スキルを極めろ!

アルテミス

文字の大きさ
上 下
263 / 351

263 夢

しおりを挟む

#263 夢

 さて、一応6階で、前回トラップに落ちた部屋まで来たのだが、トラップはなくなっていた。あのリッチが取り外したのだろう。
 他には道がないと言ってたので大丈夫だとは思うが、壁に背中を預ける時はつい触って確認してしまう。


「マリア、大丈夫か?」

 今、マリアはゼェゼェいいながら座り込んでいた。
 ちょっと急ぎすぎたかもしれない。

 期限がある上に、確実性のない採取依頼なので、道程を急ぎ、採取の時間を確保しようとしたのだが、マリアの体力の事を忘れていた。
 別にマリアが特別体力がないわけではない。だけど、ほとんど小走りで駆け抜け、戦闘は最低限、魔石も肉も皮も放置で走ってきたのだ。まだ魔力操作がうまくないマリアでは、十分に身体強化が出来ず、今の状況になる。

 障壁の練習で結構魔力操作がうまくなってるはずなのでいけるかと思ったが、身体強化の魔力操作と障壁の魔力操作は感じが違うらしく、うまく出来ないそうだ。
 体の中で魔力を移動させるか、外で移動させるかの違いだけだと思うのだが。

「マリア、今日はここで休むから少し休んでろ」

 俺は薪を取り出して火をつける。
 地面が硬いので、串などは刺せないが、代わりに横に薪を何本か積み上げ、串を横に並べて焼く。
 薪を十分に離しておかないと火が移るので、結構距離をあけたが、串の長さ的にギリギリだった。

 あとはスープか何かあればいいんだけど、火の上は串が陣取っているので、鍋をかけれない。
 仕方ない。鍋に水を入れて<火魔法>で直接熱する。普通に魔法を使うと簡単に蒸発してしまうので、繊細な調整が必要だ。
 野菜をたっぷりと入れた野菜スープだ。味は塩胡椒で整えるだけだが、野菜の旨味が出て美味しくなるだろう。

「申し訳ありません、もう大丈夫です」

 マリアが復活してきた。でもまだ怠そうにしている。動けるようになったと言っても疲労は取れてないのだろう。

「大丈夫だ。あと少しで出来るからもう少し休んでろ」

 明日も同じようにして移動するのだ、少しでも体力を回復させておいて欲しい。


 食事の後、交代で寝るのだが、マリアを先に休ませた。さすがにね?

 俺の方に長くなるように時間を調整し、俺も横になる。

 頭の下には毛布を丸めたものを入れている。
 今までのダンジョンではそんな事しなかったが、枕を見つけた事で枕熱が高まっているのだ。枕が変わると寝れない人だっているのだ。枕は正義だ。


 その夜、俺は夢を見た。



 細く長い道を延々と歩く。
 白い道以外は真っ暗だ。
 枝分かれもなく、ひたすら真っ直ぐの道だ。
 振り返りたい気持ちが湧き上がってくるが、振り返ると大変な事になりそうな予感がする。

 道の途中に石が落ちていた。
 白い道の上に真っ黒な石。不自然極まりないが、それを踏まないように気を付けて進む。

 また石が落ちている。

 だんだんと石が落ちている間隔が短くなってきた。

 そしてある時、白い道が黒い石でいっぱいになり、跨いで避けることも出来なくなった。

 踏んででも進むか、止まって考えるか、振り返って後ろを確認するか。

 もう少しで黒い石でできた道に差し掛かってしまう。考える時間はそれほどない。

 振り返るのは嫌だ。止まるのは負けた気がする。進むのは危険な気がする。道を外れたら何が起こるか分からない。

 決断の瞬間。。。。。。



 はっと目覚めた。
 何か夢を見ていたようだが、覚えてない。ただ寝汗をかいていたようで、布で体を拭う。

 マリアは火の前でうとうとしていた。
 マリア、見張りは大事だよ?

 交代の時間ではないよだが、マリアが眠いのは間違い無いので交代する事にした。起きて寝直せるのは平和な世界で生きている人だけだ。

「マリア、起きろ!見張りが寝ててどうする!?」

「あ、ジン様申し訳ありません。変な夢を見てしまいました」

「夢?」

「はい。ジン様がどこか遠くに行ってしまう夢です」

「それは夢だな。何度か行方不明にはなったがちゃんと帰ってきたぞ?それともいなくなるんじゃなくて死んでしまう夢か?」

「そんな夢は見ません!ジン様は死にません!」

 いや、私失敗しないですから、みたいに言われても。俺だって死ぬときは死ぬよ?多分。

 それにしてもマリアも夢か。
 サッキュパスとかいないだろうな?あれはエッチな夢を見せるんだっけ。

 マリアには神託のスキルはなかったはずだし、当然俺にもない。なら偶然か。

 俺は一本道に障害がある夢、マリアは俺がどこかに行く夢。うん、全く関係ないな。

「マリア、あとは俺が見張るから寝てていいぞ。疲れてるだろう?」

「申し訳ありません。最近よく寝れなくて」

「そういう時もあるさ。ゆっくり寝ろ」

 依頼の最中だからダンジョンを出る訳にもいかないが、少し長く休憩をとるくらいなら構わないだろう。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...