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167 盗賊
しおりを挟む#167 盗賊
俺たちは初級ダンジョンに入った。
到着して翌日にチャレンジというのもどうかと思ったが、一般の騎士達は半休扱いになるらしい。居処をはっきりさせておかないといけないが、休暇と一緒だ。
今回目指すのは最下層ではなく、10層らしい。
10層のボス部屋に用事があるそうだ。
初級だけあって、出てくるのはゴブリンとかしかいない。正直、Bランクどころか、Cランクでも十分だろう。
3日で10層に到着し、ボス部屋に入ると、中央から白い光が伸びて、ゴブリンエリートがゴブリン3体連れて出現した。初級の割には豪勢だ。
おれは<風魔法>で一掃した。
ボスが倒れて、階段が現れるが、殿下はそちらに興味を示さず、左側の壁を調べていた。そういえば10層のボスではなく、その部屋に用事があると言ってたね。
左側の壁にプレートの様なものをはめ込むと隣の壁が扉の様に開く。
「皆さんはここで待っていてください。話によると、1時間ほどで戻ってくれるそうです」
一人で行くらしい。中で何があっても知りませんよ?
それから1時間。騎士団長と雑談をしていると、再度扉が開いて、殿下が戻ってきた。
「これで終了ですか?」
「はい、用事は済みました。今日は11層で野営して、明日帰りましょう」
もちろん、このスケジュールは前から聞いていたので問題ない。これまで3日問題なく過ごせてたんだ。大丈夫だろう。
ちなみに11層からも洞窟型らしく、大した魔物は出ないということ。まあ、初級に期待するだけ無駄だというものだ。
「ダンジョンには10層ごとに転移で戻れる水晶があると聞いたんですが?」
おれは以前ダンジョンに入るときに聞いた仕組みを聞いてみる。もちろん、以前のダンジョンでは存在しなかったが、あったら便利だなと思っていたので、この機会に聞いてみた。
「そうですね。そういうダンジョンがある事はあるのですが、このダンジョンは違いますね。上級ダンジョンはほとんどがその機能を持っているそうです」
なるほど、初級くらいじゃそんな便利機能いらないということかな?
ダンジョンを戻る途中、<魔力感知>に人を捉えた。他の冒険者かと思ったが、俺たちの後をつけている様なのだ。俺たちの後をつけて何の得になるのだろうと思っていたが、前方から5人の冒険者風の男達が現れた。
「すまねぇが、ポーションを分けてくれねぇか?さっきヘマやっちまってよぅ」
ポーションを求めながら近づいてくる。
パーティを見渡してみるが、誰も怪我をしている様には見えない。
これはあれか?あれなのか?事前の情報からするとビンゴだと思うんだが。
近づいてくるので、警戒していたら、予想通り、切りかかって来た。賊だろう。
おれと騎士団長が前に出て、殿下をかばう。
賊の方から、呪文の詠唱が聞こえて来た。おれは呪文なんて覚えてないので何の詠唱なのかは知らないが、宮廷魔術師団長が対抗魔法を唱える。風の壁を作り出した様だ。
賊の魔法は火の魔法らしく、風の壁に突き当たって、燃え尽きた。大した魔法じゃなかったらしい。
それにしても、他の人の魔法戦闘を初めて見たかもしれない。単なる<火魔法>の攻撃ならメアリーがやっていたが、魔法に対抗して魔法を放つというやりとりは初めて見た。
やはり、呪文を聞いて何を唱えるか判断してから対抗魔法を決めるのだろうか?
騎士団長が前衛とやりあっているので、おれは後ろに向かった。
俺たちをつけていたやつも連中の仲間だろう。後ろに移動すると、ダガーを投げようとしているところだった。おれは腕を掴み、ダガーを取り落とさせた上で、腹を殴った。
腹を殴って気絶させるって、どうやるんだろうね?首を手刀で気絶させるのも現実的ではないと聞いたことがあるんだが。。。
実際賊は気絶することなく、「うげっ」と吐き出しそうな声をあげた。おれは腕を掴んだまま、他の連中の方に放り投げた。
賊が一箇所に集まったのを見て、宮廷魔術師団長が炎の魔法を唱える。範囲魔法らしく、賊の仲間を炙っている。流石に宮廷魔術師、魔力をきちんと制御している。うん、<魔力制御>がlv8あるだけあるね。
前衛の賊は後ろが気になったらしく、背後を見た瞬間、騎士団長が切り捨てた。他の賊達は火傷で倒れてる。
「ジン殿、しばりあげるのを手伝ってください。尋問します」
おれは適当にぐるぐる巻きにして放り出した。
騎士団長が尋問する様で、順番に殴って大人しくさせてから質問を繰り返していた。切り捨てる気満々なのに、捕縛で済ませる可能性を匂わせてるところが慣れてるなって感じだね。
どうやら賊は俺たちとは関係なく、この付近で盗賊をやっていたが、こっちの方が儲かるので転職したらしい。こっちの方が儲かるというのに引っかかったが、初心者が戻ってこないのはよくある事なので、ダンジョン内で殺して奪っても誰も気にしない。なので、素材を持っている、帰り道を狙っているそうだ。
前衛に出て来ていたのが、リーダーらしく、狙う獲物もリーダーが指示していたらしい。
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