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異世界へ

第8話 え?ウサギ?

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「はあ、はあ。影井さん。少し休ませてください。インドア派のあたしにはちょっと辛いです」

あたしが音を上げると影井さんは”しまった”という顔をして近づいてきたわ。休ませてくれるかしら。

「もう少しで日が落ちる。せめて平地まで下りたいから」

そういうと影井さんが、あたしの手の竹槍と杖をリュックに括り付けてあたしに背負わせたのには驚いたわ。ずっしりと重いのだもの。次にあたしの持っていたバッグを引き取ると、影井さんはあたしの前で腰を下ろしたのは……

「えっと、影井さん。何を?」
「私の背中に乗って。最低限のところまで華さんを私が背負っていくから」

え?あたしをおぶって山を下るの?さすがにそれは申し訳ないし、少し恥ずかしいわ。

「いえ。少しだけ休ませてもらえば歩けますから」
「いや、それを疑っているわけじゃないんだよ。でもね、そろそろ時間がね。恐らくあと2時間もすると暗くなる。懐中電灯くらいは持っているけど、未知の世界で夜の森を歩くのは避けたいし、出来れば明るいうちに夜の準備もしたいから。明日からは平地を歩くことになると思うからよほどまで余裕が出るけど、今日だけは恥ずかしいかもしれないけどおぶさってくれるかな」

う、こんな理由をつけられたら断れないじゃないの。仕方ないわ。

「うう、わかりました。申し訳ないけどおんぶしてもらいます」

あたしは影井さんの背中に身体を預けることにした。大きな背中ね。あたしだけじゃなく、荷物も全部まるっとあたしごとおぶってグイグイ進んでいく影井さんはちょっとカッコイイって思っちゃった。
あら?影井さんが止まったわ。さすがに疲れたのかしら。ならあたしが下りれば少しは楽になるわよね。そんなことを考えていたら影井さんから何か緊張感のようなものが感じられるようになってきたわ。

「華さん。一度降りて。竹やりをとってもらえるかな」

何かしら、ちょっと不安な雰囲気ね。それでもあたしはリュックのベルトに止めてあった竹やりを外して影井さんの手にわたした。

「はい、竹やり。えと、何かいるんですか?」
「あ、ああ。感じとしては地球の犬程度の大きさの何かが3頭かな。華さんも竹やりを持って私の後ろから離れないように。あといざとなったらリュックは捨ててでも逃げるように」

そして逃げる方向をあたしに指示すると、じっと観察をつづけているみたいね。影井さんはこれまでも割とまじめな雰囲気だったけど、今は真剣さが違うわ。

「そんなに危なそうなの?」
「いや、そもそもこの世界の動物の危険性が分からないからね。最大限に警戒しておいた方がいいってだけだよ」

小声で話をしているところに現れたのは

「ウサギですね」
「ウサギだね」

あたし達の目の前にいる動物は本当にウサギにしか見えないわね。ただしサイズが地球で言うところの中型犬サイズなのだけれど。
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