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1.彼女がほしい男子高校生は普通だから
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一寸先は闇というけれど、それが光だっていいと思うんだ。
「あー、彼女ほしい」
健全な高校男子なら誰だって思い描く欲望だろう。そんなもん欲したことすらない? モテ男はどっか行ってしまえ!
あいにく俺は一般的な高校生である。学年は二年。先輩がいて後輩がいる中間管理職みたいなもんだ。まあ受験で追い立てられることはなく、新入生で右も左もわからないってことはないので一番楽な時期なのかもしれなかった。
そんな心にゆとりが生まれている高校二年の春。考えることはかわいい彼女をいかにして作るかということであった。
何も特別なことではない。万物が当然のように存在するように、彼女ほしいという欲望もまた当然のように存在するものだからだ。
だが、欲望を抱いたからとはいえそれが叶うという保証はない。
むしろ叶わないからこその欲望でもあった。
思春期という時期は人生の中でほんの一瞬の出来事なのだろう。
しかしだ! 思春期ほど感受性が豊かな時期なんて他にはないのではなかろうか!
だからこそ無駄にはしてはいけない! 力強く宣言してやろうではないかっ。俺は今、彼女がほしいのだと!!
佐々岡雄介、十六歳。
人生のままならなさを味わっている少年でございます。
※ ※ ※
部活に入っていないと放課後の学校でやることなんてそんなにないだろう。
そう思うならなんか部活に入れよって話なんだがな。あいにく高二になってもわざわざ何かをやろうって気にはならなかった。
一応中学時代はバスケ部に入っていた。だったら高校でも、とはならなかった。
バスケってやってるだけでモテるイメージを持っていた。けれど違っていた。中学の時に彼女の一人もできなかったのがその証拠である。
それに……うちの高校のバスケ部の人って見た目怖いんだよな。ちょっとお近づきになりたくないくらいの強面連中なのだ。俺がバスケ部に入りたくないっていうのも納得であろうよ。
他の部活も考えてはいたけれどピンとくるものがなかった。サッカー部もモテそうな気がしたが、なんか中学時代の繰り返しになりそうな気がしてやめた。
そんなわけで部活に入っていない俺は図書室通いをしていた。
別に読書が趣味ってわけじゃない。読書=漫画の俺からすれば文字ばっかの本なんて読めたもんじゃない。
じゃあなんで図書室なんかにいるのか。それはもう出会いを求めてに決まっている。
まともに読書をしない俺だけれど、読書する女子は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
静かに本を読む女子ってなんかさ、綺麗じゃない? 静寂そのものを纏う雰囲気というかさ。とにかく良いものなのだ。ぐっとくるね。
そんな女子を探している俺がいた。目的が不純すぎるだろっていう声は完全無視してやる。
恋人募集中。そう言ったところで食いついてくれる女子はいないのだ。だったら自分で探すしかないじゃないか。
そんなわけで貴重な放課後という時間を使って俺は図書室に入り浸っているのであった。
そこで見つけた一人の女子。
彼女は本棚に隠れた位置にある席に座って本を読んでいた。
少し体を丸めながら読書している姿はまさに熱中しているという感じだ。よほどその本が好きなのだろうとうかがえる。
セミロングの黒髪は天使の輪ができているほどのキューティクルである。それにまつ毛が長くてなんだか大人っぽい。
ちょっと暗い雰囲気があるものの、美少女といっても差し支えないのではないかと思えた。
これはアタリじゃね? 直感的にそう思ったね。
ついにきました文学少女。大人しそうな感じもグッドである。
さて、どう接点を持つべきかと彼女を見つめていると、はてと首をかしげてしまう。
なんか、彼女とどこかで会ったことがあるぞ。
そう考えてどこでだっけと思い返してみる。
同じ学校なのだからどこかですれ違うことがあってもおかしくない。でも、もうちょっと接点がある気がする。
なんだっけ? 実は昔幼馴染で久しぶりに顔を合わせた的な? いやいや、そもそも昔から仲の良かった女の幼馴染なんていねえよ。あんなのはフィクションでしか存在しないと思っている。
だったらどこで会った? ふーむと唸りながら彼女の対面の席へと座る。
「あ」
真正面に座ってみて思い出した。
彼女は俺と同じクラスの貝塚詩織だ。
クラスメートだというのに思い出すまでに時間がかかってしまった。しょうがないじゃないか。だって貝塚って無口で自己主張しない奴だからクラスでも影が薄いんだもん。
あまりに影が薄くて今の今まで彼女が美少女だってのに気づかなかった。不覚だ。
でも今は気づいた。これはまさに運命だろう(強引)。
そんなわけで、遠慮なくこのチャンスに飛びつくことにした。
「貝塚さん。その本おもしろいの?」
「……」
返事がない。それどころか顔を上げようとすらしない。しばらく待ってみたけど変化はなかった。
む、無視ですか!?
いや待てよ。無視してるんじゃなくて本に熱中しすぎて俺の声が聞こえていなかった可能性がある。
そうだきっとそう。無視されたとか考えるとへこむからそういうことにした。
だったら終わるまで待っておこうか。うん。気長に待つのも重要だ。男の短気は好感度下がっちゃうしな。俺はおおらかな男だからな。
そうして、彼女の静寂さに溶け込むようにして、俺は静かに過ごすのであった。
これが俺と貝塚の、恋とか愛とかが入り混じった戦いの始まりだったのである。
「あー、彼女ほしい」
健全な高校男子なら誰だって思い描く欲望だろう。そんなもん欲したことすらない? モテ男はどっか行ってしまえ!
あいにく俺は一般的な高校生である。学年は二年。先輩がいて後輩がいる中間管理職みたいなもんだ。まあ受験で追い立てられることはなく、新入生で右も左もわからないってことはないので一番楽な時期なのかもしれなかった。
そんな心にゆとりが生まれている高校二年の春。考えることはかわいい彼女をいかにして作るかということであった。
何も特別なことではない。万物が当然のように存在するように、彼女ほしいという欲望もまた当然のように存在するものだからだ。
だが、欲望を抱いたからとはいえそれが叶うという保証はない。
むしろ叶わないからこその欲望でもあった。
思春期という時期は人生の中でほんの一瞬の出来事なのだろう。
しかしだ! 思春期ほど感受性が豊かな時期なんて他にはないのではなかろうか!
だからこそ無駄にはしてはいけない! 力強く宣言してやろうではないかっ。俺は今、彼女がほしいのだと!!
佐々岡雄介、十六歳。
人生のままならなさを味わっている少年でございます。
※ ※ ※
部活に入っていないと放課後の学校でやることなんてそんなにないだろう。
そう思うならなんか部活に入れよって話なんだがな。あいにく高二になってもわざわざ何かをやろうって気にはならなかった。
一応中学時代はバスケ部に入っていた。だったら高校でも、とはならなかった。
バスケってやってるだけでモテるイメージを持っていた。けれど違っていた。中学の時に彼女の一人もできなかったのがその証拠である。
それに……うちの高校のバスケ部の人って見た目怖いんだよな。ちょっとお近づきになりたくないくらいの強面連中なのだ。俺がバスケ部に入りたくないっていうのも納得であろうよ。
他の部活も考えてはいたけれどピンとくるものがなかった。サッカー部もモテそうな気がしたが、なんか中学時代の繰り返しになりそうな気がしてやめた。
そんなわけで部活に入っていない俺は図書室通いをしていた。
別に読書が趣味ってわけじゃない。読書=漫画の俺からすれば文字ばっかの本なんて読めたもんじゃない。
じゃあなんで図書室なんかにいるのか。それはもう出会いを求めてに決まっている。
まともに読書をしない俺だけれど、読書する女子は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
静かに本を読む女子ってなんかさ、綺麗じゃない? 静寂そのものを纏う雰囲気というかさ。とにかく良いものなのだ。ぐっとくるね。
そんな女子を探している俺がいた。目的が不純すぎるだろっていう声は完全無視してやる。
恋人募集中。そう言ったところで食いついてくれる女子はいないのだ。だったら自分で探すしかないじゃないか。
そんなわけで貴重な放課後という時間を使って俺は図書室に入り浸っているのであった。
そこで見つけた一人の女子。
彼女は本棚に隠れた位置にある席に座って本を読んでいた。
少し体を丸めながら読書している姿はまさに熱中しているという感じだ。よほどその本が好きなのだろうとうかがえる。
セミロングの黒髪は天使の輪ができているほどのキューティクルである。それにまつ毛が長くてなんだか大人っぽい。
ちょっと暗い雰囲気があるものの、美少女といっても差し支えないのではないかと思えた。
これはアタリじゃね? 直感的にそう思ったね。
ついにきました文学少女。大人しそうな感じもグッドである。
さて、どう接点を持つべきかと彼女を見つめていると、はてと首をかしげてしまう。
なんか、彼女とどこかで会ったことがあるぞ。
そう考えてどこでだっけと思い返してみる。
同じ学校なのだからどこかですれ違うことがあってもおかしくない。でも、もうちょっと接点がある気がする。
なんだっけ? 実は昔幼馴染で久しぶりに顔を合わせた的な? いやいや、そもそも昔から仲の良かった女の幼馴染なんていねえよ。あんなのはフィクションでしか存在しないと思っている。
だったらどこで会った? ふーむと唸りながら彼女の対面の席へと座る。
「あ」
真正面に座ってみて思い出した。
彼女は俺と同じクラスの貝塚詩織だ。
クラスメートだというのに思い出すまでに時間がかかってしまった。しょうがないじゃないか。だって貝塚って無口で自己主張しない奴だからクラスでも影が薄いんだもん。
あまりに影が薄くて今の今まで彼女が美少女だってのに気づかなかった。不覚だ。
でも今は気づいた。これはまさに運命だろう(強引)。
そんなわけで、遠慮なくこのチャンスに飛びつくことにした。
「貝塚さん。その本おもしろいの?」
「……」
返事がない。それどころか顔を上げようとすらしない。しばらく待ってみたけど変化はなかった。
む、無視ですか!?
いや待てよ。無視してるんじゃなくて本に熱中しすぎて俺の声が聞こえていなかった可能性がある。
そうだきっとそう。無視されたとか考えるとへこむからそういうことにした。
だったら終わるまで待っておこうか。うん。気長に待つのも重要だ。男の短気は好感度下がっちゃうしな。俺はおおらかな男だからな。
そうして、彼女の静寂さに溶け込むようにして、俺は静かに過ごすのであった。
これが俺と貝塚の、恋とか愛とかが入り混じった戦いの始まりだったのである。
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