もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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おまけ編

if もし初めてのメイドが琴音だったら⑥

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 堂本は藤咲彩音を俺の家に届けてくれた。もちろんタダではないけどな。
 学園のアイドル、藤咲彩音は絶対服従のメイド契約を結んだ。ご主人様は俺。大事なことなのでもう一度言おう。藤咲彩音のご主人様は、俺だ!
 とはいえ、メイド服姿の藤咲さんを前にしても、本当に俺のメイドになったのかと疑ってしまう。
 いやだって、あの藤咲彩音だぞ? 学園の連中は誰も信じないだろう。俺だって未だに夢かもしれんとか思ってるからな。琴音をメイドにしているってのに、藤咲さんになると現実味が薄れるのはなんでなんだろうね?
 まあ、それだけ彼女が特別な存在で、自分なんかとは別世界の人間だと思っていたのだ。思い知らされ続けたその認識を、簡単に覆すというわけにはいかないだろう。

「では、後はお若い者同士でお楽しみください」

 堂本が「ぬふふ」と気持ち悪い笑いを漏らしながら帰った。このおっさんは何目線なんだよ。お見合いじゃないっての。早く帰ってくれたことに関しては感謝してるけどな!

「……」
「……」

 なぜか、堂本がいなくなってからの方が気まずい空気になっていた。
 リビングには俺と琴音。それから新しく俺のメイドになった藤咲彩音の三人がいる。
 藤咲さんは俺の同級生で、琴音の姉だ。俺が別に藤咲さんと親しくないってのは置いていたとしても、琴音とも微妙な空気なのはどういうことだ?
 琴音からものすごく緊張した気配を感じる。まだ短い付き合いとはいえ、肉体関係を持った仲だからか、いつもと違う彼女の雰囲気に疑問を抱く。

「お姉ちゃん、緊張してる?」

 自分だって緊張しているくせに、琴音はあっけらかんとした調子で藤咲さんに尋ねた。
 この気まずい空気をなんとか変えようとしたからなのだろう。琴音の明るい声がぎこちなく聞こえる。

「……琴音、あなたもメイドになっていたのね」

 返答はまったく別の言葉。質問ではなく確認だ。
 確認だけど、返答次第で藤咲さんがどんな反応を見せるのか。少しだけ怖さを感じながら見守った。

「うん。見ての通りだよ」

 琴音はメイド服のスカートをちょこんと摘まんで頷く。普通のメイドじゃないってことは、同じ立場である藤咲さんもよくわかっているはずだ。

「そう……なのね……」

 藤咲さんがうつむく。その表情が見えないせいで、怒っているのか悲しんでいるかわからなかった。
 しばらくの沈黙。不穏な気配に身構える。別にビビってるとかじゃなくて、何しでかすかわかんないからね。
 学園でみんなが認識しているだろうが、藤咲さんは清廉潔白で真面目な人だ。そんな人が今の妹の状況を知ったらどうなるか? あまり良い想像はできなかった。

「なら……これからは私も琴音といっしょにご主人様にご奉仕するわ!」

 顔を上げてぱあぁっと笑顔の花を咲かせながら、藤咲さんが予想外のことを言った。
 え、何この満面の笑みは? 殺人的に可愛い……じゃなくて! 藤咲さんっぽくないぞ?
 彼女は難攻不落と呼ばれた憧れの女子だ。まるで誰かに気があるような、そんな隙だらけの表情を見た奴なんて学内では誰もいないだろう。
 でも今はどうだ? 上気した顔に潤んだ瞳。背後には何か綺麗な花が咲いているようにさえ見える。漫画とかでよくある「恋してる」って感じの雰囲気だ。
 誰に? 視線はがっちりと俺を捉えて……って俺!?

「お、お姉ちゃん……?」

 妹目線でも戸惑わずにはいられない変化だったようだ。あの琴音が目を白黒させている貴重な瞬間を目にしてしまった。

「えっと、藤咲さん?」
「はい、ご主人様ぁ。私のことは彩音と呼んでください。私はご主人様の所有物なのですから『藤咲さん』と呼ばれますとメイドではなく他人のようで悲しくなってしまいますよ」
「えっと、じゃあ……あ、彩音……」
「はい!」

 クールな印象だった美少女が華やかな笑顔を向けてくれた。恋愛経験がなくてもベタ惚れなのがわかる表情だ。
 藤咲彩音に見つめられるだけでチャームの魔法にかかるってのに、こんな近い距離で可愛らしい笑顔で見つめられたら心臓がどうにかなっちゃうっ! ドキドキを超えてバックンバックンうるさいんだけど!

「藤さ……彩音は俺のメイド……ってことでいいんだよな?」
「もちろんです。全身全霊で会田くん……いいえ、ご主人様にご奉仕する覚悟はできています!」

 意気込んだ調子で学園のアイドルは言い切った。なんか熱い。
 なんだろう? 学園での彩音と性格が違いすぎて、こっちまで調子が狂う。
 何かしたとすれば堂本の仕業だろう。まあ普通に抵抗感バリバリで接してきても困るんだが。いや、それでも無理やり命令してエロいことするってのも……悪くなかったかもな。
 とにかく、ただメイド服だけを着せたコスプレじゃないってことだ。それなりの教育をして、売り物にできる基準に達したからこそこうしてメイド契約を結べたのだろう。我ながら『売り物』って普通に受け入れられるようになったな。
 つまり、あの難攻不落の学園のアイドルだろうが、今は俺の従順な奴隷メイドになったってことだ。

「う、うむ。では俺のメイドとしての務めを、しっかり励みたまえ」

 緊張しながらも、ご主人様として最大限の威厳を見せつけた。なぜか琴音にジト目を向けられた気がしたが、まあ気のせいということにしておいた。

「まずは家の中を案内しようか」

 ゴホンと咳ばらいをして視線を逸らした。彩音は「はいっ」と元気よく返事した。クールな藤咲彩音も良かったけど、こうして素直な彼女も可愛いなと思いました!
 俺は彩音に家の中を案内する。ちょっと身体に触ってみたいなー、とか思ったけど琴音が見ていたので断念した。
 なんだか琴音の視線がきついな。さすがに実の姉が目の前でエロいことされてたら嫌なのだろうか? ……そりゃあ普通に嫌か。
 それでも彩音がメイドになることは琴音も了承しているのだ。目の前でさえなければ、ご主人様のすることに文句はないだろう。

「ここが彩音の部屋ね。家具はまた用意してあげるよ。学園で必要な物はまた後で届くことになってるから」
「私の、部屋……」

 何もない殺風景な空き部屋。その小さな部屋を前にして、彩音は室内をぽかんと見つめていた。

「ご主人様」
「何?」
「私のために部屋を用意してくださり……本当に、ありがとうございます」

 彩音は彼女らしい綺麗な礼で、俺に感謝を述べた。
 よほど自分の部屋が嬉しかったのだろうか。琴音にも与えているもんだから普通のことだと思うんだけどな。

「お姉ちゃん、ちゃんとお仕事してたら普通に生活が送れるんだよ。食事も三食出るし、痛いことや無茶なこともされない。学園にだって通ってもいいんだって」
「そう、なのね。会田くんは優しいのね……。優しい人、だったのね……」

 琴音に言葉をかけられて、彩音は何度も噛みしめるように頷いていた。
 そんな姉を見て、琴音は嬉しそうに頷き返していた。なぜだかくすぐったい感覚がするぞ?
 家の案内を終えて、細かいルールなどの説明は琴音に任せた。むしろ家事に関しては琴音にほとんど丸投げ状態なので俺は不要だ。

「彩音……。うおおっ、マジであの藤咲彩音が俺のメイドにっ!」

 憧れていた女子。あまりにも美少女すぎて、思わず告白までしてしまった相手。

「やべぇ……興奮してきた……」

 学園のアイドルと一つ屋根の下で生活する。しかも立場はご主人様とメイドだ。何も起こらない方が無理ってもんだろう。
 期待と興奮で胸と股間を膨らませながら、どうやって彩音にエロいことをしてやろうかと考えるのであった。


  ※ ※ ※


 夜。彩音が俺のメイドになった興奮を胸に、明日に向けて眠りについていた。

「んが……?」

 気持ち良く寝ている時だった。何やら股間がもぞもぞする感覚に目が覚めた。
 寝ぼけまなこでぼけーとしながら股間を確認する。

「んがっ!?」

 股間が驚くほどもっこりしていた。
 ただのもっこりじゃない。布団が山みたいに大きかった。馬並どころの話じゃねえ!

「あっ、起きました?」

 女の子の声。もう聞きなれた俺のメイドの声だった。

「琴音……こんな夜中に何してんの?」

 琴音は俺の布団に潜り込んでいたのだ。てへへ、とはにかみながら彼女はベッドの上に正座する。
 なんだかいつもと違う雰囲気。夜這いしにきたってわけでもなさそうだ。……女子の夜這いって普通にエロいな。

「琴音?」

 なかなか口を開く気配がない。不思議に思いながら琴音に呼びかけた。
 すると彼女はおずおずと口を開いた。言いにくそうに俺をうかがっている。

「あの、祐二様……」
「うん」

 琴音の改まった態度に、俺の背筋が伸びた。真剣な話に違いない。

「あたしが祐二様の性処理を満足させられたら、お姉ちゃんに手を出さないでもらえますか?」

 真面目な顔と口調で、琴音は俺を真っすぐ見つめながら言ったのだ。

「……は?」

 呆けた声を漏らす俺。いや、これは仕方がなくね?
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