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99.温泉で改めて振り返ってみると
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男という生き物は、あまりにも格上の存在を前にすると敵意よりも憧れの感情が優先されるらしい。
「郷田さんさすがっすね! こんな凶悪なモンを持ってたら女が群がるのも納得っすよ」
「……まあな」
男湯でばったり会ったナンパ男どもは俺の顔を見て敵意を向けてきたが、俺の股間を目にした瞬間度肝を抜かれていた。雄として圧倒的な貫録を見せつけてしまったようで、連中は手のひらを返したように俺に媚びてきやがった。
「やっぱり女はデカい方がいいんすか?」
「でもこんなにデカかったら痛がらせたりしないっすかね? 女も怖がるんじゃ……」
「バカ野郎っ! 郷田さんのあのモテっぷりを見ただろうが。どんな女でも落とす威力があんだよ」
せっかくの温泉。なのに俺を囲むのは裸の美少女ではなくチャラ男たち……。ていうか股間の話から離れろよ。
ちなみに、俺を「郷田さん」と呼んでいるこいつらだが、予想通りと言うべきか大学生であった。大学生のわりに良い旅館に泊まってんじゃねえか。と、宿泊費を払ってもらった高校生が思ってみる。
「あの、郷田さん……。俺らも郷田さんみたいにモテるようになるにはどうすればいいっすかね?」
「あん?」
軽い質問かと思えば、思いのほか深刻な顔をしているチャラ男たち。
話を聞いてみれば、外見をチャラ男にしたのは大学デビューとのことだった。高校時代は陰キャだったが、女子とお近づきになりたいからと陽キャになろうと努力した結果とのことだ。
「自分でも変わったって思ってたんすけどね。でも全然女子にモテなくて……。やっぱり非モテ男の雰囲気ってやつはそう簡単には消せないのかなと」
しょぼんと項垂れるチャラ男たち。なんかもうチャラ男って呼んでいいのかもわかんなくなるな。どうやら全員未経験みたいだし。ナニがとは言わないけど。
「そうか」
外見は変えられても、内面はそう簡単には変えられない。
海でのナンパですら、こいつらにとっては必死に勉強して勇気を振り絞っていたんだな。それを知ってしまうと「ウェーイ!」と騒ぐばかりのパリピではなかったのだと認識を改めずにはいられない。
外見と内面が噛み合わない。そこだけでいえば俺も同じだ。
「別に、無理して陽キャぶらなくてもいいんじゃないか?」
「え?」
俺はエロ漫画の悪役に転生した。
最初は原作通りに寝取ってはならないと、メインヒロインである白鳥日葵に近づかないでおこうと考えていた。
だが、俺の考えとは裏腹に、日葵は自分から俺との距離を縮めてきやがった。原作では完全に堕ちるまで、郷田晃生に対してあれだけ嫌悪と敵意を剥き出しにしていたにもかかわらずだ。
「勉強したとしても、きっと本物の陽キャになるのは難しい。真似はできても、本物ってやつは上辺だけなんとかすればいいってわけじゃないだろうからな」
俺が俺であることに変わりはない。たぶん俺が原作通りの結末を目指したとしても、それはまた別の未来に向かっていたのだろう。
だって、俺は本物じゃないからな。
「俺らには無理だから、諦めろってことっすか?」
「ちげーよ。お前らにとって女は特別な存在なんだろ? だったら雑に扱わず、壊れ物を扱うように接してみな。元々やってたことだろ」
人は傷つきやすい。傷口を一所懸命に癒やしたからこそ、日葵は俺に好意を抱き、ハーレムが始まったのだ。
……なんかこうして振り返ってみると我ながら納得してしまう。原作の郷田晃生は身体を使ってヒロインを手に入れたが、元が陰キャの俺は心の扱い方で振り向かせてしまったのか。
「でも、それじゃあ何も変わんないっすよ。同じことをしても、俺らに振り向いてくれる女子なんかいないんじゃ……」
「同じじゃねえよ。お前らは変わっただろ。女子に好かれるように勉強した。外見だって髪を染めて、日焼けして、筋肉をつけて、以前では考えられないほど違う男になったんだろ。自分をそれだけ変えられるのは並大抵のことじゃねえ。女はよく気がつくからな。お前らががんばってきたことは、絶対に伝わると思うぜ」
「「「ご、郷田さん……っ」」」
男たちは声を震わせる。なんかすげえ恥ずかしいこと言った気がすんな……。裸の付き合いをすると、いろいろとさらけ出したくなるものらしい。
◇ ◇ ◇
男たちと別れて風呂から上がった。コーヒー牛乳を飲みながらしばらく待っていると、俺の女たちが女湯から出てきた。
「いやー、温泉最高だったよねー。いっぱい遊んだからさ、その疲れが一気に取れた感じ」
「お待たせ晃生くん。ふふっ、浴衣が似合っているわね」
羽彩と日葵が俺に寄り添ってくる。風呂上がりの良い匂いが俺の鼻孔をくすぐる。
髪がしっとりとしていて良いよなぁ。羽彩はサイドテールじゃなくて髪を下ろしているし。初めて見たわけではないのに、浴衣姿と相まって違った印象を抱かせる。
「お風呂上がりは牛乳を飲むのが常識なの?」
「そうですよ。温泉ではマナーと言っても過言ではないでしょう。あたしはいちご牛乳を飲みますけど、エリカさんはどうします?」
「私はバナナ牛乳にしようかな。美味しそうだね♪」
梨乃とエリカは売店に直行していた。どうやら風呂上がりの牛乳をいただくようだ。まっ、当然の流れだな。
「買い物がある人はいる? 迷子にならないように、あまり離れないようにするのよ」
さなえさんは引率の先生みたいに目を配っている。彼女ももちろん浴衣姿なのだが、大人の色気がすごいことになっていた。髪をまとめてうなじが露わになっているし……。この人こそ俺たちから離れたら大変な目に遭いそうだ。
「晃生くん晃生くん」
「どうしたエリカ?」
エリカは俺に顔を寄せてくる。風呂上がりの女はどいつもこいつも色っぽさを増してやがる……。このたぎったモンをどうしてくれんだ?
「今夜……楽しみにしていてね♡」
俺の内心を知ってか知らずか、エリカは濡れた瞳で色っぽく期待を煽ってくるのであった。
「郷田さんさすがっすね! こんな凶悪なモンを持ってたら女が群がるのも納得っすよ」
「……まあな」
男湯でばったり会ったナンパ男どもは俺の顔を見て敵意を向けてきたが、俺の股間を目にした瞬間度肝を抜かれていた。雄として圧倒的な貫録を見せつけてしまったようで、連中は手のひらを返したように俺に媚びてきやがった。
「やっぱり女はデカい方がいいんすか?」
「でもこんなにデカかったら痛がらせたりしないっすかね? 女も怖がるんじゃ……」
「バカ野郎っ! 郷田さんのあのモテっぷりを見ただろうが。どんな女でも落とす威力があんだよ」
せっかくの温泉。なのに俺を囲むのは裸の美少女ではなくチャラ男たち……。ていうか股間の話から離れろよ。
ちなみに、俺を「郷田さん」と呼んでいるこいつらだが、予想通りと言うべきか大学生であった。大学生のわりに良い旅館に泊まってんじゃねえか。と、宿泊費を払ってもらった高校生が思ってみる。
「あの、郷田さん……。俺らも郷田さんみたいにモテるようになるにはどうすればいいっすかね?」
「あん?」
軽い質問かと思えば、思いのほか深刻な顔をしているチャラ男たち。
話を聞いてみれば、外見をチャラ男にしたのは大学デビューとのことだった。高校時代は陰キャだったが、女子とお近づきになりたいからと陽キャになろうと努力した結果とのことだ。
「自分でも変わったって思ってたんすけどね。でも全然女子にモテなくて……。やっぱり非モテ男の雰囲気ってやつはそう簡単には消せないのかなと」
しょぼんと項垂れるチャラ男たち。なんかもうチャラ男って呼んでいいのかもわかんなくなるな。どうやら全員未経験みたいだし。ナニがとは言わないけど。
「そうか」
外見は変えられても、内面はそう簡単には変えられない。
海でのナンパですら、こいつらにとっては必死に勉強して勇気を振り絞っていたんだな。それを知ってしまうと「ウェーイ!」と騒ぐばかりのパリピではなかったのだと認識を改めずにはいられない。
外見と内面が噛み合わない。そこだけでいえば俺も同じだ。
「別に、無理して陽キャぶらなくてもいいんじゃないか?」
「え?」
俺はエロ漫画の悪役に転生した。
最初は原作通りに寝取ってはならないと、メインヒロインである白鳥日葵に近づかないでおこうと考えていた。
だが、俺の考えとは裏腹に、日葵は自分から俺との距離を縮めてきやがった。原作では完全に堕ちるまで、郷田晃生に対してあれだけ嫌悪と敵意を剥き出しにしていたにもかかわらずだ。
「勉強したとしても、きっと本物の陽キャになるのは難しい。真似はできても、本物ってやつは上辺だけなんとかすればいいってわけじゃないだろうからな」
俺が俺であることに変わりはない。たぶん俺が原作通りの結末を目指したとしても、それはまた別の未来に向かっていたのだろう。
だって、俺は本物じゃないからな。
「俺らには無理だから、諦めろってことっすか?」
「ちげーよ。お前らにとって女は特別な存在なんだろ? だったら雑に扱わず、壊れ物を扱うように接してみな。元々やってたことだろ」
人は傷つきやすい。傷口を一所懸命に癒やしたからこそ、日葵は俺に好意を抱き、ハーレムが始まったのだ。
……なんかこうして振り返ってみると我ながら納得してしまう。原作の郷田晃生は身体を使ってヒロインを手に入れたが、元が陰キャの俺は心の扱い方で振り向かせてしまったのか。
「でも、それじゃあ何も変わんないっすよ。同じことをしても、俺らに振り向いてくれる女子なんかいないんじゃ……」
「同じじゃねえよ。お前らは変わっただろ。女子に好かれるように勉強した。外見だって髪を染めて、日焼けして、筋肉をつけて、以前では考えられないほど違う男になったんだろ。自分をそれだけ変えられるのは並大抵のことじゃねえ。女はよく気がつくからな。お前らががんばってきたことは、絶対に伝わると思うぜ」
「「「ご、郷田さん……っ」」」
男たちは声を震わせる。なんかすげえ恥ずかしいこと言った気がすんな……。裸の付き合いをすると、いろいろとさらけ出したくなるものらしい。
◇ ◇ ◇
男たちと別れて風呂から上がった。コーヒー牛乳を飲みながらしばらく待っていると、俺の女たちが女湯から出てきた。
「いやー、温泉最高だったよねー。いっぱい遊んだからさ、その疲れが一気に取れた感じ」
「お待たせ晃生くん。ふふっ、浴衣が似合っているわね」
羽彩と日葵が俺に寄り添ってくる。風呂上がりの良い匂いが俺の鼻孔をくすぐる。
髪がしっとりとしていて良いよなぁ。羽彩はサイドテールじゃなくて髪を下ろしているし。初めて見たわけではないのに、浴衣姿と相まって違った印象を抱かせる。
「お風呂上がりは牛乳を飲むのが常識なの?」
「そうですよ。温泉ではマナーと言っても過言ではないでしょう。あたしはいちご牛乳を飲みますけど、エリカさんはどうします?」
「私はバナナ牛乳にしようかな。美味しそうだね♪」
梨乃とエリカは売店に直行していた。どうやら風呂上がりの牛乳をいただくようだ。まっ、当然の流れだな。
「買い物がある人はいる? 迷子にならないように、あまり離れないようにするのよ」
さなえさんは引率の先生みたいに目を配っている。彼女ももちろん浴衣姿なのだが、大人の色気がすごいことになっていた。髪をまとめてうなじが露わになっているし……。この人こそ俺たちから離れたら大変な目に遭いそうだ。
「晃生くん晃生くん」
「どうしたエリカ?」
エリカは俺に顔を寄せてくる。風呂上がりの女はどいつもこいつも色っぽさを増してやがる……。このたぎったモンをどうしてくれんだ?
「今夜……楽しみにしていてね♡」
俺の内心を知ってか知らずか、エリカは濡れた瞳で色っぽく期待を煽ってくるのであった。
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