もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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おまけ編

after 音々ちゃんは女子高生①

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 彩音の腹が隠し切れないほど大きくなった。
 彼女のお腹には俺の子がいるのだ。妊婦の嫁を労わるのは、旦那として当然のことである。

「彩音、今日は学校休め」
「でも」
「調子悪いんだろ? もう彩音一人の身体じゃないんだから自分を労われよ」
「……うん」

 ボテ腹で登校しようとする彩音を説得する。
 別にボテ腹自体はいいのだ。堂本がなんとかした結果、妊婦が学園にいても違和感を持たれないようになっている。
 ただ、今日はあまりにも調子が悪そうだった。もし転びでもして母子に何かあったら悔やんでも悔やみきれない。

「授業のノートは俺がとるんだし心配するな」
「えっ!? 祐二くんが?」

 オイ、なんだそのあり得ないものでも見たような顔は。劣等生でもれっきとした学生だぞ。それなりには真面目にやってんだからな。

「安心しなさい彩音」

 ほんわかと語りかける音々さん。母親らしく娘に言い聞かせるつもりなのだろう。

「わたくしが彩音の代わりに、授業を受けてくるわ」
「「……え?」」

 音々が何を言ったのか、俺と彩音が理解するのにしばらく時間がかかってしまったのは無理もないことだろう。


  ※ ※ ※


 セーラー服越しでもわかるほどの爆乳。胸が制服を引っ張ってしまっているせいでくびれたお腹が見えていた。
 スカートは膝下までの長さ。隠れているはずなのに太ももがムッチリしているのが理解できてしまう。この人の身体を隠す方法はないのだろうか?

「よし。完璧ね」

 満足げに頷く、セーラー服に身を包んだ音々がそこにいた。
 確かに彼女は実年齢が信じられないほどに若々しい。子持ちなのがびっくりするほどだ。
 だがしかし、である。

「あのー……、マジで彩音の代わりに登校するつもりですか?」

 なんとなくかしこまった聞き方になってしまった。そんな俺に向かって音々はニッコリと笑いかけてくる。

「もちろんですわ。堂本くんのおかげでわたくしが学園の敷地内にいても違和感すら抱かなくなるのでしょう? なら何も問題ないですわね」

 音々はやけに自信満々だ。まあ彼女の言う通り、堂本の洗脳フィールドのおかげで大抵の無理はきくのは事実である。
 それに、確かに音々の制服姿はエロ可愛いと思う。それは認めよう。
 だが、似合っているかと問われれば口を閉ざすしかなかった。なんかもうコスプレしているようにしか見えないんだもん。現役感がないというかなんというか……。どうオブラートに包んだものかと考え込んでしまうのだ。
 対比すると彩音と琴音は本当に現役なんだなぁと感じさせる。自然体でいられる今を大切にしないといけないね。そう強く思った。

「うふふ。わたくしもまだまだいけますわね」

 鏡で制服を確認しながら音々が呟く。本人はまだまだ十代と言っても通用すると思っているらしい。

「……」

 これ、俺が何か言うべきなのか?
 本当のことを口にするのははばかられる。俺だって無闇に音々を傷つけたくはないのだ。なんかめちゃくちゃ乗り気になってんだもん。ほら、鼻歌まで歌っているし。

「お待たせしましたご主人様。あっ、今日は祐二くん、とお呼びした方がいいでしょうか?」
「そ、そうだな……。同級生なのに、ご主人様はまずいもんな……」
「うふふ。では祐二くん。なんだか学生時代を思い出しますわ。わたくしのことは音々ちゃんと呼んでもいいですよ」
「ね、音々、ちゃん……」

 ルンルンルン♪ ランランラン♪
 ここまで浮かれている音々を見るのは初めてだった。俺は余計なことを言わないようにそっと口を閉じた。

「お母さんがお姉ちゃんの代わりに登校するって本当なの!?」

 朝の準備を終えた琴音がセーラー服姿の母親を見て目を剥いた。

「ええそうよ。彩音の代わりに学園でご主人様をお世話するのよ」

 にこやかに肯定する音々。ああ、彩音の代わりにノートをとるってのは方便で、どうやら学園での俺がどんな風なのか気になっていたようだ。

「へ、へぇー……。そ、そうなんだ……」

 ひく、と琴音の顔が引きつる。
 俺も母親がいたとして、音々と同じことをされたら同じ顔をしてしまう自信がある。この気持ちをどう表現すればいいんだろうね?
 できれば説得したかったが、彩音が了承してしまっているのだ。
 妊婦である彩音を家で一人にするのも心配だ。だからこそ音々が世話してくれたらと思っていたのに。

「心配いらないわ。それにたまには一人でゆっくりしたいもの」

 なーんて言うもんだから俺は反対しづらくなった。普通なら無理なことなのに、堂本の洗脳のせいで可能になっているのも反対しづらい理由の一つだ。

「本気ですか祐二様?」

 と、琴音が目線で問うてくる。

「あんなにノリノリになってる音々に向かって、来るなとは言えないだろ」

 と、俺は目線で返した。琴音は難しい顔をしたが、諦めたようにため息を吐いた。

「……お母さん。お姉ちゃんの代わりなんだからあまり目立つようなことしちゃダメだよ。何が祐二様の迷惑になるかわからないんだからね」
「わかっているわ。琴音は心配性ね」

 琴音の顔がひくっと歪んだ。それもすぐに引っ込めるのだから下の子は大したものである。

「忘れ物はないか? そろそろ時間だから学園にいくぞ」
「はーい♪」

 元気良く返事したのは音々だった。琴音はげんなりしている。たまに彼女が彩音以上に苦労性じゃないかと思う時があるよ。
 また今度、琴音を慰めてやろう。早くもそんな風に考えてしまうのであった。
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