱きついていた楓の頭を撫でていた。
午後のシフト前に食事をということで喧騒の中、わずかな時間ではあるけれど文化祭を楽しむ3人。
「結構食べ物系も色々あるなぁ。中学の文化祭でもこんなだった?」
日本の文化祭は初めての愛翔は感心しきりで桜と楓に聞いている。
「ん~、中学だとここまでじゃないわね。高校生になって色々違うって事かなって」
楓の返事に桜も相槌をうっている。
「あ、丘先輩。こんにちは」
目ざとく見つけた楓が挨拶をしている。
「あ橘さん。住吉君に華押さんも一緒ね」
「丘先輩のクラスは何してるんですか?」
「うちは屋台村って感じね」
「屋台村ですか?」
「ほらほら、入って。百聞は一見に如かずっていうでしょ」
丘は愛翔の背中を押し、桜と楓も誘った。
中には屋台風の店をいくつか並べてあり丘の言う通り屋台村然とした作りになっている。
「へえ、屋台村って確かにそうですね」
愛翔が興味深そうに見回す。
「あ、焼きそばに、たこ焼き、フライドポテトあ、ヨーヨー釣りに射的?」
桜がさっそく焼きそばをロックオンしフラフラと近づいていく。
クスクスと笑いながら楓がフライドポテトを手にし、それならと愛翔はたこ焼きを買ってきた。
「買っていただいた食べ物は、お持ちいただいてもかまいませんし、そちらの席で食べていただいてもいいですよ。いえむしろそちらの席で是非」
販売係の女生徒が3人を案内していた。
「そ、それじゃ、せっかくだし座らせてもらおうか」
愛翔が誘い、桜と楓が一緒に机を囲んだ。
「あ、この焼きそば、ソースがちょっといいかも。愛翔も食べてみて」
桜が嬉しそうな笑顔で自然に焼きそばをシェアする。
「お、本当だ。うまいな。これはお返しだ」
愛翔も当たり前のようにたこ焼きを桜の口にもっていく。
「愛翔、わたしには?」
楓も愛翔に強請り
「ほら、美味いぞ」
楓も蕩ける笑顔で愛翔に食べさせてもらっている。
そして、いつの間にか3人の周囲の席は満席になって大量のカップルが”あーん”をしていて、ふと愛翔と目の合った丘が良い笑顔でサムズアップをしてきた。
食事を終え愛翔たちが席を立つと丘が寄ってきた。
「住吉君、華押さん、橘さん。とっても素敵な客寄せありがとう。でもちょっと口の中があまーくなっちゃった」
クスクスと笑う丘に
「そういう事でしたか、でも美味しかったですよ」
愛翔が笑顔で返して
「これから、俺たちクラスの執事メイドカフェでホール係やるんでよかったら来てくださいね」
さらっと宣伝をして愛翔たちはクラスに戻った。
次のステージが終わり、そろそろ午前の部が終わろうとする頃
「あれって楓の気持ちだよな。きっと」
愛翔が呟き、桜は
「そうね、そうするとずっと楓もあたしと同じ想いを持っていて、それでもあたしの背中を押してくれたのね」
2人が微妙な雰囲気になりながら座っていると
後ろから愛翔に抱きついてきた女の子。愛翔の頬にキスを落としながら
「愛翔~、ちゃんと聞いてくれた?」
楓だった。
「桜も来てくれてありがとう」
桜にも抱きつく楓。普段よりテンションが高めのようだ。
「楓。その……」
愛翔が言いよどむけれど
「うん、愛翔は聞いてくれただけで良いの。桜もその、ごめんね」
楓の謝罪に桜は首を横に振った。
「ううん、謝るのはあたしのほう。ずっと一緒にいたのに自分の事ばかりで楓の本当の気持ちに気づいてなくて、それなのに楓はあたしの背中を押してくれて。でも、これからは違うのよね。愛翔にあの歌を聞かせたって事は」
桜の言葉に楓も少しばかり申し訳なさそうに答える。
「1度は桜の背中を押しておきながら、やっぱり気持ちが溢れちゃったの。だからね、これからは幼馴染兼恋のライバルよ。競争相手は多いみたいだけど、私も負けるつもりはないから。どんどん愛翔にアピールしていくからね」
「あははは、お手柔らかに頼むよ」
愛翔もホッとしたのか苦笑しつつも、いつの間にか愛翔の左腕に抱きついていた楓の頭を撫でていた。
午後のシフト前に食事をということで喧騒の中、わずかな時間ではあるけれど文化祭を楽しむ3人。
「結構食べ物系も色々あるなぁ。中学の文化祭でもこんなだった?」
日本の文化祭は初めての愛翔は感心しきりで桜と楓に聞いている。
「ん~、中学だとここまでじゃないわね。高校生になって色々違うって事かなって」
楓の返事に桜も相槌をうっている。
「あ、丘先輩。こんにちは」
目ざとく見つけた楓が挨拶をしている。
「あ橘さん。住吉君に華押さんも一緒ね」
「丘先輩のクラスは何してるんですか?」
「うちは屋台村って感じね」
「屋台村ですか?」
「ほらほら、入って。百聞は一見に如かずっていうでしょ」
丘は愛翔の背中を押し、桜と楓も誘った。
中には屋台風の店をいくつか並べてあり丘の言う通り屋台村然とした作りになっている。
「へえ、屋台村って確かにそうですね」
愛翔が興味深そうに見回す。
「あ、焼きそばに、たこ焼き、フライドポテトあ、ヨーヨー釣りに射的?」
桜がさっそく焼きそばをロックオンしフラフラと近づいていく。
クスクスと笑いながら楓がフライドポテトを手にし、それならと愛翔はたこ焼きを買ってきた。
「買っていただいた食べ物は、お持ちいただいてもかまいませんし、そちらの席で食べていただいてもいいですよ。いえむしろそちらの席で是非」
販売係の女生徒が3人を案内していた。
「そ、それじゃ、せっかくだし座らせてもらおうか」
愛翔が誘い、桜と楓が一緒に机を囲んだ。
「あ、この焼きそば、ソースがちょっといいかも。愛翔も食べてみて」
桜が嬉しそうな笑顔で自然に焼きそばをシェアする。
「お、本当だ。うまいな。これはお返しだ」
愛翔も当たり前のようにたこ焼きを桜の口にもっていく。
「愛翔、わたしには?」
楓も愛翔に強請り
「ほら、美味いぞ」
楓も蕩ける笑顔で愛翔に食べさせてもらっている。
そして、いつの間にか3人の周囲の席は満席になって大量のカップルが”あーん”をしていて、ふと愛翔と目の合った丘が良い笑顔でサムズアップをしてきた。
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「住吉君、華押さん、橘さん。とっても素敵な客寄せありがとう。でもちょっと口の中があまーくなっちゃった」
クスクスと笑う丘に
「そういう事でしたか、でも美味しかったですよ」
愛翔が笑顔で返して
「これから、俺たちクラスの執事メイドカフェでホール係やるんでよかったら来てくださいね」
さらっと宣伝をして愛翔たちはクラスに戻った。
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