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本編
20話目
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休日。お出かけ日がやってきた。
最初お出かけを提案した時は戸惑っていた彩音だったが、服でも小物でもなんでも買ってあげると言うと目の色を変えていた。自由のない生活にフラストレーションを溜めていたのかもしれない。当日の朝、鼻歌なんか歌っちゃってこれ以上ないくらいの上機嫌だ。
彩音の趣味嗜好はまったくと言っていいほど知らない。そういうのも知ることができる良いチャンスだ。
「あたしはいつでも出られますからねっ」
琴音はすでにメイド服から私服へと着替えていた。よっぽど楽しみだったのだろう。ツインテールがぴょこぴょこ動きそうなほどのはしゃぎっぷりだ。
私服の描写? 俺に女子の私服がわかるわけないじゃないですかー。たぶん数少ない前の家から持って来た物なんだろう。おしゃれな感じだよ。あとミニスカ。以上。
「ふわぁ~、まだ飯も食ってないんだからすぐには出られないぞ。それにまだ店が開く時間じゃないだろ」
あくびをしながら彩音の出してくれた朝食にありつく。琴音は「う~」と唸りながらその場で足踏みを繰り返す。どんだけ待ちきれないんだよ。
「ふふっ、琴音ったら」
そんな妹を見て微笑する姉。微笑ましいものを目にした表情だった。しばし見とれてしまう。
「? どうされました?」
「い、いや、なんでもない」
小首をかしげる彩音から慌てて視線を逸らす。気恥ずかしくなって朝食を一気にパクついた。
「俺も準備するから。彩音もちゃんと着替えるんだぞ」
「はい」
メイド服を着ている彩音に声をかけると自室へと戻った。今日は忙しくなりそうだ。琴音のはしゃぎっぷりを見たら覚悟しないといけないかな、と思わされた。
※ ※ ※
電車に乗って辿り着いたのは大型のショッピングモール。一か所にいろんな店が固まってて便利だよな。
「ご……先輩っ。早く早くー」
先を行く琴音が急かしてくる。今「ご主人様」って呼びそうになっただろ。こんな大衆の面前でそんなこと口にしてみろ。社会的に死ぬぞ。死ぬのは俺だけだろうけど。
やれやれ。俺は歩く速度をそのままに琴音を追いかけた。彩音は俺の三歩後ろをついてくる。慎ましいお姉ちゃんを見習いなさい。
人は多いが休日と考えれば少ないくらいだろうか。歩くのに困るほどではない。ただ琴音を見失わないかと心配になる。小さい子を相手にしているくらいには心配だ。
一応後ろにいる彩音に声をかける。
「彩音、ついて来てるか? はぐれるなよ」
「ええ、私は琴音じゃないんだから大丈夫です。子供じゃありませんし」
普段妹をどう見ているかわかっちゃうセリフだな。当の本人ははしゃぎまくってまったく聞こえてないんだけども。
案内板を確認し、琴音を先頭に進む。通りすぎる男の視線が彩音と琴音に向くのがわかる。やはり二人とも目を惹く容姿なのだと改めて実感させられる。
そんな二人のご主人様である俺ってすごく良いポジションだよな。優越感で顔がニヤけてしまう。通りすぎる女に「キモッ」と言われたのは俺のことじゃないと信じたい。
最初の目的は服だ。あと下着な。ほら、マンガやアニメじゃタンスを開けたらパンティがぎっしり埋めつくされてるってシーンがあるじゃん。二人にはそれくらいのものを望んでいるわけよ。いつか実現させてこっそり覗くのだ。
彩音と琴音に服と下着を選ぶように伝え、一応の予算を告げておく。じゃないと女の買い物って際限ないイメージがあるからな。金はいいにしても、あんまり長時間になるのは面倒だ。
二人は頷くと真っ先に女性用の下着コーナーへと行ってしまった。俺だったら最初に服を選ぶけど、そこは男と女の違いなのだろうか? 女子は見えないところに気を使うっていうしな。
待っている間どうしようか。適当にスマホでもいじろうかな、と思っていると琴音が戻ってきた。
「ん、どした?」
「祐二様もついて来てくださいよぅ」
「はい? いやいや女物の下着売り場だぞ。男の俺が入れるわけないだろ」
「そんなことないですよ。あたしの下着いっしょに選んでください」
さすがにそれは……。あんな女の園に入る度胸は俺にはない。しかし琴音は俺の耳元に唇を寄せて言った。
「あたしをご主人様の色に染めてほしいんです。選んでくれた下着でご奉仕しますから」
「……」
鼻血が出そうになったのは内緒だ。
そんなわけで琴音といっしょに下着売り場へと突入。当たり前だが女性客でいっぱいだ。
やばい、もう帰りたくなってきた。しかし腕を絡めてくる琴音は俺の逃亡を許してくれそうにはない。
こんな時こそステルスモードを発動するんだ。大丈夫、平静を保っていれば俺を視認できない。授業に遅刻しても気づかれなかった俺の影の薄さを生かすんだ!
「先輩先輩っ。これなんかどうですか?」
そう言って琴音が手に取った下着は黒の上下。デザインもなんか色っぽい。
つーかさ、あんまり大きな声で呼ばないでくれるかな。他のお客さんが気づいちゃうだろ。まあ似合うと思うけどさ。
反応の薄い俺に対しても琴音はイキイキとしている。あれもこれもと俺の前に持って来ては合わせる。可愛らしいものからセクシーなものまで。自分の好みというより俺の好みを探っているようだ。
琴音はまた次の下着を選びに行く。すぐに帰ってくるが、このちょっとした空白の時間が気まずい。目のやり場に困りながらも周囲を見渡す。
やはり俺のような男がいるのに不審な目を向けてくる人はちらほらと存在する。けれど選ぶのに夢中なのか俺の存在をまったく意に介さない人がいるのも事実だ。というかそういう人が大半を占めている。俺のステルスはこんな場違いな場所でもそれなりには発揮されているようだ。
そういえば彩音はどこだ? 捜してみるとすぐに見つかった。どうやら店員に捕まっているようだった。スタイルが芸術的にいいからな。店員の本能として口を出さずにはいられないのだろう。
「先輩先輩」
琴音の声が聞こえて振り返ると、誰もいなかった。え? 何これホラー?
「こっちですよ先輩」
また声が聞こえる。方向を探りながら向かってみる。
少し離れた場所に試着室があった。カーテンからひょっこりと琴音の顔がある。
「どした?」
尋ねるが琴音は「こっちこっち」と手招きするばかりだ。仕方がないので言う通りに近づく。
「うわっ!?」
試着室の前に行くと突然腕を引っ張られた。なんの抵抗もなく中へと引きずり込まれてしまう。
な、何事か!? 抗議の視線を琴音に向けると俺は固まってしまった。
「祐二先輩、どうですか?」
彼女は純白の下着を身につけていた。というか身につけているのはそれだけであり、服は端にかけられていた。
清楚な白色でありながらちょっと透けているところがある。エロいというかエロいというか。大事なことなので二回言いました。大事なことなのかよって? エロいことほど重要なことはないだろうが!
「とっても……いい」
「えへへ、祐二様にそう言っていただけて嬉しいです」
この娘って俺のこと好きなんじゃないの? そんなあり得ない考えが頭を過る。いや、メイドとしての役職からくる忠誠心みたいなもんか。どんだけ尽くす娘なんだよ。
しばし呆けていたが、はっと状況を思い出す。
女性用下着売り場で男が試着室に。しかも下着姿の女といっしょ。これ見つかったら通報ものじゃね?
俺は焦って脱出を試みる。しかし琴音に腕を取られてしまいバランスを崩す。よろけた拍子に彼女を壁に押し付けてしまった。
ふと横を目を向けると鏡があった。どう見ても俺が女の子を襲っているシーンにしか見えない。誰かに発見されたら完全に詰みだよね。
「大丈夫ですよ。他のお客さんは向こう側にある試着室使ってるみたいですし、店員さんも忙しいみたいですから」
「いや、でもね……」
「あ、土足はダメなんですよ。脱いでそこに置いておきましょう。外に置いたらさすがにばれちゃいますから」
言われるがまま靴を脱ぐ。こんな誰かが来てもおかしくない状況で、俺は興奮しているらしい。こんなことをされて期待していないと言えば嘘になる。
「あたしクラスの中でもけっこう胸がある方なんですよ。さすがにお姉ちゃんには負けちゃいますけどね」
そう言って谷間を強調してくる。中学生にしてはある方なのかもしれない。女子のおっぱい事情に疎い俺はそうか、としか言えない。
まあ、姉を見ているとまだまだ成長の余地はある。しかも彩音ってまだまだ大きくなってるんだぜ。Fカップも近いぜ。俺が揉んでるおかげかな。
「触ってみます?」
頭がクラクラする。この試着室酸素濃度が薄いんじゃないのか。花に集まるミツバチのように、俺は琴音のおっぱいに手を伸ばした。
ブラジャー越しの触感が手のひらに広がる。ちょっと硬いのはブラジャーのせいだ。でもそれこそが興奮を高める一因となっていた。
店内で美少女の胸をまさぐる。力を入れると「あんっ」と声を漏らす。小声だったにもかかわらず驚いてしまった。そんな俺の反応にくすくすと琴音は笑う。
「ふふっ、これくらい気づかれませんってば」
「そ、そう言うけどな。もし誰かが来たら終わりだろうが」
「もしそうなったらあたしが全力でご主人様を守ります」
「そ、そうか」
「はいっ」
なんか無性に琴音を抱きしめたくなってきた。まあいいかと開き直って彼女を抱きしめる。
服を着ているから下着の感触がわかりづらい。それでも柔らかい感触が腕の中にすっぽりと収まる。髪の毛の甘い香りも俺の心を刺激する。
彼女は何も言わない。金で俺に買われて本当のところどう思っているのかは知らない。知らない方がいいと思うから俺からは聞くつもりはない。
それでも俺に尽くす彼女は本物だ。だってほら、今も俺のチンポを気持ち良くしようと……。
「ってうわっ!?」
気がつけばチンポが露出されていた。抱きしめられながらジッパーを下ろしてモノを取り出したらしい。器用かよ。
「ご主人様……興奮してる?」
耳元でささやかれて大きさを増してしまった。これが有名なささやき戦術ってやつか。ノムさんぼやかないでっ。
ひんやりとした手が俺のモノをしごく。店内で下着姿の美少女にこんなことをされて、ダメだと理性が警告を鳴らしているのに本能がそれを全力で無視する。
俺の身体は完全に硬直してしまった。ムスコも同じく完全に硬直している。お前は本能だけで生きてるからいいよな。羨ましいわ。
異様な状況。だからなのか早くもビクビクと脈動する。
「琴音……やばい……」
「汚したらさすがにまずいですよね。あたしの口の中に出しちゃってください」
もう射精したくて仕方ない。彼女の肩を押さえて跪かせようとした時である。
「琴音? そこにいるの?」
「!?」
カーテンの向こう側からかけられた声に俺と琴音は飛び上がりそうなほど驚いた。
彩音が試着室の前にある琴音の靴を目にしてここにいると思ったのだろう。どうやらいつの間にか店員から開放されていたらしい。
「お、お姉ちゃん早いよっ。いつもなら当分捕まったままなのに……」
琴音が小声でぼやく。さすがは姉妹。姉の断りきれない性格を熟知している。しかし今回はその油断が裏目に出たな。
「さすがに俺見つかったらやばいだろ。こんなところ見られたら」
「見られたら、あたし達ただならない関係ってばれちゃいますね」
「冷静に言うなよ。なんとかしろ」
「了解です」
小声でのやり取りの後、小さく敬礼すると琴音は外に向かって声を上げる。
「うん、今着替え中なの。お姉ちゃんはもう決めた?」
慌てた素振りもなく姉とやり取りをする妹。あまりにも自然。これなら俺がいるとは思わないだろう。
「私はまだなの。試着しているなら見てあげようか?」
おいっ。もしかして開ける気じゃないだろうな。このカーテンが俺を守る最後の防衛ラインなんだぞ。
「大丈夫だよ。もう買うって決めたし。お姉ちゃんこそ早く決めないとご主人様を待たせちゃうよ」
平然としている琴音すげえ。こう自然に言われては怪しむ様子すらないだろうな。
「そうね。待たせるのは彼に悪いわ。それと、琴音」
なぜか外から近づく気配がする。おいおいまさか……。思わず琴音の後ろに隠れる。
「外では『ご主人様』って呼んではダメよ。会田君はそういうの気にする人なんだから」
「あ、うん。わかった」
「わかればよろしい。彼みみっちい性格しているのよ。目ざといから気をつけてね」
彩音は妹に注意を促すとどこかへと行ってしまった。自分の下着を選びに行ったのだろう。
……じゃなくて、何? みみっちい性格? 目ざとい? さっきの彩音だよな。もしかして影でそんなこと言われてたのか。
「えーっと……あたしは思ってませんよ?」
「なぜ疑問符をつけた?」
「あはは、その場の雰囲気ですよご主人様」
「そのまま雰囲気に流されてしまえ」
イラッとしたので琴音のおっぱいをブラ越しに思いっきり揉んでやった。声を上げるわけにもいかないので熱い吐息を漏らすだけにとどめる琴音。彼女なら耐えられると思ってしたことなので暴挙だとも思わない。
そんなわけで試着室から無事脱出した俺は店の前で待つことにした。射精できなかったのとさっきの彩音の言葉にイライラする。腹の奥底に沈んだ気持ちを抱えてしまった。
あー、このイライラを発散したい。俺はスマホでゲームして誤魔化しながら二人を待つのであった。
最初お出かけを提案した時は戸惑っていた彩音だったが、服でも小物でもなんでも買ってあげると言うと目の色を変えていた。自由のない生活にフラストレーションを溜めていたのかもしれない。当日の朝、鼻歌なんか歌っちゃってこれ以上ないくらいの上機嫌だ。
彩音の趣味嗜好はまったくと言っていいほど知らない。そういうのも知ることができる良いチャンスだ。
「あたしはいつでも出られますからねっ」
琴音はすでにメイド服から私服へと着替えていた。よっぽど楽しみだったのだろう。ツインテールがぴょこぴょこ動きそうなほどのはしゃぎっぷりだ。
私服の描写? 俺に女子の私服がわかるわけないじゃないですかー。たぶん数少ない前の家から持って来た物なんだろう。おしゃれな感じだよ。あとミニスカ。以上。
「ふわぁ~、まだ飯も食ってないんだからすぐには出られないぞ。それにまだ店が開く時間じゃないだろ」
あくびをしながら彩音の出してくれた朝食にありつく。琴音は「う~」と唸りながらその場で足踏みを繰り返す。どんだけ待ちきれないんだよ。
「ふふっ、琴音ったら」
そんな妹を見て微笑する姉。微笑ましいものを目にした表情だった。しばし見とれてしまう。
「? どうされました?」
「い、いや、なんでもない」
小首をかしげる彩音から慌てて視線を逸らす。気恥ずかしくなって朝食を一気にパクついた。
「俺も準備するから。彩音もちゃんと着替えるんだぞ」
「はい」
メイド服を着ている彩音に声をかけると自室へと戻った。今日は忙しくなりそうだ。琴音のはしゃぎっぷりを見たら覚悟しないといけないかな、と思わされた。
※ ※ ※
電車に乗って辿り着いたのは大型のショッピングモール。一か所にいろんな店が固まってて便利だよな。
「ご……先輩っ。早く早くー」
先を行く琴音が急かしてくる。今「ご主人様」って呼びそうになっただろ。こんな大衆の面前でそんなこと口にしてみろ。社会的に死ぬぞ。死ぬのは俺だけだろうけど。
やれやれ。俺は歩く速度をそのままに琴音を追いかけた。彩音は俺の三歩後ろをついてくる。慎ましいお姉ちゃんを見習いなさい。
人は多いが休日と考えれば少ないくらいだろうか。歩くのに困るほどではない。ただ琴音を見失わないかと心配になる。小さい子を相手にしているくらいには心配だ。
一応後ろにいる彩音に声をかける。
「彩音、ついて来てるか? はぐれるなよ」
「ええ、私は琴音じゃないんだから大丈夫です。子供じゃありませんし」
普段妹をどう見ているかわかっちゃうセリフだな。当の本人ははしゃぎまくってまったく聞こえてないんだけども。
案内板を確認し、琴音を先頭に進む。通りすぎる男の視線が彩音と琴音に向くのがわかる。やはり二人とも目を惹く容姿なのだと改めて実感させられる。
そんな二人のご主人様である俺ってすごく良いポジションだよな。優越感で顔がニヤけてしまう。通りすぎる女に「キモッ」と言われたのは俺のことじゃないと信じたい。
最初の目的は服だ。あと下着な。ほら、マンガやアニメじゃタンスを開けたらパンティがぎっしり埋めつくされてるってシーンがあるじゃん。二人にはそれくらいのものを望んでいるわけよ。いつか実現させてこっそり覗くのだ。
彩音と琴音に服と下着を選ぶように伝え、一応の予算を告げておく。じゃないと女の買い物って際限ないイメージがあるからな。金はいいにしても、あんまり長時間になるのは面倒だ。
二人は頷くと真っ先に女性用の下着コーナーへと行ってしまった。俺だったら最初に服を選ぶけど、そこは男と女の違いなのだろうか? 女子は見えないところに気を使うっていうしな。
待っている間どうしようか。適当にスマホでもいじろうかな、と思っていると琴音が戻ってきた。
「ん、どした?」
「祐二様もついて来てくださいよぅ」
「はい? いやいや女物の下着売り場だぞ。男の俺が入れるわけないだろ」
「そんなことないですよ。あたしの下着いっしょに選んでください」
さすがにそれは……。あんな女の園に入る度胸は俺にはない。しかし琴音は俺の耳元に唇を寄せて言った。
「あたしをご主人様の色に染めてほしいんです。選んでくれた下着でご奉仕しますから」
「……」
鼻血が出そうになったのは内緒だ。
そんなわけで琴音といっしょに下着売り場へと突入。当たり前だが女性客でいっぱいだ。
やばい、もう帰りたくなってきた。しかし腕を絡めてくる琴音は俺の逃亡を許してくれそうにはない。
こんな時こそステルスモードを発動するんだ。大丈夫、平静を保っていれば俺を視認できない。授業に遅刻しても気づかれなかった俺の影の薄さを生かすんだ!
「先輩先輩っ。これなんかどうですか?」
そう言って琴音が手に取った下着は黒の上下。デザインもなんか色っぽい。
つーかさ、あんまり大きな声で呼ばないでくれるかな。他のお客さんが気づいちゃうだろ。まあ似合うと思うけどさ。
反応の薄い俺に対しても琴音はイキイキとしている。あれもこれもと俺の前に持って来ては合わせる。可愛らしいものからセクシーなものまで。自分の好みというより俺の好みを探っているようだ。
琴音はまた次の下着を選びに行く。すぐに帰ってくるが、このちょっとした空白の時間が気まずい。目のやり場に困りながらも周囲を見渡す。
やはり俺のような男がいるのに不審な目を向けてくる人はちらほらと存在する。けれど選ぶのに夢中なのか俺の存在をまったく意に介さない人がいるのも事実だ。というかそういう人が大半を占めている。俺のステルスはこんな場違いな場所でもそれなりには発揮されているようだ。
そういえば彩音はどこだ? 捜してみるとすぐに見つかった。どうやら店員に捕まっているようだった。スタイルが芸術的にいいからな。店員の本能として口を出さずにはいられないのだろう。
「先輩先輩」
琴音の声が聞こえて振り返ると、誰もいなかった。え? 何これホラー?
「こっちですよ先輩」
また声が聞こえる。方向を探りながら向かってみる。
少し離れた場所に試着室があった。カーテンからひょっこりと琴音の顔がある。
「どした?」
尋ねるが琴音は「こっちこっち」と手招きするばかりだ。仕方がないので言う通りに近づく。
「うわっ!?」
試着室の前に行くと突然腕を引っ張られた。なんの抵抗もなく中へと引きずり込まれてしまう。
な、何事か!? 抗議の視線を琴音に向けると俺は固まってしまった。
「祐二先輩、どうですか?」
彼女は純白の下着を身につけていた。というか身につけているのはそれだけであり、服は端にかけられていた。
清楚な白色でありながらちょっと透けているところがある。エロいというかエロいというか。大事なことなので二回言いました。大事なことなのかよって? エロいことほど重要なことはないだろうが!
「とっても……いい」
「えへへ、祐二様にそう言っていただけて嬉しいです」
この娘って俺のこと好きなんじゃないの? そんなあり得ない考えが頭を過る。いや、メイドとしての役職からくる忠誠心みたいなもんか。どんだけ尽くす娘なんだよ。
しばし呆けていたが、はっと状況を思い出す。
女性用下着売り場で男が試着室に。しかも下着姿の女といっしょ。これ見つかったら通報ものじゃね?
俺は焦って脱出を試みる。しかし琴音に腕を取られてしまいバランスを崩す。よろけた拍子に彼女を壁に押し付けてしまった。
ふと横を目を向けると鏡があった。どう見ても俺が女の子を襲っているシーンにしか見えない。誰かに発見されたら完全に詰みだよね。
「大丈夫ですよ。他のお客さんは向こう側にある試着室使ってるみたいですし、店員さんも忙しいみたいですから」
「いや、でもね……」
「あ、土足はダメなんですよ。脱いでそこに置いておきましょう。外に置いたらさすがにばれちゃいますから」
言われるがまま靴を脱ぐ。こんな誰かが来てもおかしくない状況で、俺は興奮しているらしい。こんなことをされて期待していないと言えば嘘になる。
「あたしクラスの中でもけっこう胸がある方なんですよ。さすがにお姉ちゃんには負けちゃいますけどね」
そう言って谷間を強調してくる。中学生にしてはある方なのかもしれない。女子のおっぱい事情に疎い俺はそうか、としか言えない。
まあ、姉を見ているとまだまだ成長の余地はある。しかも彩音ってまだまだ大きくなってるんだぜ。Fカップも近いぜ。俺が揉んでるおかげかな。
「触ってみます?」
頭がクラクラする。この試着室酸素濃度が薄いんじゃないのか。花に集まるミツバチのように、俺は琴音のおっぱいに手を伸ばした。
ブラジャー越しの触感が手のひらに広がる。ちょっと硬いのはブラジャーのせいだ。でもそれこそが興奮を高める一因となっていた。
店内で美少女の胸をまさぐる。力を入れると「あんっ」と声を漏らす。小声だったにもかかわらず驚いてしまった。そんな俺の反応にくすくすと琴音は笑う。
「ふふっ、これくらい気づかれませんってば」
「そ、そう言うけどな。もし誰かが来たら終わりだろうが」
「もしそうなったらあたしが全力でご主人様を守ります」
「そ、そうか」
「はいっ」
なんか無性に琴音を抱きしめたくなってきた。まあいいかと開き直って彼女を抱きしめる。
服を着ているから下着の感触がわかりづらい。それでも柔らかい感触が腕の中にすっぽりと収まる。髪の毛の甘い香りも俺の心を刺激する。
彼女は何も言わない。金で俺に買われて本当のところどう思っているのかは知らない。知らない方がいいと思うから俺からは聞くつもりはない。
それでも俺に尽くす彼女は本物だ。だってほら、今も俺のチンポを気持ち良くしようと……。
「ってうわっ!?」
気がつけばチンポが露出されていた。抱きしめられながらジッパーを下ろしてモノを取り出したらしい。器用かよ。
「ご主人様……興奮してる?」
耳元でささやかれて大きさを増してしまった。これが有名なささやき戦術ってやつか。ノムさんぼやかないでっ。
ひんやりとした手が俺のモノをしごく。店内で下着姿の美少女にこんなことをされて、ダメだと理性が警告を鳴らしているのに本能がそれを全力で無視する。
俺の身体は完全に硬直してしまった。ムスコも同じく完全に硬直している。お前は本能だけで生きてるからいいよな。羨ましいわ。
異様な状況。だからなのか早くもビクビクと脈動する。
「琴音……やばい……」
「汚したらさすがにまずいですよね。あたしの口の中に出しちゃってください」
もう射精したくて仕方ない。彼女の肩を押さえて跪かせようとした時である。
「琴音? そこにいるの?」
「!?」
カーテンの向こう側からかけられた声に俺と琴音は飛び上がりそうなほど驚いた。
彩音が試着室の前にある琴音の靴を目にしてここにいると思ったのだろう。どうやらいつの間にか店員から開放されていたらしい。
「お、お姉ちゃん早いよっ。いつもなら当分捕まったままなのに……」
琴音が小声でぼやく。さすがは姉妹。姉の断りきれない性格を熟知している。しかし今回はその油断が裏目に出たな。
「さすがに俺見つかったらやばいだろ。こんなところ見られたら」
「見られたら、あたし達ただならない関係ってばれちゃいますね」
「冷静に言うなよ。なんとかしろ」
「了解です」
小声でのやり取りの後、小さく敬礼すると琴音は外に向かって声を上げる。
「うん、今着替え中なの。お姉ちゃんはもう決めた?」
慌てた素振りもなく姉とやり取りをする妹。あまりにも自然。これなら俺がいるとは思わないだろう。
「私はまだなの。試着しているなら見てあげようか?」
おいっ。もしかして開ける気じゃないだろうな。このカーテンが俺を守る最後の防衛ラインなんだぞ。
「大丈夫だよ。もう買うって決めたし。お姉ちゃんこそ早く決めないとご主人様を待たせちゃうよ」
平然としている琴音すげえ。こう自然に言われては怪しむ様子すらないだろうな。
「そうね。待たせるのは彼に悪いわ。それと、琴音」
なぜか外から近づく気配がする。おいおいまさか……。思わず琴音の後ろに隠れる。
「外では『ご主人様』って呼んではダメよ。会田君はそういうの気にする人なんだから」
「あ、うん。わかった」
「わかればよろしい。彼みみっちい性格しているのよ。目ざといから気をつけてね」
彩音は妹に注意を促すとどこかへと行ってしまった。自分の下着を選びに行ったのだろう。
……じゃなくて、何? みみっちい性格? 目ざとい? さっきの彩音だよな。もしかして影でそんなこと言われてたのか。
「えーっと……あたしは思ってませんよ?」
「なぜ疑問符をつけた?」
「あはは、その場の雰囲気ですよご主人様」
「そのまま雰囲気に流されてしまえ」
イラッとしたので琴音のおっぱいをブラ越しに思いっきり揉んでやった。声を上げるわけにもいかないので熱い吐息を漏らすだけにとどめる琴音。彼女なら耐えられると思ってしたことなので暴挙だとも思わない。
そんなわけで試着室から無事脱出した俺は店の前で待つことにした。射精できなかったのとさっきの彩音の言葉にイライラする。腹の奥底に沈んだ気持ちを抱えてしまった。
あー、このイライラを発散したい。俺はスマホでゲームして誤魔化しながら二人を待つのであった。
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弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
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