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力をつけるために
第114話 エンチャント練習
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「パン!」
「パン!」
「パン!」
・
・
・
何度となく繰り返し剣へ魔力を押し込む。その度に弾ける光。
「うーん、やり方が悪いのかしら」
「あ、あの先ほどからパンパンと弾けていますが、アサミ様のお身体に影響は無いのですか?」
「いえ、あたしはなんともないですよ。むしろ剣の方が……。あ、ひょっとしたら……。マルティナさん、あたしの新しい剣を持ってきてくれませんか」
「は、はい」
マルティナさんがあたしの剣を取りにパタパタと走っていく後姿を眺めながら、何度も何度も剣に魔力を押し込む。
何度押し込んでも「パン!」と弾けるばかりで留まってくれないのよね。でも、感じとしては剣に魔力が透って行って貯まり切れないで弾ける感じ。そう、いうなら、風船に空気を入れていくけどそれに耐えきれず、風船自体が割れるような感覚なのよね。剣は壊れてないけど。この鉄の剣だと何かが耐えられないみたい。いえ、ひょっとするとあたしが慣れれば鉄の剣でも魔力を込められるようになるのかもしれないけど、少なくとも今のままでは無理そうなのよね。だから、マルティナさんに新しい剣を持ってきてもらうことにした。
「アサミ様。お持ちしました」
「マルティナさん、ありがとうございます」
マルティナさんから新しい短剣を受け取り、さっそく魔力を込めていく。さっきまでの苦労がウソのように魔力が浸透していく。剣が青白い光を帯び、聖属性が付与されたのが感じられた。
「あ、なるほど。さっきは無理やり押し込んだけど……」
「アサミ様?」
「あ、ううん。ちょっとやり方がわかったかもしれなくて。ちょっと前の剣でやってみるわね」
あたしは、もう一度鉄の剣を持って魔力を込める。今までのように無理やり押し込むのではなく包み込んでしみこませるように。するとブルーメタルの短剣に込めるよりは抵抗を感じたけれど少しずつ魔力が浸透してくのを感じる。最終的にはブルーメタルの短剣に込めることが出来た魔力よりは少ないけれども魔力を込めることが出来た。
「出来た」
「アサミ様、凄いです」
「これなら多分、非実体のアンデッドにもダメージ通ると思う。ただ……」
「何か問題があるのですか?」
マルティナさんが首をかしげて聞いてきたので、あたしは持っていた2本の短剣をそっと床に置いて見せた。
「あ、これは……」
「わかります?あたしの手から離れるとすぐに纏わせていた魔力が散ってしまうんです」
それから、何度もやり直してみたのだけど、何度やってもあたしの手を離れるとただの短剣に戻ってしまった。
「うーん、これは何か根本的なものが違うのかしらね」
「朝未。根を詰めすぎるのは良くないよ。もう半日近く練習し続けているよ。少し休憩したらどうだい」
そう言いながら瑶さんがお茶を入れてきてくれた。
「ありがとうございます。中々うまくいかないです。あ、でも瑶さんもこの持っている剣に魔力を纏わせるのは練習してくださいね。役に立つと思いますから」
「わかった。私も練習してみるよ」
中々定着しないわね。魔力の流し方を変えたほうが良いのかしら。そんなことを考えながら練習をしていると剣に魔力を流し込もうとしている瑶さんが目に入った。苦戦しているみたいね。
「瑶さん。うまくいってないみたいですね」
「ん。うん、私は普段あまり魔法を使わないせいか魔力をうまく操作できなくてね」
ああ、そっか、普段の戦闘では瑶さん前衛で物理だものね。うーん、それならと、瑶さんが魔力を込めようとしている手にあたしの手を重ねてみる。
「え?朝未、何を?」
「えと、瑶さんの手を通してあたしが魔力を操作してみます。ひょっとしたら魔力の動きとかのヒントになるかもしれないので」
「ああ、なるほど。頼む」
瑶さんの手を通して剣に魔力を纏わせていく。包み込みしみ込ませるように。間に瑶さんの手が入っているぶん少し感じが違うけど、少しずつ、それでも確実に。
「瑶さん、魔力の動き分かりますか?」
「う、うん、なるほど、こういう感じなんだね。なんとなくわかる。今まで私はなんというか力ずくで押し込もうとしていたんだね。なるほどなるほど。朝未、ありがとう。今度は自分でやってみるよ」
あたしが重ねた手を離すと、瑶さんが自分でソロソロと魔力で剣を覆うように纏わせ始めた。まだ拙い感じだけど普段から魔法を使って魔力の扱いになれているあたしと近接戦闘をメインにしている瑶さんじゃ勝手が違うのは当然だものね。でも、この感じならそう時間をかけることなく成功しそう。その間にあたしは自分から離れたあとにも魔力が残るように工夫をしないとね。それにさっき瑶さんの手越しに剣に魔力を送った時の感じ、あれは補助魔法を使った時の感じに近かったのよね。もしかしたらという感じがある。せっかく思い付いたのなら試してみないとね。
まずは、普通に補助魔法を剣に対して使ってみる。何が良いかしらね。うん、選ぶ必要はないわね。全部かけてみよう。
「プロテクション、シェル、マッシブ、アクセル、ハイアジ、アキュラシー」
もし反射してこちらにダメージ来たら怖いのでリフレクだけはやめておいた。
「まさか本当に剣に補助魔法を掛けられるとは思わなかったわ」
「あの、アサミ様。剣に補助魔法を掛けられたようですが、それにどのような意味があるのですか?」
「これ自体には意味はありません。いや、ひょっとしたら後々意味があることが分かるかもしれませんけど、今はあたしの手が離れた状態であたしの魔力を纏わすための前段階の練習ですね」
マルティナさんが不思議そうな顔で見てくるけど、あたしだって自信があるわけじゃないもの。
「さ、次の段階に挑戦ね」
「パン!」
「パン!」
・
・
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何度となく繰り返し剣へ魔力を押し込む。その度に弾ける光。
「うーん、やり方が悪いのかしら」
「あ、あの先ほどからパンパンと弾けていますが、アサミ様のお身体に影響は無いのですか?」
「いえ、あたしはなんともないですよ。むしろ剣の方が……。あ、ひょっとしたら……。マルティナさん、あたしの新しい剣を持ってきてくれませんか」
「は、はい」
マルティナさんがあたしの剣を取りにパタパタと走っていく後姿を眺めながら、何度も何度も剣に魔力を押し込む。
何度押し込んでも「パン!」と弾けるばかりで留まってくれないのよね。でも、感じとしては剣に魔力が透って行って貯まり切れないで弾ける感じ。そう、いうなら、風船に空気を入れていくけどそれに耐えきれず、風船自体が割れるような感覚なのよね。剣は壊れてないけど。この鉄の剣だと何かが耐えられないみたい。いえ、ひょっとするとあたしが慣れれば鉄の剣でも魔力を込められるようになるのかもしれないけど、少なくとも今のままでは無理そうなのよね。だから、マルティナさんに新しい剣を持ってきてもらうことにした。
「アサミ様。お持ちしました」
「マルティナさん、ありがとうございます」
マルティナさんから新しい短剣を受け取り、さっそく魔力を込めていく。さっきまでの苦労がウソのように魔力が浸透していく。剣が青白い光を帯び、聖属性が付与されたのが感じられた。
「あ、なるほど。さっきは無理やり押し込んだけど……」
「アサミ様?」
「あ、ううん。ちょっとやり方がわかったかもしれなくて。ちょっと前の剣でやってみるわね」
あたしは、もう一度鉄の剣を持って魔力を込める。今までのように無理やり押し込むのではなく包み込んでしみこませるように。するとブルーメタルの短剣に込めるよりは抵抗を感じたけれど少しずつ魔力が浸透してくのを感じる。最終的にはブルーメタルの短剣に込めることが出来た魔力よりは少ないけれども魔力を込めることが出来た。
「出来た」
「アサミ様、凄いです」
「これなら多分、非実体のアンデッドにもダメージ通ると思う。ただ……」
「何か問題があるのですか?」
マルティナさんが首をかしげて聞いてきたので、あたしは持っていた2本の短剣をそっと床に置いて見せた。
「あ、これは……」
「わかります?あたしの手から離れるとすぐに纏わせていた魔力が散ってしまうんです」
それから、何度もやり直してみたのだけど、何度やってもあたしの手を離れるとただの短剣に戻ってしまった。
「うーん、これは何か根本的なものが違うのかしらね」
「朝未。根を詰めすぎるのは良くないよ。もう半日近く練習し続けているよ。少し休憩したらどうだい」
そう言いながら瑶さんがお茶を入れてきてくれた。
「ありがとうございます。中々うまくいかないです。あ、でも瑶さんもこの持っている剣に魔力を纏わせるのは練習してくださいね。役に立つと思いますから」
「わかった。私も練習してみるよ」
中々定着しないわね。魔力の流し方を変えたほうが良いのかしら。そんなことを考えながら練習をしていると剣に魔力を流し込もうとしている瑶さんが目に入った。苦戦しているみたいね。
「瑶さん。うまくいってないみたいですね」
「ん。うん、私は普段あまり魔法を使わないせいか魔力をうまく操作できなくてね」
ああ、そっか、普段の戦闘では瑶さん前衛で物理だものね。うーん、それならと、瑶さんが魔力を込めようとしている手にあたしの手を重ねてみる。
「え?朝未、何を?」
「えと、瑶さんの手を通してあたしが魔力を操作してみます。ひょっとしたら魔力の動きとかのヒントになるかもしれないので」
「ああ、なるほど。頼む」
瑶さんの手を通して剣に魔力を纏わせていく。包み込みしみ込ませるように。間に瑶さんの手が入っているぶん少し感じが違うけど、少しずつ、それでも確実に。
「瑶さん、魔力の動き分かりますか?」
「う、うん、なるほど、こういう感じなんだね。なんとなくわかる。今まで私はなんというか力ずくで押し込もうとしていたんだね。なるほどなるほど。朝未、ありがとう。今度は自分でやってみるよ」
あたしが重ねた手を離すと、瑶さんが自分でソロソロと魔力で剣を覆うように纏わせ始めた。まだ拙い感じだけど普段から魔法を使って魔力の扱いになれているあたしと近接戦闘をメインにしている瑶さんじゃ勝手が違うのは当然だものね。でも、この感じならそう時間をかけることなく成功しそう。その間にあたしは自分から離れたあとにも魔力が残るように工夫をしないとね。それにさっき瑶さんの手越しに剣に魔力を送った時の感じ、あれは補助魔法を使った時の感じに近かったのよね。もしかしたらという感じがある。せっかく思い付いたのなら試してみないとね。
まずは、普通に補助魔法を剣に対して使ってみる。何が良いかしらね。うん、選ぶ必要はないわね。全部かけてみよう。
「プロテクション、シェル、マッシブ、アクセル、ハイアジ、アキュラシー」
もし反射してこちらにダメージ来たら怖いのでリフレクだけはやめておいた。
「まさか本当に剣に補助魔法を掛けられるとは思わなかったわ」
「あの、アサミ様。剣に補助魔法を掛けられたようですが、それにどのような意味があるのですか?」
「これ自体には意味はありません。いや、ひょっとしたら後々意味があることが分かるかもしれませんけど、今はあたしの手が離れた状態であたしの魔力を纏わすための前段階の練習ですね」
マルティナさんが不思議そうな顔で見てくるけど、あたしだって自信があるわけじゃないもの。
「さ、次の段階に挑戦ね」
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