165 / 351
165 成人の儀
しおりを挟む#165 成人の儀
「同行者は誰になりますか?」
「騎士団長と宮廷魔術師団長の2名だ」
「それぞれのトップが直々にですか。よほど難易度が高いのですね」
「いや、難易度はそれほど高いと見積もってはおらん。ただ、ダンジョン内で何かあった時に、正確な判断を下せて、その権限のあるものを選んだだけだ。
賊に襲われた後、連れて帰るわけにも行かんから、そのまま処刑となるだろう。その時に賊から得た情報の信頼度にも関わる。ジン殿を信用しなわけではないが、国も手順を踏まないといけないのでな」
なるほど、信用できて、実力が十分で、しかも功績を誇らない相手が必要だったのか。
「それでは、最後になぜ同行者が3名までなんでしょうか?」
「それは分かっておらん。いや、分かっておったとしても私には教えられておらん。なので3名と言われたら3名しか連れていけん」
『試練の祭壇』と言うのだから、何らかの試練があるんだろう。それに4名で挑むとか?どこかのテレビでやっていたアトラクションみたいだな。
「わかりました。引き受けましょう」
「おお、そうか。助かる」
「ただし、条件を一つつけます。私が生きていることは内緒でお願いします」
「なぜだ?生きているとなればSランクに復帰できるぞ?」
「ええ、Sランクだと稼げるのですが、今回のような断りにくい依頼も多くなります。なので、秘密にしておきたいのです」
「まあ、それが望みというなら仕方ないが、、、あ、、、父上はジン殿のことを知っておるぞ?報告が行っているはずだ。下手すると、すでに各国に情報が行っている可能性もある。Sランクの生死は国の重要情報だからな」
「今からでも止めれませんか?」
「ちょっと待っておれ」
シグルド殿下はそう言って、部屋を出て行った。
しばらくして戻ってきた殿下は、おれに「すまん」と謝ってきた。
すでに知らせた後だったのかな?
「父上はすでに各国に連絡を入れてしまっていた。追加で各国にジン殿の要請を連絡してもらえる事になっているが、各国のトップが知っていたら、一般人から隠してても意味がないかもしれないが。。。」
「はあ、殿下、私の人生設計を変えるつもりですか。ふう、仕方ありませんね。報酬は白金貨2枚にしましょう。今回の迷惑料込みです」
「仕方あるまいな。それで頼む」
「では行く日が決まったら連絡ください。今日の宿に泊まっていますので」
「うむ、出発は3日後を予定しておる。今回は重ね重ねすまなかったな」
俺たちは宿に戻ってきた。
「メアリー、シグルド殿下の依頼、どう思う?」
「賊がいるのは確信しているようですわね。どの位の規模かわかりませんが、それなりに危険なのでしょう。街で聞き込みが必要かもしれませんね」
「そうだな、クレア、マリア、街で聞き込みを頼む。タスクのダンジョンに関してだ。賊が出るという噂があるとも聞く。ダンジョンの作りも含めて確認してほしい。ダンジョンの作りに関してはギルドの方がいいかもしれないけど」
「承知しました。そのダンジョンにはいつ向かいますか?」
「3日後の予定だ。
ああ、その依頼だが、お前たちは連れていけない。なので、タスクの街までしか連れていけない。
ダンジョンに潜るなら自分たちだけで行ってくれ。一応初級らしいから、お前たちだけでもいけるだろう。もちろん、潜らずに待っていたもいい。
ダンジョンでは1週間ほどかかる予定だ」
「3日後ですか。情報を早く得ないといけませんね。すぐに聞き込みに行ってきます。クレア、行きましょう」
「おう」
二人が出て行くと、メアリーが話しかけてきた。
「二人がいない間に話があるのですが、『成人の儀』に関してですわ。
『成人の儀』は王族の男子に課せられた義務です。『成人の儀』をすませていないと、王にはなれません。理由は私にもわかりませんが。それと『成人の儀』はべスク王国独自の制度です。ザパンニ王国にはありません。
なので、想像でしかありませんが、ただ行って帰ってくるのではなく、ダンジョンに何かあるのかもしれませんわ」
「そうか、メアリーはその辺を調べてくれないか。殿下にお茶だと言えばいいだろう」
「任せてくださいな」
「あの、私は。。。」
「ああ、リリアは、そうだな。おれの話し相手だな」
「そ、そうですか。お役に立てませんで、すいません」
リリアがしょんぼりしている。しかし、どうしようもないよね。適材適所ってあるし。
「メアリーについて行ったら、、、」
「それはいけませんわ。王族以外には通常『成人の儀』に関しては秘匿されています。貴族とは言え、リリアを連れて行ったら、聞けるものも聞けなくなりますわ」
なかなか辛辣だが、言っている事はもっともだ。
リリアには大人しくお留守番をしていてもらおう。
0
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる