元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ

文字の大きさ
上 下
145 / 172
第二部

144.次のイベントは体育祭

しおりを挟む
 生徒会選挙が昨日終わった。
 会長には見事垣内先輩が選ばれた。それから彼女に推薦されて瞳子が副会長になった。
 肩書がついたからか、自分の彼女ながら風格が出てきたように感じる。もともとオーラがあったけど、なんていうか泰然自若と言えるほどの安心感がある。

「だって自信があるんだもの。俊成に信じてもらえていると思ったらなんでもできる気がするわ」

 と、胸を張る瞳子。なんだか余裕すら感じさせる態度だ。
 ……その自信の源が俺なのだと言われれば、少なからずプレッシャーを感じてしまう。それを撥ねのけるだけの精神力と実績を作ることが、これから俺に課せられた最低条件ってことだろう。

 さて、次のイベントは体育祭である。
 我が校の体育祭は全クラスが四組に分かれて行われる。別クラスでも葵と瞳子といっしょの組になれるチャンスである。

「うっしゃあっ! コテンパンにしてやるから覚悟しろよ高木ぃ!」
「コテンパンだぁー!」

 逆に言えば、同じクラスでも別の組になる人もいる。
 勢いよく俺に向かって宣言する下柳。ノリがいいクリスがそれに続く。コテンパンって実際に聞いたの初めてだな。
 俺は赤組になった。
 白組になった下柳とクリスが早速敵意を露わにしたってことだ。同じく白組である美穂ちゃんはなぜか二人と距離を取っていた。ノリが違うもんね。

「高木くん佐藤くん、よろしくお願いしますね」
「望月さんともいっしょの組になれてよかったわ。がんばろうなー」
「こっちこそよろしく」

 望月さんと佐藤は俺と同じ赤組になった。ほんわかチームである。
 他のクラスはまだわからないけど、下柳にクリスと美穂ちゃんというA組でもトップクラスに身体能力が高いメンバーが白組に集まっている。これは強敵だ。

「え、俊成は赤組なの? あたしは白組なのよ。同じ組になれなくて残念ね……」

 残念ながら瞳子は敵チームということになってしまった。互いにがっくしと肩を落とす。
 瞳子といっしょになれなかったこと自体もそうだけど、戦力的にもがっくしだ。味方なら心強いけれど、敵になるとかなり厄介なのだ。

「よう高木。聞いたぜ赤組なんだってな。俺は白組だからさ、またお前と競えるのが楽しみだよ」

 爽やかに笑う本郷が敵宣言をしてきた。サッカーで全国制覇を成し遂げただけではなく、一年生ながらMVPに輝いたと聞いた。体育祭で本気を出していいような男ではない。
 F組の男女のエースまでもが白組ときた。
 まったく組分けしたのは誰だよ……。先生方の目はどうなっているんだと問うてやりたくなるぞ。白組びいきにもほどがある。

「トシくん赤組なんだよね? 私も赤組なんだよ。えへへ、いっしょに体育祭がんばろうね!」
「おう! がんばろうな葵!」

 葵は俺と同じ赤組だった。
 葵には悪いが、彼女こそ白組に入れてバランスを取るべきでは? と先生方に進言したくなった。いや、もちろん俺が全力で面倒見ますけどね。


  ※ ※ ※


 そんなわけで、体育祭当日まで準備や練習をすることになった。
 赤、白、青、黄組。それぞれ学年ごとに分かれて競技の選択が行われた。

「二人三脚が男女混合ペアって本気なの? 私ら繊細な思春期なのに、何か間違いがあったらどうしてくれんのよ」

 同じ赤組の小川さんが競技種目を見て、そう文句を口にした。
 小学生の時ならいざ知らず、中学では二人三脚など様々な競技が男女別になっていたのだ。
 高校生ともなれば、もっと運動能力や肉体そのものに男女差が出る。学校側の方針ながら年頃の男女を接触させるのはいかがなものかとも思う。
 小川さんに同感なのだが、なぜだろうか? 彼女が思春期だとかそういうナイーブな部分を意識するとは意外だった。お年頃になりつつも「男とか女とか関係ねえ!」ってスタンスの人だと思っていたよ。

「真奈美ちゃん……。やっと乙女らしくなってくれたんだねっ。私嬉しい!」
「それどういう意味よ! 待てあおっちー!」

 葵と小川さんのじゃれ合いが始まった。もし俺が葵と同じことを口にしていたらじゃれ合いじゃあ済まなかっただろうな。
 赤組一年の中でも足が速いということで、俺はリレーに選ばれた。他に綱引きや二人三脚の種目の出場も決まった。運動できる奴は三種目以上は出ろ、というのが先生の弁である。

「へぇー。パン食い競争なんかあるんやな」
「あ、本当ですね。面白そうですし僕立候補してみます」

 先生が言うに、パン食い競争は我が校の伝統らしい。そのこだわり、ちょっと理解できないです……。
 面白がってなのか、パン食い競争を立候補した人は多かった。
 定員オーバーしたとのことで出場者を決めるためにジャンケンが行われた。それに見事勝ち残った望月さんは勝利のVサインをしていた。こんなところで運を使っていいのかな。

「う~、私二人三脚に入れられちゃった……」

 運動が苦手な葵は比較的楽そうな玉入れを選んでいたのだけど、思いのほか立候補が多かったらしくジャンケンに負けてしまった。
 代わりの種目は二人三脚になったのだが、ここで反応したのは男子連中だった。

「み、宮坂さんと二人三脚?」
「合法的に肩を抱けるだって?」
「ということは、体に触れられる? むしろ密着できる?」
「あ、あのワガママボディを……ごくり」

 男子連中の妖しい視線が葵を襲う。さすがにあからさますぎて彼女の体がビクッと震えた。

「……」

 野獣共の視線から守るようにして葵の前に立つ。無言で睨みつければ次々と視線は明後日の方向を向いた。
 マジで男子高校生の思春期を舐めてはいけない。異性に興味が出て当たり前のお年頃だ。小川さんではないが、何か間違いが起こったらどう責任を取ってくれるのだ。
 性への興味自体はとがめるつもりはない。けれど、それが葵に向けられるってんなら戦う覚悟はできている。

「葵。二人三脚は俺とペアを組もう」
「うん、よろしくねトシくん」

 男子連中のブーイングはさらに厳しい睨みで封殺した。
 葵を他の男に触れさせるわけにはいかない。学校行事だろうがなんだろうが、防げるものは全部防いでやる。それが彼氏である俺の義務であり権利だ。

「あおっちってば高木くんにしっかり守られてんね。……いいなぁ」
「小川さん、僕らも二人三脚でペアを組もうや」
「え? う、うん……。佐藤くんがどうしてもって言うならしょうがないなぁ」
「どうしてもや。どうしても小川さんと組みたい。この通り、よろしく頼むわ」
「ほ、本当にしょうがないんだから……」

 俺が男共の目から葵をガードしている間に、佐藤と小川さんはペアを組んだようだった。まあ身長も大差ないし、知った仲というのもあって良いペアになるだろう。

「やっぱり真奈美ちゃんって乙女だよねー」

 なぜに今そんな発言したの? ニコニコとした葵の笑顔に、ニヤニヤの成分が入っているのは見間違いなのかどうか、少し迷った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...