10 / 127
一章 領地編
第9話 まだまだ問題があるようです
しおりを挟む
さて、魔道学校に通うと決めたものの、いくつか問題があった。
一つ目に年齢。入学が許される年齢は十五歳からだそうだ。十一歳のわたしはまだ四年ほど早いのだ。
二つ目にお金。貴族とはいえシエル家は下級中の下級。いいとこの商人ならうちよりも金持ちだろう。そういうことで学費を稼がなければならない。
三つ目に両親の承諾。領地を改革したと言っても過言ではないわたしを両親は離そうとしないだろう。やっぱりご飯食べられるのは大きいし、わたしがいなくなってから領民を押さえられるかは考えるまでもない。
以上三つの条件をクリアしなければ魔道学校へは通えないのだ。
一つ目の条件を期限と考えるなら、四年の内におかねと両親の説得を行わなければならないだろう。
まっ、なんとかなるでしょ。まだまだ時間もあるしね。
※ ※ ※
「ぐ、ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!?」
中年の男が盛大にふっ飛ぶ。彼はまともに受け身も取れずに地面を転がった。
うわ~、すごく痛そう。
なんてこったい大丈夫かよ。……まあふっ飛ばしたのはわたしなんですけどね。
よろよろと男は立ちあがる。というか男はバガンだった。ギロリとわたしを睨んできた。
「ちゃんと受け身取ってくださいよー」
「テメーはもうちっと手加減しやがれってんだ!」
相変わらずキレやすいお方ですこと。唾を飛ばさないでほしいもんだよ。まったくもう。
「やれやれしょうがねえ奴だ、みたいな顔してんじゃねえよ! このガキやっぱりムカつくぜ!」
人の心を読まないでほしい。バガンのくせに生意気だ。
「バガンさん大丈夫ですか?」
ウィリアムくんが心配そうに近づいてきた。バガンが相手だというのに良い子だなぁ。
「おうよ。こんなもん屁でもねえぜ!」
平気だとアピールするように力こぶを作るバガンだった。顔は引きつっている。完全にやせ我慢だった。
わたしとバガンは模擬戦をしていたのだ。ウィリアムくんはそれを見学していたというわけだ。
実戦経験がある方が実になると思ったのだが、魔法は使えないわ剣術だって素人同然のバガン相手では練習台にもならない。バガンなんてすでに敵ではないのだよ。
「バガンが弱すぎて練習にもならないんですけど」
「うっせーな! バンバン魔法打ってきやがって調子に乗んな!」
「だって自分で俺は強いんだ! とか言ってたじゃん」
「……殴り合いだったらそうそう負けたことなんてなかったんだよ」
つまりチンピラのケンカレベルってことである。そんなこったろうと思ったけどね。
それでもなんだかんだで付き合ってくれるのがバガンなのだった。わたしを誘拐しようとした負い目もあるんだろうけど律儀なことである。口は悪いまんまだから感謝しようって気にはならないんだけども。
「後でベドスに相手してもらおう」
「父さんは今日仕事で遅くなるって言ってたよ」
「じゃあウィリアムくんといっしょに遊ぼう」
「うん」
ウィリアムくんは微笑んだ。かっこいいというよりもまだかわいらしさのある笑顔だった。なんというか守りたくなるね。
「おい、治癒魔法かけてくれよな」
「はいはい」
バガンに治癒魔法をかける。彼の傷はみるみる治っていった。いつ見ても便利ですな。
わたしの魔法を見てウィリアムくんはキラキラした目差しを向けてくる。けっこう気持ち良い瞬間だったりする。
バガンは仕事があると言って戻って行った。わたしはウィリアムくんと適当な広場へと場所を移す。
「ねえ、エル」
「何?」
「僕に魔法を教えてくれないかな」
もじもじしながらそう言ったウィリアムくんは抱きしめたくなるようないじらしさがあった。はっ、わたしにそんな趣味は……、いや、今は女だからありなのか?
美少年のお願いだ。できれば叶えてあげたいところである。
「わたし、人に何かを教えた経験なんてないけど。それでもいい?」
「もちろん。僕がエルの初めての弟子だなんて嬉しいよ」
嬉しいことを言ってくれる。なんだか将来女を手のひらで転がしそうな雰囲気がある。そのままの純粋なキミでいておくれ。
「安請け合いしてもいいの?」
懐からひょっこり顔を出すのはアウスだ。ウィリアムくんはアウスのことは見えないようだった。精霊使いとしての素質はないようだ。
「いいんだよ。別に減るもんじゃないしね。それに人を教えるのも勉強の内さ」
小声で返答する。アウスのことはウィリアムくんだけじゃなくみんなに秘密にしている。
それはアルベルトさんの言いつけだった。精霊の存在をみだりに話してはダメだよ。それがアルベルトさんの言葉だった。
それに従わなければならない。彼の言うことなのだからちゃんと聞かなければならないと思った。
次に会った時に言うことを聞かなかったなんて思われたくない。わたしはちゃんと言われたことを守れる良い子なのだ。
「アウス、ウィリアムくんに魔法を教えるの手伝ってよ」
「はいはいなの。まったく手のかかるご主人様なの」
「エル、何か言った?」
「ううん、なんでもないよ。ウィリアムくんにどうやって魔法を教えたもんかと考えてたとこ」
学校に行くまでにいろいろと問題はあるけれど、今は一つ一つやっていこう。
まずはウィリアムくんに魔法を教えよう。アルベルトさんがわたしにしてくれたことを、今度はわたしがウィリアムくんにやってあげるのだ。
一つ目に年齢。入学が許される年齢は十五歳からだそうだ。十一歳のわたしはまだ四年ほど早いのだ。
二つ目にお金。貴族とはいえシエル家は下級中の下級。いいとこの商人ならうちよりも金持ちだろう。そういうことで学費を稼がなければならない。
三つ目に両親の承諾。領地を改革したと言っても過言ではないわたしを両親は離そうとしないだろう。やっぱりご飯食べられるのは大きいし、わたしがいなくなってから領民を押さえられるかは考えるまでもない。
以上三つの条件をクリアしなければ魔道学校へは通えないのだ。
一つ目の条件を期限と考えるなら、四年の内におかねと両親の説得を行わなければならないだろう。
まっ、なんとかなるでしょ。まだまだ時間もあるしね。
※ ※ ※
「ぐ、ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!?」
中年の男が盛大にふっ飛ぶ。彼はまともに受け身も取れずに地面を転がった。
うわ~、すごく痛そう。
なんてこったい大丈夫かよ。……まあふっ飛ばしたのはわたしなんですけどね。
よろよろと男は立ちあがる。というか男はバガンだった。ギロリとわたしを睨んできた。
「ちゃんと受け身取ってくださいよー」
「テメーはもうちっと手加減しやがれってんだ!」
相変わらずキレやすいお方ですこと。唾を飛ばさないでほしいもんだよ。まったくもう。
「やれやれしょうがねえ奴だ、みたいな顔してんじゃねえよ! このガキやっぱりムカつくぜ!」
人の心を読まないでほしい。バガンのくせに生意気だ。
「バガンさん大丈夫ですか?」
ウィリアムくんが心配そうに近づいてきた。バガンが相手だというのに良い子だなぁ。
「おうよ。こんなもん屁でもねえぜ!」
平気だとアピールするように力こぶを作るバガンだった。顔は引きつっている。完全にやせ我慢だった。
わたしとバガンは模擬戦をしていたのだ。ウィリアムくんはそれを見学していたというわけだ。
実戦経験がある方が実になると思ったのだが、魔法は使えないわ剣術だって素人同然のバガン相手では練習台にもならない。バガンなんてすでに敵ではないのだよ。
「バガンが弱すぎて練習にもならないんですけど」
「うっせーな! バンバン魔法打ってきやがって調子に乗んな!」
「だって自分で俺は強いんだ! とか言ってたじゃん」
「……殴り合いだったらそうそう負けたことなんてなかったんだよ」
つまりチンピラのケンカレベルってことである。そんなこったろうと思ったけどね。
それでもなんだかんだで付き合ってくれるのがバガンなのだった。わたしを誘拐しようとした負い目もあるんだろうけど律儀なことである。口は悪いまんまだから感謝しようって気にはならないんだけども。
「後でベドスに相手してもらおう」
「父さんは今日仕事で遅くなるって言ってたよ」
「じゃあウィリアムくんといっしょに遊ぼう」
「うん」
ウィリアムくんは微笑んだ。かっこいいというよりもまだかわいらしさのある笑顔だった。なんというか守りたくなるね。
「おい、治癒魔法かけてくれよな」
「はいはい」
バガンに治癒魔法をかける。彼の傷はみるみる治っていった。いつ見ても便利ですな。
わたしの魔法を見てウィリアムくんはキラキラした目差しを向けてくる。けっこう気持ち良い瞬間だったりする。
バガンは仕事があると言って戻って行った。わたしはウィリアムくんと適当な広場へと場所を移す。
「ねえ、エル」
「何?」
「僕に魔法を教えてくれないかな」
もじもじしながらそう言ったウィリアムくんは抱きしめたくなるようないじらしさがあった。はっ、わたしにそんな趣味は……、いや、今は女だからありなのか?
美少年のお願いだ。できれば叶えてあげたいところである。
「わたし、人に何かを教えた経験なんてないけど。それでもいい?」
「もちろん。僕がエルの初めての弟子だなんて嬉しいよ」
嬉しいことを言ってくれる。なんだか将来女を手のひらで転がしそうな雰囲気がある。そのままの純粋なキミでいておくれ。
「安請け合いしてもいいの?」
懐からひょっこり顔を出すのはアウスだ。ウィリアムくんはアウスのことは見えないようだった。精霊使いとしての素質はないようだ。
「いいんだよ。別に減るもんじゃないしね。それに人を教えるのも勉強の内さ」
小声で返答する。アウスのことはウィリアムくんだけじゃなくみんなに秘密にしている。
それはアルベルトさんの言いつけだった。精霊の存在をみだりに話してはダメだよ。それがアルベルトさんの言葉だった。
それに従わなければならない。彼の言うことなのだからちゃんと聞かなければならないと思った。
次に会った時に言うことを聞かなかったなんて思われたくない。わたしはちゃんと言われたことを守れる良い子なのだ。
「アウス、ウィリアムくんに魔法を教えるの手伝ってよ」
「はいはいなの。まったく手のかかるご主人様なの」
「エル、何か言った?」
「ううん、なんでもないよ。ウィリアムくんにどうやって魔法を教えたもんかと考えてたとこ」
学校に行くまでにいろいろと問題はあるけれど、今は一つ一つやっていこう。
まずはウィリアムくんに魔法を教えよう。アルベルトさんがわたしにしてくれたことを、今度はわたしがウィリアムくんにやってあげるのだ。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
異世界転生騒動記
高見 梁川
ファンタジー
とある貴族の少年は前世の記憶を取り戻した。
しかしその前世はひとつだけではなく、もうひとつ存在した。
3つの記憶を持つ少年がファンタジー世界に変革をもたらすとき、風変わりな一人の英雄は現れる!

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~
カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。
「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」
魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる