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10.藤咲姉妹
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藤咲彩音。学園のアイドルと称されるほどの美貌を持つクラスメートである。
彼女の良い点は容姿端麗だけじゃない。文武両道で試験は常に上位の成績を残しているし、体育では運動部相手でも無双しているのだとか。さらには人当たりも良く、男子どころか女子の友達も多いらしい。
それを知った時、そんな超人本当にいるんだと感心したものだ。目の前で見せられれば信じざるを得ない。入学した頃から同じクラスだったしな。
俺が通う学園は中高一貫校であり、藤咲さんは中等部の頃からそういった意味で注目されていたのだそうだ。
俺は高等部からの外部生なので、いきなり学園のアイドルという単語を聞いた時は面食らったものだ。
でもここではそれが当たり前。順調に成長した藤咲さんは高等部になってからもより一層その美貌を増していったとか。初めて目にした時から完璧美少女と思っていた。なのにまだレベルが上がっていて、上限はないってずるいよな。
清楚な黒髪ロングの超絶美少女。そんな女子が同じ学校にいれば、男として手を伸ばしたくもなるだろう。
当然のように藤咲さんはたくさんの男子連中から告白を受けた。
だが、告白した男子全員が藤咲さんに振られるという結末を辿った。サッカー部のイケメン先輩も、彼女がいなかったことがねえとかのたまうイケメン先輩も、クールで知的なのを売りにしていた同級生も。彼女は自信満々であったであろう連中の鼻をへし折ってきたのだ。
そうして、難攻不落の藤咲彩音と呼ばれるようになった。誰のものにもならなかったからこそ、学園のアイドルという肩書がより強固なものとなった。美少女すぎて釣り合う男子がいなかったともいう。イケメンざまあ。
それは三年になった今でも変わらない。さっそく顔が取り柄の新入生の何人かは撃沈したらしい。ざまあ。
そんなわけで、藤咲さんは学園の女子の中で一番モテる。全校男子の半数以上から告白されたとも聞く。生きた伝説といっても過言じゃないだろう。
「好きです、付き合ってください」
「ごめんなさい」
このビッグウェーブに乗らなきゃならねえ! そんな強迫観念じみたことを感じたわけではなかったが、俺も藤咲さんに告白していた。高校一年が終わろうかとする頃のことであった。
結果は見事な玉砕。逡巡の間すらなく切って捨てられた。
自分の容姿がそれほど優れたものではないとわかっていたし、とくに誇れる何かがあるわけでもない。もともと勝ち目などなかった告白ではあるが、告白するまでの時間は期待という夢を見られたのも確かだった。
彼女にとってのモブの一部にはなれただろうか。一応は名前を憶えられていた。まあなんの因果か三年間同じクラスになったというのがあるのだが。
その因果がどう転んでしまったのか。今は藤咲さんの妹と付き合っている。というか付き合わせている、という方が正確か。
藤咲琴音。学園のアイドル、藤咲彩音の妹である。
姉妹だけあって容姿は藤咲さんと似ているところが多々見られる。
だってのに、琴音ちゃんの知名度はそれほど高くない。少なくとも最近まで俺は知らなかった。今思うとちょっと不思議だ。
「まっいいけどね」
琴音ちゃんが藤咲さんの妹だろうがなんだろうが関係ない。
可愛くて健気な後輩女子。そんな子が俺の彼女になってくれた。重要なのはそこだ。
「よし、さっそく放課後デートしようそうしよう」
思い立ったらなんとやら。放課後を迎えた俺は鼻息荒く席から立ち上がった。琴音ちゃんにメッセージを送ろうとスマホを手に取る。
「そういえば祐二、追試は大丈夫なのかい?」
「あ」
思いついたかのような井出の言葉に、俺は現実に引き戻された。
彼女の良い点は容姿端麗だけじゃない。文武両道で試験は常に上位の成績を残しているし、体育では運動部相手でも無双しているのだとか。さらには人当たりも良く、男子どころか女子の友達も多いらしい。
それを知った時、そんな超人本当にいるんだと感心したものだ。目の前で見せられれば信じざるを得ない。入学した頃から同じクラスだったしな。
俺が通う学園は中高一貫校であり、藤咲さんは中等部の頃からそういった意味で注目されていたのだそうだ。
俺は高等部からの外部生なので、いきなり学園のアイドルという単語を聞いた時は面食らったものだ。
でもここではそれが当たり前。順調に成長した藤咲さんは高等部になってからもより一層その美貌を増していったとか。初めて目にした時から完璧美少女と思っていた。なのにまだレベルが上がっていて、上限はないってずるいよな。
清楚な黒髪ロングの超絶美少女。そんな女子が同じ学校にいれば、男として手を伸ばしたくもなるだろう。
当然のように藤咲さんはたくさんの男子連中から告白を受けた。
だが、告白した男子全員が藤咲さんに振られるという結末を辿った。サッカー部のイケメン先輩も、彼女がいなかったことがねえとかのたまうイケメン先輩も、クールで知的なのを売りにしていた同級生も。彼女は自信満々であったであろう連中の鼻をへし折ってきたのだ。
そうして、難攻不落の藤咲彩音と呼ばれるようになった。誰のものにもならなかったからこそ、学園のアイドルという肩書がより強固なものとなった。美少女すぎて釣り合う男子がいなかったともいう。イケメンざまあ。
それは三年になった今でも変わらない。さっそく顔が取り柄の新入生の何人かは撃沈したらしい。ざまあ。
そんなわけで、藤咲さんは学園の女子の中で一番モテる。全校男子の半数以上から告白されたとも聞く。生きた伝説といっても過言じゃないだろう。
「好きです、付き合ってください」
「ごめんなさい」
このビッグウェーブに乗らなきゃならねえ! そんな強迫観念じみたことを感じたわけではなかったが、俺も藤咲さんに告白していた。高校一年が終わろうかとする頃のことであった。
結果は見事な玉砕。逡巡の間すらなく切って捨てられた。
自分の容姿がそれほど優れたものではないとわかっていたし、とくに誇れる何かがあるわけでもない。もともと勝ち目などなかった告白ではあるが、告白するまでの時間は期待という夢を見られたのも確かだった。
彼女にとってのモブの一部にはなれただろうか。一応は名前を憶えられていた。まあなんの因果か三年間同じクラスになったというのがあるのだが。
その因果がどう転んでしまったのか。今は藤咲さんの妹と付き合っている。というか付き合わせている、という方が正確か。
藤咲琴音。学園のアイドル、藤咲彩音の妹である。
姉妹だけあって容姿は藤咲さんと似ているところが多々見られる。
だってのに、琴音ちゃんの知名度はそれほど高くない。少なくとも最近まで俺は知らなかった。今思うとちょっと不思議だ。
「まっいいけどね」
琴音ちゃんが藤咲さんの妹だろうがなんだろうが関係ない。
可愛くて健気な後輩女子。そんな子が俺の彼女になってくれた。重要なのはそこだ。
「よし、さっそく放課後デートしようそうしよう」
思い立ったらなんとやら。放課後を迎えた俺は鼻息荒く席から立ち上がった。琴音ちゃんにメッセージを送ろうとスマホを手に取る。
「そういえば祐二、追試は大丈夫なのかい?」
「あ」
思いついたかのような井出の言葉に、俺は現実に引き戻された。
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