もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

文字の大きさ
上 下
102 / 127
おまけ編

after 親友の恋愛事情③

しおりを挟む
 広い室内に大きなベッドがどでーんと鎮座している。思ったよりも綺麗な部屋なんだな、というのが俺の感想だった。

「ここが、ラブホテルなんですね……」

 真有ちゃんが息を漏らすように呟いた。彼女の表情から緊張していることが読み取れる。
 そう、俺達はラブホテルに訪れていた。何気に来たのは初めてだったりする。彩音とだって来たことなかったのにっ。

「へ、へぇー……。ま、まあこんなもんなんじゃない?」
「…………」

 井出は平静を保とうとしながらも緊張しているのを隠し切れてはいなかった。菜緒ちゃんに至っては顔を真っ赤にして固まっている。
 俺達、というのは四人全員だ。本当は井出と真有ちゃんだけを中に閉じ込めてしまいたかったが、そう上手くはいかなかったのだ。


  ※ ※ ※


 遊園地で遊んだ俺達はすっかり仲を深めていた。
 いろんなアトラクションを楽しんで良い感じに疲労が溜まってきた頃。俺はみんなに休憩を提案した。

「そういえば遊園地の近くにホテルがあったよね。そこでゆっくり休みながらおしゃべりでもしようよ」

 ホテルはホテルでも、ラブホテルである。高校生とはいえ、この場の全員がそのことをわかっていた。

「この近くって……それ、ラブホテルじゃなかったでしたっけ?」

 愛想笑いを浮かべながら尋ねるのは真有ちゃんだった。声から警戒を表していた。
 が、その警戒をあえて無視する。

「そうだよ」

 俺はあっさりと肯定する。それから当然のように続けた。

「あれ、知らないの? ラブホテルって友達が集まっておしゃべりする空間として人気なんだよ。パーティールームがあってみんなで入れるところがあるし。俺が読んだ漫画でも年頃の男女が平気で入って遊んでたりするから」
「そ、そうなんですか?」
「あ、知ってますその漫画! ヒロインが超絶可愛いラブコメですよね!」

 食いついてきたのは菜緒ちゃんの方だった。引っ込み思案な彼女がどこかへと吹っ飛ばされたみたいに、新たな一面を見せてきた。

「そ、そうなの菜緒?」
「うん! アニメ化決定した人気のラブコメ漫画なの! 真有ちゃんにも貸してあげるね。本っ当におすすめだから!」

 菜緒ちゃんが勝手に真有ちゃんを引き込んでくれていた。菜緒ちゃんがこの日一番の輝きを見せていた。うん、めちゃくちゃ良い顔してるっ!

「ほら、菜緒ちゃんが言うようにけっこう普通なんだって。それとも真有ちゃんはエッチなことでも考えていたのかな?」
「そ、そんな……まゆはエッチじゃないですよ!」
「だよね。真有ちゃんは大人だからラブホテルくらい余裕だよね」
「もちろんです! 余裕中の余裕ですよ!」

 てな感じで、女子二人は行く気になったのだった。

「え、い、いきなりラブホテル……?」

 この流れに置いてけぼりだったのは井出だった。
 俺は井出にアイコンタクトを送った。混乱状態の井出には効果がなかった。やれやれ、チャンスを掴むにはスピードが命だぜ?
 そんなこんなで強引に流れを作り、後輩女子ズをラブホテルへと連れ込んだのであった。


  ※ ※ ※


 さて、ラブホテルに入ってそこで終わりじゃない。もちろん本番はこれからだ。

「たくさん遊んだから汗かいたでしょ? 女子からシャワーを浴びてくればいいよ。俺達は後でいいからさ」
「え、シャワーですか? それはちょっと……」
「何言ってるの。ホテルに来たらシャワーくらい浴びるでしょうよ。それとも真有ちゃんはホテルに来ただけでいかがわしいことを考えちゃう女の子なのかな? それともシャワーって単語だけでエッチな気分になっちゃうとか?」
「そ、そんなことないですよ! シャワーくらい余裕です!」

 真有ちゃんは声を張って否定する。この娘けっこう扱いやすいよね。

「ラ、ラブホテルのお風呂場ってすごいんだよね……漫画で見たことがあるんだ……」

 菜緒ちゃんは声を震わせながらも好奇心が勝っているようだ。漫画のネタなら勢いでいろいろやってくれるかもしれないね。

「そ、そっか……ちょっと楽しみかも……」

 友達にそう言われたら否定ばかりもしていられないだろう。真有ちゃんは小さく頷いた。
 女子二人は緊張を表しながらも、乗り気になって素直に浴室へと向かった。けっこう流されてくれるもんだな。

「ゆ、祐二……女子がお、お風呂だってさ……。ふふふっ、これは何か間違いがあってもおかしくない展開だよね」

 冷静になろうとして、欲望が漏れ出している井出だった。女子に壁を作っていた陰キャでは起こるはずのなかった状況に、妄想と現実がごっちゃになり始めているのかもしれない。
 その妄想と現実の境界線とやらを、これからぶち壊してもらうんだけどな。

「よし、行くぞ井出」
「行くってどこへ?」
「そんなん風呂場に決まってるだろ」
「ぎょっ……!?」

 井出が驚愕の面白顔を見せる。不覚にも笑わされそうになってしまった。

「ななななななななななな何を言っているんだ祐二ぃぃぃぃっ! 今、たった今二人ともお風呂に入ったばかりじゃないか!」
「そうだな」
「いや、そうだなじゃなくて──」
「井出」

 興奮する井出を手で制する。だが落ち着かせてはいけない。

「お前は今日、一体何しに来たんだ?」
「え? そ、それは女の子と遊ぶために……」
「違うな。間違っているぞ井出」

 俺はピシャリと言い放つ。今の俺からは強者のオーラが滲み出ているに違いなかった。

「女の子と遊ぶのは手段だ。今日の目的は可愛い女の子と良い関係になって──」

 俺は拳を作り、ドンと井出の胸を叩く。

「──自分のモノにするためだろうが」

 井出はしばらく呆然としていた。だが、徐々に熱が身体中に広がったみたいに戦う男の顔になっていった。

「そっか。そっかぁ……。い、いいんだよね祐二?」
「知ってるか井出? リア充はノリで初体験を経験しているらしいぞ」

 情報源は不明である。メイドがいなかった頃の俺の偏見だ。
 だが、今の井出には正しい情報と認識されたらしい。完全にやる気になったようだ。目がマジで怖いからな。

「そうか……なら、僕達もノリで初体験を済ませたっていいわけだよね……」
「だな」

 俺は童貞じゃないけどな。まあ井出もそうなんだが、記憶がないし合わせてやろう。

「わかった。行こう祐二。これは、僕達が大人になるための戦いだ。……いや、聖戦だ!」
「おう」

 井出はキリッとした顔で一歩を踏み出した。自分を格好良いと思っている奴の顔だった。
 だけど、ちょっと格好良い感じにすれば許される話じゃないからな。まあせっかくやる気になったんだからツッコミはしないけども。
 俺と井出は脱衣所に入った。ちょうどシャワーを浴びているらしく、こっちの小さな物音は聞こえていないようだ。

「おおっ。見てよ祐二っ。あれブラジャーだよ! こっちはパ、パンツ……。す、すごい……」

 この時点で鼻血出して倒れそうなほどの興奮っぷりである。ここで倒れても介抱してやらないからな。

「そんなのいいから早く服を脱げ。油断している今がチャンスなんだからよ」
「ぬ、脱ぐのか……。な、なんか恥ずかしいな……」

 ちょーっとだけ殴りたくなった。ここまで来て恥じらうなよ気持ち悪い。
 俺は無言で服を脱いだ。それを見た井出が慌てて俺に続く。

「祐二……もう勃起しているんだね」
「じろじろ見んなよ」

 俺のチンポは天を向いて屹立していた。井出は半勃起といったところだ。

「な、なんか祐二のでかくないか? 勃起しているったって……えー?」
「そうか? 普通だろ」
「それに前は腹筋割れてなかったよね?」
「男性ホルモンが活発になると腹筋くらい割れるだろ」
「……なんか祐二の身体を見たら自信失くすなぁ」
「そんなんいいから早く行くぞ」

 井出に任せると浴室のドアを開けるのに時間がかかりそうだ。俺は先陣切ってドアに手をかけた。

「ひえっ!? あ、会田先輩!?」
「え……?」

 勢い良くドアを開けた。音に反応して裸の真有ちゃんと菜緒ちゃんがこっちを向いた。
 ほうほう……。二人共なかなか良いじゃないか。
 髪を下ろした真有ちゃんは思ったよりも大人っぽかった。身体のラインはなだらかなのに、そこには色気が漂っていた。マスコット的存在の後輩がこんな色っぽい一面があるとは驚きだ。
 対する菜緒ちゃんは驚きすぎて目を真ん丸に見開いているせいか、見た目よりも少し子供っぽく感じた。だが元が背の高い綺麗系というのもあって裸体をさらしていても美しさがあった。まあ胸はこれからの成長に期待ってことで。
 突然の裸の男の乱入に、二人は完全にフリーズしてしまっていた。
 そのチャンスを見逃す俺ではなかった。

「俺もいっしょに入れてー♪」

 無邪気な男の子を装って後輩美少女に突撃した。勃起チンポをブルンブルンさせながら真有ちゃんと菜緒ちゃんに迫る。

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーっ!!」

 絹を裂いたような悲鳴が浴室に響いた。なんだか事件が起こったように聞こえるよね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

処理中です...