もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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おまけ編

after 藤咲音々は求めている③

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 どうしてこうなった……?

 人生において、俺は何も間違えたことなんてなかった。
 学生時代から失敗はなく、それは社会に出てからも変わらない。
 人生の成功者。上に立つべくして立ってきた。たとえ失敗があったとしても、それは成功するために必要な過程だったというだけの話だ。

「人間どん底に落ちれば平等なんですよ。平等に、家畜同然に扱われるのです」

 この俺が、なぜ下流の男に見下されなければならない?
 男の顔には見覚えがあった。だが名前までは憶えていない。学生時代に同級生だった記憶はあるが、見下すべき男の名を覚えるほど俺は暇ではなかった。
 学業やスポーツに優れているわけではない。自らを表現できる特技すらなく、容姿に至っては醜悪そのものだ。
 そんな男、俺の将来に何一つとしてプラスにならない。有用な奴は他にたくさんいる。見下され嘲笑われるだけが、男に許された存在価値であろう。

「何を呆けているのですか? あなたにそんな暇はありませんよ。私の言う通りにしてください。それだけが、今のあなたに与えられた唯一の仕事です」

 そんな取るに足らない男に、すべてを奪われた。
 職を失い、家を失い、家族を失った。地位や名誉に金。ありとあらゆるものが、俺のすべてが奪われた。
 なぜそんな状況に陥ったのか? 今でもわからない。突然起こった抗いようのない不幸。いや、そんな生易しいものではない。
 奴隷のように扱われ、理解できないことに身体を差し出すしかない。ただそれだけの生活に心が壊れてしまいそうだった。

「さあ、今日はとても良いものを見せて差し上げますよ。いつも実験に付き合っていただいているお礼です」

 気味の悪い顔だ。笑顔を浮かべていると理解するのも苦労する。それほどの醜悪な顔だ。
 頭がどうにかなりそうになっていても、こいつのことは忘れられそうにない。醜悪な笑顔が頭にこびりついて離れない。

「……なんだここは?」
「わかりませんか? ただのシアタールームですよ」

 そう広くもない部屋の中央に椅子が一つ。
 ただの椅子にしては物々しい機械が取り付けられている。俺には拷問器具にしか見えなかった。
 拒否権がないのはもう充分わかっている。
 力なく椅子に座ると正面に大画面のモニターがあった。

「ではお楽しみください」

 男が心底楽しそうな声色でそう言い残してから部屋を後にした。
 間もなく部屋の照明が落とされた。暗闇の中、画面が強い光を発する。

『お久しぶりです、あなた』
「音々っ!?」

 画面に映し出されたのは俺の妻、音々の顔だった。
 あの忌まわしき日以来の妻の姿に立ち上がりかける。しかしいつの間にか椅子に手足を拘束されていて身動きが取れなかった。

「な、なんだこれはっ!? ほどけ!」

 うろたえる俺を、画面の中の音々は待ってはくれなかった。

『あなたがお元気でいるのであれば嬉しく思います。わたくしは楽しく日々を過ごしています。彩音と琴音もいっしょにいますので、どうか安心してください』

 見覚えのある美しい顔。美しい微笑。なぜメイド服なのかはわからないが、美しい彼女によく似合っている。
 すぐにでも会いたい妻の姿がそこにはある。
 なのに、なぜだ? この先を見てはならない気がするのは。
 妻の無事を知った。娘達の安全も保障されているようだ。
 嬉しく思うはずなのに……。なぜか口の中が渇いていく。

『音々ー、これ長くなりそうか?』

 聞き覚えのない男の声だった。
 画面に声の主の姿は見えない。だがその場にいる音々はその男がいるであろう方向に顔を向けた。

『申し訳ございませんご主人様。もう終わりにしますね』
「おい音々! そこに誰がいるんだ!」

 俺の質問に答えることもなく、音々は正面に向き直った。

『それではあなた。お元気で』

 そうして妻は、美しい笑顔でこう言った。

『──さようなら』

 なぜそんな言葉が発せられたのか、理解できなかった。
 頭が真っ白になる。その間にも映像は流れ続けていた。

『と、こんな感じでよろしいですか?』
『たぶんいいんじゃないか。これで旦那さんも安心しただろうし、憂いもなくなっただろ』

 画面の中に男が映りこんだ。
 さっきの声の主だろう。馴れ馴れしく音々の肩を抱きゲスな笑みを浮かべていた。
 若い。おそらく彩音とそう変わらない歳に見える。上に見たとしても二十歳かそこらだろう。
 だが若いことが美しいと直結するわけではない。奴は決して俺の家族に触れていいような外見ではない。
 人は外見よりも中身とのたまう連中もいるようだが、外見にすら金をかけられない時点で底が知れている。画面の中の男も同じだ。外見に金をかけていないとすぐにわかる。つまり大した教育を受けてこなかったのだろう。

『えー、旦那さん? 音々は俺のメイドとして働いてくれてるんで、心配せずそっちはそっちでがんばってくださいねー』
「……は?」

 コイツは一体何を言ったのだ? メイド? どういう意味だ?

『じゃあこっちはこっちで楽しもうか』
『あんっ。ご主人様のお望みのままに』

 男はこちらを見下すような目を向けた。そして、見せつけるかのように服の上から音々の胸を揉む。

「な、何をやっているんだ貴様っ!! やめろ! そんなことをすればただでは済まないとわからないのか!!」

 拘束されているせいで立ち上がることすらできない。大声を張って男の行動を止めようとした。
 だが声は届かない。男の行動は止まらずに妻の胸を揉み続ける。無視しているというより本当に聞こえていないようだった。
 映像がリアルタイムなのか録画を流しているだけなのかもわからない。どちらにせよ俺の声も、この姿すらも認識されていないようだ。

『やっぱりたまには自宅以外でするってのもいいもんだな。なんかすげー興奮する』
『は、はい……。わたくしも、んっ……少し興奮してしまいますわ』
『少し? 本当に少しだけか? お?』

 メイド服の上からでも音々の胸が強く握られたのがわかる。

『ああぁんっ! と、とても……ご主人様におっぱいを揉まれてとても興奮しますっ!』

 艶めかしい声に身体が震えた。
 こんなにもはしたない声を漏らすだなんて……。俺は音々のこんな声を初めて聞いた。
 妻とは何度も性行為をしてきた。だが、あんな風にはしたない声を漏らす女ではなかったはずだ。もっと慎ましく、行為中にみだりに声を発することなんかなかった。
 喘ぎ声を上げるのは下品な女だけだ。俺の妻ならば、俺のすることに黙って身を任せていればいい。

『やべー、血が滾ってくるぜ。ほら音々。ここ、奉仕して鎮めてくれよ』

 男は素早い動きでズボンを脱いだ。見たくもない男の性器が映し出される。
 なんて下品な奴なんだ。言葉を失う俺とは正反対に、音々は上品な態度でうっとりとした表情をしていた。

『はい、喜んで。ご主人様のオチンチンにご奉仕させていただきますね』

 下半身丸出しの男に向かって頭を垂れる妻の姿が信じられない。これは夢なのか?
 妻の声で、妻が言うはずのない言葉が聞こえてくる。

『ではご主人様……失礼いたしますね』
『うむ』

 尊大に腕を組む男。音々は恭しく男性器に触れた。

「おいやめろ! そんな汚らわしいものに触れるな!!」

 叫び声は届かない。音々の動きは止まらない。
 指の一本一本が妖艶な動きに見える。焦らすかのようにゆっくり男性器を握り、上下に擦り始めた。

『力加減といい、滑らかな動きといい、音々は成長したなぁ』
『本当ですか? でしたら嬉しいですわ』

 妻は男の性器を擦りながら、心底嬉しそうに笑った。これほどの満面の笑みを、俺は一度も目にしたことがなかった。

『次は、お口でご奉仕させていただきますね』
『おほっ』

 音々がはしたなく口を大きく開けて、躊躇いなく奴のモノを咥え込んだ。
 それがフェラチオという行為だとは知っている。しかしこんな行為は水商売でもしているような女がすることだ。
 育ちが良い音々は知らなくていい行為だ。俺ですら口でなんてさせたことがなかったのに……っ。

「嘘だ! 音々がこんなことをするはずがないっ! するはずがないんだーーっ!!」

 なのに、映像の中で音々は頭を振ってじゅっじゅっといやらしい水音を立てる。

『あ~、極楽極楽。まさかフェラもここまで上手くなっているとはな。これも遺伝子ってやつなのかな?』
『じゅつっ、じゅぶっ、んぶっ、ずちゅっ』

 音々……、明らかに下等な男相手に何をやっているんだ!
 今すぐ怒鳴ってやりたい。だが次の行動で言葉に詰まってしまう。

『ふぅ~、いい感じだ。じゃあそろそろ胸で頼む』
『じゅずず……ぷはっ、かしこまりました。ご主人様のために精一杯がんばりますね』

 音々は口を離したかと思えば、メイド服の胸元を広げる。すると簡単に大きな乳房が露出した。
 その二つの膨らみを抱え、男の性器を挟み飲み込んだ。

『おおっ! やっぱり音々のパイズリは最高だぜ! でかいだけじゃなく肌の感触も最高だ』
「貴様ーーっ! 貴様風情が妻に何をするか! 許さんぞ! 絶対に許さんからなっ!!」

 殴ってでもやめさせたい。手足に力を入れても拘束が解ける様子は少しもなかった。
 聞きたくもない男の喘ぎ声ばかりを聞かされる。あと聞こえるものは、音々が胸を動かす度に粘着性のある水音がするくらいのものだ。

『あー、やばいやばい。もうイキそうだ』
『わかりました。どこへお出しになりますか?』

 音々が純真な顔で尋ねる。その間にも胸での愛撫は続けられていた。

『顔にぶっかけさせてもらおうかな』
『はい。ご主人様のお望みのままに』

 胸を動かす速度が上がる。
 粘着のある水音だけではなく、肌が擦れる音すら届いてくる。息が上がっていることすら聞こえてしまった。
 こちらの呼びかけは届かないのに、あちら側の音は聞きたくもないものまで詳細に伝えてくる。

『おお……すげえいい……。ああダメだ……出る出る出る! うっ!』

 ドビュドビュドブビュビュッドビュッドビュッブビュビュルルルルーーッ!

 男が獣のように腰を振ったかと思えば、動きを止めたと同時に射精をしていた。
 聞こえるはずもないのに、射精音が耳にこびりついてくるかのように鼓膜を震わせた気がした。
 男の精液が音々の顔へと降りかかっていく。彼女はそれを笑って受け止めていた。
 この俺が認めるほどの美しい顔が、他の男の白濁に汚されていく。ただその光景を見せつけられていくという屈辱。最悪の気分だ……、悪夢でしかない……。
 なんという汚らわしいことをしてくれたのだ……っ。怒りで頭がどうにかなりそうだ。
 歯を砕きそうなほど食いしばる。感情が怒りに支配される。殺す気で男と、嫌がりもせずこの行為を受け入れた音々を睨みつけた。

 ──その一方で、自分が痛いほど勃起していることを、怒りに我を忘れた俺はまだ気づいていない。
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