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268 幽霊
しおりを挟む#268 幽霊
いや、俺も分かってるよ?分かりたくなかっただけで。
明らかに何かがいるよね?
それもアンデッドだと出来ないようなことが起きてるし。それこそリッチレベルの知恵や魔法が使えれば可能かもしれないけど。
リッチともなると土地に縛られたりはしないから何十年もいるとは思えないしね。死んだ時の復讐が目的ならとっととやってるだろうし。
だとすれば邪妖精の線か。確かに悪戯といえない事もないけど、今までの探索者が2時間で逃げ出す程とは思えない。役人だって仕事で来てるんだから簡単には帰らないだろうし。
とりあえずアンデッドの線を確実に消しておこうか。
一旦外に出て、敷地の中心に立つ。
敷地いっぱいに光属性の魔力を広げて、一気に浄化!
ちょっと派手な光が出たが、まあ幽霊屋敷の怪という事でなんとかなるだろう。
さて、もう一度中に入るか。
ん?草が足に絡み付いてるな。まあ長年放置された場所だ。伸び放題だしな。絡まる事もあるだろう。
おや、あそこの影が動いたような気がするな。猫か?雲の影かもしれないな。放って置いても良いだろう。
庭は問題なしと。
玄関から改めて入ると、ホールの壁に文字が書いてあった。
『生者に死を。死者には祝福を』
明らかに知性あるものの仕業だね。浄化したはずなので、アンデッドの可能性はほぼない。なので邪妖精だろう。
邪妖精の対策は討伐する事。他に方法を知らないからどうしようもないよね。恨んで化けて出たりしないでね。
どれ魔力を感知して、、、感知して、、、あれ?感知して、、、ない?
いやいや、邪妖精だって精霊の一種、魔力が感じられないって事はないでしょう?存在自体が魔力を帯びてるかは知らないけど、事象として何かを起こしたらそれは魔法なんだから。この世界、超能力とかないはずだよ?
地下とかにいるのかな?それなら感じられなくても不思議はない。
確かキッチンから地下室に入れたはず。
キッチンに入ると包丁の洗礼が待っていた。
バスッバスッ
今回は包丁2本だ。ちょっとランクアップ。当たらない攻撃は怖くないよね。最初の一本よりも近くを通っていったような気がするのはきっと気のせいに違いない。
床にある古いカーペットを剥がすと地下室への扉があった。木で出来ているのでかなりボロボロだが、なんとか開くことが出来た。
灯りの魔法を先に地下に下ろして場所を確認する。どうやら降りてすぐは食料庫のようで腐った匂いがする。ツーンとして嫌な匂いだ。なんか、ゾンビの匂いに似てるかも、、、いや、浄化したはず、、、地下にまで浄化は届いてるのかな?
魔力の感知は土などで覆われていると感知しにくい。出来ないわけではないが、反応が悪いのだ。
同様に範囲魔法にも地中には及ばないものもある。無論最初から地下まで対象にすれば問題ないのだが、何も考えずに魔法を使った時の初期設定が不明なのだ。
灯りを頼りに周りを見回すがゾンビらしき姿はない。うん、大丈夫だ。この匂いは純粋に食料が腐った匂いだろう。<風魔法>で匂いを遮断したいところだが、匂いを断つことでアンデッドの兆候に気づけない方が怖いのでやめておく。
横についていた扉を開けると、右側にワイン樽が積んであった。左側には瓶入りのワインが多数。何十年前のワインか知らないけど、熟成されてたりするんだろうか?それならちょっと飲んでみたいけど。
いや、隣の部屋から腐った匂いがするからここで飲むのはダメだな。帰りに少しもらって帰るか。
さらに奥の扉を開けると、ベッドルームのようになっていた。シングルのベッドと枕元に机が一つ。壁には服が何着かかかっている。いざという時用の逃走部屋かな?
うん?目の前に顔があるような気がするけど気のせいだよな?後ろの壁が透けてるし、光の加減だろうか?
ゴシゴシ
目を擦っても何かがいるな。
ウォォォォッォォオ!
「うぉ?!」
いきなり吠えた?
シネッシネッ!!!!!
音になってないけど、そう言ってる気がする。
浄化!
魔法の光が薄れても半透明なモノは浄化されない。抵抗された感じもしないので、アンデッドではないだろう。しかし、邪妖精にしては殺意が凄すぎるような気がする。
妖精は人間でいうモラルといったものに縛られないので、無邪気な悪戯が人間には致命的なことがある。それが邪妖精と言われる所以なのだが、本体がこれほど殺意を持っているのはおかしいと思う。
あ、興奮したのか半透明から微かに光り出した。
俺はとっさに風の刃を放ったがあっさりと通過した。
これはあれかな?本物の幽霊かな?いや、ゴースト系とかじゃなくて、魂的な?
この世界でも魂の存在は解明されていない。ただ、怨念が固まってアンデッドになるという考え方はある。正解なのかは知らないけど。ただ魔力だまりだと発生するとも言われている。
モノホンの幽霊の対処?陰陽師にでも頼むしかないでしょう?俺は魔法でどうにか出来ない存在の対処を知らないし、どうにも出来ない。
じわじわと下がり、後ろでに扉を確認し、部屋を出る。
幽霊は光りを強くしているが、ここは無視の方向で。扉を閉める。
もうここに用はない。後ろを向いてダッシュ!
ワインの部屋も出て食料こも通過、階段を上がってキッチンからホールを経由して外へ。扉はちゃんと閉めて、と。
さらば幽霊屋敷よ!存在するのか知らないけど、陰陽師なりが調伏してくれることを祈る!
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