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351 人質(3)
しおりを挟む#351 人質(3)
目が覚めたら、どこかの部屋に寝かされていた。
体を起こそうとしたら左足に違和感があり、膝から下が無いのが分かる。
ああ、そうだった。リリアを助けるために左足を犠牲にしたんだった。一応血は止まっている様で、すぐにどうにかしないといけない状態では無い様だ。
チリンチリン
枕元にあったベルでメイドを呼ぶ。
コンコン
「失礼します、お呼びでしょうか」
「ああ、済まないが誰か状況を説明できる人を呼んでくれないか?」
「承知しました。聖女様にお知らせしてきます」
セルジュさんが無事なのも確認できたな。
「ジン様、お加減はいかがですか?」
ちゃんとセルジュ様を呼んできてくれた様だ。
「ええ、左足が無い以外は問題ないですよ」
「良かった。足が吹き飛んでると聞いて焦ったのですよ。一応回復魔法で血止めはしておきましたが、流石に部位欠損は直せませんでしたので。申し訳ありません」
「生きてるんだらから良いですよ。それよりもリリアはどうなりましたか?」
「リリアさんは無事です。まだ気が付かれてませんが、時期に目を覚ますと思います」
「そうですか。良かった。魔族はどうなりましたか?」
「勇者様が撃退してくれました」
「撃退?倒したんじゃなくて?」
「はい、転移の魔道具の様なものを使って逃げたそうです」
何やってんだあの勇者。あの感じだと人質が気になって腕が鈍ったという事もないだろうに。魔族が転移の魔道具を持ってるって情報知らなかったのか?事前情報を仕入れないのは怠慢だぞ?
「つまり魔族はまだ生きてるんですね?」
「はい。結構な深手を負わせたとは聞いていますが、とどめは刺してないそうです」
正直に言ってきたのを褒めるべきか、逃したのを責めるべきか。
まあどっちでもなくて、人質を無視したのを責めるんだけどね。
「勇者は人質については何か言ってませんでしたか?」
「特には何も。ただ、魔族を仕留め損ねたのは残念がっていました」
残念がっていた、か。
あの勇者、実力はあるんだろうけど、あの傲慢な性格といい、今回の人質の扱いといい、他人はどうなっても構わないと思ってる節があるんだよね。俺が気に食わないのは別に良いんだけどね。
あれ、俺って勇者にいらんと言われて参加するなって言われてたっけ。いやまあリリアが人質に取られてなかったら黙って見てたんだけどね。勇者死んでも俺関係ないし。
でも人質を無視して攻撃するとかないわぁ。
リリアも毒と呪いでやばかったからな。今度あったら文句の一つも言ってやらないとな。
「だからぁっ、なんで人質がいるのに攻撃したの?仮にも貴族だよ?」
「知らん。人質になる方が悪い。俺の仕事は魔族を倒す事であって人質を救出する事じゃない」
「いや、でも普通は・・・」
「うるさい。冒険者風情が俺のやる事に意見するな。俺は魔族と魔王が倒せればそれで良いんだ。人質だって俺の知り合いでもないし、遠慮する必要はない」
「その割には魔族に逃げられたみたいだけど」
「あんな魔道具を持ってるなんて知ってたら見逃さなかった。ちゃんと説明しない方が悪い」
うーん、話が通じないな。
「じゃあ、最後に聞くけど、これからどうするわけ?」
「船の用意が出来次第魔族の大陸に行く。そしてとっとと魔王を倒して贅沢な暮らしをするんだ。ああ、俺は元の世界に戻る気はないぞ。
この世界で魔王を倒した勇者として贅沢して暮らすんだから」
女神様?能力だけじゃなくて人格も選別の対象に加えてもらえませんかね?
見た感じ、剣は俺より上、魔法は俺の方が圧倒的に上。そんな感じか。
「お前は左足を失ったんだろう?戦えないならどこぞのスラムででも生活するが良い。魔王を倒せばスラムもマシになるだろう」
いや、左足は直すからね!ちょっと魔力が足りないから時間回復を待ってるだけで。
リリアの呪いを解くために結構な量の魔力を持って行かれたから、まだ魔力が回復してないんだよね。
「船で魔王を倒しに行くとして、この街はどうするんだ?また攻めてくるぞ?」
「知らん。なんならお前が守れば良いだろうが。俺は根本の魔王を叩く。大陸の場所もわかってるんだ。魔王の居場所もすぐに分かるだろう。
そしたら乗り込んでいって魔王を倒して終わりだ」
そう簡単に行くかね。どうやって情報収集するんだろうか。一人で旅するつもりだろうか?野営の見張りとかも必要なんだけど、まさか全部一人でするつもりじゃないよね?
「ふん、守らないといけない弱いやつなんか連れていけん。
今Sランク冒険者とやらを探させている。夜番くらいできるだろう」
いや、魔族に結構やられてるから名乗り出るか分からないよ?それに俺もSランクです。一緒にはいかないけど。こんなやつと旅したら良い様にこき使われて囮にでもされるのがオチだ。
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