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#01

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 春の教室は未来の話で埋め尽くされている。
 目の前で繰り広げられる興味を持てない話を入れるスペースが、頭の中に残っていない。面倒や退屈が増殖し続ける頭の中に、ストロボライトのように明滅する光。それが何かを思い出せそうで思い出せず、光村崇史はシャツの袖のボタンを親指でいじりながら時間を潰している。
「十代の時に好きだったものは、一生好きなものです。これだと思える、自分を前へ走らせてくれるような大好きなものを見つけて下さい」
 この四月、二年生の時と同じく担任になった小谷野先生は、最初のホームルームの挨拶でそんな話をした。
「学校は勉強だけをする場所ではありません。君達は受験がない分、好きなことをのびのびやれるチャンスです。最後の一年を最高の一年にしましょう」
 大人の在り来たりの言葉はもう聞き飽きている。先生が思ってるほど、ここにいるみんなは純粋じゃないだろう。親や先生の言うことが全部真実で、その真偽を確かめずに全てを信じて抗わないなんて、ありえない。もうそんな年でもないのに、大人はまだ自分の影響力を信じてる。馬鹿みたいだ。崇史の目にはそんな風に写っている。
 その小谷野先生と他に誰もいない放課後の教室で、机二つ分を挟んで向かい合わせに座っている。こうやって二人きりで話すチャンスを、崇史はずっと待っていた。彼の眼鏡のレンズには自分の姿が映っているが、彼の目には本当に自分が映っているのだろうか。
「うん、去年までの成績は問題ないし、このまま頑張れば進路調査票の希望通りの学部に進めるよ」
 小谷野は、数日前に提出した進路調査票やファイルに目を落としたまま話を進めていて、なかなか崇史を真正面から見ようとしない。どうしたらあの時のように、振り向かせられるのだろう。こういった畏まった雰囲気は苦手なので、早く終わって欲しくてそわそわと落ち着かない。窓の外では強い風がわずかに残った桜の花を奪い去るように散らしている。遠くから聞こえる吹奏楽部や運動部の練習の音。何もかもがまぶしすぎて、今の自分には不相応だと思う。
 進路希望票のプリントを埋めるのは、そう難しいことではない。だけどそこに書かれている言葉は全て「こう書けば親や教師が文句を言わない平均点の回答」で、何の意味も持たない記号で埋めているのと同じだ。そこに本心は一つもない。書くべき本心を持っていないのだから。夢や希望なんて綺麗事に騙されるほど、もう子供じゃないのに。しかし自分と同じだと思っていた同級生たちが、今まで一言も口にしていなかったような将来の展望を語り、空欄を鮮やかに埋めていく。その様子を見て、崇史だって何も感じていないわけではないのだ。
「第一志望が経済学部、第二志望が商学部、第三志望が文学部だね。あと、これは大事なことなんで聞いておきたいんだけど。光村は将来的にこういう方向に進みたい、こういう仕事をしたいっていうのはあるのかな」
「……会社員になれればいいかと」
 小谷野は少し呆れたような半笑いのような表情を浮かべる。そのリアクションは予想通りだ。
「なんとなく決めたとか友達と同じとこでいいやとか、それで入った学部がやっぱり自分に合ってなかったって、中退する学生が毎年いますから。自分の将来なんだから、自分でよく考えて決めないと。重要ですよ」
 そんなことくらい、わかってるんだけど。崇史は正しい答えを取り繕う気力もなく、はい、と単純な返事をして頷く。
「好きなものは、なにかな?」
 崇史は膝の上に乗せた手を、ぎゅうと握る。こういう質問は嫌いなんだ。
「将来就きたい仕事に就けるかどうかなんて、まだわからないじゃないですか。大体何が自分に向いてるのかとか、そんなの……」
 そんなのわからない。好きなものなんて、まだこの年齢で決められるはずない。そう言いかけて、口をつぐんだ。
 崇史が通うこの高校は私立大学の付属高校で、問題が無ければ八割の生徒が大学部へそのまま進学出来る。大学受験をしなくて済むし、同じ中学の友達が行きたいと言うから。そういう理由で選んだ。
 それなりの進学校でもあるがスポーツ強豪校として有名で、それを目当てに全国からスポーツ推薦で生徒が集まる。今も同じクラスの友達の平井は中学の頃から吹奏楽部で、ここの吹奏楽部は強いからとずっと進学を目標にしていた。運動部と同じくかなり厳しいらしく、いつも部活ばかりで、あまり遊べなくなってしまった。全国制覇したいとかプロになりたいとか、好きなものや目標がはっきりしている同い年の人間が、ここにはたくさんいる。言い訳にはならない。
 とりあえず良い学校に進学しておけば、選択肢が広がって、自分にもその内何か見つかるんじゃないかと思っていた。何も変わらないまま三年生になってしまった。取るに足らない人間であることは、とても心地が良かった。誰も自分に注目しないことは、面倒事に巻き込まれず苦労も困難も知らずに生きられるから。そんな呑気な時間はもう終わりだと急に言われても困る。何も持っていない、でもそれを見抜かれたくない。
 息を整えてから、崇史は小谷野をまっすぐ見据えて口を開いた。
「好きなことをしなさいって大人はみんな言いますけど。本当に好きなことをやったら大人は怒りますよね。子供だ甘えだって、妥協して他の大人の望むことを選べば、大人の仲間として認めてやるみたいな……。それでは、大人の言うことに従う以外、何にも選べません」
 いつもは大人しい崇史には珍しく厳しい言葉に少々面食らったのか、小谷野は思わず顔を上げる。ようやく目が合った。
「そうだね。光村の言うことにも一理あると思うよ。だけど、自分の将来の選択に責任を持たなくていいわけじゃないです。自分が選んだ人生の方が、後悔はないはずです」
 今したいのはそういう話じゃないんですよ。そう苛つきながらも、崇史は小谷野から目を離さない。丸まっていた背筋がだんだんと伸びていく。ぶらつかせていた足元を、しっかりと床につける。
「じゃあ先生の好きなものって、なんですか?」
 こういう質問って、大人は嫌いだろう。揚げ足取りとかへりくつとか、なんでも言えばいい。怒られる覚悟は出来てる。
「だって、好きなものがあってそれに向かって頑張れとか言うなら、先生はどうだったんですか。高校生の頃から今の未来を予測してたんですか」
 小谷野はちらりと壁の時計を見てから口を開いた。
「先生はねえ……高校生の時は写真をやっていて、コンテストの学生部門で入賞したし、写真の雑誌にも載りました。でも大学に入ってから思うように撮れなくなってしまって。もっと上手い人に出会ったり……その人は今はプロとして活躍してます。先生には写真で食べていく技量も覚悟もないなと。写真は今も好きですし、写真部の顧問もしてます。好きなものは心を豊かにしてくれます」
 予想外に正直すぎる答えに崇史は一瞬怯んだ。なんだよ、もっと打ち返しやすい球を投げて来いよ。
「好きなものが見つからなかったら、どうしてくれるんですか。先生だって努力しても駄目だったわけでしょう。見つかってもどうせ叶わないで無駄に終わるんですよ。将来に期待だけさせておいて、夢を掴めとか煽って。そんなの無責任じゃないですか」
 こんな風な言い方しなくても。頭ではわかっているのに、なんだかいらいらしておさまらなくて。この舌はいつも正しくない言葉ばかりを吐き出していく。言いたいはずの言葉はずっと喉に引っかかったまま。
「無駄じゃないよ」
 小谷野はいつもより少し低い声で言い放つ。
「俺には、無駄じゃなかった。あの時出来ることは全てやったつもりだから、後悔はないよ」
 その言葉に、頭が急に醒めた。子供を諭すような言い方じゃない。先生という衣を脱ぎ捨てた、素の小谷野を垣間見たような気がした。
「学校だけが君の人生じゃありませんから。学校が全てだと、卒業した時に何もなくなっちゃいますよ。大学生活を、自分の芯となるものを探すための時間と考えてもいいですね。その為にこれから一緒に考えていきましょう。迷う時間はまだあります」
 また先生に戻ってしまった。さっきまで正面から向き合っていた顔も逸らされた。
「あ、十五分経ちましたね。じゃあ、進路指導はこれで終わりにしましょう。帰る時に次の人に声をかけてくださいね」
 崇史はスクールバッグを持って立ち上がると、ずっと小谷野に言えないでいた言葉を、ついに口にした。頭の中で明滅する光の正体を掴むための言葉。
「……先生、僕の写真撮ってましたよね」
 今度は小谷野が口ごもる番だった。
「去年の文化祭の日、旧校舎の螺旋階段のとこで。あの写真、どうしましたか」
 撮ってないなんて言わせない。だって、目が合った。
 小谷野は一呼吸おいてから、いつも通りの表情いつも通りの口調で言う。
「写真部と先生が文化祭期間中に撮った写真は、終わった後に全て展示して販売するって、ホームルームでお知らせしましたよ」
「それ、頂けますか」
「いいですよ、モデル料としてタダであげます。明後日の木曜、写真部の部室へ来てください。毎週木曜日が写真部の活動日ですから」
 捕らえようと待ち構えていた瞬間が、ようやく来た。崇史はその手応えを感じながら、教室を後にした。



 旧校舎の螺旋階段を上がっている最中に、ふと顔を上げた瞬間、ファインダー越しに目が合った。世界の全てを変えてしまうスイッチのように、シャッターボタンを押されて、魂が抜かれてしまったんだと思った。
 あれは去年の秋の文化祭の日、崇史は友達に呼ばれて待ち合わせ場所へ向かう途中だった。階段を降りてくる揃いの衣装を着て風船を持った女の子たちの人波に押されながら、視線を感じて顔を上げると、写真を撮られていることに気づいた。階段を上りきったところでカメラを構えていたのは担任の小谷野で、お互い特に話すこともなくそのまますれ違ってしまった。
 あの時は、何かがわかりそうだった。靄のように自分を包み込む気怠さの中で一瞬光った稲妻。そんな瞬間。ゆるがない何か。それを早く手に入れたいと願いながらも、何を見てもこんなんじゃないと思う。自分の身体を貫くようなそれまでの人生を粉々にしてしまうような、身が震えるような強い力を持つ何かに出会うのを待っている。



 進路指導を終えて社会科教員室へ戻ると、小谷野浩介は思わずネクタイを緩めた。変に喉が渇いている。子供は子供にしかない鮮やかな嗅覚で、大人の嘘や欺瞞を見破るから怖い。自分も持っていたはずのその感覚は、岩が川を下る過程で削られるごとく丸くなって、使い物にならなくなってしまった。エスカレーター校なのだから進路指導もさほど大変ではないはずなのだが、初めての三年生の担任で勝手がよく分からない。そこへきて、あれだ。光村が写真のことを覚えていたことに、背筋が凍った。しかしいずれこんな日が来ることを、わかっていたようにも思う。自ら押したシャッターが全ての引き金となっているのだから。
 思春期特有の溌剌さとも物憂いとも無縁な生徒は、別に珍しくない。だけど少し臆してしまう。淡い赤に染まった涙袋が白い肌に対比されて目立つ、アーモンド型の目。大人の言うことの裏側を見破ってやろうと凝らすような目。案外本人は無自覚だったりするのだけれど。あまりじっと見ないで欲しい、と思いながらもその視線が嫌いでもない。担任するクラス四十人の、受け持ちの生徒ならもっと大勢の中の一人。光村崇史は、去年の文化祭の日までは特に気に留めるような生徒ではなかったはずだった。
 だけどあの瞬間、シャッターを切らずにはいられなかった。撮らなければならない光景だと直感が押させた。そんな衝動はあまりにも遠く、小谷野が自身の才能を見限った頃から長らく離れていたものだった。小谷野自身、あの感覚を再び手にしたいと思っている。これがそのチャンスなのではないか。とはいえ、地獄を見るような気持ちでもあるのだ。おそらく簡単には手に入れさせてもらえない幸福だろう。
 パソコンの中の「文化祭」フォルダから、例の写真を開く。単純に構図として面白いんじゃないかと思い、薄暗い旧校舎の螺旋階段を見下ろす形でカメラを構えていた。俯いたままゆっくり階段を上がってくる一人の少年と、今にも弾けそうな生命力を全身で発しながら駆け下りていく女の子たち。モチーフとしていい対比だとシャッターを連続して切った。振り返って彼女たちを見て、また俯いて、ふと顔を上げる。ファインダー越しに目が合ったその少年の眼差しは、二度と取り戻せないと思っていた感覚を甦らせるのに十分だった。
 小谷野は今の自分が撮る写真が、小手先の技術でそれなりに見栄えのする程度のものだと自覚している。目の前に広がる世界の一瞬も見逃したくない気持ちで撮っていた学生の頃には、もう戻れない。だけど、あの瞬間は違った。裏切られるのではと思いながらも、それに縋りつきたい。



 木曜日の放課後、崇史は約束通り写真部の部室へ向かった。いつもはホームルームが終わった後、吹奏楽部の練習へ急ぐ同級生の平井と別れてから、そのまますぐに帰ってしまう。放課後の学校の雰囲気は新鮮だ。運動部はスポーツ推薦で入学した生徒ばかりで、普通に部活動を楽しみたい程度では、レギュラーどころか練習にもついていけない生徒がほとんどだ。一応文化部もあるのだが目立たず、どこで活動しているのかも気にしたことがなかった。文化部の中では一番の花形である吹奏楽部は、あまりの厳しさに毎年退部者が多数出ると平井から聞いている。そういったことも含め、崇史は課外活動に興味が持てない。そもそもが無気力なのだ。
 何かに熱くなるのは格好悪い。綺麗事ばかり言うのは馬鹿らしい。斜に構えて嘲笑うのもみっともなくてやりたくない。でも、どういうものを見れば自分はかっこいいと感じられるのかもわからない。だからどういう態度で生きていればいいのか、全然わからず戸惑っている。何も得ない代わりに何も失わない人生だって、別にいいじゃないか。そうやってやり過ごしてきた。
 入学三年目にして初めて立ち入るクラブハウス棟の四階に、写真部の部室はあるという。私立なんだからエレベーターくらい作れよな、と階段を上がり、各部室の前に掲げられたプレートを順番に読む。手芸部、文芸部、映画部、クイズ研究会。そんなのあったのか、と今更驚く。インターアクト部って一体なんだ。迷路に迷い込んだような錯覚を受けながら、写真部の部室を見つけた。
 写真部の部室のドアを軽くノックしてから開けると、既に数名の生徒がいて一斉に崇史の方を見た。「入部見学?」と声をかけてきたのは、一年生の時に同じクラスだった椎野だ。顔見知りがいて少し安心する。
「小谷野先生に去年の文化祭の写真が欲しいって言ったら、ここに来いって」
 なんだ、とみんな少しがっかりした様子をみせる。文化祭ならアルバムがあるよ、と椎野が棚の中からファイルを出してくれた。部員がそれぞれカメラを持って学校内を回った写真は、撮影者ごとに微妙なトーンの違いがある。崇史が友達とスマートフォンでたまに撮るような、気負いのないスナップ風のものはない。善し悪しはわかりかねるが、これらの写真が作意を持って撮られたものだとわかる。
「結構ちゃんとしてんだね」
「昔は本格的だったらしいけど、今はかなり緩いよ。みんなデジタルで、フィルム使ってんの俺だけ」
 椎野は父親のお下がりだというコンパクトカメラを見せてくれた。崇史もさすがにフィルムを入れるカメラの存在は知っているけれど、実物を間近で見るのは初めてだった。
「フィルムは金がかかるしね。デジカメも使ってるけど、ここぞという時の撮影はフィルムで撮りたい」
「写真なんてスマホで撮ればいいじゃん」
「それはね、魚なんて竿じゃなくて手掴かみで捕ればいいって言ってんのと一緒だよ」
「一緒じゃないと思う、それはさすがに違う」
「でも仕上がりは全然別物だよー。光の色合いとか滲みとか、フィルム特有の感じが出るもん」
 あまりピンとこないまま崇史がアルバムを捲っていくと、一番後ろの数ページは明らかに他のページより洗練された雰囲気のものが並んでいる。おそらく小谷野が撮ったものなのであろう。淡く色を失っていくような、柔らかな光に照らされた生徒たちの姿。大きな口を開けて笑いあっているのにどこか寂し気だったり、退屈そうに床に座り込んでいる子が微笑ましく見えたり。見慣れた校舎と自分も体験した出来事の記録のはずなのに、現実のなかに数パーセントの夢が入り込んでいるような世界に見える。その中に例の写真が紛れ込んでいた。
 先生からはこんな風に世界が見えていたんだ。階段の上と下、先生と生徒、それぞれ違う角度から見ている世界はうまく交わらない。しかし写真という形でその視点を分け与えられたような気がした。写真なんて、楽しい瞬間を記録するだけのものだと思っていた。だけどそうじゃない何かがここにあって、それがあの頭の中で電球みたいにチカチカする光の正体なのだろうか。
 その写真を崇史がスマホで写真に収めると、隣にいた椎野に酷いことするなと呆れられた。
「後でちゃんと先生がプリントしてくれるんだろ?」
「でもまあ、似たようなものじゃないの」
 全然わかってない、酷い、と椎野から苦情が出たので、崇史は渋々スマホを制服のポケットにしまった。
 八畳かもう少し広いくらいの部室には長机とパイプ椅子、ファイルの入った棚が置かれ、人が入るとなかなか窮屈だ。パソコンとプリンターはわかるが、得体の知れない機械も置いてある。身長計の上の部分に顕微鏡が合体したような謎の機械。椎野に訊くと、引き伸ばし器だよと教えられる。そう言われても全くわからない。
「あそこにネガをはめて、プリントしたい印画紙のサイズに拡大させるんだよ。かなり古いけどね。現像の機材なんかも全部OBが寄付してくれたやつ。俺は現像も自分でやってるんだ」
 説明されてもやっぱりピンと来ないので、とりあえず「なるほど」などと相槌を打っておく。
 椎野によると写真部の他の部員は電車を撮るのが好きな二年生男子が二人と、入ったばかりの一年生の女子三人組。そして制服のタイの色から同じ三年生だとわかるが、面識のない女の子二人組。三年女子コンビは、一年生女子たちに気遣って一生懸命話しかけている。
 先生まだかな、と崇史がドアの方を振り返ると、三年女子たちがお喋りを止めて話しかけてきた。
「ねえ、ついでに写真部入らない?」
 即答では断れず返事に悩んでいると、彼女たちが撮ったというポケットアルバムを見せてくれた。どれも片方の女の子をモデルに撮っている。真っ白なワンピース姿で赤い花束を持って、裸足で川に入る写真。枯れた葦が生い茂る河原で真っ赤なコートを着て佇み、手にした革のトランクは蓋が開いて中からぬいぐるみやアクセサリーなどがこぼれ落ちている写真。他の写真も、撮影場所や衣装小道具を一生懸命工夫して撮られたものばかりだ。楽しんで撮っているのが伝わって来る。二人共、どう? どう? と前のめりで目を輝かせて崇史に迫ってくる。
「凄いちゃんとした写真撮ってるんだね。雑誌に載ってる写真みたい」
 崇史は褒めたつもりだったが、二人共揃って、うーんと唸る。
「でも全然載せてもらえないんだよね。毎月雑誌の写真コンテストに応募してるんだけど」
「次、次こそはだよ。何としてでも高校生の内には載りたい」
「ネットでは結構いいねって言ってもらえるのになあ。何がダメなんだろう」
 彼女たちの真剣さはこちらの生気まで吸い取っていくようだ。
「なんかさ、そうやって熱中出来るものがあるのって、いいね。何でそんな、熱中出来るものを見つけられんの?」
 崇史の発言に、二人は顔を強張らせ、おそらく主導権を握っていると思われる方の女の子、三好舞衣が口を開いた。
「……悪くとらないでね。その言葉は、もう聞き飽きるくらい言われてる。でも熱中出来るものがある人間にとっては、何でそんなに無関心でのうのうと無駄な時間を過ごしてられんの? って感じだよ。上手く説明出来ないんだけど、強く心を揺さぶられて、うわー! って、本当に頭がわーってなって、それをせずにはいられないようなものに出会っちゃったの。何やってても常にそれが頭の隅にあって、払いのけられない。だから、そんなことやっても将来何の役に立たないって言われたくないの。これが私で、これが今一番大事なことだって信じてるから。そのために結果を出さなきゃ」
 上気した顔で意気揚々と一気にまくしたてる彼女たち。自分にはそんな崇高な素晴らしい何かには出会えないだろうと、崇史は感じた。みんな同じ制服を着て、同じように十七年を生きてきていると思っていたのに、今までぼやけていた細部の違いがはっきり見えてきた。広い世間で見れば自分と似たような人が大多数だと思うのに、ここではつまらない変な人だと思われてしまう。
 子供の頃から人通りの多い道を歩きなさいと、崇史は教わってきた。それと同じで、誰もが通る道を行けば絶対に迷わないし安全だ。なのに何で横道にそれたり獣道に入ろうとするんだろう。夢や憧れなんて持ったって、無駄なのに。しかし彼らの前でそれを堂々と口に出来るほど、その考えにポリシーがあるわけでもないのだ。
「それにしてもさ、なんで今頃文化祭の写真なんて貰いに来たの」
「別に、なんとなく、思い出して……」
 椎野の質問に崇史が言い淀んでいると、遅くなってごめんなと小谷野が入ってきた。
「新入部員が入ったことだし、今日は軽くオリエンテーションということでね」
 ちょっと待っててね、と崇史に目配せをして、みんなの前で先生らしいそぶりで話し始めた。
「写真部の部活は週一回木曜日の放課後、二時間くらいです。補習や委員会がある人はそっちを優先させて構いません。夏休みや冬休みの長期休暇中は部内で相談の上、活動します。去年は夏休みに日帰りで海へ撮影旅行に行きました。あとは文化祭での展示、体育祭などの学校行事の撮影もあります。高校生の為の写真コンクールもたくさんあるから、資料のコピーを各自に渡します。興味があったら先生に相談してください。フィルムの現像をやってみたいという人は、先生が一から教えられます」
 小谷野は部屋の手前に座った部員に資料の束を渡し、皆が一部ずつ取ってテーブルを回ってくるので、崇史もとりあえず一部手に取った。
「どんな機材でも構いません。写真を撮ることの楽しさを知ってもらうのが第一なので、あまり気負わずに。とりあえず撮って、そこにもっとこうした方が良いなという点を見つければ、技術を学んで修正していけばいいですから」
 崇史は話を半分聞き流しながら、手元にあるアルバムの写真と小谷野を交互に見比べる。一致するような、しないような。面談の日に一瞬垣間見た素の姿が見ている世界なのだろうか。
「フィルムのカメラを使ったことある人?」
 と小谷野が訊くと、誰も手を挙げなかった。ここ数年は毎年こんな感じだね、と新入部員たちに使い捨てカメラを配る。
「とりあえず入部した人には全員にフィルム撮影を体験してもらうことになってるから。ちゃんとしたフィルムカメラじゃないけど、とりあえず入門として。これは君達が使い慣れたデジタルカメラやスマートフォンのカメラと違って、現像するまでどんな写真が写るかわからないし、撮り直しも出来ません。一週間あげるからフィルム一本分撮ってきてください」
 他人事のように聞き流していると、
「光村もやらない? 面白いよ」
 小谷野はそう言って崇史にも使い捨てカメラを手渡した。断る理由もないので、なんとなく条件反射で差し出されたものを受け取ってしまった。
「ファインダーを覗いて構図を決めて、シャッターを切る、という基本は変わりないですから。難しいことは置いといて、まずは写真を撮るのに馴れること」
 それじゃ今日はこの辺で、と部活は早々と解散になり、部屋には小谷野と崇史の二人きりとなった。さっきまでの窮屈さがすっかり取り除かれて、少し落ち着かない。
「じゃあ光村の写真を印刷しないとね」
 パソコンとプリンタの電源を入れる小谷野の隣に座り、崇史が渡されたばかりのカメラを構えると、小谷野はそれを横目で見て笑った。
「二十七枚しかないから、慎重にね。無駄な写真は撮れないよ」
 そう言われるとなんだか勿体ないような気がして、カメラを下げた。
 これだよね、と螺旋階段の写真を印刷したものを渡された。崇史が知っている紙の写真よりもサイズが大きい。2L判というのだそうだ。ずっと頭の片隅で求めていたものが手に入った。この一枚のためにわざわざ来たのだけれど。これだけではなんだか帰り難い。もう少しここにいたくて、必死に話題を探す。
「先生はどういうカメラを使ってるんですか?」
「デジタル一眼レフ。でもそんなにいい物じゃないよ。昔はフィルムで本格的にやってたけど、今は趣味で少し撮る程度だから。友達の結婚式で頼まれてカメラマンやったりね」
 他の写真も印刷する? と問われ、アルバムの中から数枚を指差して印刷してもらう。無意識の内に小谷野が撮ったと思われる写真ばかりを選んでしまう。
「デジタルはすぐ結果が分かるけど、際限なく撮って消せるから、気に入らないと何度も何度もやり直し続けて沼にはまる。フィルムは制約が多いから慎重になりすぎる。とりあえず撮っておく、が出来ないからね。シャッターチャンスを選ぶ訓練になるよ」
 面談の日と同じようになかなか互いの目が合わない。かといって避けられているわけではなく、会話も普通に交わされる。だからかえってもどかしい。崇史は印刷してもらった写真を、授業のプリントと一緒にクリアファイルに挟む。ありがとうございましたと深くお辞儀をして、部室を後にした。というふりをして、ドアを閉める直前に、数センチ開いた隙間からぼんやりとディスプレイを眺める小谷野の後ろ姿を写真に撮った。



 一日四枚撮ればいいなら楽勝だ、と思ったのは間違いだった。崇史は早速後悔している。何を撮ってもいいと言われたけれど、何でもいいが一番困る。先生の後ろ姿、駅のホームに入ってくる電車。さっきシャッターを押したそれらは正解だったのだろうか。いざ写真を撮ろうと思うと、撮るべきものが一体何なのかがわからない。どれが大事でどれが無意味なのか、目に入るもの全てをジャッジし続ける。
 家に帰ってとりあえず冷蔵庫の中を見ていると、甥っ子たちが「たかちゃん、あそんでー」と崇史にまとわりついてきた。ポケットから使い捨てカメラを取り出し、五歳児を筆頭とした長兄の子供たち三人に向けると、全員が笑顔でピースサインをした。
「そういう写真を撮りたいんじゃないの」
 崇史の言葉に、えーなんでーと甥っ子たちは不満を漏らす。絵になるようなものなんて、撮るべきものなんてここにはないのかも。崇史は遊んでの声を無視して、麦茶を注いだコップを持って自室へ向かった。
 居間の床に散乱した玩具、点けっぱなしで誰も見ていないテレビ。部屋の隅で畳まれるのを待っている洗濯物の山。冷蔵庫には安売りのジュースで作ったゼリー。崇史は自分の家族と生活環境が、子供の頃からあまり好きではない。四人きょうだいの歳の離れた末っ子で、祖父母と同居している。崇史が高校に上がる頃に二世帯住宅に建て替え、今は長兄一家の子供たちの面倒も見ている。ただでさえ人数が多いのに、その中での自分のポジションは常に限りなく低い。長兄長姉の子供の頃の写真は充実していて、一歳のお誕生日で一冊目を終えているのに対し、崇史のアルバムは一冊目にして小学校の卒業式まで迎えている。その上、二冊目が見つからない。甥っ子たちが生まれてからは、子供たちというくくりに一回り違う崇史も含まれている。なかなかプライドが許しがたい。朝から晩まで騒々しくてなかなか気が休まらない家。二階の自室だけが大事なテリトリーだ。
 ベッドに寝転んだままスクールバッグに手を伸ばし、小谷野に貰った写真を取り出す。退屈や気怠さを一瞬にして燃やし尽くすような、何か。あの瞬間に感じたものをもう一度手に入れられるんじゃないかと思ったのだけれど、結局思い出せそうで思い出せないままだった。
 いつもお下がりばかりで玩具も洋服も何かを選ぶ余地などなかった。何でも与えられてきたけど、本当に欲しいものじゃなかった。何があっても絶対に誰にも渡したくない、他のものじゃ代わりがきかないもの。小谷野に写真を撮られて、目が合ったあの瞬間。崇史は、ずっと望んでいたものに出会えたという手応えがあった。
 窓の外を見ると、隣の家の二階の窓辺で猫が寝ている。その姿を収めて、まだあと一枚ノルマが残ってると溜息をついた。このフィルムが一本終わる頃には、あの衝動を手に入れるための手段が見つかるのだろうか。

 連休もあるしなんとかなるだろうと思っていたが、依然フィルムの減り方は遅々としている。もう火曜日なのにまだ三分の一残っている。やっぱり休みの日にどこかへ行って撮るべきだった、と崇史は後悔している。面倒がって寝て過ごすんじゃなかった。庭で遊ぶ子供達も撮った、公園にある金属のモニュメントも撮った、義姉が子供達を喜ばそうと作った段重ねのパンケーキも撮った。平井がトロンボーンを吹く姿も撮らせてもらった。崇史にはもう撮るべき瞬間が見つけられない。悔しい。子供の頃から大抵のことは平均以上に出来たから、誰かに自分の存在を脅かされる恐怖や劣等感をあまり感じたことはなかった。写真部の人たちにこんなことも出来ないのと思われるだろうか。それ以上に小谷野に会わせる顔がなくなる。
 重い足取りで崇史が学校から帰ると、ベランダで義姉がこいのぼりをポールから外そうとしている。まだ撮っていなかったな、とカメラを構えシャッターを押すタイミングを探していると、さっきから吹いていた強風が義姉の手からこいのぼりを奪っていった。あっ、と驚く声は音にならず、崇史はただ夢中でシャッターを何度も切った。フィルムを巻く間が勿体無い。この瞬間にも逃げて行ってしまう。澄んだ青空にふよふよと舞い上がる真っ赤なこいのぼり。住宅街の家々を避けるようにくるりと身を翻す。もっと、もっと大きく寄せて撮らなきゃ。こいのぼりを追いかけながらポケットの中のスマホを取り出し、ズームを最大にして撮った。カメラなんかいらない、もどかしい。まばたきでシャッターが押せればいいのに。
 こいのぼりは家から少し先の路地に不時着していた。もっと長い距離を走っていたつもりだったのに。なんだよこれ、と笑いながらカメラを構えると、もうシャッターは押せなかった。気が付けばフィルムは全部終わっていた。
 こいのぼりを小脇に抱えて家に向かいながら、先生はこういう気持ちで僕を撮ったのだろうかと崇史は考えていた。

 そして木曜日。街の写真屋で現像してもらった写真を、写真部の部員たちに見せる日がとうとう来た。まず新入部員の一年女子たちが発表した写真は、サッカー部の練習風景を撮ったものばかりだった。どうやら彼女たちは強豪サッカー部のファンのようだ。何人かの特定の部員に追っかけのような女子が付いているのは、周知の事実だ。なるほど写真部の撮影だという理由があれば、正々堂々と写真が撮れる。事実彼女たちが被写体にしているのも、女子に人気がある部員たちだけだ。
「スポーツ写真はシャッターチャンスに恵まれているからね。動きが多いから難しいけど、取り続けている内に慣れてくると思うから。逆光の方が被写体が綺麗に写るんだけど、レンズに光が入らないよう撮る方は日陰に入って」
 小谷野は彼女たちの動機は問わず、一人一人に光の向きや構図についてアドバイスを与える。
 そして崇史の番。撮った何枚かは手ブレを起こしていて、肝心のこいのぼりの写真もほとんどピンボケしていた。
「現像するまでどんな風に映ってるのかわからないのが、フィルムの欠点だけど魅力だから」
 部員たちは崇史の失敗を予想外にあたたかく受け入れてくれた。
「でも凄いシャッターチャンスだったね」
 椎野がこいのぼりの写真を指して言い、他のみんなも口々にピンボケして勿体なかったねと慰めてくれた。実は、と崇史はもう一つ写真が入った袋をみんなの前に差し出した。
「こっちはスマホで撮った方。フィルムじゃないから、反則かと思って」
 屋根を越えて空を漂うこいのぼりを画面の真ん中に配置した写真は、みんなに好評だった。
「絶対撮るべきだったよ。機転が利いたね」
 小谷野からそう言ってもらえたのが、崇史は何よりも嬉しかった。身の回りを撮った写真も、こんなもの撮って意味がないと言うものはおらず、ほっとした。
「特別な日は写真に撮らなくても覚えてるけど、なんでもない日のことは忘れちゃうから。残しておけば、あとで自分はこんな毎日を過ごしてたんだな、こういうものに心を動かされてたんだなって思い出せる。自分を作っているそういう瞬間のために写真はあるんだよ」
 いかにも先生というような、もっともらしいことを言うなあ。先生の素の部分を引き出したい、と崇史は思う。またあの先生に、先生じゃない小谷野浩介の部分に会いたい。
「こんなのいつの間に撮ったの」
 自身の後ろ姿を捕らえた写真を見て、小谷野は苦笑いしていた。
 仕返しだよ、と崇史は心の中でつぶやいた。
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2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

人間にトラウマを植え付けられた半妖が陰陽師に恋をする

桜桃-サクランボ-
BL
現代、陰陽寮の中で上位に位置する九重家では、跡取りについて議論が行われていた。 跡取り候補の一人、九重優輝(ここのえゆうき)は、人里離れた森に住む一人の半妖に恋をした。 半妖の名前は銀籠(ぎんろう)。 父親である銀と共に生活していた。 過去、銀籠は大事な父親が人間により殺されかけた経験があり、人間恐怖症になってしまった。 「我は、父上がいればそれでいい」 銀は自分が先に死んでしまった時のことを考え、思い悩む。 その時、九重家のことを思い出し逢いに行った。 銀の羽織りを握り、涙を浮かべる銀籠に一目惚れした優輝は、その日を境に銀籠へ愛を伝えるため会い続けた。 半妖に恋をした陰陽師の跡取り息子と、人間が苦手な半妖の、ほのぼのBL恋愛ファンタジー!

創作BL)相模和都のカイキなる日々

黑野羊
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「カズトの中にはボクの番だった狛犬の『バク』がいるんだ」 小さい頃から人間やお化けにやたらと好かれてしまう相模和都は、新学期初日、元狛犬のお化け・ハクに『鬼』に狙われていると告げられる。新任教師として人間に混じった『鬼』の狙いは、狛犬の生まれ変わりだという和都の持つ、いろんなものを惹き寄せる『狛犬の目』のチカラ。霊力も低く寄ってきた悪霊に当てられてすぐ倒れる和都は、このままではあっという間に『鬼』に食べられてしまう。そこで和都は、霊力が強いという養護教諭の仁科先生にチカラを分けてもらいながら、『鬼』をなんとかする方法を探すのだが──。 オカルト×ミステリ×ラブコメ(BL)の現代ファンタジー。 「*」のついている話は、キスシーンなどを含みます。 ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています。 ※Pixiv、Xfolioでは分割せずに掲載しています。 === 主な登場人物) ・相模和都:本作主人公。高校二年、お化けが視える。 ・仁科先生:和都の通う高校の、養護教諭。 ・春日祐介:和都の中学からの友人。 ・小坂、菅原:和都と春日のクラスメイト。

学園の支配者

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主人公の性格に難ありです。

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