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第76話 近づくな
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結局愛翔の要求通り100万円の慰謝料・損害賠償として支払うことで決着がついた。
そして、
「では、学校側からの処分のお話をさせていただきます」
瑞光理事長の言葉に加害者生徒が反発した。
「な、なによ。謝ったし。金だって払うって言ったじゃないの」
「そうよそうよ、ちゃんとしたじゃない」
そんな言葉にも瑞光理事長は動じない。
「いいえ、それだけでイジメ・嫌がらせが無かったことになるわけではありません。また、今回の場合学校側の対応にも問題があったことが分かっております。ですので学校側からも住吉君、橘さんに30万円、華押さんに40万円を慰謝料としてお支払いします。また、担任の篠原ならびに生活指導の鈴木両教諭に戒告処分および減給1カ月。教頭の田上に譴責処分および減給3カ月、西園寺校長に譴責処分および減給5か月を課します。」
そこで瑞光理事長は一息入れ、愛翔たちに目を向けた。
「住吉君、橘さん、華押さん。学校側が間違った対応をしたためあなた方にとても嫌な思いをさせました。心よりお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。そのうえでお聞きします。あなた方は加害者生徒にどのような処分を望みますか?」
この発言には、流石の愛翔も少しばかり意表をつかれたようで、一瞬呆気にとられる。それでも
「学校としての謝罪を受け入れます。そのうえでお答えしますが、私としては処分そのものは学校の判断に委ねます。しかし気持ちとしては彼女たちが近くにいるのは嫌ですね」
愛翔の返事に桜も楓も同意するとばかりに頷く。
「わかりました。では、加害者生徒5人は処分が確定するまで自宅謹慎、今回の話し合いの内容を踏まえ1週間以内に処分を言い渡します」
「待たせたな」
会議室の隣。個別面談室で待機していた1人の男子生徒に愛翔が声を掛けた。
「いや、部活があったからな。大して待っていない。で、終わったのか?」
「ああ、あとは学校からの処分が1週間以内に決まるだけだ」
「たく、凄いよな。あっという間に相手を特定して、世間を動かして、学校を動かして解決しちまうんだから。華押さんが住吉を信じるのも当然だな」
「別に、本気でやりさえすれば剣崎君にだって出来たさ。小学生の俺にだって出来たんだから」
「俺には無理だよ」
「そんなことないさ。どこまで本気になれるか。それだけの違いだよ。出来ないとすれば……」
「出来ないとすれば?」
「それだけの想いでしか無かった。それだけの事だよ」
「それだけの想いでしかない……か。なぁ住吉は怖くなかったのか?」
「何が?」
「華押さんに向かっていた悪意が自分に向くこと。世間が住吉に悪意を向ける事が、それによって今まで築いてきた全てを失うかもしれない事が怖くなかったのか」
「俺を何だと思ってるんだ剣崎君は。怖いに決まってるじゃないか。それでも桜や楓が悲しい想いをするのなら戦わないという選択肢は俺にはないんだ」
剣崎は天井を見上げ溜息をついた。
「負けだ。完敗だよ。俺にはそんな覚悟も決意も無かった」
「ま、まあ、勝ち負けじゃないんだが、そこは俺たちの過去からの繋がりがあってこそだから」
そこで一息間を置き、さらに愛翔は続けた
「ここからが今日来てもらった本題だ。剣崎君は桜が何度も交際を断っているにもかかわらず、イジメにあって弱っている時に、それに付け込んでお試し交際を強要したそうだね。これは間違いないか?」
「い、いや。強要は……」
「同調圧力って言葉知ってるか?周囲の人間からそうするべきだと追い込むやりかたなんだが。これも強要だって理解できるかな?」
「結果的にそうなったのは認める。でも……」
「デモも何も強要は強要だからな。今回あっちには剣崎君を呼ばなかったけど。剣崎君のやった事は強要罪という刑事犯罪に該当する可能性もあるし、そこでもし性的な接触を求めていたら強制性交等罪という罪もありえた。それを認識してくれ」
「そ、そんなつもりは……」
「つもりが無くても、そういう法律だからな」
「お、俺に何をしろと」
「何、大したことは無い」
そこで愛翔は剣崎に近づき耳元に口を寄せ低い声で言い切る。
「2度と桜に近づくな」
それだけ言うと、スクールバッグを手に部屋を出ていった。
そして、
「では、学校側からの処分のお話をさせていただきます」
瑞光理事長の言葉に加害者生徒が反発した。
「な、なによ。謝ったし。金だって払うって言ったじゃないの」
「そうよそうよ、ちゃんとしたじゃない」
そんな言葉にも瑞光理事長は動じない。
「いいえ、それだけでイジメ・嫌がらせが無かったことになるわけではありません。また、今回の場合学校側の対応にも問題があったことが分かっております。ですので学校側からも住吉君、橘さんに30万円、華押さんに40万円を慰謝料としてお支払いします。また、担任の篠原ならびに生活指導の鈴木両教諭に戒告処分および減給1カ月。教頭の田上に譴責処分および減給3カ月、西園寺校長に譴責処分および減給5か月を課します。」
そこで瑞光理事長は一息入れ、愛翔たちに目を向けた。
「住吉君、橘さん、華押さん。学校側が間違った対応をしたためあなた方にとても嫌な思いをさせました。心よりお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。そのうえでお聞きします。あなた方は加害者生徒にどのような処分を望みますか?」
この発言には、流石の愛翔も少しばかり意表をつかれたようで、一瞬呆気にとられる。それでも
「学校としての謝罪を受け入れます。そのうえでお答えしますが、私としては処分そのものは学校の判断に委ねます。しかし気持ちとしては彼女たちが近くにいるのは嫌ですね」
愛翔の返事に桜も楓も同意するとばかりに頷く。
「わかりました。では、加害者生徒5人は処分が確定するまで自宅謹慎、今回の話し合いの内容を踏まえ1週間以内に処分を言い渡します」
「待たせたな」
会議室の隣。個別面談室で待機していた1人の男子生徒に愛翔が声を掛けた。
「いや、部活があったからな。大して待っていない。で、終わったのか?」
「ああ、あとは学校からの処分が1週間以内に決まるだけだ」
「たく、凄いよな。あっという間に相手を特定して、世間を動かして、学校を動かして解決しちまうんだから。華押さんが住吉を信じるのも当然だな」
「別に、本気でやりさえすれば剣崎君にだって出来たさ。小学生の俺にだって出来たんだから」
「俺には無理だよ」
「そんなことないさ。どこまで本気になれるか。それだけの違いだよ。出来ないとすれば……」
「出来ないとすれば?」
「それだけの想いでしか無かった。それだけの事だよ」
「それだけの想いでしかない……か。なぁ住吉は怖くなかったのか?」
「何が?」
「華押さんに向かっていた悪意が自分に向くこと。世間が住吉に悪意を向ける事が、それによって今まで築いてきた全てを失うかもしれない事が怖くなかったのか」
「俺を何だと思ってるんだ剣崎君は。怖いに決まってるじゃないか。それでも桜や楓が悲しい想いをするのなら戦わないという選択肢は俺にはないんだ」
剣崎は天井を見上げ溜息をついた。
「負けだ。完敗だよ。俺にはそんな覚悟も決意も無かった」
「ま、まあ、勝ち負けじゃないんだが、そこは俺たちの過去からの繋がりがあってこそだから」
そこで一息間を置き、さらに愛翔は続けた
「ここからが今日来てもらった本題だ。剣崎君は桜が何度も交際を断っているにもかかわらず、イジメにあって弱っている時に、それに付け込んでお試し交際を強要したそうだね。これは間違いないか?」
「い、いや。強要は……」
「同調圧力って言葉知ってるか?周囲の人間からそうするべきだと追い込むやりかたなんだが。これも強要だって理解できるかな?」
「結果的にそうなったのは認める。でも……」
「デモも何も強要は強要だからな。今回あっちには剣崎君を呼ばなかったけど。剣崎君のやった事は強要罪という刑事犯罪に該当する可能性もあるし、そこでもし性的な接触を求めていたら強制性交等罪という罪もありえた。それを認識してくれ」
「そ、そんなつもりは……」
「つもりが無くても、そういう法律だからな」
「お、俺に何をしろと」
「何、大したことは無い」
そこで愛翔は剣崎に近づき耳元に口を寄せ低い声で言い切る。
「2度と桜に近づくな」
それだけ言うと、スクールバッグを手に部屋を出ていった。
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