もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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おまけ編

after 音々ちゃんは女子高生⑧

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 チャイムの音で目を覚ました。

「お……あれ、俺寝てたのか?」

 机を見ればよだれの水溜まりができていた。だいぶ熟睡していたらしい。
 毎日メイドとエチエチな生活を送っているおかげで、身体が引き締まり、体力がついてきた自負がある。そんな俺でも、朝からの連続射精で疲労困憊になっていた。

「だからって、授業を寝て過ごすとか……。学生の本分を蔑ろにしてしまった自分が恥ずかしい」

 これでも、真面目に授業を受けてきた優良生徒なのだ。まあ成績が良いとは言ってないけどな。
 そんなわけで放課後。午後の授業? 全部吹き飛びましたけど何か?
 周りは帰宅する者、部活へ向かう者、教室でだべっている者と様々だ。なんか普通の風景がすごく青春っぽく見える。普通じゃない体験をしすぎたせいかもしれないね。

「あれ、音々ちゃんはどこだ?」

 教室に音々ちゃんの姿がない。まさか俺を置いて先に帰ったのか? そんなバカなと思いつつも焦ってしまう。

「いやいや、音々ちゃんに限って俺を置いて帰るはずがないだろ。うん、きっとトイレにでも行っているに違いない」

 そうだそうだ。帰る前にトイレを済ませる。そんなの普通じゃないか。……トイレか。
 ぽけーと妄想していると股間が膨らむ。それに気づいたわけじゃないだろうが、クラスメイトの女子がニヤニヤしながら近づいてきた。

「あのさ会田くん」
「ひゃいっ!? べべべ別にエッチなことなんか考えてなかとですよ?」
「は? しゃべり方おかしくなってるよ? ……キモ」

 オイ、小声でもちゃんと聞こえているんだからな。
 くっ、洗脳フィールド内なんだから堂々としていればよかったのに。心の準備ができていなかったせいで無駄に焦ってしまった。
 脳内でサンドバッグを叩いていると、クラスメイト女子は構わず話を続けた。

「音々ちゃんから伝言。『放課後、屋上で待っています』だってさ」

 何が面白いのか、ニヤニヤしながらそう言った。

「了解」
「それだけ? もっと何かあるでしょ」
「いや、ただ屋上で待っているだけしか聞いてないし」
「……鈍感」

 クラスメイト女子に大きなため息を吐かれてしまった。オイ、こっちに息が当たってんだろうが。俺が女子の息なら誰のだろうが喜ぶ変態と思うなよ。
 まあ、言いたいことはわからなくもないけど。音々ちゃんがやりたいこともなんとなくわかった。
 そんなわけで、俺は屋上へと向かった。
 屋上はあまり人が立ち入らない場所だ。屋上へと続く階段に辿り着く頃には、周りには誰もいなかった。
 誰もいない空気感。それだけのことでちょっとした緊張感がある。何かされたわけでもないのにドキドキする。
 だからこそ、この学園で異性を呼び出す場所としてピッタリだったのだ。前例がありまくりだけどな。
 屋上のドアを開ける。ギィ、と軋みながらも外の空気が俺を出迎えてくれた。

「来てくれたのね祐二くん」
「美少女に呼び出されたら大抵の男子は来る以外の選択肢はないって」
「あら、お上手ね。……ありがとう、ご主人様」

 音々ちゃんはメイドの時のような微笑みを浮かべた。大人っぽいというか、母性に溢れた顔だ。
 美女の微笑みも、すぐに美少女の笑顔へと変わる。音々ちゃんのためにも、彼女の変化に目をつむった。

「祐二くん」
「うん」
「ずっと好きでした。わたくしと、付き合ってください」

 青春の甘酸っぱさが詰め込まれたような告白だった。
 過去を懐かしむかのように、音々ちゃんは微笑んだ。まるでタイムスリップでもしたみたいに、この時ばかりは同年代にしか見えなかった。

「ありがとう音々ちゃん。すっげえ嬉しい」

 もし今の関係ではなく、ただのクラスメイトとして彩音に告白されていたら。その喜びは計り知れない。
 でも、それはあくまでifの話。
 そして、音々ちゃんにとってもそうなのだろう。

「俺も、ずっと前から音々ちゃんのことが好きだったんだ」

 するりと言葉が出てくる。音々ちゃんの青春時代を想像しながら、俺は演じていた。

「……ありがとう、ございます」

 音々ちゃんの目が、夕日に照らされてキラリと光った。


  ※ ※ ※


 音々ちゃんの初恋は、俺と同年代の頃だったらしい。
 学生時代の音々ちゃんは引っ込み思案だったとのことで、その初恋の男子とはあまり話せなかったのだそうだ。

「わたくしには許嫁がいましたし、男性に接すること自体、とてもはしたない行為だと教えられてきました」

 そういう理由もあり、音々ちゃんはずっと自分の心を押し殺していたのだ。学生時代だけではなく、結婚してからもずっと。
 初恋は叶わない。なんて言葉はよく聞くけれど、何もできない無力感の中にいることがどれほどの苦痛か。俺には想像できなかった。

「もし状況が違っていたら? わたくしに勇気があって、ちゃんと自分の口から告白できたら? お恥ずかしい話ですが、たまにそういった考えが頭に過ぎってしまうのです」

 音々ちゃんは照れ笑いを浮かべる。
 今はスッキリした顔で、彼女は俺に頭を下げた。

「ご主人様、ありがとうございます。やっと、あの時の気持ちに区切りをつけられました」
「まあ、音々ちゃんがそれでいいなら俺は構わないよ」

 俺は藤咲彩音に告白をしたことがある。
 それは彼女の外見が好みだったからだ。見た目ばかりを重視してではあるが、俺が絶対に告白しようと決めた相手は彩音だけだった。他にはいなかったんだ。
 絶対に振り向いてくれるわけがない。そんなことはわかっていた。普段の俺ならよほど有利な状況でもない限り、告白なんぞしなかっただろう。
 それでも、俺は告白に踏み切った。その強い気持ちは、俺にとっての本物の初恋だったからなのかもしれない。
 もしも藤咲彩音に告白しなかったら。俺は音々ちゃんと同じような気持ちになっていたのだろうか?
 まあ、そんなことをいくら考えたってしょうがない。今はみんな俺のメイドだ。その結果があれば満足である。

「祐二くん」
「なんだい音々ちゃん?」
「恋人になって、初めてのエッチしよ♪」

 なんとも可愛らしいお誘いである。それに応えるのは彼氏の務めってやつだろう。

「まったく、しょうがねえ彼女だなぁ」
「だって、彼氏に甘えるのが彼女の特権でしょ?」
「甘えるっていうか、エッチを求められてるだけだけどな」
「祐二くんはエッチが嫌いなの?」
「……大好きです」

 今が幸せならそれでいいじゃない。そう結論づけて、屋上に伸びている俺と音々ちゃんの影が重なった。
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