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347 傲岸不遜
しおりを挟む#347 傲岸不遜
魔物の襲撃が散発的にありながらも俺的には平和に過ごしていた。矢の補充もベスク王国から緊急で輸入し、ギリギリだがなんとか間に合っているようだ。
おかげでベスク王国の騎士団の矢が不足するという事態になっているようだが。まあイングリッド教国よりもベスク王国の方が鍛冶屋も多いだろうし、なんとかなるだろう。
そしてとうとう勇者が来た。
今は教皇様が出迎えているはずだ。セルジュ様も当然同席するだろうし、もしかしたら俺への顔合わせもあるかもしれない。だから俺は待機中だ。
しばらく待っていると俺にも声がかかった。やはり顔合わせをするらしい。
応接室に赴くと、金髪で身長が高く、筋肉ムキムキの男が立っていた。表情が硬っているのは緊張のせいだろうか。
教皇様から勇者を紹介される。コースケ=ムラカミというらしい。
うん?コースケってどっかで聞いた名前だな。ああ、俺が魔族に名乗った偽名か。まあ他の人は知らないことだし問題ないだろう。
俺は握手しようと近寄り、右手を出すが、勇者は応えようとしない。
「お前がジンとかいうやつか。強いらしいな。お前はこの戦争から外れろ。この国の守りは俺一人で十分だ」
は、この人何いってるの?魔族が複数だってわかってるの?二人いれば魔族が四人来てもなんとか止めれるかも、と思ってたのに俺を排除しても仕方ないだろうに。
「俺以外にチヤホヤされる奴がいるのは気に入らん。勇者は俺だ。所詮冒険者なお前が俺と同列に扱われるのは不愉快だ。冒険者は冒険者らしく魔物の相手をしていれば良い。魔族は俺が倒す」
いや、意気込みは認めるけどさ。それに魔力も大きいのがわかるし、多分強いのだろう。
だけど、一人じゃ限界がある。それは俺が感じていたものだ。
それを一人でなんとかするから俺には抜けろと?
いや、本当に一人でなんとかしてくれるんなら俺はザパンニ王国にでも行ってリリアとお茶でもしてるけどね。
「勇者様、それはさすがに、、、魔族は複数おります。ジン殿にも協力願った方が。。。」
教皇様が困ったように話に入ってきた。
そりゃそうだろう。俺と二人で戦線を支えてくれると思ってたのが、一人で良いというのだ。教皇様としては二人とも抑えておきたいはずだ。
「俺は一人で十分だといってる。こんな奴がいても邪魔になるだけだ」
こいつ俺を排除して何がしたいんだ?
「勇者は俺だ。お前たちは黙って従っていれば良い」
もしかして馬鹿か?馬鹿なのか?
「それと女を用意しろ。美人で胸の大きいのが良い。とりあえず十人でいいだろう。今晩から用意しておけよ」
こいつ馬鹿だわ。いつ襲撃があるかもわからないのに女を抱くなんて。
普通行為が終わってからしばらくは集中力も欠くし、肉体的にも疲れている。そんな状態で魔族と戦っても不利になることはあっても良いことはない。
「ああ、獣人はいらんぞ。人族だけだ。獣人は体に毛が生えてるからな。あんな不潔な奴らはいらん」
あ、獣人差別論者だったのね。あれはあれださわり心地が良かったんだが。
「それと酒だ。エールなんかはいらんぞ。最高のぶどう酒を用意しろ」
酒?女以上に良くないよ?酒の回った状態で魔族の相手するなんて死にに行くようなものだ。
「話は以上だ。ジンとやら、お前は今日中に出ていけ。明日俺の前にいたら切り捨てるからな」
そういって部屋を出て行ってしまった。
はあ、なんだあいつ。
「ジン殿申し訳ない。ああいう性格のようでして。英雄色を好むというのは本当のようですな。ジン殿がそういうのに興味がないので忘れていましたが、強者にはああいった者もいるのです。
ジン殿、しばらく部屋から出ないでいてもらえますかな?
我々としてはジン殿が前線からいなくなってもらっては困りますが、勇者様の機嫌を損ねるのも問題なのです」
「教皇様、もしかして女も酒も用意するつもりですか?よってる最中に襲撃があったら最悪ですよ?」
「ですが、どうしようもありません。女神様が選んだ勇者である以上我々は要望を叶えるしかないのです」
「セルジュ様はどう思われますか?」
「私も夜伽に来いと言われました。まあ断りましたが。私は神に仕える聖女です。神の選んだ勇者とは立場もほとんど変わりはありません。時期的に戦力になる彼の方が多少は高いのですが、言うことを聞く必要もありませんから。
でも彼は納得してなかったようですね。なんでも自分の思う通りになると思ってるのかしら?」
ああそうだ、傲岸不遜、それがちょうど良い表現だと思う。
だけど戦って凹ませてしまうと、ああ言うやつは拗ねて酒に逃げたりするからな。魔族との戦いでの大事な戦力だ。とりあえず実力がはっきりするまでは俺は部屋から出ないようにしよう。
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