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2.美少女を部屋に連れ込んでみた(受け身)
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現在、俺はぼっちだけど、これまでまったく人と関わろうとしなかったわけじゃない。
授業のグループ分けした時に発言をしなかったわけじゃないし、隣の席の人と少しだけ会話をしたことだってある。ただ、それで仲良くなったと言えるほど馴染むことができなかっただけの話だ。きっと時間が足らなかったのだろう。
その際に「一人暮らし」のことを口にしたかもしれない。こっちとしては話が盛り上がればと軽い気持ちだったけれど、そういう些細なことから個人情報が漏れてしまうようだ。話題選びには注意しましょう。
「うおっ、マジで一人暮らししてるんだ。カズっちってば大人だねー」
「男子の部屋だからもっと汚れていると思ったけれど……案外綺麗に片づけているのね。でも和也くんも男の子だしね。隠すものは隠しているんでしょう?」
「いや……あははー……」
クラスメイトの女子を部屋に入れてしまった……。
思春期男子にとってはとんでもない事態なのだが、渡会さんと桐生さんは少しも動揺していなかった。それどころか面白そうに部屋を見回している。
この無警戒さは俺を男として見ていないからだな。舐められていると言ってもいい。
「渡会さんも桐生さんも、男子の部屋に入るの慣れているんだね」
「カズっち」
「和也くん」
ちょっとだけ皮肉めいたことを言うと、二人が同時に振り返った。じっと見つめられて、俺の方が動揺してしまう。
やばい、怒らせたか? ここの家主なのに立場が弱すぎて辛い……。
「苗字で呼ぶなつったじゃん。あたし自分の苗字嫌いなんだよ。さっきも言ったけどアスカって呼んでよ」
「私も紗良って呼んでくれないと困るわ。じゃないと、私達がまるでいたいけな男の子を脅して家に押しかけたみたいじゃない。仲良くしましょう和也くん、ね?」
と、注意されてしまった。反応するところってそっちなんだ。
いきなり異性に名前呼びさせるとか、これが陽キャのノリってやつか……。まあ桐生さんが言ったことが理由の大半を占めている気がしなくもないけれど。あっ、桐生さんじゃなくて紗良さんね。恥ずかしがってるとか悟られたくないので、気にしてない風にサラリと呼んでやろう。
「それと、勘違いしないでよね。あたしは男子の部屋に入んの初めてだから」
「あら、あたしは、って言うとまるで私の方が男子の部屋に入り浸るような淫乱みたいに聞こえるじゃない。勘違いしちゃダメよ和也くん。私も和也くんが初めての男の子だからね」
紗良さんに勘違いさせられるようなことを言われている気がする。言葉だけ取れば、ツンデレ発言をしているアスカさんの方が可愛らしく聞こえる不思議。実はギャルの方が純情なのか?
「それよりさ、早速で悪いんだけどシャワー貸してくんない? けっこう汗かいちゃってんだよね」
渡会さん……アスカさんは制服の胸元のボタンを開けながら浴室へと向かう。
前言撤回。やっぱりギャルが純情なわけがなかった。
男の部屋に「泊めて」発言もどうかと思ったけど、無防備にシャワーを借りようとするのも相当なものである。俺が男として見られていない以上に、彼女の羞恥心の方が欠落しすぎではないかと心配になってしまう。
「……別にいいけど。着替えは持ってるの?」
動揺することなくクールに返す。女子がシャワーを浴びるという状況に、ちょっとだけ期待している自分がいる。
「ないから貸してー。スウェットとかジャージとか、何かあるでしょ?」
「あるけど……。俺が着てたものだけど本当にいいの?」
「全然オッケー。ありがとねカズっち。あっ、下着はなんとかなるから気にしなくていいから。カズっちの渡されても反応に困るし」
「貸せって言われたら俺の方が困るんですけどっ」
女子の方から下着とか言わないでほしい。反応に困りすぎて顔が熱くなった。
「和也くん、私の着替えもお願いね。もちろん和也くんの履いていた下着は遠慮させてもらうわ」
「とにかく下着から離れてください」
なんだか紗良さんの言い方にショックを受ける。いや、俺の下着を履いてもらいたいってことじゃないんだけどね。
項垂れていると清純系の微笑みをいただいた。ちゃっかり紗良さんもシャワーを浴びることになっている。別にいいけど。
二人はいっしょに脱衣所へと入った。ここの浴室はそんなに広くないんだけど、二人いっぺんに入る気のようだ。
まあ、どちらかが残って俺と二人きりになられても困るか。色気のある状況にはならないだろうが、状況が特殊すぎて何を話せばいいかわからない。
そうぼんやり考えていたら、脱衣所のドアが開かれてアスカさんが顔をひょっこりと出した。
「カズっち。覗いちゃダメだかんね」
それだけ言って、彼女は引っ込んでしまった。
「……はい」
聞こえない程度の小声で返した。ドアの向こう側から女子のはしゃぎ声が聞こえてきた。
さっきアスカさんが顔を出した時、脱衣の途中だったのか肌が露わになった肩に、ブラの紐がかかっているのが見えた。
……なんだか、生々しいものを見た気がする。
「……」
二人がシャワーを浴び終わる前に、滾った心を落ち着けなければならなくなった。……煩悩退散!
授業のグループ分けした時に発言をしなかったわけじゃないし、隣の席の人と少しだけ会話をしたことだってある。ただ、それで仲良くなったと言えるほど馴染むことができなかっただけの話だ。きっと時間が足らなかったのだろう。
その際に「一人暮らし」のことを口にしたかもしれない。こっちとしては話が盛り上がればと軽い気持ちだったけれど、そういう些細なことから個人情報が漏れてしまうようだ。話題選びには注意しましょう。
「うおっ、マジで一人暮らししてるんだ。カズっちってば大人だねー」
「男子の部屋だからもっと汚れていると思ったけれど……案外綺麗に片づけているのね。でも和也くんも男の子だしね。隠すものは隠しているんでしょう?」
「いや……あははー……」
クラスメイトの女子を部屋に入れてしまった……。
思春期男子にとってはとんでもない事態なのだが、渡会さんと桐生さんは少しも動揺していなかった。それどころか面白そうに部屋を見回している。
この無警戒さは俺を男として見ていないからだな。舐められていると言ってもいい。
「渡会さんも桐生さんも、男子の部屋に入るの慣れているんだね」
「カズっち」
「和也くん」
ちょっとだけ皮肉めいたことを言うと、二人が同時に振り返った。じっと見つめられて、俺の方が動揺してしまう。
やばい、怒らせたか? ここの家主なのに立場が弱すぎて辛い……。
「苗字で呼ぶなつったじゃん。あたし自分の苗字嫌いなんだよ。さっきも言ったけどアスカって呼んでよ」
「私も紗良って呼んでくれないと困るわ。じゃないと、私達がまるでいたいけな男の子を脅して家に押しかけたみたいじゃない。仲良くしましょう和也くん、ね?」
と、注意されてしまった。反応するところってそっちなんだ。
いきなり異性に名前呼びさせるとか、これが陽キャのノリってやつか……。まあ桐生さんが言ったことが理由の大半を占めている気がしなくもないけれど。あっ、桐生さんじゃなくて紗良さんね。恥ずかしがってるとか悟られたくないので、気にしてない風にサラリと呼んでやろう。
「それと、勘違いしないでよね。あたしは男子の部屋に入んの初めてだから」
「あら、あたしは、って言うとまるで私の方が男子の部屋に入り浸るような淫乱みたいに聞こえるじゃない。勘違いしちゃダメよ和也くん。私も和也くんが初めての男の子だからね」
紗良さんに勘違いさせられるようなことを言われている気がする。言葉だけ取れば、ツンデレ発言をしているアスカさんの方が可愛らしく聞こえる不思議。実はギャルの方が純情なのか?
「それよりさ、早速で悪いんだけどシャワー貸してくんない? けっこう汗かいちゃってんだよね」
渡会さん……アスカさんは制服の胸元のボタンを開けながら浴室へと向かう。
前言撤回。やっぱりギャルが純情なわけがなかった。
男の部屋に「泊めて」発言もどうかと思ったけど、無防備にシャワーを借りようとするのも相当なものである。俺が男として見られていない以上に、彼女の羞恥心の方が欠落しすぎではないかと心配になってしまう。
「……別にいいけど。着替えは持ってるの?」
動揺することなくクールに返す。女子がシャワーを浴びるという状況に、ちょっとだけ期待している自分がいる。
「ないから貸してー。スウェットとかジャージとか、何かあるでしょ?」
「あるけど……。俺が着てたものだけど本当にいいの?」
「全然オッケー。ありがとねカズっち。あっ、下着はなんとかなるから気にしなくていいから。カズっちの渡されても反応に困るし」
「貸せって言われたら俺の方が困るんですけどっ」
女子の方から下着とか言わないでほしい。反応に困りすぎて顔が熱くなった。
「和也くん、私の着替えもお願いね。もちろん和也くんの履いていた下着は遠慮させてもらうわ」
「とにかく下着から離れてください」
なんだか紗良さんの言い方にショックを受ける。いや、俺の下着を履いてもらいたいってことじゃないんだけどね。
項垂れていると清純系の微笑みをいただいた。ちゃっかり紗良さんもシャワーを浴びることになっている。別にいいけど。
二人はいっしょに脱衣所へと入った。ここの浴室はそんなに広くないんだけど、二人いっぺんに入る気のようだ。
まあ、どちらかが残って俺と二人きりになられても困るか。色気のある状況にはならないだろうが、状況が特殊すぎて何を話せばいいかわからない。
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「カズっち。覗いちゃダメだかんね」
それだけ言って、彼女は引っ込んでしまった。
「……はい」
聞こえない程度の小声で返した。ドアの向こう側から女子のはしゃぎ声が聞こえてきた。
さっきアスカさんが顔を出した時、脱衣の途中だったのか肌が露わになった肩に、ブラの紐がかかっているのが見えた。
……なんだか、生々しいものを見た気がする。
「……」
二人がシャワーを浴び終わる前に、滾った心を落ち着けなければならなくなった。……煩悩退散!
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