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278 オーガキラー?
しおりを挟む#278 オーガキラー?
「これを探索者が?」
王都でのフェリス殿下の最初の一言だった。
俺はこの剣を手に入れてからすぐに王都に移動し、殿下に剣を渡した。
「ええ、ゴブリンジェネラルが全然現れないのを不思議に思って調査したところ、この剣を持った男に襲われまして。これほど強力な剣を一般の探索者が持っているとは思えなかったので急いで報告に来たんです」
「ちょっと一緒に来てもらえますか?それほどお時間は取らせません」
何か心当たりがあるのか、殿下は俺についてきて欲しいと言ってきた。別に用事があるわけでもないのでついて行くと、豪華な扉の前についた。
トントン
「お父様、私です。先日の件でお話があります」
「入れ」
殿下は扉を開けると、俺を促しながら入っていった。
扉を見たときからもしかしてとは思っていたが、アキレス国王陛下だ。
「おお、人族の巫女よよくこられたな。この間はダンジョンで行方不明になったと聞いていたから心配していたのだぞ。主にフェリスが」
「お父様!その話はもう終わったことです!」
フェリス殿下が真っ赤になっているが、そんなに心配してくれたんだろうか。それならもうちょっと頑張って真珠をお土産にした方がよかったか?
「お久しぶりにございます。私のことでご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
一応謝っておくのが筋だろう。セルジュ様が主に動いたんだろうけど、騎士団を動かしたってことはこの人にも迷惑かけたってことだしね。
「それでフェリス、先日の件という事だが、、、その剣は、、、」
「はい。おそらく先日宝物庫から盗まれたオーガキラーだと思われます」
いや、それはオーガキラーじゃなくてゴブリンジェネラルキラーです。
「あれか。盗人も分かったのか?」
「いえ、ジン様がダンジョンで襲われた時に相手が持っていたそうです」
そのままの流れで俺がダンジョンで不審に思った時から襲われる時までの話をした。
「ふむ。宝物庫から盗んだのはそのためか。どうやってその剣の能力を見極めたのかはわからんが、何か確信があったのだろうな。
それで巫女殿、この剣がゴブリンジェネラルキラーという銘だというのはどこで知ったのか?」
「私は<鑑定>のスキルが使えますので。剣の特徴は先ほど申し上げた通り、ゴブリンジェネラルを連続で倒せば倒すほど強くなるというものです。魔法防御も上がりますので、1時間は無双できるかと」
「ふむ。そんな能力だったとはな。
盗まれた時にも思ったが、それほど強力な剣だとは知らなかった。うむ、この剣で王宮に突撃されてたら甚大な被害があっただろうな。巫女殿にはお礼をしなければならんな」
「いえ、私は剣を持ってきただけですので。先日の騎士団派遣のお礼だと思っていただければ」
「ああ、騎士団の件は問題ない。暇しておった部隊を送っただけだからな。うまい酒が飲めたと喜んでおったぞ」
「あの程度で良ければいつでも。それよりも王宮に突撃ですか?」
「うむ。最近謀反の噂があってな。どの貴族が中心になっているかも不確かながら噂だけははっきりと聞こえて来るのだ。誰かが意図的に流したとしか思えないが、はっきりせんのだ」
「王位の継承争いとかは?」
「王太子をはっきりと指名しているので跡目争いは起きないはずだ。すでに引き継ぎも初めておるから本人が事を急いだという事もないはずじゃしな」
「奴隷狩りの件は?」
「それはまだ燻っておるが、使節とは友好的な関係を気づいておるし、貴族共も反対してはおらん。むしろ交易による利権争いの方が激しいな」
ふむ。お家騒動もなし、交易も問題なし。他に王家に弓引く原因なんてあるのか?
「お父様、その様なお話は摂政とされれば良いのです。ここはジン様の褒賞を考える場面でしょう?」
「いや、しかしいらんと言われてしまったしな。巫女殿、何か礼はできんか?」
「不要です。そんなお金があるなら王宮の警備にでも回してください」
ちょっと踏み込みすぎたか?俺の言うような話じゃなかったのに。
「ははは。そう言われては言い返せんな。宝物庫の警備でも厳重にさせるか」
「お父様!この剣の能力が分かった今、そんな気軽な話ではないでしょう!」
フェリス殿下が興奮してるな。この剣に何かあったんだろうか。
「お前の言いたい事はわかるが、盗まれたのも事実だし、謀反の噂も事実だ。
お主の気に入っておる騎士には悪いが、宝物庫からこの剣が盗まれた責任は取ってもらわねばならん。取り戻したからと言って帳消しにはならんのだからな」
「ティーゲルの話はしてません!」
「ふむ、では騎士ティーゲルは宝物庫警備の不備により騎士団追放で良いのじゃな?」
「そうは言ってません!あれは不可抗力です。それを一騎士の責任にするのは間違っていると申し上げているのです!」
おや、ティーゲルとかいう人は宝物庫の警備担当か。殿下のお気に入りって事は近衛騎士かな?
「ではこうしよう。巫女殿、一つ依頼を受けてはもらえんか?フェリスからの直接依頼じゃ。
宝物庫からこの剣を盗んだ犯人を特定し、背後にいる黒幕を捕まえて欲しい。剣を盗んだ犯人を捕まえてくれれば依頼自体は達成、黒幕まで至れればボーナスを出そう。
わしからの依頼は出来んから、フェリスからの依頼となる。もちろん費用はフェリスのお小遣いからじゃ」
「はあ。しかし、そういうのは近衛騎士団なり諜報部なりがやる事では?」
「お主がおらん半年の間に調査は行なったが、芳しい結果にはならなかった。じゃが、巫女殿ならば魔法にも明るいと聞くし、何か方法があるやもしれんと思ってな。出来んか?」
「うーん、半年も前となりますと、魔力の痕跡も消えてるでしょうし、難しいかと思います。唯一の手がかりの剣の持ち主は死んでしまいましたし」
「そうか。お主でも無理か。フェリス、あと一月で結果を出せなければティーゲルは責任を取って騎士団を追放する。これは決定事項じゃ。それまでに犯人を捕まえるんじゃな」
どうやら殿下はそのティーゲルとかいう騎士を助けたいらしい。
しかし、陛下、俺が難しいと言ったそばから期限を通告するなんて酷いですね。娘のお気に入りの騎士なんでしょう?
「分かっております」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
俺どうしたらいいの?
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