12 / 166
12話
しおりを挟む
聖都を散策していると様々な店、工房が目に付く。僕たちのような狩人だと、つい目を止めてしまうのはやはり武器屋、鍛冶屋、道具屋、そしてひっそりと隠れるように建っている魔道具屋だ。基本的には遊ぶつもりでいても命を預ける様々な物にはやはり目を奪われる。
「ミーアも気になるよね」
「フェイも目が追ってるもの」
今はお金も多少ある。昼を少し過ぎたところなので時間にも余裕がある。
「少し見ていこうか」
最初に入ったのは魔道具屋。有用な魔道具があれば狩りの際にずいぶんと楽になる。水を生む革袋。見た目より多くのものが入り重さも軽減してくれる魔法の鞄。水が掛かっても消えない明かりを灯す宝玉。振りかけるか飲むかすればいくばくかの怪我を直してくれる魔法薬。有用ではあるけれどその製造や素材集めの難易度からどれも非常に高価だ。僕たちであれば魔法の鞄が一番欲しいものになる。水は魔法の鞄があれば余裕をもって携帯できるし、なんなら狩場で水を採取してもいい。明かりは僕たちの加護に夜目に加え探査があるので特別には必要ない。魔法薬はそれほど遠出して狩りをするわけでもない上にそんな怪我をするような格上を狩りにいかないので僕たちはほぼ怪我をしない。なので僕たちが魔道具屋で気になったのは魔法の鞄だけだ。形は背負い型、肩掛け型、ポシェット型等で形より容量によって値段が変わるようだ。とは言ってもそれほど滅茶苦茶な量が入るわけでもないらしい。荷車1台分を肩掛け鞄に入れられるのがここの魔道具屋にある中では最大のようだ。それでも十分に大きい。狩りで獲物を入れればこの鞄が一つあるだけで持ち帰られる量が3倍近くになる。値段もかなりなものでこの鞄1個で中金貨1枚。ちょっとした家が建つ金額だ。それでも僕とミーアにとっては狩りの効率が3倍になるのは大きい。中層の魔獣を少し頑張って狩れば元をとるのに半年も掛からないだろう。そうでなくても獲物や道具類を魔法の鞄に入れられるというのは狩りでの移動の負担が大幅に減る。僕はミーアに
「これどう思う」
「魔法の鞄じゃない。便利だろうけど。お値段も素敵なんじゃない」
「中金貨1枚でこの鞄の中に荷車1台分入っちゃうらしい」
目をみはり、迷うミーアに
「今回の報酬は天からの授かりものみたいなものだからさ。こいうものに使うのも良いんじゃないかと思うんだけど」
そういう僕の言葉にミーアも頷いて
「うん、良いと思う」
そこで僕は店の奥にいる店主と思われる年配の男性に声を掛ける。
「これ欲しいんですが、確認させてもらっていいですか」
魔法の鞄を買った僕たちはニコニコ顔の魔道具屋の店主に見送られて店を出た。次は道具屋の入り口をくぐる。ここはごく普通の道具屋だった。冒険者ならばここで消耗品の補充をするのだろうなと思いながら見て回るものの、僕たちにとって特に必要なものは見当たらず、店主に挨拶だけをして店を出た。
「ミーア。ちょっと休憩しようか」
ミーアを誘って屋台による。ワイルドボアの串焼きを2本買って、横に準備されているベンチへ。手にした串焼きの1本をミーアに渡しながら
「こういうのってさ、村だとないよな」
「うん、そうね。だいたい肉自体さ、あたしたちは狩ってくるからいつも食べるけど。他の人たちはたまにしか食べてないし。食べるときだって少しの肉を家族で分け合ってる感じだものね」
「それが聖都では普通に屋台で売られてて、すごいなって」
なんとなく始めた会話だけど、僕自身何が言いたいのかわからない。でも
「僕たちって幸せだよね」
「そうね」
僕はミーアの嬉しそうな声を聞いて、串焼きを齧りながら、道行く人をぼんやりと眺めていた。
「ミーアも気になるよね」
「フェイも目が追ってるもの」
今はお金も多少ある。昼を少し過ぎたところなので時間にも余裕がある。
「少し見ていこうか」
最初に入ったのは魔道具屋。有用な魔道具があれば狩りの際にずいぶんと楽になる。水を生む革袋。見た目より多くのものが入り重さも軽減してくれる魔法の鞄。水が掛かっても消えない明かりを灯す宝玉。振りかけるか飲むかすればいくばくかの怪我を直してくれる魔法薬。有用ではあるけれどその製造や素材集めの難易度からどれも非常に高価だ。僕たちであれば魔法の鞄が一番欲しいものになる。水は魔法の鞄があれば余裕をもって携帯できるし、なんなら狩場で水を採取してもいい。明かりは僕たちの加護に夜目に加え探査があるので特別には必要ない。魔法薬はそれほど遠出して狩りをするわけでもない上にそんな怪我をするような格上を狩りにいかないので僕たちはほぼ怪我をしない。なので僕たちが魔道具屋で気になったのは魔法の鞄だけだ。形は背負い型、肩掛け型、ポシェット型等で形より容量によって値段が変わるようだ。とは言ってもそれほど滅茶苦茶な量が入るわけでもないらしい。荷車1台分を肩掛け鞄に入れられるのがここの魔道具屋にある中では最大のようだ。それでも十分に大きい。狩りで獲物を入れればこの鞄が一つあるだけで持ち帰られる量が3倍近くになる。値段もかなりなものでこの鞄1個で中金貨1枚。ちょっとした家が建つ金額だ。それでも僕とミーアにとっては狩りの効率が3倍になるのは大きい。中層の魔獣を少し頑張って狩れば元をとるのに半年も掛からないだろう。そうでなくても獲物や道具類を魔法の鞄に入れられるというのは狩りでの移動の負担が大幅に減る。僕はミーアに
「これどう思う」
「魔法の鞄じゃない。便利だろうけど。お値段も素敵なんじゃない」
「中金貨1枚でこの鞄の中に荷車1台分入っちゃうらしい」
目をみはり、迷うミーアに
「今回の報酬は天からの授かりものみたいなものだからさ。こいうものに使うのも良いんじゃないかと思うんだけど」
そういう僕の言葉にミーアも頷いて
「うん、良いと思う」
そこで僕は店の奥にいる店主と思われる年配の男性に声を掛ける。
「これ欲しいんですが、確認させてもらっていいですか」
魔法の鞄を買った僕たちはニコニコ顔の魔道具屋の店主に見送られて店を出た。次は道具屋の入り口をくぐる。ここはごく普通の道具屋だった。冒険者ならばここで消耗品の補充をするのだろうなと思いながら見て回るものの、僕たちにとって特に必要なものは見当たらず、店主に挨拶だけをして店を出た。
「ミーア。ちょっと休憩しようか」
ミーアを誘って屋台による。ワイルドボアの串焼きを2本買って、横に準備されているベンチへ。手にした串焼きの1本をミーアに渡しながら
「こういうのってさ、村だとないよな」
「うん、そうね。だいたい肉自体さ、あたしたちは狩ってくるからいつも食べるけど。他の人たちはたまにしか食べてないし。食べるときだって少しの肉を家族で分け合ってる感じだものね」
「それが聖都では普通に屋台で売られてて、すごいなって」
なんとなく始めた会話だけど、僕自身何が言いたいのかわからない。でも
「僕たちって幸せだよね」
「そうね」
僕はミーアの嬉しそうな声を聞いて、串焼きを齧りながら、道行く人をぼんやりと眺めていた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗
神尾優
ファンタジー
友人や先輩達と共に異世界に召喚、と言う名の誘拐をされた桂木 博貴(かつらぎ ひろき)は、キャラクターメイキングで失敗し、ステータスオール1の最弱勇者になってしまう。すべてがステータスとスキルに支配された理不尽な異世界で、博貴はキャラクターメイキングで唯一手に入れた用途不明のスキルでチート無双する。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる