もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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本編

10話目

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 戸倉坂とくらざか真有まゆは俺の一つ下の下級生らしい。
 今晩、その彼女に彩音との野外プレイを目撃された。視界は悪かったし、チラッとしか見ていなかったがその戸倉坂という女の子で間違いないらしい。
 らしい、と連呼するのはすべて彩音から聞いた情報だからである。うちの学園は中高一貫なので中学もいっしょだったとのことだ。中学時代二人は生徒会をしており、先輩として彩音は戸倉坂に慕われていたらしかった。

 顔見知りか。これは厄介だな。
 夜だというのに彩音でも誰か判別できたのだ。それなら向こうだってあれが彩音だって気づいたかもしれない。いや、かもしれないではなく気づかれたと考えた方がいいだろう。
 俺は学園でも地味だから相手が誰だったかまではわかっていないと思う。地味過ぎてクラスメイトで俺の存在を認知してない奴もいるかもしれないほど地味だ。いや、かもしれないじゃなくて本当に「こいつ誰だっけ?」みたいな目を向けられる時がある。マジでへこむ。
 まあそれは今は置いとこう。全然関係ないしな。それどころかおかげで俺だと特定されてないと思える。ちょっとした希望だ。

 だから問題は彩音を見られたことだ。戸倉坂に「藤咲先輩が知らない男に犯されていました」なんて言いふらされてみろ。全校生徒が彩音を徹底マークして守るだろう。悪い考えを持つ奴がいればそれをネタに彩音に肉体関係を求めるかもしれない。
 それだけは許せない。藤咲彩音は俺のもんだ。オナネタにするのは構わんが、彩音の肌に触れる奴はどうしても許せそうにない。
 そんな事態を防ぐためにも早急に対策を練らなければならない。

 目的は確実な口止め。それは口約束だけじゃダメだろう。
 戸倉坂に相談できる奴がいるかどうかは知らんが、どちらにしてもまずは目撃したかの事実確認が必要だ。できるだけ早急に、だ。
 そして確実な口止め。そのためには……。

「彼女の弱みを握るしかなさそうだな」


  ※ ※ ※


「嫌です。真有ちゃんに危害を加えることには協力できません」

 きっぱりとした言葉だった。
 家に帰って戸倉坂を何とかしよう、という話をした。すると彩音からさっきの言葉である。

「いや、いやいやいやっ。嫌です、じゃないだろう? 俺たちの命運がかかってるんだぜ」

 彩音にその戸倉坂の弱みが何かないかと尋ねたら、はっきりとした拒絶が返ってきた。これには俺も驚くほかない。焦った声になってしまった。
 口止めをするのは俺だけじゃなくて彩音にも必要なことのはずだ。むしろ知り合いだからこそ何としても広められては困るだろう。
 なのに、彩音は首を横に振る。

「ご主人様は真有ちゃんに、何をする気ですか?」
「何をって……口止めをだな」
「まさか……、彼女の弱みを握って私と同じことをする気じゃないですよね」
「うっ」

 言葉に詰まる。正直半ば考えていたことだからだ。
 俺の反応で察したのか、彩音はますます頑なになる。

「私はどうなっても構いません。でも、他の人まで巻き込むなんてできない……」

 淀みないセリフ。清く正しく美しい。まさに清廉潔白な少女だ。
 そう、藤咲彩音はこういう女だったのだ。彼女は外見に恵まれているだけの女じゃない。こういった内面の美しさこそが、男女問わず人気になっている理由である。

「俺の命令でもか」
「あなたの命令でもです」

 強い瞳で見つめられる。男を魅了するだけの目ではない。相手を頷かせる力強さがあった。
 これじゃあ彩音の協力は得られそうにない。くそうっ。俺のメイドのくせにっ。俺に逆らうなんて生意気だ。

 俺は怒りと焦りのまま彩音を抱いた。何度も絶頂を迎え、彼女も同じくらいイカせたと思う。
 けれど彩音は首を縦には振らなかった。その意志は固く、自分がどうなっても他人に危害を加えられるのは容認できないようだった。
 だが、一応目撃したかの確認だけはしてくれるとのことだった。なんだかんだで彩音もうわさを広められるのは嫌なのだ。
 戸倉坂が暗闇で誰だったかと判別できてなければいいのだが。どちらにしても俺は対策を考えていた方がよさそうだ。
 あー、調子に乗って野外プレイなんてするんじゃなかった。
 というかメイド服のまま買い物にも行かせるべきじゃなかったな。今回は特に何もなかったけど、あの美貌にメイド服。誰かに尾行されてもおかしくなかった。
 そして男たちにレイプされていたら。俺じゃあ止められなかっただろうし、そんな光景見せられたら発狂ものだ。
 そう考えたら今回のことは不幸中の幸いか。何とかしなければならないことに変わりはないけれど、とにかく彩音に何もなくて良かった。
 よし! 反省もしたし今の問題を解決することに尽力しよう。


  ※ ※ ※


 さて、どうするか。
 次の日の朝、俺は早めに学園に行くと一年の教室を行ったり来たりを繰り返していた。
 まだそう人もいない時間帯。時折見かけるのは部活に精を出す生徒なのだろう。
 そいつらは俺が一年の教室前の廊下にいても見向きもしない。まだ一年生だし俺が二年だってわからないのだろう。むしろ影が薄くて見向きもしないだけじゃ、という考えは強引に振り払った。

 戸倉坂真有の情報はどこのクラスか、ということと、サッカー部のマネージャーをしていることだけは彩音から聞き出せた。
 だがこれだけでは弱みも何も掴むことすらできない。
 くそっ、何かないのかよ。
 考えもなく、俺はいてもたってもいられないという理由だけで、こうやって一年の教室近くをうろうろしている。
 登校する生徒が多くなると俺が怪しまれるだけだ。今は一時撤退しておこうかな。そう思った時である。

 廊下を歩く少女。小柄な体でとてててと歩くのは小動物チックだ。ひょこひょことポニーテールにした髪の毛がゆれている。
 くりくりとした可愛い目。小顔で肩幅も狭く、脚も細い。抱きしめたらぽっきりと折れてしまいそうな危うさがある。
 守ってあげたくなる。そんな衝動に突き動かされそうだ。
 制服に身を包んでいなければ高校生とは思えなかっただろう。それほどに小さな女の子。けれど整えられた造形から間違いなく美少女認定される人材だ。

 月明かりでチラッと見ただけだが、俺と彩音の行為を目撃したのはこの女の子で間違いない。俺はそう確信した。
 でも、この子前にどこかで見たことあるような。いや、昨日じゃなくてね。美少女だしチラッと目にしただけでも記憶に残っていたのだろうか? まあ今はそんなことどうでもいいけどな。
 俺は何気ない顔で女の子とすれ違う。「おはようございます」とあいさつされたので「お、おはよう」と返した。いきなりあいさつされると思ってなかったからどもっちゃったじゃないか。
 だがすんなりとしたやり取り。昨晩俺があの場にいたと気づいていないのだろう。それについては一安心だ。
 まずは一目見れただけでよしとしておこう。俺は自分の教室に戻った。


  ※ ※ ※


 実際問題難しい。
 戸倉坂真有をどうするかについて考えに考えを重ねてはいるが、何も良い案は出てこなかった。

「あの子、気づいてましたよ」

 探りを入れた結果、彩音はそう端的に言った。
 直接聞いたわけじゃないだろうが、上手いことやったのだろう。少なくとも彩音本人は戸倉坂にばれていたようだった。
 それでも何気ない顔でいられる彩音すごい。もう覚悟は決まった、て顔なんだけれども。
 彩音がよくても俺は困る。なんとかして戸倉坂の弱みを握りたかった。

 真っ先に考えたのは彼女をレイプして恥ずかしい写真でも撮ってしまうことだ。この脅しなら口止めをしつつ性奴隷が増えると、まさに一石二鳥に思えた。
 だがそれはすぐに却下した。単純にできるできないを考えると、俺にそんな度胸はないのだ。
 彩音は俺に逆らえないという前提があるからこそ強気でいられた。しかし戸倉坂をレイプするとして、もし失敗でもしたら……。それを想像しただけで俺の身体は恐怖で動けない。お縄になれば人生終了である。
 本格的にばれてこの学園にいられなくなったとしても、俺は彩音をつれてどこかへと逃げるだろう。それができるなら警察に捕まるリスクは負うことはできなかった。

「たぶん、真有は他人に言いふらしたりはしませんよ」

 何を根拠に言っているのだろうか。彩音の言葉にも俺は信用しなかった。
 だって女の口なんて信用できるはずがない。だいたい女の秘密は周知の事実になるって相場が決まってるんだよ。彩音も「たぶん」ってつけてるし。
 彩音は協力してくれないし、俺だってリスクを負うのは嫌だ。純情そうな彼女に隠さなければならない秘密なんてものもないだろう。
 弱みはこっちで作ってやるしかない。けどその手立てが思いつかない。
 くそっ! どうするよ。どうするよ俺。
 こっちのやってるところが目撃されたんだから、同じように戸倉坂がやられている姿でも目撃できたらなぁ。可能なら写真か動画に収める。口止めとしては充分な材料だ。
 けど、俺はやりたくないし、こんなこと頼める友達なんて……なんて?
 いや待て。いるじゃないか。リスクを負ってまでも女とやりたい奴が。相手の弱みを握ってまでもレイプすると意気込んでる奴が。
 奴に頼むしかない。奴にリスクを負ってもらうしかない。
 きっと俺の頼みを聞いてくれるだろう。だって奴とは友達だからな。
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