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4.影の実力者
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パーティーから追放されるというのは思いのほか難しいもんだ。
そもそも普通に役割をこなしていたらそうそう仲間から反感を買うもんじゃない。
パーティーメンバーだって一度仲間になった奴をクビにするなんて、けっこうなメンタルがないとできるもんじゃないだろう。
それができるのは上を目指し続ける意識高い系くらいだ。じゃないとちょっと弱いくらいで追放するだなんて重たい処分は下したりしないだろうからな。
パーティーに入る時に実力は示している。そうしないとまずパーティーに入ることすらできないからな。無能な奴はどこもお断りなのだ。命懸けの職業だから当たり前っちゃ当たり前だがな。
「はぁ……」
「何ため息ついてるんですか」
「いや、優秀な自分をどうやって陥れるか考え中なんだ」
「? 意味がわかりませんが」
やべっ、口に出てたわ。
後輩は頭の上に疑問符を並べている。そりゃ意味わからんこと言ったよな。
「うん、忘れてくれ」
「はあ……?」
腑に落ちないといった表情だ。説明するわけにもいかんので無視することにした。
「そういえば先輩。ディーナさんがお昼に会いたいと言っていました」
「ディーナが? なんだろ」
「さあ? 用件までは聞いていませんから」
ディーナは俺達のパーティーメンバーである。
ブライアンほど無言を貫くってわけじゃないがあんまりしゃべらない奴だ。まあネルもコミュニケーション取れてるし、もしかしたら俺に対してだけかもしれんが。
だからこそ俺を呼び出すなんて珍しい。
「じゃあディーナのところに行ってくるわ」
「わかりました。行ってらっしゃい先輩」
俺は後輩に見送られながら宿を出た。
◇
待ち合わせの喫茶店に入ると、すぐにディーナを見つけた。
俺やエリックと同じくらいの身長で褐色肌の女。ショートカットの銀髪で琥珀の瞳。それがディーナの外見的特徴である。
ちなみに俺とエリックは成人男性の平均的な身長だ。だからディーナは女にしては高身長なのだ。決して俺がチビというわけではない。
「よう、待ったか?」
「今来たところ」
そのセリフはもっとこう、はにかむか恥ずかしがる感じで言ってほしかった。
なんというか、ディーナはいっつもぶっきら棒といった態度なのだ。
それでもブライアンと違って言うべきことは言うので別に不満というものでもない。俺は仕事ができればそれでいいのだ。
「で、わざわざ俺を呼び出して何の用だ?」
「うん、ちょっと小耳に挟んだ」
何を? と聞き返す前にディーナは続けた。
「シュミットがパーティーから抜けたいって」
ギクリとしてしまう。つーかどこで仕入れた情報だよ。
追放されたいとは思っているがそんなことを誰かに話した覚えはないぞ。
「それ本当?」
「嘘だな」
俺はきっぱりと嘘をついた。
ディーナが俺をじーっと見つめてくる。ここで目を逸らしたら負けだ。腹に力を入れて見つめ返す。
「うん、わかった」
どうやら納得してくれたらしい。焦らせやがって。
それにしてもこいつ……まさか俺の心配をしてたのか?
……なんてな。そこまで付き合いが長いわけでもないし、ちょっと気になっちゃっただけだろう。
「つーかそんな話誰から聞いたんだよ」
「エリックとレイラ」
おい! まさか俺の追放されたい願望ってパーティー全員に知られてるわけじゃないだろうな。
「ふ、二人が俺がパーティーを出たいって言ってたのか?」
「ううん。ただシュミットが変なことを言い出したって」
変なことって……、だがこうしてディーナは俺がパーティーから抜けたいってことに辿り着いたみたいだしな。もう少し発言に気をつけねば。
跡を濁さず去る。それが社会で円滑に生きるためのコツだ。まあ追放って時点で濁すも何もないけどな。
「だけどパーティーメンバーを決めるのはリーダーのエリックだからな。もしあいつが俺をクビにするってんなら従わなきゃならん」
「それは大丈夫」
断言してるがその自信はどこから出てるのやら。大方エリックは優しいから仲間をクビになんてしないってとこか。
「エリックがもしアタシの意に沿わないことをしたら、殴ってでも矯正させるから」
「力ずくかよ!」
まさかの脳筋発言!?
エリックとディーナは初期からのメンバーってのは知ってるが……、もしかして彼女の方が力関係が上なのか?
おいおいそうなったらエリックが俺を追放するって言ってもそれが通るとは限らないってことじゃんか。
まさかパーティーで一番厄介なのはディーナなのか? 影の実力者ほど厄介なのってないだろうが。
俺が苦悩している間にディーナは何か注文していた。そういえばここ喫茶店だったな。
「シュミット。何にする?」
「あ? 俺は水でいいや」
「ダメ。甘味にすべき」
いや、金がないんだよ。ブライアンのケガが治ってないから迷宮に行ってないからな。
それをわかっているはずなのにディーナは俺にスイーツを薦めてくる。せめて安い飲み物にしてほしい。
口数が少ないくせに強引なんだよ!
と、心の中で文句を言いながらも注文してしまった。しかも俺のおごりになってるし。
押されると弱い男です。自分不器用なんで。だからいじめんなよお願いですから!
おごられるだけおごられてからディーナは去って行った。別れ際の満足げな顔がムカつく。
くっそー! 俺がパーティーから追放されて成り上がったら真っ先に復讐してやっからな! 俺に大きな目標ができた瞬間だった。
そもそも普通に役割をこなしていたらそうそう仲間から反感を買うもんじゃない。
パーティーメンバーだって一度仲間になった奴をクビにするなんて、けっこうなメンタルがないとできるもんじゃないだろう。
それができるのは上を目指し続ける意識高い系くらいだ。じゃないとちょっと弱いくらいで追放するだなんて重たい処分は下したりしないだろうからな。
パーティーに入る時に実力は示している。そうしないとまずパーティーに入ることすらできないからな。無能な奴はどこもお断りなのだ。命懸けの職業だから当たり前っちゃ当たり前だがな。
「はぁ……」
「何ため息ついてるんですか」
「いや、優秀な自分をどうやって陥れるか考え中なんだ」
「? 意味がわかりませんが」
やべっ、口に出てたわ。
後輩は頭の上に疑問符を並べている。そりゃ意味わからんこと言ったよな。
「うん、忘れてくれ」
「はあ……?」
腑に落ちないといった表情だ。説明するわけにもいかんので無視することにした。
「そういえば先輩。ディーナさんがお昼に会いたいと言っていました」
「ディーナが? なんだろ」
「さあ? 用件までは聞いていませんから」
ディーナは俺達のパーティーメンバーである。
ブライアンほど無言を貫くってわけじゃないがあんまりしゃべらない奴だ。まあネルもコミュニケーション取れてるし、もしかしたら俺に対してだけかもしれんが。
だからこそ俺を呼び出すなんて珍しい。
「じゃあディーナのところに行ってくるわ」
「わかりました。行ってらっしゃい先輩」
俺は後輩に見送られながら宿を出た。
◇
待ち合わせの喫茶店に入ると、すぐにディーナを見つけた。
俺やエリックと同じくらいの身長で褐色肌の女。ショートカットの銀髪で琥珀の瞳。それがディーナの外見的特徴である。
ちなみに俺とエリックは成人男性の平均的な身長だ。だからディーナは女にしては高身長なのだ。決して俺がチビというわけではない。
「よう、待ったか?」
「今来たところ」
そのセリフはもっとこう、はにかむか恥ずかしがる感じで言ってほしかった。
なんというか、ディーナはいっつもぶっきら棒といった態度なのだ。
それでもブライアンと違って言うべきことは言うので別に不満というものでもない。俺は仕事ができればそれでいいのだ。
「で、わざわざ俺を呼び出して何の用だ?」
「うん、ちょっと小耳に挟んだ」
何を? と聞き返す前にディーナは続けた。
「シュミットがパーティーから抜けたいって」
ギクリとしてしまう。つーかどこで仕入れた情報だよ。
追放されたいとは思っているがそんなことを誰かに話した覚えはないぞ。
「それ本当?」
「嘘だな」
俺はきっぱりと嘘をついた。
ディーナが俺をじーっと見つめてくる。ここで目を逸らしたら負けだ。腹に力を入れて見つめ返す。
「うん、わかった」
どうやら納得してくれたらしい。焦らせやがって。
それにしてもこいつ……まさか俺の心配をしてたのか?
……なんてな。そこまで付き合いが長いわけでもないし、ちょっと気になっちゃっただけだろう。
「つーかそんな話誰から聞いたんだよ」
「エリックとレイラ」
おい! まさか俺の追放されたい願望ってパーティー全員に知られてるわけじゃないだろうな。
「ふ、二人が俺がパーティーを出たいって言ってたのか?」
「ううん。ただシュミットが変なことを言い出したって」
変なことって……、だがこうしてディーナは俺がパーティーから抜けたいってことに辿り着いたみたいだしな。もう少し発言に気をつけねば。
跡を濁さず去る。それが社会で円滑に生きるためのコツだ。まあ追放って時点で濁すも何もないけどな。
「だけどパーティーメンバーを決めるのはリーダーのエリックだからな。もしあいつが俺をクビにするってんなら従わなきゃならん」
「それは大丈夫」
断言してるがその自信はどこから出てるのやら。大方エリックは優しいから仲間をクビになんてしないってとこか。
「エリックがもしアタシの意に沿わないことをしたら、殴ってでも矯正させるから」
「力ずくかよ!」
まさかの脳筋発言!?
エリックとディーナは初期からのメンバーってのは知ってるが……、もしかして彼女の方が力関係が上なのか?
おいおいそうなったらエリックが俺を追放するって言ってもそれが通るとは限らないってことじゃんか。
まさかパーティーで一番厄介なのはディーナなのか? 影の実力者ほど厄介なのってないだろうが。
俺が苦悩している間にディーナは何か注文していた。そういえばここ喫茶店だったな。
「シュミット。何にする?」
「あ? 俺は水でいいや」
「ダメ。甘味にすべき」
いや、金がないんだよ。ブライアンのケガが治ってないから迷宮に行ってないからな。
それをわかっているはずなのにディーナは俺にスイーツを薦めてくる。せめて安い飲み物にしてほしい。
口数が少ないくせに強引なんだよ!
と、心の中で文句を言いながらも注文してしまった。しかも俺のおごりになってるし。
押されると弱い男です。自分不器用なんで。だからいじめんなよお願いですから!
おごられるだけおごられてからディーナは去って行った。別れ際の満足げな顔がムカつく。
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