9 / 123
9.暴れん坊になりませんように
しおりを挟む
青春を目指したい俺。しかし教室の状況を考えると、前途多難と言わざるを得ない。
相変わらず俺に対するクラスメイトのイメージは悪いようだった。笑顔を心掛けたり、雑用を引き受けたりと努力はしているのだが、彼ら彼女らの恐れが消える様子はない。むしろ何か企んでいるんじゃないかと疑われている様子。見た目は肉食獣だけど、中身は草食動物なんですけどね。
「氷室ー。俺はどうすれば良いと思う?」
「むしろみんな余計に怖がってるっぽいもんね。晃生の笑顔、アタシもちょっと怖いって思うし」
「え、マジで?」
「……ごめんね」
あ、謝るなよっ。それマジの反応だから。優しくない真実になっちゃってるから!
郷田晃生の強面がいけないのだ。なんだよこの凶悪面は。俺だって一般人だったら顔を逸らしたいよ。
人間、見た目って本当に大事だったんだな。転生したからこそ、その残酷な事実を思い知らされた。
「氷室は優しいな。こんな凶悪面の俺と仲良くしてくれてさ」
「アタシは別に、顔とか関係ないし……」
照れているギャルってのも可愛いな。原作では郷田晃生の命令に逆らえなかっただけで、根は悪い子じゃないのかもしれない。
「よっこいしょ」
「晃生ジジ臭ぁーい。どっか行くの?」
「ちょっとトイレ」
休憩時間が終わりそうな時に尿意を催すのってなんなんだろうね? 自分の膀胱ながらタイミングを考えてもらいたい。おかげで早歩きでトイレに向かうことになった。
「あ」
トイレに入ろうとしたら、ちょうど出てくる男子とばったり。もちろん運命の出会いでもなんでもないので、ぶつからないように互いに立ち止まる。
「ど、ども」
「おう」
なぜか会釈してから横を通り過ぎる男子。でもその気持ちはわかるぞ。不良に遭遇するととりあえず頭下げちゃうよね。マジでごめん。
「というかさっきの……」
横を通り過ぎたのはクラスメイトの男子だった。俺が一番扱いを気をつけている男子でもある。
野坂純平。原作主人公で、寝取られる男。常に可哀そうな状況に立たされ、作中での絶望顔は印象的だった。
漫画でわかっているつもりだったけど、なんの特徴もない中肉中背の男子だ。ああやっていきなり遭遇すると一瞬誰かわからない程度には特徴らしい特徴のない男である。
「安心しろよ。お前が不幸になる展開はねえから」
小さく呟いてからトイレに入った。野坂の目が赤くなっていたのが気になったけど、何かゴミでも入って目を洗っていたのかもな。
トイレや風呂の度に自分が竿役なのだと自覚させられるが、少なくとも他人の彼女を寝取るために使おうって気はない。
ここはエロ漫画の世界だ。けれど、今は確かな現実世界だ。空想ならともかく、現実には限度ってもんがある。
「ただ、発散する方法を考えないとな……」
ここが現実だとしても、俺が郷田晃生というエロ漫画の竿役には違いない。
竿役だけあって精力が強いのだろう。気を抜いたら股にぶら下がっているモノが大きくなって困る。トイレだけでも大変なほどに。
自分で処理するだけでは収まり切らないほどの欲望が溜まっていく感覚。臨界点を越えてしまえば、俺の意思とは関係なく暴走してしまうのではと恐怖を覚える。
「これ、世界の意思とかじゃないだろうな?」
原作の流れに戻るように。そんな神の手が伸びているのではと邪推してしまう。転生している以上、そうではないと言い切れない。
そう思うほどに、獣欲が暴れ始めているのを感じていた。
「頼むぜ息子。暴れん坊になってくれるなよ」
言い聞かせてもしょうがないんだろうが、願わずにはいられなかった。リアルで寝取り野郎になってしまったら、俺はまともに外を歩けるかどうか自信がない。
「あっ、郷田くん」
「白鳥?」
トイレを出ると白鳥に遭遇した。下半身事情を考えると嫌なタイミングである。
「何よ。私と顔を合わせるのが嫌なの?」
「そんなこと言ってねえだろうが」
「顔に出ていたわよ」
「……マジか」
凶悪面のくせに隠し事もできないのか。ポーカーフェイスってやつを学んだ方がいいのかもしれない。
ため息を押し殺して教室へと戻る。当たり前のように、白鳥が俺の隣を歩く。
「おい」
「何?」
「なんで隣を歩くんだよ?」
「同じ教室なのだから当たり前でしょ。それとも何? 私だけ別のところから行けって言うの?」
そういわれると何も言い返せない。教室までそんなに距離がないし、しょうがないのか?
相変わらず俺とまともに話ができるのは氷室と白鳥だけだった。
氷室は友達だから良いのだが、白鳥は別だ。原作の修正力が働いて間違いが起こってもおかしくない。下半身の制御が効かなくなっている今、一緒にいるだけで不安だった。
今だって腕が触れ合うだけでドキドキする。男を誘う匂いをしているし、チラチラと俺をうかがう様子があざと可愛い。制服越しでもわかるほどの肉感的な身体は理性を焼き殺しそうで、真っ直ぐ彼女を見られなかった。
エロ漫画のメインヒロインは伊達じゃない。やはり安全策を取って、白鳥日葵とは距離を離すべきだろう。
「ねえ郷田くん」
「なんだ?」
内心でドキリとしながら、平静を装った。下心が顔に出てやしないかと不安が膨らむ。
「後で話があるから。少し時間をちょうだいね」
「え? ちょっ」
白鳥は先に教室に入ってしまった。クラスメイトの目を思うと追及はできない。
「なんなんだよ……」
ため息をつきたい気分だ。白鳥が何を考えているのかわからない。不良生徒に構ってばかりいたって仕方がないだろうに。
チャイムが鳴る前に席に着く。そんな俺に注がれる強烈な視線。目立つから見られるのは仕方がないかと、違和感を覚えながらも気にしないフリをした。
相変わらず俺に対するクラスメイトのイメージは悪いようだった。笑顔を心掛けたり、雑用を引き受けたりと努力はしているのだが、彼ら彼女らの恐れが消える様子はない。むしろ何か企んでいるんじゃないかと疑われている様子。見た目は肉食獣だけど、中身は草食動物なんですけどね。
「氷室ー。俺はどうすれば良いと思う?」
「むしろみんな余計に怖がってるっぽいもんね。晃生の笑顔、アタシもちょっと怖いって思うし」
「え、マジで?」
「……ごめんね」
あ、謝るなよっ。それマジの反応だから。優しくない真実になっちゃってるから!
郷田晃生の強面がいけないのだ。なんだよこの凶悪面は。俺だって一般人だったら顔を逸らしたいよ。
人間、見た目って本当に大事だったんだな。転生したからこそ、その残酷な事実を思い知らされた。
「氷室は優しいな。こんな凶悪面の俺と仲良くしてくれてさ」
「アタシは別に、顔とか関係ないし……」
照れているギャルってのも可愛いな。原作では郷田晃生の命令に逆らえなかっただけで、根は悪い子じゃないのかもしれない。
「よっこいしょ」
「晃生ジジ臭ぁーい。どっか行くの?」
「ちょっとトイレ」
休憩時間が終わりそうな時に尿意を催すのってなんなんだろうね? 自分の膀胱ながらタイミングを考えてもらいたい。おかげで早歩きでトイレに向かうことになった。
「あ」
トイレに入ろうとしたら、ちょうど出てくる男子とばったり。もちろん運命の出会いでもなんでもないので、ぶつからないように互いに立ち止まる。
「ど、ども」
「おう」
なぜか会釈してから横を通り過ぎる男子。でもその気持ちはわかるぞ。不良に遭遇するととりあえず頭下げちゃうよね。マジでごめん。
「というかさっきの……」
横を通り過ぎたのはクラスメイトの男子だった。俺が一番扱いを気をつけている男子でもある。
野坂純平。原作主人公で、寝取られる男。常に可哀そうな状況に立たされ、作中での絶望顔は印象的だった。
漫画でわかっているつもりだったけど、なんの特徴もない中肉中背の男子だ。ああやっていきなり遭遇すると一瞬誰かわからない程度には特徴らしい特徴のない男である。
「安心しろよ。お前が不幸になる展開はねえから」
小さく呟いてからトイレに入った。野坂の目が赤くなっていたのが気になったけど、何かゴミでも入って目を洗っていたのかもな。
トイレや風呂の度に自分が竿役なのだと自覚させられるが、少なくとも他人の彼女を寝取るために使おうって気はない。
ここはエロ漫画の世界だ。けれど、今は確かな現実世界だ。空想ならともかく、現実には限度ってもんがある。
「ただ、発散する方法を考えないとな……」
ここが現実だとしても、俺が郷田晃生というエロ漫画の竿役には違いない。
竿役だけあって精力が強いのだろう。気を抜いたら股にぶら下がっているモノが大きくなって困る。トイレだけでも大変なほどに。
自分で処理するだけでは収まり切らないほどの欲望が溜まっていく感覚。臨界点を越えてしまえば、俺の意思とは関係なく暴走してしまうのではと恐怖を覚える。
「これ、世界の意思とかじゃないだろうな?」
原作の流れに戻るように。そんな神の手が伸びているのではと邪推してしまう。転生している以上、そうではないと言い切れない。
そう思うほどに、獣欲が暴れ始めているのを感じていた。
「頼むぜ息子。暴れん坊になってくれるなよ」
言い聞かせてもしょうがないんだろうが、願わずにはいられなかった。リアルで寝取り野郎になってしまったら、俺はまともに外を歩けるかどうか自信がない。
「あっ、郷田くん」
「白鳥?」
トイレを出ると白鳥に遭遇した。下半身事情を考えると嫌なタイミングである。
「何よ。私と顔を合わせるのが嫌なの?」
「そんなこと言ってねえだろうが」
「顔に出ていたわよ」
「……マジか」
凶悪面のくせに隠し事もできないのか。ポーカーフェイスってやつを学んだ方がいいのかもしれない。
ため息を押し殺して教室へと戻る。当たり前のように、白鳥が俺の隣を歩く。
「おい」
「何?」
「なんで隣を歩くんだよ?」
「同じ教室なのだから当たり前でしょ。それとも何? 私だけ別のところから行けって言うの?」
そういわれると何も言い返せない。教室までそんなに距離がないし、しょうがないのか?
相変わらず俺とまともに話ができるのは氷室と白鳥だけだった。
氷室は友達だから良いのだが、白鳥は別だ。原作の修正力が働いて間違いが起こってもおかしくない。下半身の制御が効かなくなっている今、一緒にいるだけで不安だった。
今だって腕が触れ合うだけでドキドキする。男を誘う匂いをしているし、チラチラと俺をうかがう様子があざと可愛い。制服越しでもわかるほどの肉感的な身体は理性を焼き殺しそうで、真っ直ぐ彼女を見られなかった。
エロ漫画のメインヒロインは伊達じゃない。やはり安全策を取って、白鳥日葵とは距離を離すべきだろう。
「ねえ郷田くん」
「なんだ?」
内心でドキリとしながら、平静を装った。下心が顔に出てやしないかと不安が膨らむ。
「後で話があるから。少し時間をちょうだいね」
「え? ちょっ」
白鳥は先に教室に入ってしまった。クラスメイトの目を思うと追及はできない。
「なんなんだよ……」
ため息をつきたい気分だ。白鳥が何を考えているのかわからない。不良生徒に構ってばかりいたって仕方がないだろうに。
チャイムが鳴る前に席に着く。そんな俺に注がれる強烈な視線。目立つから見られるのは仕方がないかと、違和感を覚えながらも気にしないフリをした。
13
お気に入りに追加
385
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
恋愛
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる