137 / 166
137話
しおりを挟む
「この辺りかな」
「あたしの探知には何も入ってきてないけど、フェイの方はどう」
「僕の探知にも入ってないよ。でも、この炭化した木やその向こうのガラス化してる地面からすれば、そんなに前じゃないと思う」
僕とミーアは魔の森の深層の更に足を踏み入れている。前回、深層調査団の護衛としてきたときよりも更に奥、仮に竜の領域と呼んでいる場所だ。そして狙いは
「この辺りがファイアドラゴンの狩場なのは間違いないだろうね」
途中で狩ってきた上位魔獣を3体そこに置き、僕たちは更に別の場所に移動する。ファイアドラゴンの狩場から少しばかり離れたばしょにまた別に狩ってきた小型魔獣を置き、探知範囲内でそこに戻るのにそれほど時間の掛からない場所に移動して待機。
そうして待つこと4日目。僕の探知に魔獣の反応があった。撒き餌に引っかかってくれたようだ。僕達は風下から様子をうかがう。その新種上位新種魔獣は僕たちが餌として置いた小型魔獣を腹に収めるのに夢中で僕たちに気付く様子はない。ファイアドラゴンの狩場はやや風上だけれど、誘導するにはちょうどいい。僕もミーアも愛用の弓を手にしている。それでも矢に取り付けてあるのは鉄の鏃だ。ファイアドラゴンの狩場の方向に移動し、風上から狙う。ミーアが右前足を、僕が左目を。
矢で傷ついた魔獣が僕たちに気付き、迫ってくる。僕たちは慎重に間合いを測る。魔獣が僕たちに敵意を持ち続けるように。それでいて攻撃は届かないように。
そうして魔獣を誘導することしばし、ファイアドラゴンの狩場に誘導することに成功した。その狩場の半ば近くまで誘導したところで、矢を射る。今度は手加減なくそれでいて致命傷とならないように、四肢に矢を突き立て自由を奪う。ここまですれば、次からは比較的短時間で次々と魔獣がやってきた。その日のうちに10体を超える自由を奪った魔獣をファイアドラゴンの狩場に生かしたまま転がすことが出来た。
その状態でひたすら待つ。あまり近くにいては警戒されるかとも思ったけれど、竜が人間を警戒することは無いかと思い直し、直接攻撃対象とならないようにするため森の中にこそ潜む様にするものの狩場からあまり離れず目視である程度確認できる位置で待機する。
そうして更に待機すること3日。
「最初の魔獣がそろそろ動きが鈍いな」
僕のつぶやきにミーアが返してくる。
「そもそも、このやり方で釣られてくれるの。ウィンドドラゴンの時にも思ったんだけど、真竜って結構頭良いでしょ」
「頭が良いのは確かだね。でも、それと同時に自分が負けるわけがない、自分を傷つけられるものはいない、少なくとも人間に傷つけられるなんて全く思っていないのも間違いないだろ」
そんな話をしているところに
「ギュゥラララー」
頭の上から聞こえて来た。
「来たみたいだね」
僕たちはオリハルコンの鏃をつけた矢を取り出した。ここからはおしゃべりは無し。風下から近寄りファイアドラゴンの狩場と森の境目で様子をうかがう。いた。血の赤の鱗で全身を覆い、背に翼を持つファイアドラゴンで間違いない。そして思った通り周囲への警戒は薄い感じだ。よほど腹が減っているのだろうガツガツと僕たちが置いた魔獣を口にしている。
僕がミーアに目を向けるとミーアも僕に視線を向けていた。アイコンタクトをし頷き合う。ファイアドラゴンが餌の魔獣に目を向けた。そのタイミングで僕が右目、ミーアが左目を狙い射る。僕たちに攻撃されるなどと思っていなかったのだろう。矢は狙いたがわず両目を貫いた。そこで僕たちは剣を抜いた。僕は両手剣を、ミーアは両手に片手剣を持ちファイアドラゴンに襲い掛かる。オリハルコンの剣特有の金色の燐光を放つ刃をもってその翼を切り落とす。暴れるファイアドラゴンの尾の付け根を狙い全力で振り切る。今の僕達の剣はわずか数合で尾を切り取った。尾を失いバランスを崩したファイアドラゴンの後脚を左右から切りつける。やみくもに放たれるブレスと火竜の魔法に周辺の木々は焼き尽くされ、地面は溶解した。ウィンドドラゴンにより受けた祝福で僕達の身体は人としての限界を超えて強化されているけれどブレスだけはいけない。僕たちはそれらの合間を縫いその四肢を狙う。尾を失い、四肢にダメージを負ったファイアドラゴンは、それでも巨体をうねらせ暴れる。それでも徐々にそのダメージにより動きが鈍ってきた。念のため僕が囮になる、ファイアドラゴンの正面から剣を一振りする。そうして完全にファイアドラゴンの敵意が僕に向いたところで、ミーアがその両手に持つ剣をファイアドラゴンの首に振り下ろした。僕へ向けてのブレスの予備動作に入っていたファイアドラゴンだったけれど、さすがに耐えきれずミーアに振り向く。そのスキを逃さず両手剣をその持ち上がった喉に突き刺し切り開く。僕とミーアのどちらかにも敵意を固定できずにいるファイアドラゴンに対し僕たちは冷静に剣を振るう。一見一方的な戦闘に見えるけれど、相手は真竜。わずかな油断が1度のミスがあればあっという間に僕達が蹂躙される側になるだろう。最後まで気を抜くことは出来ない。終始先手を取りながら剣を振り、夕方空が茜色に染まる中ファイアドラゴンの首を落とすことが出来た。ファイアドラゴンはその見えない目で最後のひと睨みをすると息を引き取った。そして、ウィンドドラゴンを倒したときと同じ何かキラキラとしたものが飛び散る。違いと言えばウィンドドラゴンの時にはほとんど無色だったそれが鮮やかな赤色なことくらいだろう。それを自らの意思で受け入れる。試しに火竜の魔法をイメージし放つ。やはりとんでもない範囲の森が焦土と化した。
「あたしの探知には何も入ってきてないけど、フェイの方はどう」
「僕の探知にも入ってないよ。でも、この炭化した木やその向こうのガラス化してる地面からすれば、そんなに前じゃないと思う」
僕とミーアは魔の森の深層の更に足を踏み入れている。前回、深層調査団の護衛としてきたときよりも更に奥、仮に竜の領域と呼んでいる場所だ。そして狙いは
「この辺りがファイアドラゴンの狩場なのは間違いないだろうね」
途中で狩ってきた上位魔獣を3体そこに置き、僕たちは更に別の場所に移動する。ファイアドラゴンの狩場から少しばかり離れたばしょにまた別に狩ってきた小型魔獣を置き、探知範囲内でそこに戻るのにそれほど時間の掛からない場所に移動して待機。
そうして待つこと4日目。僕の探知に魔獣の反応があった。撒き餌に引っかかってくれたようだ。僕達は風下から様子をうかがう。その新種上位新種魔獣は僕たちが餌として置いた小型魔獣を腹に収めるのに夢中で僕たちに気付く様子はない。ファイアドラゴンの狩場はやや風上だけれど、誘導するにはちょうどいい。僕もミーアも愛用の弓を手にしている。それでも矢に取り付けてあるのは鉄の鏃だ。ファイアドラゴンの狩場の方向に移動し、風上から狙う。ミーアが右前足を、僕が左目を。
矢で傷ついた魔獣が僕たちに気付き、迫ってくる。僕たちは慎重に間合いを測る。魔獣が僕たちに敵意を持ち続けるように。それでいて攻撃は届かないように。
そうして魔獣を誘導することしばし、ファイアドラゴンの狩場に誘導することに成功した。その狩場の半ば近くまで誘導したところで、矢を射る。今度は手加減なくそれでいて致命傷とならないように、四肢に矢を突き立て自由を奪う。ここまですれば、次からは比較的短時間で次々と魔獣がやってきた。その日のうちに10体を超える自由を奪った魔獣をファイアドラゴンの狩場に生かしたまま転がすことが出来た。
その状態でひたすら待つ。あまり近くにいては警戒されるかとも思ったけれど、竜が人間を警戒することは無いかと思い直し、直接攻撃対象とならないようにするため森の中にこそ潜む様にするものの狩場からあまり離れず目視である程度確認できる位置で待機する。
そうして更に待機すること3日。
「最初の魔獣がそろそろ動きが鈍いな」
僕のつぶやきにミーアが返してくる。
「そもそも、このやり方で釣られてくれるの。ウィンドドラゴンの時にも思ったんだけど、真竜って結構頭良いでしょ」
「頭が良いのは確かだね。でも、それと同時に自分が負けるわけがない、自分を傷つけられるものはいない、少なくとも人間に傷つけられるなんて全く思っていないのも間違いないだろ」
そんな話をしているところに
「ギュゥラララー」
頭の上から聞こえて来た。
「来たみたいだね」
僕たちはオリハルコンの鏃をつけた矢を取り出した。ここからはおしゃべりは無し。風下から近寄りファイアドラゴンの狩場と森の境目で様子をうかがう。いた。血の赤の鱗で全身を覆い、背に翼を持つファイアドラゴンで間違いない。そして思った通り周囲への警戒は薄い感じだ。よほど腹が減っているのだろうガツガツと僕たちが置いた魔獣を口にしている。
僕がミーアに目を向けるとミーアも僕に視線を向けていた。アイコンタクトをし頷き合う。ファイアドラゴンが餌の魔獣に目を向けた。そのタイミングで僕が右目、ミーアが左目を狙い射る。僕たちに攻撃されるなどと思っていなかったのだろう。矢は狙いたがわず両目を貫いた。そこで僕たちは剣を抜いた。僕は両手剣を、ミーアは両手に片手剣を持ちファイアドラゴンに襲い掛かる。オリハルコンの剣特有の金色の燐光を放つ刃をもってその翼を切り落とす。暴れるファイアドラゴンの尾の付け根を狙い全力で振り切る。今の僕達の剣はわずか数合で尾を切り取った。尾を失いバランスを崩したファイアドラゴンの後脚を左右から切りつける。やみくもに放たれるブレスと火竜の魔法に周辺の木々は焼き尽くされ、地面は溶解した。ウィンドドラゴンにより受けた祝福で僕達の身体は人としての限界を超えて強化されているけれどブレスだけはいけない。僕たちはそれらの合間を縫いその四肢を狙う。尾を失い、四肢にダメージを負ったファイアドラゴンは、それでも巨体をうねらせ暴れる。それでも徐々にそのダメージにより動きが鈍ってきた。念のため僕が囮になる、ファイアドラゴンの正面から剣を一振りする。そうして完全にファイアドラゴンの敵意が僕に向いたところで、ミーアがその両手に持つ剣をファイアドラゴンの首に振り下ろした。僕へ向けてのブレスの予備動作に入っていたファイアドラゴンだったけれど、さすがに耐えきれずミーアに振り向く。そのスキを逃さず両手剣をその持ち上がった喉に突き刺し切り開く。僕とミーアのどちらかにも敵意を固定できずにいるファイアドラゴンに対し僕たちは冷静に剣を振るう。一見一方的な戦闘に見えるけれど、相手は真竜。わずかな油断が1度のミスがあればあっという間に僕達が蹂躙される側になるだろう。最後まで気を抜くことは出来ない。終始先手を取りながら剣を振り、夕方空が茜色に染まる中ファイアドラゴンの首を落とすことが出来た。ファイアドラゴンはその見えない目で最後のひと睨みをすると息を引き取った。そして、ウィンドドラゴンを倒したときと同じ何かキラキラとしたものが飛び散る。違いと言えばウィンドドラゴンの時にはほとんど無色だったそれが鮮やかな赤色なことくらいだろう。それを自らの意思で受け入れる。試しに火竜の魔法をイメージし放つ。やはりとんでもない範囲の森が焦土と化した。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
[完結:1話 1分読書]幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
無責任
ファンタジー
<毎日更新 1分読書> 愛する幼馴染を失った不遇職の少年の物語
ユキムラは神託により不遇職となってしまう。
愛するエリスは、聖女となり、勇者のもとに行く事に・・・。
引き裂かれた関係をもがき苦しむ少年、少女の物語である。
アルファポリス版は、各ページに人物紹介などはありません。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
この物語の世界は、15歳が成年となる世界観の為、現実の日本社会とは異なる部分もあります。
とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~
剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り
あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。
しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。
だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。
その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。
―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。
いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を
俺に教えてきた。
―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。
「――――は!?」
俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。
あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。
だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で
有名だった。
恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、
あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。
恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか?
時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。
―――だが、現実は厳しかった。
幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて
出来ずにいた。
......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。
―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。
今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。
......が、その瞬間、
突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり
引き戻されてしまう。
俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が
立っていた。
その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで
こう告げてくる。
―――ここは天国に近い場所、天界です。
そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。
―――ようこそ、天界に勇者様。
...と。
どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る
魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。
んなもん、無理無理と最初は断った。
だが、俺はふと考える。
「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」
そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。
こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。
―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。
幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に
見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと
帰還するのだった。
※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる