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第一部
30.春の遠足は山登り【挿絵あり】
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春には遠足がある。体操服を着てリュックを装備。さあ、出発だ!
四年生での春の遠足は山登りだ。近場の山まで徒歩で向かう。小学生が昇る山なので高い山というわけではない。道は整えられていて歩きやすいし、今の涼しい時期なので動くとちょうどいいくらいだ。
「ふ、ふえ~……」
それでも初めての登山に葵ちゃんはへろへろになっていた。息は上がり、足元はおぼつかない。控えめに見てもグロッキーだった。
坂道とはいえなだらかなものだ。それでもそれなりの距離を歩いたせいか、葵ちゃんの顔には疲労の色が濃い。
「葵ちゃん大丈夫?」
「う、う~ん……」
なんか目がぐるぐるしてる。葵ちゃんってこんなにも体力がなかったのか。運動が得意ではないのは知ってたけど、この体力のなさにはびっくりだ。
「大丈夫なの葵? ちょっと休んだ方がいいんじゃない?」
こんな姿を見せられれば瞳子ちゃんは心配せずにはいられないだろう。葵ちゃんと並んで歩いている彼女にはまったく疲労はないようだった。
俺や瞳子ちゃんは水泳をしているため体力はある。それでも他の子でも葵ちゃんほどにはへろへろになっていない。というか葵ちゃん以外は誰もへろへろになんてなっていなかった。
「とりあえず水分補給しようよ。ほら葵ちゃん、リュック持っててあげるからさ」
「ふぃ~……」
本当に大丈夫かいな。なんかもうおんぶでもしてた方がいい気がしてくる。今にも倒れてしまいそうなんだもの。
葵ちゃんは立ち止まって水筒に口をつける。ゴクゴクと喉を鳴らしていたけれど、ひぃひぃと息が整っていなかったためかむせてしまう。瞳子ちゃんが葵ちゃんの背を摩る。
酸素が薄くなってしまうような高さの山でもないと思うのだが。まだ半分といったところ。この調子で頂上まで辿り着けるかはかなり疑問である。
俺は自分のリュックから氷砂糖を取り出して一粒葵ちゃんに渡した。
「これ氷砂糖。疲れた時には甘い物だよ」
「あ、ありがと~……」
俺から受け取った氷砂糖を葵ちゃんは口に入れる。コロコロと口の中で転がしていると、彼女の表情が少しだけ綻ぶ。
この後もへろへろでありながらも、葵ちゃんはがんばって歩いた。頂上に辿り着いた葵ちゃんは達成感からか満面の笑顔となった。かわいいな。
学校を出発してえっちらおっちら歩いてから、頂上に着いたのはもう昼だ。先に頂上に辿り着いていた子達はすでに昼食の弁当を食べていた。
「やっと着いたわね。早くお弁当を食べましょうよ」
瞳子ちゃんがテキパキとシートを敷いて準備をする。その敷かれたシートに葵ちゃんは倒れ込んだ。ぐでーと伸びている。はしたないですよ葵ちゃん。
「やっときた」
声に反応してみれば赤城さんがいた。彼女は俺達よりも早く到着していたようだ。というか俺達が最後なんだけども。
赤城さんは俺達のシートに自分のシートをくっつけるように敷いた。もしかして俺達がくるまで弁当を食べなかったのだろうか?
「赤城さんあたし達を待ってくれてたの?」
「うん」
ストレートに瞳子ちゃんに尋ねられて赤城さんは素直に頷いた。まあ運動会なんかはいつもいっしょだしね。
「ま、待たせちゃってごめんね~……」
「葵ちゃ~ん、無理してしゃべらなくてもいいんだよー」
葵ちゃんの汗を拭ってあげながら言う。今は息を整えようか。
少し休憩を挟んでから昼ご飯を食べることにした。
みんなよりも遅れたこともあってか、俺達が弁当を食べている時には遊び始める子達がいた。鬼ごっこをしたり、「ヤッホー!」と叫ぶ子もいた。
みんな元気だなぁ。まあ葵ちゃんが疲れ過ぎなだけなんだけども。
弁当をぺろりと完食する。子供用の弁当箱なので小さい。いつも給食ではおかわりしていただけにちょっと物足りない。おいしかったけどね。
おやつは二百円まで許可されていたので駄菓子をいろいろと取り揃えてみた。氷砂糖やラムネなんかは登山にいいらしいので買ってもらった。まあそんな本格的な登山じゃないけれども。
「う~……、あんまり食べる気しないよ~……。トシくん食べてー」
そう言って葵ちゃんは自分の弁当を俺に差し出してきた。疲労のせいで食欲がないのだろう。彼女には悪いが物足りないと思っていたのでありがたい。
「じゃあ代わりにラムネあげるよ。これくらいなら食べられるでしょ?」
「うん、ありがとうトシくん」
そうして葵ちゃんの弁当と俺のラムネとの交換が成立した。うん、葵ちゃんのお母さんの弁当もおいしいね。
「同じ箸を使うんだ」
ふと赤城さんが口にした言葉に葵ちゃんが固まった。というか葵ちゃんの弁当に手をつけてから瞳子ちゃんの目つきが怪しくなっていた。見ないふりをしてたのに。
子供の頃は間接キスとか意識していたような気がしなくもないけど、大人になったらあんまり気にしなくなったな。それって俺だけなのかな?
「ふぇ~……」
などと考えていたら葵ちゃんがしぼんでいくように背中からシートへと倒れる。胸の大きさがモロにわかってしまった。これから期待できるな……。
弁当を食べ終わると自由時間だ。葵ちゃんに走り回る体力が残っていないというのもあり、頂上から見える景色や山の植物を見て回ることにする。
「わぁ、あそこに小学校が見えるよ。すごくいい眺めだね」
葵ちゃんは体力が回復したようで景色に夢中になっていた。また下山する前に疲れてなきゃいいけどね。
「あの虫は何かしら? うーん、図鑑がほしい……」
瞳子ちゃんは木に張り付いている虫を眺めながら呟いている。小四になっても虫好きは相変わらずである。
「ねえ高木」
「どうしたの赤城さん?」
「これ、膨らまないんだけど」
無表情のまま赤城さんが差し出してきたのはポテチだった。まだ開けられていないようで袋は密封されている。
赤城さんが何を言っているかわからなくて首をかしげる。
「山の頂上に行ったらお菓子の袋が膨らむって聞いたんだけど」
「ああ……」
まだ授業で気圧とかは習っていなかったからテレビからの知識だろうか。それか誰か大人に教えてもらったとか。どっちにしてもこのくらいの標高じゃあ膨らむなんてわかりやすいことにはならないだろう。山と呼べるほどの山でもないし。
とりあえずもっと高い山に登らないとお菓子の袋は膨らまないよと教えてあげる。この辺はまた授業で教えてもらえるだろうし、簡単な説明でいいだろう。
「そう」と呟く赤城さんはちょっと残念そうだった。期待してたんだね。
「ねえ高木」
「どうしたの赤城さん?」
今度はなんだろうか。そう思いながら彼女を見つめると、手にしているポテチの袋を再び差し出してきた。
「これ、いっしょに食べる?」
なぜか無表情の赤城さんの顔がほんのちょっとだけ微笑んでいる気がした。
俺は葵ちゃんと瞳子ちゃんを呼んで四人で景色を眺めながらポテチを食べた。自然の中でのポテチ。これもまた乙なものですな。
食べ終えたポテチの袋を持ち帰るためのゴミ袋に入れてから場所を変える。一学年いることもあって、たくさんの子供達がいろんなところで遊び回っていた。
「あ、高木くんだ。もちろんあおっちときのぴーもいるよね。あれ、さらにもう一人……」
女子グループが固まっているかと思いきや、小川さんのグループだった。俺に気づくと声をかけてくる。
「高木くんって男の子の友達はいないの? いっつもあおっちときのぴーといっしょじゃん。珍しく別の子といると思えば女子だし」
「し、失礼な! そんなわけないじゃないかっ」
俺にだって男子の友達くらいいるさ。ほら、佐藤とか。……佐藤とか、佐藤……とか?
……あれ? 佐藤くらいしか名前が出てこないぞ? おかしいな、前世ではもっといたはずなのだが。俺の男友達って本当に佐藤だけ?
なんだか焦りを感じて佐藤の姿を探す。すぐに見つけた。佐藤は他の男子達と鬼ごっこで遊んでいた。それを目撃してショックを受ける俺がいた。
俺には佐藤しか男友達がいないのに、あいつは俺だけじゃないんだよな……。なんかへこむ。
「どんまい」
へこんだ俺を見て気を遣ったつもりなのか、赤城さんに慰められた。余計にダメージを受けてしまうのですが……。
「そんなことはいいんだけど。小川さんちょっといい?」
そんなことって……。瞳子ちゃんはへこんだ俺に構わず、小川さんと二人だけになって話を始めてしまった。何か用でもあるのだろうか?
葵ちゃんは小川さんのグループの女子とも仲が良いらしく、何やらおしゃべりを始めてしまった。もちろん俺はその中には入っていけない。同じく入っていけないらしい赤城さんと言葉をかけ合った。
「御子柴さん、新しいクラスは楽しい?」
「う、うん……、小川さん優しいから」
すぐに瞳子ちゃんと小川さんの話は終わったみたいでこっちにくる。瞳子ちゃんは小川さんグループの中の一人の女子に話しかけた。
一目見ただけで引っ込み思案な子だなという印象を持った。誤解を覚悟で言えばこんな大人しそうな子が小川さんのグループにいるのがちょっと不思議だった。
まあ友達なんて明るいとか暗いとか、それだけのことで決めるものでもないしね。タイプが違うように見えてもウマが合うなんてこともある。
その子は小川さんだけじゃなく瞳子ちゃんとも仲が良いみたいだし、二人が放っとけない何かがあるのかもしれない。二人とも面倒見のいいタイプだしね。
小川さんのグループと別れてから俺たちは山の自然と戯れた。一番楽しそうにしていたのは瞳子ちゃんだった。緑の自然に囲まれて笑う瞳子ちゃんはとてもかわいかった。
自由時間が終わったので先生が点呼を取る。これから学校へと戻るのだ。
そして、再び葵ちゃんがへろへろになってしまうのは言うまでもないことであった。
※素浪臼さんからカスタムキャストで作成したイラストをいただきました!
四年生での春の遠足は山登りだ。近場の山まで徒歩で向かう。小学生が昇る山なので高い山というわけではない。道は整えられていて歩きやすいし、今の涼しい時期なので動くとちょうどいいくらいだ。
「ふ、ふえ~……」
それでも初めての登山に葵ちゃんはへろへろになっていた。息は上がり、足元はおぼつかない。控えめに見てもグロッキーだった。
坂道とはいえなだらかなものだ。それでもそれなりの距離を歩いたせいか、葵ちゃんの顔には疲労の色が濃い。
「葵ちゃん大丈夫?」
「う、う~ん……」
なんか目がぐるぐるしてる。葵ちゃんってこんなにも体力がなかったのか。運動が得意ではないのは知ってたけど、この体力のなさにはびっくりだ。
「大丈夫なの葵? ちょっと休んだ方がいいんじゃない?」
こんな姿を見せられれば瞳子ちゃんは心配せずにはいられないだろう。葵ちゃんと並んで歩いている彼女にはまったく疲労はないようだった。
俺や瞳子ちゃんは水泳をしているため体力はある。それでも他の子でも葵ちゃんほどにはへろへろになっていない。というか葵ちゃん以外は誰もへろへろになんてなっていなかった。
「とりあえず水分補給しようよ。ほら葵ちゃん、リュック持っててあげるからさ」
「ふぃ~……」
本当に大丈夫かいな。なんかもうおんぶでもしてた方がいい気がしてくる。今にも倒れてしまいそうなんだもの。
葵ちゃんは立ち止まって水筒に口をつける。ゴクゴクと喉を鳴らしていたけれど、ひぃひぃと息が整っていなかったためかむせてしまう。瞳子ちゃんが葵ちゃんの背を摩る。
酸素が薄くなってしまうような高さの山でもないと思うのだが。まだ半分といったところ。この調子で頂上まで辿り着けるかはかなり疑問である。
俺は自分のリュックから氷砂糖を取り出して一粒葵ちゃんに渡した。
「これ氷砂糖。疲れた時には甘い物だよ」
「あ、ありがと~……」
俺から受け取った氷砂糖を葵ちゃんは口に入れる。コロコロと口の中で転がしていると、彼女の表情が少しだけ綻ぶ。
この後もへろへろでありながらも、葵ちゃんはがんばって歩いた。頂上に辿り着いた葵ちゃんは達成感からか満面の笑顔となった。かわいいな。
学校を出発してえっちらおっちら歩いてから、頂上に着いたのはもう昼だ。先に頂上に辿り着いていた子達はすでに昼食の弁当を食べていた。
「やっと着いたわね。早くお弁当を食べましょうよ」
瞳子ちゃんがテキパキとシートを敷いて準備をする。その敷かれたシートに葵ちゃんは倒れ込んだ。ぐでーと伸びている。はしたないですよ葵ちゃん。
「やっときた」
声に反応してみれば赤城さんがいた。彼女は俺達よりも早く到着していたようだ。というか俺達が最後なんだけども。
赤城さんは俺達のシートに自分のシートをくっつけるように敷いた。もしかして俺達がくるまで弁当を食べなかったのだろうか?
「赤城さんあたし達を待ってくれてたの?」
「うん」
ストレートに瞳子ちゃんに尋ねられて赤城さんは素直に頷いた。まあ運動会なんかはいつもいっしょだしね。
「ま、待たせちゃってごめんね~……」
「葵ちゃ~ん、無理してしゃべらなくてもいいんだよー」
葵ちゃんの汗を拭ってあげながら言う。今は息を整えようか。
少し休憩を挟んでから昼ご飯を食べることにした。
みんなよりも遅れたこともあってか、俺達が弁当を食べている時には遊び始める子達がいた。鬼ごっこをしたり、「ヤッホー!」と叫ぶ子もいた。
みんな元気だなぁ。まあ葵ちゃんが疲れ過ぎなだけなんだけども。
弁当をぺろりと完食する。子供用の弁当箱なので小さい。いつも給食ではおかわりしていただけにちょっと物足りない。おいしかったけどね。
おやつは二百円まで許可されていたので駄菓子をいろいろと取り揃えてみた。氷砂糖やラムネなんかは登山にいいらしいので買ってもらった。まあそんな本格的な登山じゃないけれども。
「う~……、あんまり食べる気しないよ~……。トシくん食べてー」
そう言って葵ちゃんは自分の弁当を俺に差し出してきた。疲労のせいで食欲がないのだろう。彼女には悪いが物足りないと思っていたのでありがたい。
「じゃあ代わりにラムネあげるよ。これくらいなら食べられるでしょ?」
「うん、ありがとうトシくん」
そうして葵ちゃんの弁当と俺のラムネとの交換が成立した。うん、葵ちゃんのお母さんの弁当もおいしいね。
「同じ箸を使うんだ」
ふと赤城さんが口にした言葉に葵ちゃんが固まった。というか葵ちゃんの弁当に手をつけてから瞳子ちゃんの目つきが怪しくなっていた。見ないふりをしてたのに。
子供の頃は間接キスとか意識していたような気がしなくもないけど、大人になったらあんまり気にしなくなったな。それって俺だけなのかな?
「ふぇ~……」
などと考えていたら葵ちゃんがしぼんでいくように背中からシートへと倒れる。胸の大きさがモロにわかってしまった。これから期待できるな……。
弁当を食べ終わると自由時間だ。葵ちゃんに走り回る体力が残っていないというのもあり、頂上から見える景色や山の植物を見て回ることにする。
「わぁ、あそこに小学校が見えるよ。すごくいい眺めだね」
葵ちゃんは体力が回復したようで景色に夢中になっていた。また下山する前に疲れてなきゃいいけどね。
「あの虫は何かしら? うーん、図鑑がほしい……」
瞳子ちゃんは木に張り付いている虫を眺めながら呟いている。小四になっても虫好きは相変わらずである。
「ねえ高木」
「どうしたの赤城さん?」
「これ、膨らまないんだけど」
無表情のまま赤城さんが差し出してきたのはポテチだった。まだ開けられていないようで袋は密封されている。
赤城さんが何を言っているかわからなくて首をかしげる。
「山の頂上に行ったらお菓子の袋が膨らむって聞いたんだけど」
「ああ……」
まだ授業で気圧とかは習っていなかったからテレビからの知識だろうか。それか誰か大人に教えてもらったとか。どっちにしてもこのくらいの標高じゃあ膨らむなんてわかりやすいことにはならないだろう。山と呼べるほどの山でもないし。
とりあえずもっと高い山に登らないとお菓子の袋は膨らまないよと教えてあげる。この辺はまた授業で教えてもらえるだろうし、簡単な説明でいいだろう。
「そう」と呟く赤城さんはちょっと残念そうだった。期待してたんだね。
「ねえ高木」
「どうしたの赤城さん?」
今度はなんだろうか。そう思いながら彼女を見つめると、手にしているポテチの袋を再び差し出してきた。
「これ、いっしょに食べる?」
なぜか無表情の赤城さんの顔がほんのちょっとだけ微笑んでいる気がした。
俺は葵ちゃんと瞳子ちゃんを呼んで四人で景色を眺めながらポテチを食べた。自然の中でのポテチ。これもまた乙なものですな。
食べ終えたポテチの袋を持ち帰るためのゴミ袋に入れてから場所を変える。一学年いることもあって、たくさんの子供達がいろんなところで遊び回っていた。
「あ、高木くんだ。もちろんあおっちときのぴーもいるよね。あれ、さらにもう一人……」
女子グループが固まっているかと思いきや、小川さんのグループだった。俺に気づくと声をかけてくる。
「高木くんって男の子の友達はいないの? いっつもあおっちときのぴーといっしょじゃん。珍しく別の子といると思えば女子だし」
「し、失礼な! そんなわけないじゃないかっ」
俺にだって男子の友達くらいいるさ。ほら、佐藤とか。……佐藤とか、佐藤……とか?
……あれ? 佐藤くらいしか名前が出てこないぞ? おかしいな、前世ではもっといたはずなのだが。俺の男友達って本当に佐藤だけ?
なんだか焦りを感じて佐藤の姿を探す。すぐに見つけた。佐藤は他の男子達と鬼ごっこで遊んでいた。それを目撃してショックを受ける俺がいた。
俺には佐藤しか男友達がいないのに、あいつは俺だけじゃないんだよな……。なんかへこむ。
「どんまい」
へこんだ俺を見て気を遣ったつもりなのか、赤城さんに慰められた。余計にダメージを受けてしまうのですが……。
「そんなことはいいんだけど。小川さんちょっといい?」
そんなことって……。瞳子ちゃんはへこんだ俺に構わず、小川さんと二人だけになって話を始めてしまった。何か用でもあるのだろうか?
葵ちゃんは小川さんのグループの女子とも仲が良いらしく、何やらおしゃべりを始めてしまった。もちろん俺はその中には入っていけない。同じく入っていけないらしい赤城さんと言葉をかけ合った。
「御子柴さん、新しいクラスは楽しい?」
「う、うん……、小川さん優しいから」
すぐに瞳子ちゃんと小川さんの話は終わったみたいでこっちにくる。瞳子ちゃんは小川さんグループの中の一人の女子に話しかけた。
一目見ただけで引っ込み思案な子だなという印象を持った。誤解を覚悟で言えばこんな大人しそうな子が小川さんのグループにいるのがちょっと不思議だった。
まあ友達なんて明るいとか暗いとか、それだけのことで決めるものでもないしね。タイプが違うように見えてもウマが合うなんてこともある。
その子は小川さんだけじゃなく瞳子ちゃんとも仲が良いみたいだし、二人が放っとけない何かがあるのかもしれない。二人とも面倒見のいいタイプだしね。
小川さんのグループと別れてから俺たちは山の自然と戯れた。一番楽しそうにしていたのは瞳子ちゃんだった。緑の自然に囲まれて笑う瞳子ちゃんはとてもかわいかった。
自由時間が終わったので先生が点呼を取る。これから学校へと戻るのだ。
そして、再び葵ちゃんがへろへろになってしまうのは言うまでもないことであった。
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