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095 ヤパンニ王国 (7)
しおりを挟む#095 ヤパンニ王国 (7)
今後のことを決めてからは、殿下の動きは早かった。
ヤパンニ王国の外務大臣と直接話をし、宰相を同席させた。
これで、外務大臣だけをクビにする(物理的に)方法も取れなくなった。
それまでの合意内容を改めて確認すると、宰相が聞いてないとごね始めた。
なるほど、やはり策がうまくいっていれば反故にできるとたかを括っていたのだ。
だけど、殿下は最初に高圧的に出るという話の通り、要求できるものは全て要求した。
関税など2割で落としどころじゃない。当初の『高圧的な』要求である5割だ。
穀物のヤパンニ王国への輸出制限まで追加していた。
その段階で予定通り、べスク王国が間に入ってきたが、殿下は引かなかった。
ある晩に、べスク王国の代表が、話が違うと文句を言いに来たが、毒殺されそうになった話をし、戦争をしてでも引く気がないと断言した。
べスク王国の代表者は、さすがに仲裁を買って出て、一方の言い分だけを聞くわけに行かず食い下がってきたが、殿下は話を聞かなかった。
暗にべスク王国と戦争になったとしても、この交渉は決めて見せると言っていた。
べスク王国の代表は、どうなっても知りませんぞ、と言って帰っていったが、どうにか出来るんだろうか。
べスク王国の仲裁が意味をなさなくなってからは、ヤパンニ王国側も必死になって抵抗してきたが、最終的に戦争するか、案を受け入れるかの2択だと迫り、交渉を受け入れさせた。
その日の夜、城から火の手が上がった。
殿下の部屋の下の階の部屋だ。
それと同時に暗殺者と思しきものが5名、部屋に侵入してきた。
俺は、殿下とドロシーさんに寝室で待っているように伝え、暗殺者に専念することにする。幸い、火事から逃げるのはまだ間に合う。
暗殺者は左右に分かれ、一度に攻撃されないようにしていたが、俺からすれば大して変わりはない。
体をねじり、全力で剣を振り回す。
空中に跳んでいた者以外は真っ二つにされた。
空中の暗殺者は、振り切った俺の首筋に短剣をさした。
俺は気にせず、暗殺者を切り捨てる。
首に刺さった短剣を抜くと、<神聖魔法>で即座に治療する。毒も塗られていたようだが、一緒に治療する。
<ステータス>を確認すると、HPが少しだけ減っていた。
もしかすると、魔法使わなくても大丈夫だったかもしれない。
俺まだ人間だよね?
ドラゴンを倒してから、身体lvが243まで上がっており、HPとMPは十万を超えた。
各種能力値も4000ちょっとまで上がっていた。
Bランク冒険者のセディックさんのステータスを改めて確認しよう。
身体lvは40位。
HPは200前後。
MPは50位。
ステータスは120前後。
<剣術>スキルがlv4。
俺まだlvあげなきゃダメかな?
ダメだよね。多分。
人類最強の能力がいくらか、ではなく、上限の確認なんだから、上がる以上終わりはない。
<不老>だから、時間をかけて上げていくのかと思っていたが、半年ほどで人外まで上がってしまった。
ああ、そんな事考えてる場合じゃなかった。
「殿下、もう大丈夫です。火事はわざとでしょうが、このあとどうしましょうか?」
「火事はここまで来そうですね。おそらく、暗殺の後、焼いてしまうつもりだったのでしょう。
火事で死んだのでは、得意のロビー活動でも外聞は悪くなりますが、交渉を振り出しに戻せますし。
一旦、ホセと合流して、階下に避難しましょう。
その間も暗殺者には注意してください」
「了解、、、」
「殿下!」
ホセさんが部屋に入ってきた。
火事に驚いたのか、俺の<飛剣>の音を聞いた知らないが、ちょうどいい。
「ホセ、階下に逃げますよ。
先ほど暗殺者が来ました。この後も十分に注意が必要です。
ジン様には私の安全を優先してもらいますので、ホセは自分の身は自分で守ってください」
俺たちが階下に逃げたところ、使用人達が火事を消そうと必死になっていた。
水魔法が使えないようで、バケツリレーをしていた。
その日はもう暗殺者は来なかった。
翌日、殿下は直接ヤパンニ王と会談し、交渉にサインさせた。
王は最後までサインを渋っていたが、俺が剣を突きつけると、ようやくサインした。
「どうなっても知りませんぞ!」
今更である。
こちらは戦争覚悟でやってるのだ。そんな脅しで屈するわけがない。
あとは、無事に本国に帰るだけだ。
馬車を用意させようとしたが、燃やされており、兵士も暗殺されていた。
もう、体裁を気にしてはいられないようだった。
まだ、兵士が大挙して襲ってこないだけマシかもしれない。
俺は3人を連れて、王都の外まで走り出た。
そのまま歩いて西へ向かっていく。
王都から影になる場所まで行ったら、道から逸れた。そのまま北に向かう。
王都からは予想通り、騎士達が出てきて、俺たちの捜索をし始めた。
おそらく、帰り道で何者かに襲われたという筋書きだろう。懲りないやつらだ。
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