上 下
151 / 155
召喚の影響?

第151話 リーダー

しおりを挟む
「ねえ、瑶さん。さっきのあれで本当によかったんですか?」
「どこにも問題はないよ。何か気になるところでもあった?」

あたしは、南門に向かいながらさっきのハンターギルドへの報告について瑶さんに聞いている。

「た、確かに嘘はありませんでした。でも……」
「わたし達が5級ハンターパーティーであることは間違いないよ。例えランクが実力に追い付いていなくてもね」
「でも、それで多くのハンターがしなくてもいい怪我をしたり、場合によっては……」
「そこは、ギルドの責任かな」
「え?」
「そうですよ。朝未様。1ハンターパーティーの報告を裏を取ることなく鵜呑みにしたとしたならギルドの責任です」

え?マルティナさんまで?

「朝未様。ハンターはそれぞれに秘匿したい情報を持っているものです。となれば、報告されたものより強力な戦力を想定するのは当然です。それを怠るのなら、それはギルドの怠慢です」
「え?報告内容に対してそんなことまで考慮するの?」
「当然です。そうでなくても偶然という因子はあります。より高位のハンターに確認させるのは当然のことです」
「いわゆる裏を取るってことかしら?」
「場合によっては、報告者の力量の確認や更なる事情聴取などもありえるのです。ですから、瑶様とミーガン様が報告直後にトランを出る日程にされたのは良き判断だったと思います。下手に付き合わされますと、場合によっては国が出てくる場合もありますので」
「うわ、それはたまらないわね。早くミーガンさんと合流してトランを出ましょ」




南門で待っていると、それほど待つことなくミーガンさんが馬車でやってきた。

「お待たせしました。少しばかり仕入れた商品の整理に手間取りまして」
「いえ、大して待っていませんし、依頼主であるミーガンさんを私達がお待たせするのよりずっと良いですから。むしろ丁度いい具合だと思います」

ミーガンさんと瑶さんの挨拶の間に馬車の中を覗くと、木箱が山のように積まれている。これを1日で整理したのなら時間が掛かっても当然ね。

「ミーガンさん、また随分と仕入れられましたね」
「ええ、商人としては、儲けられるのが分かっているのであれば出来る限り儲けるようにするべきですからね」

さすがは商人、可愛い顔はしていても、やり手ね。

「では、出発しましょう」

今日は瑶さんが号令をかけた。これが普通だと思うのよね。

「そういえば、今更ですが暁影のそらとしてのリーダーはどなたになるのでしょうか?」

ミーガンさんが、本当に今更な事を聞いて来たわね。大体聞くまでもなくリーダーは瑶さん……。あら?そういえばその辺り話し合ったことは無かったわね。でも普通に瑶さんでしょ。そう思って瑶さんを見ると、あたしを見てるわね。首を傾げて、今度はマルティナさんを見ると、マルティナさんもあたしを見てる。なんで?

「え?あたし達のリーダーって瑶さんでしょ?あたしずっとそのつもりでいましたよ」
「いや、私はずっと参謀ポジションのつもりでいたよ。むしろ朝未が、こうしたいって方向性をずっと出してきてたよね」
「え、瑶さん??」
「はい、わたしも朝未様をリーダーと思ってきていました」
「マルティナさんまで?」

え?ふたりともあたしをパーティーリーダーって思ってたの?

「でも、年齢とかいろいろな経験とか瑶さんのほうが……」
「だから、その辺りを利用してサポートしてきたつもりなんだよ」
「え?ええ?」
「わたしは、朝未様の奴隷ですし」
「それは形式的なものよね。マルティナさんの事は大事なパーティーメンバーだと思ってますよ」
「それでも、わたしは、朝未様に従います」

そ、そんな。いつの間にあたしがパーティーリーダーに?

「ぷっ、くくく。朝未、そんな深刻にならなくてもいいよ。そんなキッチリとしたものじゃなくても良いんだから。今まで通りに緩い感じで、みんなで話し合っていけばいい。何も責任を朝未に押し付けるつもりもないからね」

あたしが深刻に悩んでいたら、瑶さんがフォローしてくれた。

「もっとも、あたし達って別にリーダーがどうとかあまり関係ないですよね」
「う、うん、まあ、それでいいんじゃないかな」
「ええ、朝未様が、それでいいのでしたら」


「ええと、結局アサミ様がリーダーということでいいんですよね」

ミーガンさんに止めを刺されてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

オメガ

白河マナ
ファンタジー
七年前の戦争の傷痕を未だ残す、アラキア王国とゼノン公国。ゼノンのクレズ侵攻により勃発した大規模な両国の戦争は、魔法士たちの介入により終結する。戦いを終わらせる力となったアラキアの魔法士ギルド『シリウス』の一員であるライズ=ラスターは、終戦後まだ幼い一人娘のリットとともに辺境に移り住み、二人は素朴ながらも幸せな日々を過ごしていた。だが戦争で生じた大きな歪みは、今なお人々の心を蝕み続けている。ライズと同じく平和な日々に身を置いていたジード=スケイルは、ゼノンの陰謀により望まぬ選択に迫られる。囚われの妹のため、神機『ルイン』を持つ、ギルド史上最高の魔法士ライズの殺害を試みるが──時を経て、運命の歯車が再び回り始める。

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・

マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

容姿端麗文武両道なカップルは異世界でも悠々自適だが少し特殊だ。

仔犬
ファンタジー
容姿、才能、環境全てに恵まれたお供付きの4人はいつも優雅に過ごしていた。 ある日、月食を見ていた4人。 不思議な光に包まれ、気付けば彼女2人が居なくなっている。 目を開けた彼女達が空を見上げると月と太陽が隣り合うように並んでいるそこは魔法が使える異世界だった。 お供を連れて追いかける彼氏の2人。ばらばらになった彼らはそれでも余裕綽々で……? 愛たっぷり、優雅な、異世界の旅が始まる。

処理中です...