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5話目
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「痛いよー痛いよー」
「ゴブリンに噛まれた……。俺はもう死んでしまうかもしれない……」
「なんだよあのいかにも凶悪そうな顔。怖いじゃねえか」
「もうお家に帰りたい……」
「助けてママー!」
ゴブリンを駆除し終わった後のバラ騎士団の皆様のお声である。
なんていうか……どう声をかけていいのかわからないんですけど。
それは後輩も同じらしく、ものすごく微妙な表情をしていた。
最初に町で見た時は精悍な顔つきでさすがは騎士団って感じだったのになぁ。今は残念で仕方がない。
「コラー! 貴様らそれでも誇り高いバラ騎士団か!! なんて情けないの!!」
アリエッタはご立腹である。ちなみに彼女は最後まで戦闘には参加していない。
怒られた騎士団の皆様は涙目である。というか涙を流しちゃっている人もいる。みんな大の大人だよね。
「だって姫様ぁ……」
男の「だって」ほど顔をしかめたくなるものはない。そう実感しました。
「ええい! 口答えをするんじゃないわよ!!」
対してこっちはこっちでお怒りが収まらない様子。ここ一応モンスターの出てくる区域なんですけどね。まだ森の中ですよー。
「まあまあアリエッタ。まずは回復しますので文句はそのあとで」
見かねたネルがなだめる。アリエッタは息を荒げながらも「それもそうね」と引き下がった。
上肢から解放された部下は感謝の方向がちゃんとわかっている。彼らはネルを神様でも見つめるような目差しを向ける。ちょっと目がキラキラしてんぞ。
「では皆さん集まってください。いっぺんにやりますよ」
範囲回復魔法を使うネル。そのへんのプリーストにはできないほどの高等魔法だ。
この後輩、プリーストとしてけっこう優秀なんだよなぁ。なんで俺にくっついてきてんだろ? 充分独立できそうなんだけど。
なーんて考えてる間に回復タイム終了。
「おおっ! 痛みが消えたぞ!」
「擦り傷がなくなってる!」
「吐き気もなくなった!」
「お腹痛いのも治った!」
「肌荒れがよくなったぞ!」
絶賛の嵐だった。
もともと立派な鎧のおかげなのか大したケガをしている奴はいなかったしな。ほとんどの冒険者だったら唾でもつけときゃ治るだろってくらいの傷だ。
つまり、痛みに敏感すぎるのだ。本当に訓練してきたのかと疑ってしまう。
「なあ、いったん町に戻らないか? 騎士団の皆さんだって消耗していることだしさ」
俺はアリエッタに提案する。
「そんな……っ。まだ一戦しかしていないのに」
愕然とするお嬢さん。あなたは戦ってませんけどね。
でも、気持ちはわからんでもない。
強くなるためにきたというのに初戦でこれだ。先が思いやられるというのが正直な気持ちなのだろう。
ちょっと悩むアリエッタ。それを後押しする声が聞こえてきた。
「うっ……、急に目まいがっ」
「俺トイレに行きたくなってきた。もちろん大の方」
「はぁはぁ。もう体力の限界だ……。次戦えば、死んでしまう!」
「お家に帰りたいなー。チラチラ」
「くそー。持病のしゃくが。戦いたかったけどこれはもう仕方がないなー」
騎士団からの帰りたいアピール。
騎士団長はしばしうなって、決断した。
「ならば仕方がない。一度戻りましょう」
騎士団から拍手喝さいが上がった。
バラ騎士団。もうダメかもしれん。部外者の俺は心の中でそう思った。
「ゴブリンに噛まれた……。俺はもう死んでしまうかもしれない……」
「なんだよあのいかにも凶悪そうな顔。怖いじゃねえか」
「もうお家に帰りたい……」
「助けてママー!」
ゴブリンを駆除し終わった後のバラ騎士団の皆様のお声である。
なんていうか……どう声をかけていいのかわからないんですけど。
それは後輩も同じらしく、ものすごく微妙な表情をしていた。
最初に町で見た時は精悍な顔つきでさすがは騎士団って感じだったのになぁ。今は残念で仕方がない。
「コラー! 貴様らそれでも誇り高いバラ騎士団か!! なんて情けないの!!」
アリエッタはご立腹である。ちなみに彼女は最後まで戦闘には参加していない。
怒られた騎士団の皆様は涙目である。というか涙を流しちゃっている人もいる。みんな大の大人だよね。
「だって姫様ぁ……」
男の「だって」ほど顔をしかめたくなるものはない。そう実感しました。
「ええい! 口答えをするんじゃないわよ!!」
対してこっちはこっちでお怒りが収まらない様子。ここ一応モンスターの出てくる区域なんですけどね。まだ森の中ですよー。
「まあまあアリエッタ。まずは回復しますので文句はそのあとで」
見かねたネルがなだめる。アリエッタは息を荒げながらも「それもそうね」と引き下がった。
上肢から解放された部下は感謝の方向がちゃんとわかっている。彼らはネルを神様でも見つめるような目差しを向ける。ちょっと目がキラキラしてんぞ。
「では皆さん集まってください。いっぺんにやりますよ」
範囲回復魔法を使うネル。そのへんのプリーストにはできないほどの高等魔法だ。
この後輩、プリーストとしてけっこう優秀なんだよなぁ。なんで俺にくっついてきてんだろ? 充分独立できそうなんだけど。
なーんて考えてる間に回復タイム終了。
「おおっ! 痛みが消えたぞ!」
「擦り傷がなくなってる!」
「吐き気もなくなった!」
「お腹痛いのも治った!」
「肌荒れがよくなったぞ!」
絶賛の嵐だった。
もともと立派な鎧のおかげなのか大したケガをしている奴はいなかったしな。ほとんどの冒険者だったら唾でもつけときゃ治るだろってくらいの傷だ。
つまり、痛みに敏感すぎるのだ。本当に訓練してきたのかと疑ってしまう。
「なあ、いったん町に戻らないか? 騎士団の皆さんだって消耗していることだしさ」
俺はアリエッタに提案する。
「そんな……っ。まだ一戦しかしていないのに」
愕然とするお嬢さん。あなたは戦ってませんけどね。
でも、気持ちはわからんでもない。
強くなるためにきたというのに初戦でこれだ。先が思いやられるというのが正直な気持ちなのだろう。
ちょっと悩むアリエッタ。それを後押しする声が聞こえてきた。
「うっ……、急に目まいがっ」
「俺トイレに行きたくなってきた。もちろん大の方」
「はぁはぁ。もう体力の限界だ……。次戦えば、死んでしまう!」
「お家に帰りたいなー。チラチラ」
「くそー。持病のしゃくが。戦いたかったけどこれはもう仕方がないなー」
騎士団からの帰りたいアピール。
騎士団長はしばしうなって、決断した。
「ならば仕方がない。一度戻りましょう」
騎士団から拍手喝さいが上がった。
バラ騎士団。もうダメかもしれん。部外者の俺は心の中でそう思った。
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