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075 御宅拝見
しおりを挟む#075 御宅拝見
リリア様が夏休みに入った。
この世界、移動に時間がかかるので、実家に帰れるように、まとめて2ヶ月の休みがある。
もちろん、リリア様もロービスに帰郷する予定だ。俺たちもついて行く。
「リリア様、夏休み中、ロービスに帰郷する予定ですが、訓練などはどうしましょうか?
休むのであれば、それはそれで構いませんが」
「メイド見習いは外聞が悪いのでできませんが、戦闘訓練はやりたいと思ってますわ。
お父様も反対されないでしょうし。
マリアさんとクレアさんに訓練をつけてもらおうかと思ってます」
「そうですか、二人には言っておきましょう。
それで、帰郷している間、少し長期で依頼を受けたいと思うのですが。。。」
「ダメですわ!
ジン様は私の婚約者ですのよ。
休みくらい一緒にいてくださらないと。
、、、お父様の部下の貴族たちにも紹介したいですし。。。」
リリア様が真っ赤になって言うが、最後の方は声が小さくて聞こえなかった。
だが、まあ、長期の依頼は無理なようだ。
まあ、もともと2年間は拘束される予定だったし、問題ない。
問題はないが、ちょっと一人になりたかったなんて言ったら、泣かれそうだ。
無事にロービスに到着した。
途中でてきた、ゴブリンやオークは、冒険者と兵士だけで対処できたし、比較的安全な道中だったと思う。
俺たちの出番なかったしね。
、、、というか、今回護衛依頼受けてないよね?
当たり前のように護衛するつもりでいたけど。。。
まぁいいか、将来の嫁さん候補だし。
俺たちは普通に持ち家に戻ったが、リリア様が付いてきた。
「リリア様、家はあちらですよ?」
俺は街の中央にある城を指差す。
「そ、その、将来暮らすかもしれない家ですし、、、一度見ておきたいかなと、、、ダメですか?」
その言い方はずるいと思う。
一応、馬車は家の前に待機してもらい、中を案内する。
それほど広い家でもないので、すぐに案内は終了するが、リリア様が帰る様子がない。
「リリア様、そろそろ、日が暮れますよ?
伯爵様もお待ちでしょうし」
「そ、そうですわね、と、泊まるわけにも行きませんし、、、」
当然だ。お泊まりなんかしたら、伯爵様に殺される。
「ええ、ご家族に顔を見せてあげてください」
リリア様は渋々帰っていった。
「マリア、部屋の様子はどうだ?
すぐに住めそうか?
ダメなようなら、早めに宿を取らないとまずいぞ」
「はい、埃も被っているし、今晩は宿を取った方が良いと思います」
「じゃぁ木漏れ日亭に向かおう。
空いてるといいんだが」
キリカちゃんを思い出しながら、木漏れ日亭に向かう。
ダブルが一部屋空いていたので、頼んだ。
夜は、久しぶりに3人で寝た。
特に何があったわけではないが、久しぶりなので緊張して、余り寝れなかった。
翌朝、宿を出て、家に行くと、家の前に馬車が停まっていた。
伯爵家の馬車だ。
「リリア様、こんな朝早くからどうされましたか?」
「い、いえ、部屋の片付けのお手伝いでもしようかと。。。」
「それはありがたいですが、それほどすることはないですよ?」
「で、では、戦闘訓練など。。。」
「家ではできませんよ?」
「えっと、その、、、」
特に何かあってきた訳ではないらしい。
多分、仲間はずれが嫌だったのだろう。
「じゃぁ、伯爵様にご挨拶に行きましょうか。
馬車をお借りしてもよろしいですか?」
「もちろんですわ。一緒に参りましょう」
俺はマリアとクレアに家の中の掃除を指示すると、リリア様と馬車に乗って、伯爵邸(城)に向かった。
「奥様、お久しぶりでございます」
俺はなぜか、伯爵様では無く、奥様と話していた。
訪問したら、リリア様が奥様を呼んできたのだ。
「それで、ジン殿。リリアと結婚するというのは本当ですか?」
「そういう話になってますね。
リリア様が卒業するときに、まだその気があれば、ですが」
「そうですか。
ならば、奥様では無く、ドーシーと呼んでくださいな。
お義母様、でも良いですのよ」
どうやら、俺はリリア様の相手として認められたらしい。
昨夜、リリア様と何を話したんだか。。。
「では、ドーシー様、改めてよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ、リリアをよろしくお願いします」
一通り挨拶が済んだところで、俺はお土産を机の上に出した。
王都で買った、ケーキだ。
もちろん、<インベントリ>で時間停止してある。
「王都のケーキです。
今回はチーズをふんだんに使ったケーキを買ってみました」
「まぁ、いつも気がきくわね。
お茶にしましょう」
どうやら気に入ってくれたようだ。
なぜか、リリア様がそそくさと部屋を出て行った。
少し待つと、長女のグレイス様と、次女のステファニー様の二人を連れてきた。
どうやら、ケーキは全員で分け合うことになっているらしい。
伯爵様や長男のエレク様はいらないんだろうか。
伯爵様にはこないだ気に入ってくれた、グレンフィディックという酒を届けておこう。
俺はそれから、数時間、リリア様との結婚運びなどの話を何度もさせられた。
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