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142 Sランク依頼 (2)
しおりを挟む#142 Sランク依頼 (2)
翌日、ギルドに行くと、すでに子爵は来ているという。
「初めてお目にかかります。Sランク冒険者のジンです」
「ビリー・フォン・カインツです。話を聞いてくれるそうで、助かります」
「まず、Sランクの依頼かどうかの判断は別として、情報が提示できないというのはどういう理由ですか?」
「貴族の体面に関わる問題です。依頼を受ける前に話をして、話が漏れると困るのです」
「なるほど、ではSランクにあげた理由は?」
「はい。Aランクの冒険者は戻ってきてないという事になっていますが、私のところに一人だけ戻ってきました。
ビットバイパーが群れになっていると。
かなり出血しており、その話をした後、息を引き取ってしまいました。ギルドの調査が入ると、秘密が漏れる可能性があったので、ギルドにも報告できずにいました。これに関してはギルド虚偽の報告をした事になりますので、本当に申し訳ないことをしたと思っています」
「え、全滅したって。。。」
ケニーさんは驚いている。
「なるほど、Aランクが群れになっているからSランクと。報酬が倍額なのは口止め料ですか?」
「それと迷惑料込みです」
ふむ。ビットバイパーの群れね。確かに脅威だが、それだけが問題とも思えない。
「必要なのは毒腺だけですね?それも1匹分でいいんですか?」
「はい、それで問題ありません」
どうも、依頼以外の点で問題がありそうだ。
「ケニーさん、報酬はいくらでしたか?」
「白金貨2枚です」
「子爵、白金貨2枚、払えるんですね?」
「もちろん払う。事前にギルドに収めておこう」
「わかりました。受けましょう。詳細を聞かせてください」
「では、私の屋敷に行きましょう。ここでは話せません」
「ギルドにも内緒だと?」
「貴族の体面とはそういうものです」
「わかりました。みんなは先に宿に戻っていてくれ。高級宿の方でいいぞ」
他のメンバーは不安そうにしていたが、高級宿に連泊できるとあって、喜んでいた。
子爵の屋敷は貴族街の端っこにある、こじんまりとした家だった。屋敷と呼びはするが、屋敷の規模ではない。法衣貴族ならこんなもんかもしれない。これで白金貨2枚ねぇ。まあ、ギルドに先払いなら取りこぼしはない。
「さて、お話ししいましょうか。まず先に謝っておきます。今回の依頼は私個人からではなく、皇族からの依頼です。
ある皇族の方がビットバイパーの毒を受けて、苦しんでいます。このままですと、後ひと月持たないそうです。そのため、出来るだけ高ランクで、仕事の早いものに依頼をしたかったため、報酬をあげました。
もっとも、思っていたよりも難易度が高く、Sランクにあげざるを得ませんでしたが。
お金の出どころはその皇族です。依頼失敗の理由とともに依頼料の増額を提示しましたら、それでも良いとの事でしたので、Sランク依頼として発注させていただきました」
「なるほど。それでは『迷惑料』とはどういう意味ですか?」
「そのままの意味です
ご存知かは知りませんが、ビットバイパーの毒は即死するような毒とは違い、新鮮な毒腺さえあれば解毒薬が作れます。
なのでおそらく、ビットバイパーが群れになっていることを知ったものが、ビットバイパーの毒を仕込んだのだと思われます。
即死毒と違い、国の管理もあまりされてませんので、今この時に限り、有効な毒です。足もつきにくい。群れにさえなっていなければAランクが取ってこれるのですから」
「なるほど。皇族貴族の争いに巻き込まれると?」
「助けた冒険者は目障りでしょう。直接皇族に文句を言うわけにはいかないので、冒険者に怒りが向きます」
「そう言うものですか?」
「そう言うものです」
貴族の依頼は面倒だねぇ。
「では、改めて確認しますが、必要なのは、1匹分の毒腺。期間は1ヶ月以内。報酬は白金貨2枚。
間違いありませんか?」
「はい、間違いありません」
「わかりました。お受けしましょう。西の森まで1週間ほどでしたか?では、2週間後に会いましょう」
俺は問題ないと判断した。目障り程度で襲ってくる戦力は知れてる。よほど意地になって俺を殺そうとしない限りは問題ないだろう。
ただ、毒耐性を持つものがいないので、俺一人で向かう必要があるだろう。俺だけなら<神聖魔法>でどうとでもなる。ビットバイパーの毒は即効性がないのだから、自分で治せる。
あとは純粋に戦力的な問題だ。Aランクの魔物の群れに、Bランク相当のパーティが行ったら全滅する。実際にはAランクが全滅しているのだから。リリア達は実力をつけてるとはいえ、Bランクに届いてない。これでは足手まといだ。
俺は、宿に戻って、依頼を受けたことを話した。
依頼の内容に関しては、守秘義務で話せないとした。メアリーあたりが知ったら話が大きくなりそうだしね。
みんなは全員で行くつもりでいたらしいが、Aランクの群れが対象なので、足手まといだと正直に行った。皆悔しそうな顔をしていたが、無駄に危険を冒させるつもりはない。
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